厚 労 省 助成 金

コストの削減につながる厚生労働省の助成金5選を丁寧に解説

助成金

優秀な人材を雇用することは企業にとって大切なことですが、雇用する際のコストや労働環境を整える長期的なコストに悩んでいる企業は多いのではないでしょうか?
最近は、売り手市場となり、さらに働き方改革も加わって、企業側にとっては大きな負担となってきています。
そのような時には、雇用や労働環境に対して長けている厚生労働省の助成金制度を活用してみてはいかがでしょうか?助成金は複雑だと敬遠している方もいると思いますが、こちらでは、助成金の基本や特徴、さらにはおすすめの助成金をわかりやすく紹介していきます。
厚生労働省の助成金を上手く利用して、雇用や労働環境のコスト削減につなげていってください。

助成金の特徴を知っていますか?

厚 労 省 助成 金

助成金は、ある一定の条件を満たすことで国や自治体から受給できるお金のことを言い、主に助成金は厚生労働省が実施しています。
返済がいらないという共通点を持つ補助金は、助成金と混同されがちですが、補助金の方は経済産業省の管轄となっています。
厚生労働省が実施している助成金の財源は、主に雇用保険となっており、助成金される内容は労働者の雇用、教育、待遇の改善などに関係する制度が多いのが特徴です。
ただし、このような枠組みは国レベルの話となりますので、自治体や他の機関では助成金と補助金の区別を明確にしていないところもあることを覚えておいてください。

助成金と補助金の違い

  助成金 補助金
関連省庁 厚生労働省系・地方自治体 経済産業省系・地方自治体
対象(財源) 労働者の雇用・教育・待遇改善など 技術開発・産業復興など
難易度   形式要件に該当していれば受給 上限は確定、評価基準は高い
公募期間 通年が多い 年1回(1~4週間)が多い
専門家 社会保険労務士 中小企業診断士、コンサルティング会社

助成金の特徴

助成金の特徴は、要件を満たすことさえできれば受給することができ、予算が無くならない限りは申請を受け付けています。
早期に終わってしまうケースが少ないために、補助金よりも受給しやすいのが特徴と言えるでしょう。
その反対に、補助金は評価が良かった企業から採択していくので、申請しても必ずしも受給できるわけではなく、さらに申請期間も短くなっています。

助成金のメリットとデメリットをご紹介

厚 労 省 助成 金

助成金は「返済する必要がない」という点が特徴ですが、デメリットな部分もあるのでしょうか?こちらでは、助成金のメリットとデメリットについて見ていきたいと思います。

無償で受け取れる助成金のメリット

助成金のメリットは、民間の金融機関が行う融資とは違い、返済する必要がないところです。
さらに、助成金として得たお金は雑収入として計上するために、基本的には「助成金の使いみちは自由」というところもメリットになります。
また、助成金の種類は100~200種類程度とあり、採用や雇用に関わらず、働き方、労働環境など幅広く設けていますので、事業にあった助成金を選び活用することができます。

助成金のデメリットは時間と手間

助成金は、受給できる金額は制度によって異なりますが、思ったほど多くの金額ではない場合があります。
また、助成金の要件を満たすためには、環境や福利厚生を整えたり、機器を導入したり、雇用や教従業員の教育をしなければならなくなります。
そのような助成金の金額と費用の面をトータルで見ると、費用が多くかかってしまう場合があるのがデメリットな部分だと言えるでしょう。
また、申請書の作成や手続きなどの手間や労力が必要となり、場合によっては行政調査の対象となることもあります。
さらに、助成金はすぐに受け取る事ができず、早くても数ヶ月以上かかるために、運転資金を目当てにするには難しい事となるものデメリットのひとつと言えます。

助成金を受給するための基準とは?

厚 労 省 助成 金

厚生労働省が実施している助成金を受給するためには、ある一定の要件を満たしておく必要があります。
申請する前には、下記の要件に当てはまっているか事前にチェックしておきましょう。
ただし、助成金の種類によって、細かい要件は異っています。

1.雇用保険適用事業所の事業主であること
2.労働基準法など労働関係法令の違反がないこと
3.支給のための審査協力に応じること
4.支給のための審査に必要な書類(就業規則や出勤簿など)を作成・整備・保管していること
5.申請期間内に申請を行うこと
(厚生労働省『各雇用関係助成金に共通の要件等』より)
※各助成金を受給するには、上記の条件に加えて、それぞれの助成金に応じた個別の要件を満たす必要があります。

助成金からみた中小企業となる基準

助成金の中で中小企業として見なされるためには、「資本金または出資額」「常用雇用する労働者数」のいずれかを満たす必要があります。
産業分野によって「資本金または出資額」「常用雇用する労働者数」が違っているので、しっかりと確認しておくようにしてください。

産業分野 資本金または出資額 従事雇用する労働者数
小売業・飲食店 5000万円以下 50名以下
サービス業 5000万円以下 100名以下
卸売業 1億円以下 100名以下
その他業種 3億円以下 300名以下

※助成金によっては、条件が異なる場合があります

助成金の申請方法をご紹介

厚 労 省 助成 金

助成金の申請方法は、種類によって異なりますので、くわしく知るためには厚生労働省のホームページに記載されている『支給申請の手引』で確認をし、『雇用関係助成金 検索表』で該当するかをチェックしておくとよいでしょう。
【一般的な申請方法】
①計画を立てる
②申請をする
③計画に沿って実施していく
④助成金の申請を行う

申請方法の具体例:キャリアアップ助成金(正社員コース)

【キャリアアップ助成金の申請から受給まで】
①事業主などの意見を聞きながらキャリアアップ計画の作成をする
②労働局・ハローワークに提出し認定を受ける
③計画に基づいて、就業規則等を改定などの取り組みを実施する
④取り組み後6カ月賃金を支払う
⑤支給申請を行う
⑥労働局・ハローワークが支給審査を行い支給・不支給を決定する
※支給申請は、支給申請期間に行うことが必要となります。

助成金で言う生産性向上とは?

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助成金の定めていることに、「規定額に加えて、生産性が向上して生産性要件がみたされている」と記載されていますが、そのような要件を満たすためには、次の(1)または(2)項目に当てはまる必要があります。
具体的な数値が記されていますので、申請する前に確認するようにしてください。

(1)「生産性」が、申請時の3年度前に比べて6%以上伸びている
(2)金融機関から一定の「事業性評価」を得ている場合に、
「生産性」が申請時の3年度前に比べて1%以上(6%未満)伸びている
(厚生労働省『生産性要件パンフレット』より)

【生産性の計算式】
生産性=(営業利益+人件費(※)+減価償却費+動産・不動産賃借料+租税公課)÷雇用保険被保険者数
※「人件費」とは「従業員給与」のみを算定することとし、役員報酬などは含めないとされています。
『生産性要件算定シート』は厚生労働省のホームページよりダウンロード可能です。
生産性要件を計算したい方は、下記をご利用ください。
参照:生産性要件算定シート

導入しやすい助成金5選

厚 労 省 助成 金

厚生労働省が実施している助成金は、数が多くその種類も多岐に渡るために探し出すのが容易ではありません。
こちらでは、雇用計画や労働環境に対して、導入しやすい助成金をご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

①キャリアアップ助成金(正社員化コース)

非正規労働者となる有期契約労働者を、正規雇用労働者に転換または、直接雇用したときに利用できる制度です。
正社員の取り組みを行うキャリアアップ助成金(正社員化コース)です。
【支給対象】キャリアアップ助成金の支給対象となる事業主
【中小企業に対する支給額】
中小企業が、有期契約労働者等を正規雇用労働者等に転換または直接雇用した場合にキャリアップ助成金が支払われます。
1事業所の1年度あたりの申請上限人数は(1)~(3)合わせて20人です。
【正社員化された労働者1人あたりの支給額】※< >内は「生産性要件」を満たしている場合

支給対象者 支給額(大企業は下記額の75%支給)
(1)有期雇用労働者 → 正規雇用労働者 57万円 <72万円>
(2)有期雇用労働者 → 無期雇用労働者 28万5,000円 <36万円>
(3)無期雇用労働者 → 正規雇用労働者 28万5,000円 <36万円>

②人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)

メンター制度、評価、処遇制度、研修制度、健康づくり制度を導入し、働きやすい環境を整えることで、離職率の低下を達成したときに支給される助成金です。
【支給対象となる事業主】
メンター制度の導入を内容とする雇用管理制度整備計画を作成し、労働局の認定を受けた後、導入・実施している事業主であることが必要です。
【事業所の規模と離職率(目標値)】

雇用保険 被保険者 低下させる離職率(目標値)
1~9人の事業所 15%
10~29人の事業所 10%
30~99人の事業所 7%
100~299人の事業所 5%
300人以上の事業所 3%

【支給額】
目標を達成することにより、57万円<72万円>
※< >内は「生産性要件」を満たしている場合

③特定求職者雇用開発助成金

求職困難者となる母子家庭の母(父子家庭の父を含む)をハローワークなどの紹介によって雇用した場合に助成金の対象となります。
この場合、特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)、キャリアアップ助成金(正社員化コース)、トライアル雇用助成金などの多くの対象となるので、しっかりと確認しておきましょう。

④時間外労働等改善助成金(職場意識改善コース)

厚 労 省 助成 金
労働時間を改善し、年次有給休暇の取得の促進を図った中小企業に対して助成金が支払われます。
政府が「ワーク・ライフ・バランス」実現のために、過労働時間60時間以上の雇用者の割合5%、年次有給休暇取得率70%を目指して実施されている制度です。

【支給対象となる事業主】
・前年における、労働者の年次有給休暇の年間平均取得日数が13日以下であって
月間平均所定外労働時間数が10時間以上である
・労働基準法の特例として法定労働時間が週44時間とされており、
かつ、所定労働時間が週40時間を超え週44時間以下の事業場を有する中小企業事業主

⑤両立支援等助成金(女性活躍加速コース)

女性活躍躍進法を元に、女性が会社内で活躍できるように状況の把握をした上で、課題分析と行動計画を策定および公表し、その目標が達成すると事業主に助成金が支払われます。
助成金は、各コース1企業1回のみ、業種に関係なく300人以下の事業所が対象となっています。
【助成金申請の手順】

①女性活躍に関する「数値目標」と数値目標達成に向けた「取り組み目標」を策定し公表
②計画期間内に取り組み目標を達成できた事業所は「加速化Aコース」を申請
③②から3年以内に数値目標を達成し、達成状況を公表した事業所は「加速化Nコース」を申請
参照:厚生労働省『女性活躍加速化コース 支給申請の手引き』

助成金を利用する際の注意点

厚 労 省 助成 金

返済の必要のない助成金は、企業をサポートしてくれる力強い制度ですが、受給した企業は会計審査院の監査対象となります。
虚偽の申請による助成金の受け取りは厳禁となることは言うまでもありませんが、事実とことなる書類や存在のない書類を提出して申請をすれば不正行為と見なされます。
そのような場合は、助成金の全額返還、以後3年間は全ての雇用、労働分野の助成金を受け取ることはできません。
軽い気持ちで「他の事業主もやっているから」と思わず、事実に基づいた正しい申請を行うようにしてください。

まとめ

厚生労働省が実施している助成金の特徴、受給するために基準やメリットやデメリットを解説すると共に、導入しやすい5つの助成金をご紹介してみました。
助成金は「種類が多く迷ってしまう」「手間と労力がかかる」と二の足を踏んでいる方が多いと思いますが、返済義務のない資金調達の手段ですので、ぜひこれを機に助成金を検討してみることをおすすめします。
まずは、厚生労働省やハローワーク、労働基準監督署などで、最新の情報を入手して申請の準備をしてください。
手間と労力はかかりますが、何度か申請していくうちにコツを掴んでいき、手間と労力は少なくなっていと思います。
助成金を受給して、事業の継続と発展につなげていきましょう。

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