
企業にとって優秀な人材を確保することは、事業を運営していくうえで大切なことです。
しかし、雇用時にかかる費用は、企業にとって大きな負担となってしまうのですが、そのような時に補助してくれる雇用関係助成金の存在をご存知でしょうか?
雇用関係助成金は、厚生労働省が実施している返済の必要がない助成金です。
雇用関係助成金を活用すれば、雇用時の費用を大幅に軽減することができるでしょう。
こちらの記事では、雇用関係助成金の紹介を始めとして、数多くある助成金の中から、使い勝手の良い助成金をピックアップしています。
雇用を検討している方にとって役立つ情報ですので、ぜひご覧になってみてください。
INDEX
人材の雇用する時もらえる雇用関係助成金
雇用関係助成金は「人材雇用に関する条件を満たすことでもらえる支援金」です。
労働者の職業を安定させる目的により、厚生労働省の所管で雇用関係助成金は設けられました。
この助成金は、失業の予防、雇用機会の増大、障害者の雇用、労働者の能力開発などを担い、新規事業の際の人材の雇用、障害者の雇用、人材育成、介護、育児休暇制度など助成金の対象となっています。
雇用関係助成金は、条件を満たせば支給され、返済する必要はありません。
条件には、従業員に係るもの、雇用に関するもの、教育訓練を行う、福利厚生の充実などに向けてなどが掲げられています。
そのような、雇用関係助成金は50種類以上のものが存在していますが、こちらの記事では、特に「従業員を新たに雇い入れた場合」の助成金について解説していきたいと思います。
雇用関係助成金のメリット
雇用関係助成金を利用したときの最大のメリットは、「返済の必要のない助成金」が支給されることです。
また、起業したての会社ならば、人材確保と返済不法の資金調達が確保できるというメリットを得られることになるでしょう。
共通の条件がある雇用関係助成金
雇用関係助成金には、その雇用の仕方や状況によって数多くの種類が用意されています。
種類によって受給条件はことなっていますが、その前に雇用関係助成金の共通となる条件を満たす必要があります。
次に、雇用関係補助金の共通となる条件を見ていきます。
受給可能な事業主
雇用関係助成金を利用しようとしている事業主は、下記の全てを満たすことが前提条件となっています。
まずは、自身が当てはまっているか?チェックしておきましょう。
【事業主の条件】
1. 雇用保険適用事業所の事業主であること
2. 支給の審査に協力する事(支給の有無のための書類の整備・保管、管轄労働局からの書類提出の要望や実地調査の要望があった場合の受け入れ)
3. 申請期間内で申請を行うこと
中小企業の範囲
雇用関係助成金では、中小企業に向けて数多くの助成金がありますが、ここでいう中小企業とは、以下の表にあてはまることが条件となります。
通常の中小企業と異なる場合があるので、よくチェックしておきましょう。
「資本金の額または出資の総額」「常時使用する従業員の数」どちらかを満たすことで、中小企業と分類されます。
業種分類 | 資本金の額又は出資の総額 | 常時使用する従業員の数 |
製造業その他 | 3億円以下 | 300人以下の会社および個人 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下の会社及び個人 |
小売業 | 5千万円以下 | 50人以下の会社及び個人 |
サービス業 | 5千万円以下 | 100人以下の会社及び個人 |
雇用するときに使いやすい5つの助成金
雇用時に利用できる雇用関係助成金は、種類と数が多くありますので、事業に合った助成金を見つけるのは困難かも知れません。
そこで、こちらからは使いやすい助成金として、下記の助成金があります。
①特定就職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
②トライアル雇用奨励金
③生涯現役起業支援助成金
④障害者トライアル雇用奨励金
⑤三年以内既卒者等採用定着奨励金
それでは、上記5つの雇用関係助成金を紹介していきたいと思います。
助成金の内容、支給条件、支給金額、申請方法を解説していきますので、探している雇用条件と合っているものをチェックしてみてください。
①特定就職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
高齢者(60歳以上65歳未満)や障害者、母子家庭の母などの幅広い条件に対応している助成金です。
特定求職者雇用開発助成金の特定条件を満たした場合に利用することができます。
受給要件
受給条件は、次に記載している求職者と事業主の条件の双方を満たす必要があります。
【求職者の条件】
(1)ハローワーク、地方運輸局(船員として雇い入れる場合)、適正な運用を期すことのできる有料・無料職業紹介事業者等から紹介された方
【事業主の条件】
(1)雇用保険の適用事業主であること
(2)対象労働者の年齢が65歳以上に達するまで継続して雇用し、かつ、当該雇用期間が継続して2年以上であること
受給金額
受給金額は、下記の表にあるように、「対象労働者」によってかわり、また「短期労働者」と「短時間労働者以外の者」、さらには対象期間によっても受給できる金額は変わってきます。
一番多く受給できる場合は、重度障害者等を短期労働者以外の者として、2年間雇った時に、240万円の受給となります。
◆短期労働者以外のもの「週所定労働時間30時間以上の労働者」
◆短期労働者「週所定労働時間20時間以上30時間未満の労働者(短時間労働者)」
申請方法
特定就職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の申請方法は、下記のようになります。
②トライアル雇用奨励金
期間を設けたトライアルの雇用を行うことによって、就職困難者が早期就職となるように雇用機会を設けることを目的としている助成金です。
職業経験、技能、知識などの理由から安定した就職が難しい求職者を一定期間試用雇用した時に助成金が支払われます。
受給要件
トライアル雇用奨励金では、下記の求職者と事業主の条件を満たす必要があります。
求職者の条件は細かく設定されていますので、「条件が満たしていなかった」とならないようにしっかりと確認しておくことが大切です。
【求職者の条件】
① ハローワーク、地方運輸局(船員として雇い入れる場合)、適正な運用を期すことのできる有料・無料職業紹介事業者等から紹介された方
② 既にトライアル雇用期間中でない方
③ 紹介日時点で、就労経験のない職業に就くことを希望する方
④ 紹介日時点で、学校卒業後3年以内で、卒業後、安定した職業に就いていない方
⑤ 紹介日の前日から過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返している方
⑥ 紹介日の前日時点で、離職している期間が1年を超えている方
⑦ パート・アルバイトを含めた就労を妊娠、出産・育児を理由に離職し、紹介日の前日時点で、安定した職業に就いて いない期間が1年を超えている方
⑧ 生活保護受給者、母子家庭の母等、父子家庭の父、日雇労働者、季節労働者、 中国残留邦人等永住帰国者、ホームレス、住居喪失不安定就労者等の就職援助に特別な配慮が必要な方
【事業主の条件】
① 原則3ヶ月のトライアル雇用をすること
② 1週間当たりの所定労働時間が30時間(日雇労働者、ホームレス、住居喪失不安定就労者の方は20時間)を下回らないこと
受給金額
◆対象者1人当たり:月額最大4万円(最長3ヶ月)
◆対象者が母(父)子家庭の母(父)の場合:月額5万円(最長3ヶ月)
③生涯現役起業支援助成金
40歳以上の中高年齢者が起業した場合に、中高年の従業員を雇い入れると助成金が支給されます。
従業員を雇い入れるための募集や採用、教育訓練などの費用を助成する目的で設けられています。
受給要件
① 起業者自らが起業した事業に専ら従事する事
② 起業者の起業基準日における年齢が40歳以上であること
③ 計画書で定めた期間以内に60歳以上の者を2名以上、もしくは40歳以上の者3名以上を雇い入れること
④ 支給申請時点で以下の雇用状をすべて満たすこと
イ) 計画期間内に雇い入れた対象労働者の過半数が離職していないこと
ロ) 起業基準日から起算して支給申請日までの間における離職者の数が、計画期間内に雇い入れた対象労働 者の数を超えていない事業主であること。
ハ) 計画期間の初日から起算して6か月前の日から支給申請日までの間(基準期間)に、解雇など事業主都 合により被保険者を離職させていない事業主であること。
ニ) 支給申請書提出日における被保険者数の6%を超える被保険者を、倒産・解雇などによる離職理由により、離職させていない事業主であること。
受給金額
受給金額は、12ヶ月以内に雇用創出にかかった費用✕助成率によって算出します。
また、起業者の年齢によっても助成率と助成金の上限が変わってきますので気をつけてください。
年齢が高いほど、受給金額的には有利となっています。
申請方法
申請方法は、次のとおりになります。
起業開始してから11ヶ月以内に提出し、計画期間は計画書提出の1ヶ月~2ヶ月後の設定となっていますので、申請やタイミングを事前によく把握しておきましょう。
④障害者トライアル雇用奨励金
中小企業で、障害者を雇用した経験のない場合に適用される助成金です。障害者の雇用を高めて、法定雇用率を達成する時に利用することができます。
受給要件
助成金となる条件は次の求職者と事業主の双方の条件を満たさなければなりません。
【求職者の条件】
① 身体障害者 ・知的障害者 ・精神障害者のいずれかの方
② 雇い入れ日時点で満65歳未満の方
③ ハローワーク、地方運輸局(船員として雇い入れる場合)、適正な運用を期すことのできる有料・無料職業紹介事業者等から紹介された方
【事業主の条件】
① 雇用保険の適用事業主であること
② 対象労働者の年齢が65歳以上に達するまで継続して雇用し、かつ、当該雇用期間が継続して2年以上であること
③ 支給申請時点で常用労働者数が50人から300人であること
④ 1人目の支給対象者雇い入れ日の前日から過去3年間で障害者の雇用実績がない方
受給金額
上記の条件をすべて満たすと120万円が助成されます。
申請方法
申請は、雇い入れてから2週間以内に実施計画書をハローワークに提出し、3ヶ月のトライアル雇用を行っていきます。
試用雇用から常用雇用へのどちらでも選択することができ、どちらの場合でも助成金は受け取る事ができます。
ただし、トライアル雇用終了となってから2ヶ月以内には申請を行う必要があります。
⑤三年以内既卒者等採用定着奨励金
既卒者でも応募することができる新卒者の採用募集などを行い、採用した後に一定期間を定着させた事業主に対して助成金が支払われます。
受給要件
コースには、「既卒者当コース」と「高校中退者コース」があります。
受給条件は、求職者の条件とコース別の求職者条件がありますので、選択するコースの条件を満たすようにしてください。
【求職者の条件】
① 中学校、専修学校、各種学校、外国の教育施設の卒業者、または中退者
② 公共職業能力開発施設や職業能力開発総合大学校の卒業訓練の修了者、または中退者
③ これまで通常の労働者として同一の事業主に引き続き12か月以上雇用されたことがない方
◆コース別の求職者条件
【既卒者当コース】
① 既卒者・中退者が応募可能な新卒求人の申込みまたは募集を行い、当該求人・ 募集に応募した既卒者・中退者を通常の労働者として雇用したこと
② 当該求人の申込みまたは募集前3年度間において、既卒者等が応募可能な新卒求人の申 込みまたは募集を行っていないこと
【高校中退者コース】
① 高校中退者が応募可能な高卒求人の申込みまたは募集を行い、当該求人・募集に応募した高校中退者を通常の労働者として雇用したこと
② 当該求人の申込みまたは募集前3年度間において、高校中退者が応募可能な高卒求人の 申込みまたは募集を行っていないこと
受給金額
受給金額は、企業の区分と対象者によって異なってきます。既卒者よりも高校中退者の方が10万円ほど多く支給され、中小企業者はそれ以外の企業よりも手厚く助成されています。
まとめ
雇用や採用の時に利用できる雇用関係助成金についての紹介を始めとして、受給するための共通の条件、使い勝手のよい5つの雇用関係助成金についてまとめてみました。
今回は、基本的に雇用が前提となっている助成金ですが、種類や受給条件が違う助成金を幅広く解説しています。
人材雇用を考えた時に、企業がこれらの条件と合うのであれば、ぜひ助成金を活用してみてください。
返済する必要のない助成金は、起業する時の資金調達となり、雇用費用の手助けとなってくれるはずです。