
新型コロナウイルス感染症の影響で経済が低迷し、売上減少や業績悪化となる企業は少なくありません。
それに伴い、解雇や給料・ボーナスをカットされてしまう方も多く、生活費やローンの支払い追われ、貯蓄を切り崩しても厳しい家計に悩んでる方は多いのではないでしょうか?
そのような場合、給料の前借りと宣伝している給料ファクタリングに思わず問い合わせてしまう方も多いと思いますが、今一度ご確認ください。
給料ファクタリングは、企業向けのファクタリングと違い様々な問題点が浮上しており、金融庁や警察庁からも注意喚起がされています。
こちらの記事では、給料ファクタリングが資金調達として向かない3つの理由と問題点について解説していますので、ぜひご覧ください。
企業向けと個人向けのファクタリングの違い
給料ファクタリングはインターネット等の広告により、利用者が急増したことから問題になってきました。
そもそも、ファクタリングとは企業が取引をする際に行う資金調達法であり、給料ファクタリングの仕組みとは異なっています。
次に、企業向けのファクタリングと個人向けのファクタリングについて、「どのような点が違うのか?」を詳しく解説していきます。
企業向け|資金調達に利用できるファクタリング
企業が用いる一般的なファクタリングは、企業が保有している売掛債権をファクタリング業者に譲渡し、現金を受け取る形の資金調達法です。
日本の企業間では商品やサービスの代金は、納品や提供した後に支払うことが一般的となっているために、未回収の商品やサービス代金を請求できる権利の「売掛債権」が生じます。
取引先から代金を受け取るまでに時間を要するために、中小企業では資金繰りが厳しくなってしまうことがありますが、そのようなときにファクタリングを利用します。
ファクタリングを行えば、利用者は手数料を引いた売掛債権の金額をファクタリング業者から受け取り、運転資金等にあてることができます。
個人向け|給料ファクタリングは給料の前借り
給料ファクタリングとは、上記の企業向けの資金調達法を労働者の賃金債権にあてはめた形のものを言います。
企業等で働く労働者は、給料を受け取る権利である「賃金債権」を持っていますが、給料ファクタリングは「賃金債権」を買い取る形で、給料ファクタリング業者から給料日前に現金を受け取ることができます。
なお、ファクタリングとは違い企業からの回収ではなく、法律で給料は使用者が労働者に直接支払うと定められているため、給料ファクタリングでは利用した方から回収を行います。
(労働者が行う給料ファクタリングの流れ)
①給料日前に賃金債権を給与ファクタリング業者に売り渡す
②手数料を引いた金額を給与ファクタリング業者から受け取る
③企業等から給料を受け取った後、給与ファクタリング業者に債権分を支払う
給料ファクタリングの3つの問題点
上記で説明した個人が行う給料ファクタリングは、「給料前にお金が足りたくなった時」や「急な出費が重なった時」には便利に利用できるサービスですが、いくつかの問題点が発生しています。
次に、給料ファクタリングを利用した際に生じる3つの問題点をみてみましょう。
1.高金利での借金になる恐れ
給料ファクタリングを利用するにあたって、一番気をつけなければいけない問題は、事実上高金利の貸付となる点です。
給料ファクタリングは貸金業として認識されていないために、上限金利の規制を受けずに高い金利を取られる可能性があります。
◆給与ファクタリング業者に10万円の賃金債権を売却した場合
・2万円分の手数料を差し引いた8万円を受け取る
・給料日後に10万円を支払う
・その結果、月利:25% 年利:300%となる
このような場合には、8万円を借りて利息2万円を支払うことと同じとなり、月利で25%、年利で300%にも及んでしまいます。
2.違法な取り立てにも注意が必要
もしも、給料ファクタリングを利用したとしても、利用者は賃金債権を売却したことを企業等に伝えていないのが通常です。
給料ファクタリング業者は、そのことを知ったうえで取立を行うことになります。
利用者の支払いが滞った場合には、「賃金債権を勝手に売却したこと」を会社にばらすと脅してくる可能性があります。
さらに、早朝、深夜においても取り立てを行うこともありますが、このような行為は「貸金業法上違法」となります。
3.個人情報が悪用される可能性
多くの給料ファクタリング業者は、違法で行っている可能性があると言えます。
そのような場合には、利息や手数料の他にも個人情報を横流しして、利益を得ることも考えられます。
その結果、違法業者の間に個人情報が出回ってしまうことになり、悪質な業者から勧誘やダイレクトメールが送られるという問題が発生します。
給料ファクタリンが違法となる3つ理由
上記のような問題点が上げられる給料ファクタリングですが、いくつかの違法行為が存在しています。
なぜ、違法行為となるのでしょうか?
次に、給料ファクタリングが違法となる3つの理由を見ていきましょう。
理由①:法外な金利を請求される
給料ファクタリングを行っている業者は、給料ファクタリングは賃金債権の売買であって、貸金にはあたらないとしています。
しかし、上記の問題点にも上げられるように「年利300%」にも換算される高金利です。
貸金業においては利息制限法と出資法に基づいて、上限金利が20%と定められていますが、「賃金債権」の売買という名目の上で、法外な利息や手数料を取っているということになります。
最近では、このような法外な利息による被害を重く見て、金融庁や警視庁でも注意を呼びかけています。
理由②:認められていない給与債権の受け渡し
給料ファクタリングは、賃金債権を売り渡すことで成り立っていますが、実際に賃金債権を他人へ譲渡することは認められていません。
◆労働基準法
・賃金は、直接労働者に支払わなければならない
労働基準法にも定められている通り、給料ファクタリングの基本的な仕組みが、法的に認められない可能性があります。
理由③:契約書を交わさない
融資などの金融サービスを行う際には、契約書を交わすことが必須ですが、給料ファクタリング業者には契約書を交わさない場合も存在しています。
契約書がないために、大幅に手数料が上乗せとなった、多額の手数料が求められたという被害も発生しています。
金融庁や警視庁からの注意喚起
最近では、給料ファクタリングが社会的に問題となってきており、貸金業者の監督官庁となっている金融庁からは給与ファクタリングは金銭の貸付にあたると認定されました。
また、警視庁からも違法なヤミ金融業者の可能性が高いので、注意するように呼びかけられています。
警視庁|違法なヤミ金融業者を絶対に利用しないでください
警視庁のホームページでは、違法なヤミ金融業者の仕組みと、給料ファクタリングの違法性について説明しています。
『 「給料を即日現金化」「借金じゃないから利息ゼロ」などの誘い文句に要注意!
貸金業登録を受けていない給与ファクタリング業者により、年利換算で数百から1,000パーセント超の高額な手数料を支払わされるケースもあります。また、複数の給与ファクタリング業者と契約を結ぶことで、多重債務に陥るおそれもあります。』出典元:無登録の給与ファクタリング業者に注意! 警視庁
金融庁|給与の買取をうたった違法なヤミ金融にご注意ください!
金融庁では、給与の買取をうたった違法なヤミ金に注意を呼び掛けています。
給与ファクタリングを称して賃金債権を買い取って金銭を交付することは貸金業にあたるということ、被害事例、生活が波状する恐れ、相談窓口などを知らせるパンフレットまでも作成されています。
給料ファクタリングでトラブルを回避する方法
給料日前にお金が心細くなってしまったときに、給料ファクタリングの利用を検討する方も多いと思いますが、実際に給料ファクタリングを回避するためには、どのようなことを心掛けておけばよいのでしょうか?
次に、給料ファクタリングを回避させる方法と、トラブルになった場合の対処法を紹介していきます。
口コミに騙されないようにする
給料ファクタリング業者は、下記のようなことを巧妙なうたい文句で、業務のサービスを宣伝してきます。
給料前の生活費が厳しい時には、ついつい口コミに騙されがちになってしまうので、しっかりと確認しておいてください。
◆「最短即日で、給料の前払いが叶う」
◆「借金にはならないので、金利は発生しない」
◆「ブラックの方でも利用できる」
このような、一見よさそうなサービスをかかげていますが、個人向けの給料ファクタリングは違法となっていますので注意が必要です。
トラブルとなったら弁護士に相談することも視野にいれておく
給料ファクタリングを利用してしまい、高額な利息や手数料、さらに厳しい取り立てなどのトラブルに見舞われている場合には、弁護士に相談するのも一つの方法です。
弁護士に依頼すれば、下記のような対応を取ってくれます。
①取り立てを辞めさせられる
②過払い金の請求も可能
③契約を無効にできる可能性
④自己破産の場合にはサポートをしてくれる
弁護士に依頼することで、上記のような事が行うことができることに加え、アドバイスや手続きの代行も行ってくれます。
公的な借入制度の活用を!
生活費に困った方がすぐに資金調達がおこなえる給料ファクタリングは魅力的に映るかも知れません。
しかし、給料ファクタリングを利用すると給与の手取り額が約20%ほども減額となってしまうことに加えて、返済できないときには厳しい取り立てが待ち構えています。
そのようなことを回避するためには、まずは各都道府県の社会福祉協議会に相談してみるとよいでしょう。
一定の条件はありますが、生活福祉資金を低金利で借りられることが可能です。
まとめ
給料の前借りともいえる給料ファクタリングについて、企業向けと個人向けのファクタリングの違い、3つの問題点、給料ファクタリンが違法な3つの理由、金融庁や警視庁からの注意喚起、給料ファクタリングでトラブルを回避する方法などを、まとめてご紹介してきました。
コロナ禍の中で、給与やボーナスのカットにより生活費やローンが厳しくなってくると、安易に給料ファクタリングを利用する方は、多くなってくるのではないでしょうか?
しかし、給料ファクタリングには、記事で解説したように問題点や違法な理由、さらには金融庁や警視庁から注意が呼びかけられています。
法外な利息や手数料によってさらに生活が苦しくならないように、給料ファクタリングを検討している方は、今一度ご確認ください。