
長い人生の中で、教育資金、住宅資金、老後資金は、3大出費と言われる高額の資金調達が必要となる出費、その中でも住宅資金は一度に高額なお金を支払うために、ほとんどの方が住宅ローンを組むことになります。
少し前までは、夫が単独で住宅を購入するケースがあたり前でしたが、最近では共働き世帯が多くなり、夫婦で住宅ローンを組んだり共同名義で登記することが増えてきました。
共同でローンを組んだり、名義を登録することによって、メリットとなる部分もありますが、守るべきルールやデメリットとなる部分も知っておかないと後になって「どうしよう、困った」と言う事になりかねません。
そこでこちらの記事では、共有名義のルールやメリット、デメリットについて、わかりやすく解説していきます。
単独名義と共有名義の2通りの登記方法
住宅等の不動産を購入した場合には、不動産の名義を登記する必要があり、登記する方法には、単独名義と共有名義の2通りの方法があります。
単独名義は、言葉の通りに1人の名義で登録を行うことで、仮に夫名義の登録をしたのなら、夫が頭金や住宅ローンの支払い等、全ての資金調達を夫が賄うことになります。
共有名義は、不動産を購入するにあたって2人以上が共同で出資し、その出資の割合に応じた持ち分で登記される方法です。
共有名義には、夫婦がそれぞれ出資して住宅を購入する場合、親子がそれぞれ出資して二世帯住宅を建てた場合などがあり、共有名義として登録します。
共有名義のルールを確認
共有名義で登録を行った場合、各所有者ごとに持分割合を決めて登録する必要があり、その持分を得た所有者は、所有権が認められます。
夫婦で共有名義となる場合でも同じで、負担した金額に応じた割合で持分が決まります。
住宅ローンと持分の決め方
共有名義にして住宅ローンを組むには、「夫婦でそれぞれの住宅ローンを組む」と「
どちらかに収入合算者、連帯債務者として収入を合算」の2つの方法が考えられます。
「夫婦でそれぞれの住宅ローンを組む」夫婦ペアローンの場合には、それぞれが住宅ローンを組むことになりますので、組んだローンの金額がそのまま持分の割合として決まります。
ただし、もしも妻が出産や育児のために退職して収入が無くなり、夫が妻の返済を年間110万円以上肩代わりすると、妻への贈与と贈与税が発生しますので、贈与税の支払うか共有名義の持分変更をしなければなりません。
「どちらかに収入合算者、連帯債務者として収入を合算」の場合には、それぞれの年収と出資割合に応じた持分が配分されることになります。
夫婦だから財産は2人のものと考える方は多いと思いますが、出資額に関係なく持分を半々にしてしまうと、贈与税の基礎控除額となる110万円を超える部分は贈与とみなされる事になってしまいますのでお気をつけください。
共同名義でも住宅ローン控除は受けられるのか?
住宅ローンを組み住宅などを購入し、一定の要件を満たす時には、所得税等から一定額の税額控除される住宅ローン控除が適用されますが、共同名義の場合には住宅ローン控除は受けられるのでしょうか?
共同名義の場合には2人で住宅ローン控除を受けることが可能で、年末の借入れ残高の1%、最大40万円(認定住宅は50万円)を10年間に渡って所得税や住民税から控除することがでます。
もしも夫婦で住宅ローン控除が受けられたのなら、2人分の所得税と住民税が戻ってくる可能性がでてきます。
2人分の住宅ローン控除を受ける方法
夫婦2人が住宅ローン控除を受けるためには、それぞれが住宅ローンを利用するペアーローン、または2人で住宅を連帯債務する方法の住宅ローンを利用することが必要となります。
2人で連帯債務する住宅ローンを取り扱っている金融機関は限られていますので、事前に連帯債務の住宅ローンが用意されているか確認を取っておくようにしましょう。
また、夫名義で組んだ住宅ローンの連帯保証人として契約する連帯保証という方法もありますが、それぞれが住宅ローン控除を受けることはできないので、お気をつけください。
親族から贈与された資金
住宅購入時に両親から贈与を受けた場合には、直系の子または孫が受け取って資金を住宅購入に充てる形で行います。
一定の金額まで住宅取得の資金は贈与税で課税されることはありません。
ただし、配偶者の場合には課税されてしまいますので、直系の子や孫が受け取るようにしてください。
仮に妻の両親から住宅資金を贈与されたときには、妻が資金を住宅購入に充てて贈与金額に応じた持分割合を登記することになります。
共有名義で得られる5つのメリット
単独名義ではなく共同で住宅を購入すると、希望通りの物件が購入できたり、それぞれに住宅ローン控除が受けられるようになったり、明確な財産区分ができたりと、様々なメリットを得られることができます。
次に共同名義で得られる5つのメリットについて、詳しく見ていきましょう。
メリット1:借入額が増え希望の物件を手に入れられる
2人分借りられるペアローン、収入合算される審査の連帯債務が利用することになるため、単独で住宅ローンを組むよりも多くの資金を借入れることができます。
大きな金額を借りることができれば、希望通りの物件を選ぶことができたり、さらに条件の良い物件を選ぶなどの選択肢を広げられることができます。
1人では無理と諦めていた物件に手が届く可能性が出てきます。
メリット2:それぞれに住宅ローン控除が適用される
夫婦2人の収入で住宅ローンを組むことで、2人とも住宅ローン控除を受けられるようになります。
4,000万円以上の住宅ローンを利用しているのであれば、単独よりも住宅ローン控除枠を有効的に活用することができます。
・10年間、住宅ローンの年末残高1%が控除
・一般住宅は年間最大40万円、優良住宅なら年間最大50万円
メリット3:相続税を減らすことができる
単独名義で夫が死亡した場合、住宅の評価額はそのまま課税対象となってしまいますが、共有名義だった場合には、夫の持分のみが課税の対象となります。
そのため、課税対象の評価額が減ることとなり、結果として相続税を減らすことができます。
メリット4:売却時の特別控除枠が増える
物件を売却した場合、利益が出た場合には所定の税金がかかります。
一定の要件を満たした居住用の住宅は利益額3,000万円までが特別控除となり非課税対象です。
2人で共有名義ししている場合には、所有者が2人となるために特別控除枠が2人分となり、3,000万円×2人=6,000万円。
特別控除は6,000万円となり、非課税となる対象額が広がっていきます。
メリット5:登記による財産の明確化
住宅を購入するにあたって、出資を行ったのなら割合に応じて登記する必要が生じてきます。
登記することによって自身の所有権が明確になり、贈与税の指摘を受ける心配がなくなる、離婚などの時の財産分与がスムーズに行われるなどの利点が得られます。
気を付けたい共有名義のデメリット
夫婦での共有名義の登記はメリットだけではなく、デメリットの部分もありますので、契約をする前によく確認をしておいてください。
次に、気を付けておきたい共有名義のデメリットを詳しくご紹介していきます。
①売却したくてもそれぞれの承諾が必要になる
単独名義であれば、物件を売却するには売主は1人となるために手間をかけることなく売ることができますが、共有名義の場合には全員の署名、捺印が必要なので手間と時間がかかります。
また、1人でも売却を反対しいる場合には、物件を売ることができません。
仮に夫婦が離婚した場合、夫が売却を希望しているのに共有名義人の妻が反対していれば売ることはできないのです。
離婚するときの住宅処理は複雑なものとなり、不動産登記上の住宅の名義、住宅ローンの返済、住宅に住み続けるのは誰か?などの問題が出てきます。
②どちらかが退職してもローンは続く
共有名義で住宅ローンを利用したら、妻が出産や介護で退職を余儀なくされた場合でも、住宅ローンは支払わなければなりません。
また、働いていれば、住宅ローン控除が受けられますが、退職してしまうと所得税が生じないために、自動的に住宅ローン控除がなくなりメリットだった部分が失われます。
③登記費用など購入費用が高い
1人で完結する単独名義と比べて、2人が住宅ローンを組むことになるペアローンの場合には、住宅購入時の諸費用が割高になります。
2つの住宅ローンとなるために、事務手数料、契約印紙代、登記免許税などの費用が増すことも覚えておきましょう。
④相続するときに問題が起こる可能性
購入した物件の共有名義の1人が死亡した場合、夫婦の間に子がいるのなら相続人は子となり問題はおきません。
ただし、子がいない場合には、妻である配偶者に加えて、夫の兄妹や甥っ子も法定相続人となります。
相続人が数多く増えること、関係の薄い人達が相続人や共有者となること等のデメリットな部分が発生します。
⑤破綻リスクが倍増してしまう
共有名義となることで年収が増えて、審査が通りやすくなりますが、その一方でどちらかの収入が無くなった場合には、住宅ローンの破綻リスクが高くなってしまいます。
つまり、どちらかの収入がなくなることによって、ローン返済が行えなくなり、場合によっては債務不履行となるかもしれません。
単独名義のローンの破綻リスク2倍ですが、共有名義の破綻リスクは3倍になっています。
まとめ
住宅ローンを利用する際の単独名義と共有名義の説明を始めとして、共有名義のルール、住宅ローン控除が受けられるか、共有名義の5つのメリットとデメリットについて、詳しく解説してきました。
共有名義で住宅ローンを組むことで、物件の選択肢が広がり、2人分の住宅ローン控除が受けられるようになります。
ただし、共有名義に売却や相続の問題、破綻リスクなど、様々なデメリットな部分も持ち合わせていますので、よく検討してから申し込みを行ってください。
共稼ぎが年々増え続けて行く中で、住宅ローンの共同名義での利用はこれからの資金調達として欠かせない項目となるでしょう。