
返済の必要がない補助金や助成金は、資金調達の一つとなる力強い存在です。
しかし、補助事業に関しての会計処理は通常の商取引と異なるために、基本的な考え方を確認してから状況に応じた処理をする必要があります。
そこで、こちらの記事では、補助金でリースやレンタルを利用した時、会計処理の仕方について解説していきます。
補助金を利用した方は、ぜひご覧になってください。
また、これまで対象外となっていた、PC・タブレット等のハードウェアにかかるレンタルリースやレンタル費用が補助対象として追加されたIT導入補助金 特別枠(C類型)も併せてご紹介していきます。
補助金の分類と対象経費
補助金という名の付くものは、数多くありますが法律における補助金等とは、4つに分類することができます。
①補助金
②負担金(国際条約に基づく分担金を除く)
③利子補給金
④その他相当の反対給付を受けない給付金であって補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律施行令第2条で定めるもの
これらの補助金を経理処理をするにあたっては、補助金の対象となる経費を明確に区別して処理する必要が出てきます。
また、適正な処理を行うためには、各種の制限、取得した財産の管理方法等、通商の経理処理や業務管理とは異なる部分がありますので、注意しておかなければなりません。
対象経費項目とその内容
補助金ごとによって計上できる費用項目は異なりますので、補助金交付要綱や公募要領などを熟読することが必要となります。
ただし、主な経費項目と内容の定義は下記の表の通りとなっておりますので、よくご確認ください。
経費項目 | 内容 |
1.人件費 | 事業に従事する者の作業時間に対する人件費 |
2.事業費 | |
旅費 | 事業を行うために必要な国内出張及び海外出張に係る経費 |
会議費 | 事業を行うために必要な会議、講演会、シンポジウム等に要 する経費(会場借料、機材借料及び茶菓料(お茶代)等) |
謝金 | 事業を行うために必要な謝金(会議・講演会・シンポジウム 等に出席した外部専門家等に対する謝金、講演・原稿の執筆・ 研究協力等に対する謝金等) |
備品費 | 事業を行うために必要な物品(ただし、1 年以上継続して使 用できるもの)の購入、製造に必要な経費 |
(借料及び損料) | 事業を行うために必要な機械器具等のリース・レンタルに要 する経費 |
消耗品費 | 事業を行うために必要な物品であって備品費に属さないもの (ただし、当該事業のみで使用されることが確認できるもの) の購入に要する経費 |
外注費 | 補助事業者が直接実施することができないもの又は適当でな いものについて、他の事業者に外注するために必要な経費(請負契約) |
印刷製本費 | 事業で使用するパンフレット・リーフレット、事業成果報告 書等の印刷製本に関する経費 |
補助員人件費 | 事業を実施するために必要な補助員(アルバイト等)に係る 経費 |
その他諸経費 | 事業を行うために必要な経費であって、他のいずれの区分に も属さないもの。原則として、当該事業のために使用される ことが特定・確認できるもの。 |
備品費や賃料等の会計処理方法
備品費や賃料等の会計処理を行う前に、まずは備品費と借料及び損料の基本的な考えを確認しておきましょう。
◆備品費:事業を行うために必要な物品の購入、製造等に必要な経費
・この場合、1年以上継続して使用できるものが対象となります。
◆借料および損料:事業を行うために必要な機械器具等のリース・レンタルに要する経費
備品費や借料および損料を購入する際には、原則として仕様、見積、発注、納品、検収、支払の手順で処理を行っていきます。
また、取得した設備は当該事業のみの仕様となっておりますので、他の設備等との区別を明確にして、それ以外の事業に使用しないよう注意しておきましょう。
区別するために、見える位置にシールを貼る方法などを検討してください。
会計処理の実施の流れ
備品費と借料及び損料の手順となる仕様、見積、発注、納品、検収、支払の各手順にしたがって書類を整理し、下記の手順で会計処理を行っていきます。
①経済性の視点から、可能な範囲において相見積りを取り、相見積りの中で最低価格を提示した者を選定(一般の競争等)します。
相見積りを取っていない場合、または最低価格を提示した者を選定していない場合には、その選定理由を明らかにした選定理由を整理します。
②インターネットやメール等により注文を行います。
発注書を取っていない場合には、発注書に代わるもの(電子媒体等の印字したもの)を用意してください。
③納品物は、発注した内容と適合するか確認します。
④納品書には、内規等に基づき検収日を記載し、検収担当者が押印をします。
⑤現物には当該事業で購入したことを識別できる表示(シール等)により他の機械装置と区別しておく必要があります。
また、帳簿上も当該事業とそれ以外の事業については区別して整理することも忘れないようにしましょう。
⑥自主事業など当該事業以外に使用することはできませんので、ご注意ください。
⑦取引先への支払は補助事業者の名義で行います。
⑧銀行振込受領書等により支払の事実(支払の相手方、支払日、支払額等)を明確にします。
リースやレンタルによって調達した場合
当該事業の中で、必要となる設備をリースやレンタル等で調達した場合、その料金(一定額の月払)は当該事業期間中のリースやレンタル等に要した費用のみ計上することができます。
ただし、支払いが確認できるものに限られます。
なお、交付決定前の発注、支払等を行うものは対象経費として認められませんので、お気をつけください。
準備しておく書類等は、備品費と同様となり、交付決定時において、既に自主事業等のためにリース等を行っているものについては、支払が確認できるもののみ当該事業期間中の経費として計上することができます。
もしも、毎月一定額の支払を行っていない場合(一括前払などにより)には、下記の算式により計上できる費用を算出してください。
補助金を利用しようとするのなら、原則、前払いは行わないようにします。
◆算式
『 リース等の契約金額×(リース等期間に占める当該事業期間÷リース等期間全体) 』
(計算例)
・4年間(48ヶ月)のリース等金額96万円のうち補助事業期間10ヶ月の場合には、下記の計算式となります。
『 96 万円×(10 か月÷48 か月)=20 万円 』
次に、リースやレンタル費用も補助対象となった「IT導入補助金 特別枠(C類型)」をご紹介します。
IT導入補助金 特別枠(C類型)
IT導入補助金 特別枠(C類型)は、令和2年度補正サービス等生産性向上IT導入支援事業(IT導入補助金)特別枠のことです。
新型コロナウイルス感染症の影響により、事業環境の対策、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けて、具体的な対策に取り組んでいる事業を支援するために設けられました。
具体的な対策に取り組んでいる事業者に対して、必要となる経費の一部を補助しています。
3つのポイント
IT導入補助金 特別枠(C類型)の3つのポイントは、下記の通りとなります。
◆ポイント1:補助率が最大3/4に拡充、最大450万円を補助
◆ポイント2:PC・タブレット等のハードウェアにかかるレンタル費用も補助対象
◆ポイント3:公募前に購入したITツール等についても補助金の対象(審査や条件あり)
補助対象者
IT導入補助金 特別枠(C類型)の補助対象となる中小企業と小規模事業者は、下記の通りとなります。
◆中小企業(飲食、宿泊、卸・小売、運輸、医療、介護、保育等のサービス業の他、製造業や建設業等も対象)
・資本金、従業員規模の一方が、右記以下の場合対象(個人事業を含む)
業種 | 資本金 | 従業員 |
資本の額又は出資の総額 | 常勤 | |
製造業、建設業、運輸業 | 3億円 | 300人 |
卸売業 | 1億円 | 100人 |
サービス業(ソフトウエア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) | 5,000万円 | 100人 |
小売業 | 5,000万円 | 50人 |
ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く) | 3億円 | 900人 |
ソフトウエア業又は情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
その他業種(上記以外) | 3億円 | 300人 |
・その他の法人
業種 | 資本金 | 従業員 |
資本の額又は出資の総額 | 常勤 | |
医療法人、社会福祉法人、学校法人 | ― | 300人 |
商工会・都道府県商工会連合会及び商工会議所 | ― | 100人 |
中小企業支援法第2条第1項第4号に規定される中小企業団体 | ― | 主たる業種に記載の従業員規模 |
特別の法律によって設立された組合またはその連合会 | ― | 主たる業種に記載の従業員規模 |
財団法人(一般・公益)、社団法人(一般・公益) | ― | 主たる業種に記載の従業員規模 |
特定非営利活動法人 | ― | 主たる業種に記載の従業員規模 |
◆小規模事業者
業種分類 | 従業員 |
常勤 | |
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) | 5人以下 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
製造業その他 | 20人以下 |
補助対象となる事業
IT導入補助金 特別枠(C類型)の補助対象となる事業は下記の通りとなります。
①下記の「甲」、「乙」、「丙」のいずれかの目的を含めた形で、自社の事業の生産性を向上させるべくITツールを導入する取り組みのうち、「申請区分」のITツールの要件を満たすもの。
◆甲:サプライチェーンの毀損への対応
(顧客への製品供給を継続するために必要なIT投資を行う)
◆乙:非対面型ビジネスモデルへの転換
(非対面・遠隔でのサービス提供が可能なビジネスモデルに転換するために必要なIT投資を行う)
◆丙:テレワーク環境の整備
(従業員がテレワーク(在宅勤務等)で業務を行う環境を整備するに必要なIT投資を行う)
②補助対象事業の拡大について(遡及(さかのぼり)申請の追加)
交付決定後に実施する事業に加え、原則である下記①のケースに加え、特例として下記②の遡及(さかのぼり)申請のケースも、補助対象事業として認める。
① 交付決定日以降に補助対象事業を実施するケース
事務局に登録されたIT導入支援事業者及びITツールの中から、ITツールを選定し、交付決定日以降に事業(契約・納品・支払い)を実施するケース。
② 遡及(さかのぼり)申請可能期間中に補助対象事業を実施するケース(C類型のみ)
一刻も早いテレワーク環境の整備や非対面型ビジネスモデルへの転換等の必要性の理由から公募開始前の下記の遡及申請可能期間(2020年4月7日(火)以降)に、ITツール導入についての契約を実施し、その後、補助事業者による交付申請までの間に当該ITツールとそれを提供するIT導入支援事業者が事務局に登録されたケース。
2020年4月6日(月)以前に実施された事業は、補助対象外となるのでご注意ください。
補助対象経費
IT導入補助金 特別枠(C類型)の補助対象経費は、下記の通りとなります。
◆ソフトウェア費、導入関連費、ハードウェアレンタル費
補助額
IT導入補助金 特別枠(C類型)の補助率、補助下限額、上限額は下記の通りとなります。
◆補助率
・C類型-1 2/3以内
・C類型-2 3/4以
◆補助下限額・上限額
・30万~450万円
まとめ
補助金を利用した場合のリースやレンタルの会計処理について、補助金の分類と対象経費、備品費や賃料等の会計処理方法、リースやレンタルによって調達した場合などを解説してきました。
また、リースやレンタルも新たな補助対象として加えられたIT導入補助金 特別枠(C類型)も併せて紹介しました。
補助金の対象としてリースやレンタルが加えられたことで、より効率的に補助金を資金調達として活用できるようになります。
補助金を利用した際の会計処理は、他の会計処理と異なりリースやレンタルを行った場合には、上記のような算式や実施の流れに沿ってしていくことになりので、リースやレンタルで補助金を利用する時のご参考になさってください。