会社の事業を発展させようと考えたのなら、設備への投資はひとつのターニングポイントとなります。
また、社会の変動に応じた経営を行っていく上でも、機械装置などの導入は欠かせない投資となるでしょう。
しかし、実際に設備投資を行うにはコストと手間がかかり、資金調達や資金繰りに悩む方は多いのではないでしょうか?
そこで、中小企業や小規模事業者が設備投資の際に利用できる補助金を紹介していきます。
国や地方自治体が実施している補助金を、設備導入の足がかりとして活用してください。
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機械装置などの導入にかかる費用と効果
機械装置やシステムの導入は、多額の費用や手間がかかるために躊躇されがちです。
しかし、導入や運用にかかるコストと、その後に得られる効果を比較することで設備導入に踏み切れるかもしれません。
「なんとなく良さそう」ではなく「本当に効果が得られるのか?」という点をポイントに検討してみるとよいでしょう。
次に、「どのような費用がかかるのか?」「どのような効果が得られるか?」について、みていきます。
設備導入にかかる費用
導入する機械装置によってかかる費用は異なりますが、こちらでは情報システムの導入した場合にかかる費用をみていきます。
◆導入の際にかかる費用
・初期の導入費用
・月々の利用料金やライセンス料
・保守費用
・サポート費用
◆運営にかかる費用
・バージョンアップ費用
・既存のシステムからの移行する費用
・バックアップ費用
・デバイス等の端末費用
・マニュアルや教育にかかる費用
この他にかかる費用は、人件費です。
人件費は算出が難しいですが、設備の運用が本格的になるまでの時間と人数の確認をしておくと安心です。
設備導入で得られる効果
設備導入で得られる効果は、売上の向上と業務の効率化です。
設備を導入したことで、もしも受注率が1割上がると考えた場合、案件の平均単価と粗利を計算すれば一ヶ月あたりのシステム導入で得られる効果が予想できます。
業務の効率化は、外出先からのシステム操作、エクセル業務のクラウド化などにより、様々な業務に対する時間を短縮することができます。
従業員一人当たりの給与を時給換算することで、1ヶ月あたりの業務の効率が確認できるでしょう。
設備投資で活用できる補助金のメリット
設備投資には費用がかかりますが、上記のように売上向上や業務の効率化が継続的に実現できるようになると考えられます。
ネックとなる費用ですが、国や地方自治体が中小企業に向けて実施している補助金をご存知でしょうか?
補助金の種類は1年間で3,000~5,000もあり、創業、研究開発、生産性向上、人材雇用、県境対策、経営改善など、様々な目的のものが多数存在しています。
融資のように返済する必要がない、補助金は下記のようなメリットを得られることができます。
◆返済の必要がない
◆雑収入で扱える
◆事業拡大につなげやすい
◆会社の信頼度がアップ
次に、中小企業が活用できる人気の高い代表的な補助金を見ていきましょう。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(一般型)
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、中小企業・小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入など、相次いで直面する制度変更を支援している補助金です。
中小企業・小規模事業者等が取り組んでいる革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資などにかかる費用の一部を補助しています。
また、新型コロナウイルス関連の支援策として、通常枠とは別に「特別枠」を新たに設けられました。
補助要件
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(一般型)は、下記を満たす3~5年の事業計画の策定及び実行が要件になります。
◆付加価値額 +3%以上/年
◆給与支給総額+1.5%以上/年
◆事業場内最低賃金≧地域別最低賃金+30円
なお、特別枠は、補助事業実施年度の付加価値額及び賃金の引上げを求めず、目標値の達成年限を1年猶予します
補助額
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(一般型)の上限額と補助率は下記の通りとなります。
◆補助上限額
・1,000万円
・+50万円 (特別枠の場合には、事業再開枠の上乗せが可能)
◆補助率
(通常枠)
・中小企業 1/2、
・小規模企業者、小規模事業者 2/3
(特別枠)
・A類型 2/3
・B、C類型 3/4
・事業再開枠 定額(10/10、上限50万円)
人材確保支援助成金(設備改善等支援コース)
人材確保支援助成金(設備改善等支援コース)は、生産性向上に役立つ設備等を導入することによって、雇用管理改善(賃金アップ等)と生産性向上が実現した企業に対して助成を行っています。
人材確保支援助成金には、「雇用管理改善計画計画1年タイプ」と「雇用管理改善計画3年タイプ」の2つのタイプが用意されています。
雇用管理改善計画期間1年タイプの受給条件
雇用管理改善計画期間1年タイプで受給するためには、下記の「計画達成助成」と「上乗せい助成」の措置が必要となります。
(計画達成助成)
◆雇用管理改善計画(生産性向上に資する設備等を導入すること、雇用管理改善(賃金アップ等)に取り組むこと等)を作成し、設備等を導入する雇用保険適用事業所を管轄する労働局の認定を受けること。
・生産性向上に資する設備等を導入、賃金アップの実施(計画前と比べて2%以上)など
(上乗せ助成)
◆計画達成助成の支給を受けて
・引き続き生産性向上に資する設備等を活用していること。
・賃金アップ(計画前と比べて6%以上)
・生産性の向上(設備等の導入日の属する会計年度の前年度とその3年度後の生産性を比較して、生産性の伸びが6%以上であること。)
雇用管理改善計画3年タイプの受給条件
雇用管理改善計画3年タイプを受給するためには、下記の「計画達成助成(1回目)」「計画達成助成(2回目)」「目標達成時助成」の措置が必要となります・
(計画達成助成:1回目)
◆雇用管理改善計画(生産性向上に資する設備等を導入すること、雇用管理改善(賃金アップ等)に取り組むこと等)を作成し、設備等を導入する雇用保険適用事業所を管轄する労働局の認定をうけること。
・雇用管理改善計画に基づき、生産性向上に資する設備等を導入、賃金アップ(計画前と比べて2%以上)、生産性の向上 など
(計画達成助成:2回目)
◆「計画達成助成:1回目」の支給を受けて
・引き続き生産性向上に資する設備等を活用していること。
・賃金アップ(計画前と比べて4%以上)
・生産性の向上(設備等の導入日の属する会計年度の前年度とその2年度後の生産性を比較して、生産性の伸びが2%以上であること。)
(目標達成時助成 )
◆「計画達成助成:2回目」の支給を受けて
・引き続き生産性向上に資する設備等を活用していること。
・賃金アップ(計画前と比べて6%以上)
・生産性の向上(設備等の導入日の属する会計年度の前年度とその3年度後の生産性を比較して、生産性の伸びが6%以上であること。)
労働者の適切な雇用管理に努める事業主であること、同一事業主の全ての雇用保険適用事業所において事業主都合による解雇等していないこと、各計画期間中の離職率が30%以下であること等の要件があります。
補助額
人材確保支援助成金(設備改善等支援コース)の補助額は、下記の表の通りとなります。
計画期間 | 設備導入費用 | 計画達成助成(1回目) | 計画達成助成(2回目) | 目標達成時助成 | 総額 |
計画期間 1年コース |
175万円以上1,000万円未満 | 50万円 | ―― | 80万円(上乗せ助成) | 130万円 |
計画期間 3年コース |
240万円以上5,000万円未満 | 50万円 | 50万円 | 80万円 | 180万円 |
5,000万円以上 | 50万円 | 75万円 | 100万円 | 225万円 | |
1億円以上 | 100万円 | 150万円 | 200万円 | 450万円 |
小規模事業者設備投資助成金
小規模事業者設備投資助成金は、横浜市内で事業を営む小規模事業者が業務改善や生産向上のために行う新たな設備投資に対して支援を行っています。
小規模事業者の成長を促すとともに横浜市経済の活性化を目的としています。
補助対象事業
小規模事業者設備投資助成金の助成対象となる事業は、事業所等に附属する設備、機械、装置、備品又はソフトウェア等です。
・2021年2月26日(金曜日)までに契約、取得、実施及び支払いがすべて完了したものが対象となります。
補助額
小規模事業者設備投資助成金の助成限度額と助成率は下記の通りとなります。
◆助成限度額 10万円
◆補助率 対象経費の1/2または2/3
なお、新型コロナウイルス感染症の影響により、1か月の売上が前年同月比10%以上減少している場合に適用されますので、ご利用ください。
IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業などが行う事務処理や管理業務、人事、経理、法務などのバックオフィスの効率化や新たな顧客獲得などにつながる役立つITツールの導入に対して支援を行っています。
新型コロナ感染症対応の「特別枠」も創設されています。
補助対象事業
IT導入補助金の補助対象となる事業は、生産活動を行っている中小企業・小規模事業者が自社の強みや弱みを認識し、分析等をし、生産性向上のための業務プロセスの改善と効率化に役立つ事業です。
事務局に登録されているITツール(事務局に登録されたIT導入支援事業者が提供するもの)を導入する補助事業者に対して行われます。
(導入例)
・労務管理システムや在庫管理システムなど業務フローのシステム化
・RPAツール等による高度な連携
・勤怠管理システムなど業務の自動化を促進するツール等を導入する場合など
申請要件
IT導入補助金の申請要件は下記の通りとなります。
◆給与支給総額が年率平均1.5%以上向上
◆事業場内最低賃金が地域別最低資金+30万円以上
補助額
IT導入補助金の補助額と補助率は下記の通りとなります。
◆補助額 30万円~450万円
◆補助率 補助対象経費の1/2以内
新型コロナ感染症対応「特別枠」
創設された新型コロナ感染症対応「特別枠」は、「①サプライチェーンの毀損への対応」の場合には補助率が2/3、「②非対面型ビジネスモデルへの転換」「③テレワーク環境の整備」の場合には、3/4に引き上げられます。
①サプライチェーンの毀損への対応 補助率:2/3
②非対面型ビジネスモデルへの転換 補助率:3/4
③テレワーク環境の整備 補助率:3/4
補助金の注意事項
国や地方自治体が実施している設備投資をする際に活用できる補助金は、資金調達につながる支援となります。
しかし、補助金や助成金には、融資などとは違う特徴を持っているので、利用する前に確認しておく必要があります。
◆受給までに時間がかかる
補助金申請するとすぐに受け取れるわけでなく、原則として後払いとなっています。
ほとんどが事業を終えた後、もしくは改正した後となりますので、自社の資金を支出しなければならないことも覚えておいてください。
支給までに1年もの時間が要することもあるほどです。
◆手間がかかる
補助金を申請するためには、書類の作成に加えて、求められる書類も提出しなければなりません。
申請期限までに、全ての書類作成し申請できるレベルまでに、環境を整えておく必要があります。
◆法人税が課せられる
補助金や助成金は、法人税の対象となり、特に補助金においては経費補助金もしくは、施設補助金に分類されます。
補助金で固定資産を購入する場合には、税金の繰延処理などができますが、よく理解しておく必要があります。
まとめ
機械装置などの導入にかかる費用と効果を見ながら、設備投資の導入で活用できる補助金のメリットや注意事項などを解説してきました。
また、設備導入の際に利用できる代表的な補助金や助成金として、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(一般型)」「人材確保支援助成金(設備改善等支援コース)」「小規模事業者設備投資助成金」「IT導入補助金」をご紹介しています。
事業の発展や業務の効率化を図るのなら、機械装置やシステムなどの導入が必要となってきますが、その際には資金調達のひとつとして、ぜひ補助金を活用してみてください。
新型コロナウイルス関連の支援策や自治体で設けられている補助金もありますので、この機会に検討してみてはいかがでしょう。