
起業の時には様々な費用がかかるために資金調達は欠かせませんが、信用が築かれていないために、銀行などからの金融機関から希望の融資額を受けるのは難しくなります。
そのような時に注目したいのが、公的な助成金や補助金です。
返済の必要がない助成金や補助金は、起業する際の大きな支援となりますが、その種類は多く「実際にどんな助成金や補助金を選んでいいのか?」とお悩みの方も多いのではないでしょうか?
そこで、こちらの記事では、特に雇用に関した助成金についてご紹介していきます。
補助金は募集期間が短く採択率が難しいですが、雇用に関しての助成金は受給しやすいので、ぜひご活用ください。
INDEX
助成金と補助金の特徴
助成金と補助金は、返済する必要のない点では共通していますが、助成金は主に「厚生労働省」が行っており、国の政策目標を達成するために交付されています。
助成金は主に受給要件を満たしていれば定額が支給され、申請期間は長めに設定されている比較的支給されやすいのが特徴です
一方補助金は、主に「経済産業省」が管轄となっており行政上の目的を達成するために交付されているお金です。
補助金の多くは、実際の経費などで使った支出に対する割合で支給額が決まり、支給額の上限が定められています。
補助金は助成金よりも大きな金額ですが、要件を満たしているだけでなく審査を通過しなければ受給できず、募集期間も短いために条件が厳しくなります。
起業向けの助成金や補助金の種類
起業する際に活用できる助成金や補助金は、様々な種類が用意されており、それぞれの分野において支援を行っています。
厚生労働省の雇用に関する助成金を始めとして、開業や創業などに関する補助金、事業発展に関するもの、特定業種に関するもの、女性起業家向けての助成事業など、いろいろな方面で設けられています。
状況に合致するものはないか、起業の時には確認しておきましょう。
◆雇用に関する支援
◆開業や創業に関する支援
◆事業の発展に関する支援
◆女性起業家向けの支援
雇用する際に活用できる助成金
厚生労働省が実施している助成金は、雇用の安定や職場環境の改善、さらには職業能力を向上する取り組みに対して支援を行っています。
起業する際にも活用できる制度が設けられているので、後になって「申請をしないために助成金を受け取れなかった」ということのないようにしておきましょう。
雇用に関する助成金の申請は、主に最寄りの労働局やハローワークで行っています。
雇用関係の助成金の共通要件
助成金の対象事業主となるには各助成金の要件の他に、下記の共通要件を全て満たすことが必要となります。
雇用関係の共通要件となっていますので、よくご確認ください。
①雇用保険適用事業所の事業主であること
② 支給のための審査に協力すること
・支給または不支給の決定のための審査に必要な書類等を整備・保管していること
・支給または不支給の決定のための審査に必要な書類等の提出を、管轄労働局等から求められた場合に応じること
・管轄労働局等の実地調査を受け入れること など
③ 申請期間内に申請を行うこと
次に、具体的にどのような助成金が設けられているのかみていましょう。
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)は、高年齢者や障害者などの就職困難者を継続して雇用する事業主に対して支援を行っています。
対象労働者や労働時間によって支給額が異なり、助成対象期間となるのは1年~2年ほどです。
支給要件
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の支給要件は下記の通りとなります。
◆ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れること
・公共職業安定所(ハローワーク)
・地方運輸局(船員として雇い入れる場合)
・適正な運用を期すことのできる有料・無料職業紹介事業者等
◆雇用保険一般被保険者として雇い入れ、継続して雇用することが確実であると認められること。
・ 対象労働者の年齢が65歳以上に達するまで継続して雇用し、かつ、当該雇用期間が継続して2年以上であることをいいます。
対象労働者
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の対象労働者は下記の通りとなります。
◆高齢者(60歳以上65歳未満)、もし家庭の母など
◆重度障害者等を除く身体・知的障害者
◆重度障害者など
助成額
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の対象労働者ごとの支給額と対象期間は下記の表の通りです。
対象労働者 | 支給額 | 助成対象期間 | |
短時間労働者以外のもの | 高年齢者(60歳以上65歳未満)、 母子家庭の母など | 90万円 (50万円) |
1年(1年) |
重度障害者等を除く身体・知的 障害者 | 135万円 (50万円) |
1年6ヶ月 (1年) |
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重度障害者など | 240万円 (100万円) |
2年 (1年6ヶ月) |
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短時間労働者 | 高年齢者(60歳以上65歳未満)、 母子家庭の母など | 60万円 (30万円) |
1年 (1年) |
重度障害者等を除く身体・知的 障害者 | 90万円 (30万円) |
1年6ヶ月 (1年) |
( )内は中小企業事業主以外に対する支給額および助成対象期間となります
中途採用等支援助成金(生涯現役起業支援コース)
中途採用等支援助成金(生涯現役起業支援コース)は、事業を開始して間もない法人事業主や個人事業主が活用できる助成金です。
雇用創出措置助成分と生産性向上助成分のそれぞれを満たすことで、助成金が支給されます。
雇用創出措置助成分の受給要件
雇用創出措置助成分の受給要件は下記の通りとなります。
①起業基準日から起算して 11 か月以内に「生涯現役起業支援助成金 雇用創出措置に係る計画書」を提出し、都道府県労働局長 の認定を受けていること。
②事業継続性の確認として、以下の4事項のうち2つ以上に該当していること。
a.起業者が国、地方公共団体、金融機関等が直接または第三者に委託して実施する創業に係るセミナー等の支援を受けていること。
b.起業者自身が当該事業分野において通算10年以上の職務経験を有していること。
c.起業にあたって金融機関の融資を受けていること。
d.法人または個人事業主の総資産額が1,500万円以上あり、かつ総資産額から負債額を引いた残高の総資産額に占める割合が40%以上あること。
③計画期間 内( 12 か月以内) に、対象労働者を一定数以上(※)新たに 雇い入れること。
なお、60歳以上の者を1名以上、40歳以上60歳未満の者を2名以上または40歳未満の者を3名以上(40歳以上の者1名と40歳未満2名でも可)
④支給申請書提出日において、計画期間内に雇い入れた対象労働者の過半数が離職していないこと。
⑤起業日から起算して支給申請日までの間における離職者の数が、計画期間内に雇い入れた対象労働者 の数を超えていないことなどとなります。
生産性向上助成分の受給要件
生産性向上助成分の受給要件は下記の通りとなります。
①支給申請書提出日において、「生涯現役起業支援助成金 雇用創出措置に係る計画書」における事業が継続していること。
②雇用創出措置助成分の支給申請日の翌日から生産性向上助成分の支給申請日までに、雇用する雇用保険被保険者を事業主都合で解雇していないこと。
③「生涯現役起業支援助成金 雇用創出措置に係る計画書」を提出した日の属する会計年度とその3年度経過後の会計年度の生産性を比較して、その伸び率が6%以上であることなどとなります。
助成額
中途採用等支援助成金(生涯現役起業支援コース)の雇用創出措置助成分と生産性向上助成分の助成額は、下記の通りです。
◆雇用創出措置助成分の助成額
起業時の年齢区分 | 助成率 | 助成額の上限 |
起業者が高齢者(60歳以上)の場合 | 2/3 | 200万円 |
起業者が上記以外の者(40歳~59歳)の場合 | 1/2 | 150万円 |
◆生産性向上助成分
・雇用創出措置助成分」により支給された助成額の1/4の額を別途支給
特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース)
特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース)は、就職氷河期に正規雇用の機会を逃したことにより、充分なキャリアが形成されずに正規雇用に就くことができなかった方を正規雇用労働者として雇い入れた事業主に対して助成を行っています。
対象労働者
特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース)の対象となる労働者は下記の要件のいずれにも該当する必要があります。
◆雇入れ日現在の満年齢が35歳以上55歳未満の者
◆雇入れ日前直近5年間に正規雇用労働者として雇用された期間を通算 した期間が1年以下であり、雇入れの日の前日から起算して過去1年間に 正規雇用労働者として雇用されたことがない者
◆紹介日時点で失業状態の者または非正規雇用労働者かつ、「ハロー ワークや職業紹介事業者等において、個別支援等の就労に向けた支援を 受けている者」
◆正規雇用労働者として雇用されることを希望している者
助成額
特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース)の助成額は下記の通りとなります。
◆1人あたり、60万円
・中小企業以外 50万円
特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)
特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)は、65歳以上の離職者をハローワークや民間の職業紹介事業者等の紹介によって雇用した時に利用できます。
1年以上継続して雇用する労働者として雇い入れた事業主に対して、助成金が支給されます。
助成額
特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)の助成額は下記の通りとなります。
◆1人あたり、70万円
・中小企業以外 60万円
◆短時間労働者は50万円
・中小企業以外 40万円
トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)は、職業経験、技能、知識不足などから安定的な就職が困難な求職者を一定期間試行雇用する事業主に対して支給される助成金です。
対象労働者
トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)の助成対象となる労働者は下記のいずれかに該当する方となります。
◆2年以内に2回以上離職または転職を繰り返している者
◆離職している期間が1年を超えている者
◆妊娠、出産または育児を理由として離職した者で、安定した職業に就いていない期間が1年を超えているもの
◆ フリーターやニート等で55歳未満の者
◆就職支援に当たって特別の配慮を要する以下の者
助成額
トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)の助成額は、下記の通りとなります。
◆1人あたり月額最大4万円(最長3ヶ月間)
◆対象者が母子家庭の母等または父子家庭の父の場合
・月額最大5万円(最長3ヶ月間)
◆若者雇用促進法に基づく認定事業主が35歳未満の対象者に対しトライアル雇用を実施する場合
・月額最大5万円(最長3ヶ月間)
まとめ
起業する時のサポートとなる雇用関係の助成金5選として、「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」「中途採用等支援助成金(生涯現役起業支援コース)」「特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース)」「特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)」「トライアル雇用助成金(一般トライアルコース」を紹介してきました。
起業する際には、多くの出費がかかってしまいますが、これらの助成金を活用すれば資金調達につながるのではないでしょうか?
特に、雇用する際に利用できる「特定求職者雇用開発助成金」には、いくつものコースが用意されていますので、雇用の際には状況と合った助成金を利用するとよいでしょう。
また、起業により中高年齢者を雇い入れる時の助成金や、雇用する際にトライアルができる助成金も用意されています。
返済のいらない助成金は、起業した事業の資金調達のサポートになりますので、積極的にご活用ください。