企業の売上を伸ばすためには生産性を向上させることが重要ですが、そのためには機械設備やPOSシステム等の導入を進めて行く必要があります。
しかし、中小企業や小規模事業者にとって、資金繰りを調整しながら導入するために資金を調達することは大変なことです。
もしも、設備投資をするために従業員の賃金がダウンしてしまったのなら、労働者のやる気がダウンしてしまうかも知れません。
そのような時には、厚生労働省で実施している業務改善助成金をご利用してみてはいかがでしょうか?
業務改善助成金は、ラベルプリンターなどの設備投資を行い事業内の一定の最低賃金を引き上げる時に受給できる補助金です。
こちらの記事では、業務改善助成金を詳しく解説していきます。
業務改善助成金の概要
厚生労働省が実施している業務改善助成金は、中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援すると同時に、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)の引上げを図るために設けられた制度です。
中小企業や小規模事業者が 生産性向上のための設備投資(機械設備、POSシステム等の導入)などを行い、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合に、それらの設備投資などにかかった経費の一部を補助しています。
「令和3年1月29日までのコース」と「令和3年2月1日以降のコース」のコースが作られていますが、「令和3年2月1日以降のコース」は令和2年度第3次補正予算の成立が前提となるために、変更の可能性があります。
◆令和3年1月29日までのコース
◆令和3年2月1日以降のコース(予定)
支給要件
業務改善助成金を支給するための要件は下記の通りとなります。
①賃金引上計画を策定すること
事業場内最低賃金を一定額以上引き上げる(就業規則等に規定)
②引上げ後の賃金額を支払うこと
③生産性向上に資する機器・設備などを導入することにより業務改善を行い、その費用を支払うこと
・ 単なる経費削減のための経費、 職場環境を改善するための経費、 通常の事業活動に伴う経費などは除かれます。
④解雇、賃金引下げ等の不交付事由がないこと など
導入例
業務改善助成金の生産性向上に資する設備や機器の導入例は、下記のような例となりますので、ご参考になさってみてください。
◆POSレジシステム導入による在庫管理の短縮
◆リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮
◆顧客・在庫・帳票管理システムの導入による業務の効率化
◆専門家による業務フロー見直しによる顧客回転率の向上 など
生産要件
業務改善助成金では、生産性を向上させた企業が助成金を利用する場合には、助成率が割増されます。
生産性の要件とは下記の通りとなります。
◆助成金の支給申請を行う直近の会計年度における「生産性」が、
◆その「3年度前」に比べて6%以上伸びていること または、
◆その「3年度前」に比べて1%以上(6%未満)「伸びている」こと
「3年度前」とは?
・年度前の初日に雇用保険適用事業主であることが必要です。
・また、会計期間の変更などにより、会計年度が1年未満の期間がある場合は、当該期間を除いて3年度前に遡って算定を行います。
「伸びている」とは?
・この場合、金融機関から一定の「事業性評価」を得ていることになります。
◆生産性の計算式は次の計算式に当てはめて計算します。
生産性=付加価値/雇用保険被保険者数
助成額
業務改善助成金の助成額は、申請コースごとに定める引上げ額以上、事業場内最低賃金を引き上げた場合、生産性向上のための設備投資等にかかった費用に助成率を乗じて算出した額が助成されます。(千円未満端数切り捨て)。
申請コースごとに、助成対象事業場、引上げ額、助成率、引き上げる労働者数、助成の上限額が定まり異なっていますので、下記の表を参考にしてください。
令和3年1月29日までのコースの概要
業務改善助成金の令和3年1月29日までのコースの締め切りは、令和3年1月29日までとなっています。
令和3年1月29日までのコース助成対象となる事業場は、下記の2つの要件を満たしている事業場となります。
◆助成対象事業場
①事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内
②事業場規模100人以下
令和3年1月29日までのコースの概要
令和3年1月29日までのコースのコース区分、引上げ額、引上げる労働者数、助成上限額、助成率は下記の表の通りとなります。
コース区分 | 引上げ額 | 引上げる労働者数 | 助成上限額 | 助成率 |
25円コース | 25円以上 | 1人 | 25万円 | ◆事業場内最低賃金 850円未満 ・4/5 ・ 生産性要件を満たした場合は 9/10 |
2~3人 | 40万円 | |||
4~6人 | 60万円 | |||
7人以上 | 80万円 | |||
30円コース | 30万円以上 | 1人 | 30万円 | ◆事業場内最低賃金 850円未満 ・ 4/5 ・ 生産性要件を満たした場合は 9/10 ◆事業場内最低賃金 850円以上 |
2~3人 | 50万円 | |||
4~6人 | 70万円 | |||
7人以上 | 100万円 | |||
60円コース | 60円以上 | 1人 | 60万円 | |
2~3人 | 90万円 | |||
4~6人 | 150万円 | |||
7人以上 | 230万円 | |||
90円コース | 90円以上 | 1人 | 90万円 | |
2~3人 | 150万円 | |||
4~6人 | 270万円 | |||
7人 | 450万円 |
業務改善助成金の令和3年2月1日以降のコース(予定)
業務改善助成金の令和3月2月1日以降のコースは、令和3月2月1日以降に始まり、令和2年度第3次補正予算の成立が前提となるコースです。
令和2年度の25円・60円・90円の3コースは、令和3年1月29日で受付が終了となりますのでご注意ください。
令和3年2月1日以降のコースの助成対象事の事業場は、下記の2つの要件を満たす事業場となります。
◆助成対象事業場
①事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内
②事業場規模100人以下
令和3年2月1日以降のコースの概要
令和3年2月1日以降のコースのコース区分、引上げ額、引上げる労働者数、助成上限額、助成率は下記の表の通りとなります。
コース区分 | 引上げ額 | 引上げる労働者数 | 助成上限額 | 助成率 |
20円コース | 20円以上 | 1人 | 20万円 | ◆事業場内最低賃金 900円未満 ・4/5 ・ 生産性要件を満たした場合は 9/10 ◆事業場内最低賃金 900円以上 |
2~3人 | 30万円 | |||
4~6人 | 50万円 | |||
7人以上 | 70万円 | |||
30円コース | 30円以上 | 1人 | 30万円 | |
2~3人 | 50万円 | |||
4~6人 | 70万円 | |||
7人以上 | 100万円 |
業務改善助成金の流れ
業務改善助成金は、助成金交付申請書の提出を行い、その後は下記の①~⑥の流れで進んでいきます。
なお、交付申請書を都道府県労働局に提出する前に設備投資等や事業場内最低賃金の引上げを実施した場合は、対象となりませんのでご注意ください。
・事業場内最低賃金の引上げは、交付申請書の提出後から事業完了期日までであれば、いつでも実施できます。
・設備投資等は、交付決定通知後に行う必要があります。
①助成金交付申請書の提出
業務改善計画(設備投資などの実施計画)と賃金引上計画(事業場内最低賃金の引上計画)を記載した交付申請書(様式第1号)を作成し、都道府県労働局に提出する。
②助成金交付決定通知
都道府県労働局において、交付申請書の審査を行い、内容が適正と認められれば助成金の交付決定通知を行う。
③業務改善計画と賃金引上計画の実施
・業務改善計画に基づき、設備投資等を行う。
・賃金引上計画に基づき、事業場内最低賃金の引上げを行う。
④事業実績報告書の提出
業務改善計画の実施結果と賃金引上げ状況を記載した事業実績報告書(様式第9号)を作成し、都道府県労働局に提出する。
⑤助成金の額の確定通知
都道府県労働局において、事業実績報告書の審査を行い、内容が適正と認められれば助成金額を確定し、事業主に通知する。
⑥助成金の支払い
助成金額の確定通知を受けた事業主は、支払請求書(様式第13号)を提出する。
◆問合せ先
・全国47都道府県にある「働き方改革推進支援センター」
◆申請先
・事業場がある地域の都道府県労働局
ラベルプリンター導入の事例
利用していた店舗オリジナル商品のドリンクに貼るラベル作成や印刷業務は、パソコンに詳しい従業員しか行えませんでした。
その従業員が退職し困っていたところに、誰でも簡単に使いこなせるラベルプリンターを導入し、誰でも操作できるようにしました。
その結果、業務改善助成金が利用でき、従業員が簡単に使いこなせることで時短となり、その時間が他の作業時間に充てられるようなったのです。
◆業種:飲料品小売業
◆従業員数 12名
◆ラベルプリンター導入経費の一部を助成
・業務改善助成金
・助成率 75% (一定要件の場合は80%)
・助成額最大 450万円
なお、常時使用労働者数や生産性要件等により助成率が変化する等、助成金等には一定の要
件がありますのでお気をつけください。
◆メリット
・導入後はラベル作成や印刷の作業時間が6分の1もの短縮が可能ととなった。
・ラベルプリンターの導入により、誰でも簡易な操作で作業が可能となった。
・ラベルプリンター導入により、業務効率が改善し、長時間労働が解消した。
まとめ
厚生労働省が実施している業務改善助成金の概要を始めとして、「令和3年1月29日までのコース」と「業務改善助成金の令和3年2月1日以降のコース」の概要、業務改善助成金のの流れ、さらにラベルプリンター導入の事例について、詳しく解説してきました。
業務改善助成金は、ラベルプリンターなどの設備投資を行い、同時に一定の最低賃金を引き上げる際に利用できる助成金です。
「令和3年1月29日までのコース」は受付が終了が迫ってきていますが、「業務改善助成金の令和3年2月1日以降のコース」が令和3年2月1日から行う予定となっておりますので、資金調達の一つとして、業務改善助成金を積極的にご活用ください。
設備投資を行うことで生産向上を目指すと同時に賃金の引上げを図り、事業の発展や継続に繋げていきましょう。