
ほとんどの起業家にとって起業は初めての経験で、創業融資の審査を受けるのもはじめてという人が大半なのではないでしょうか?
今回は銀行融資には多くの種類がありますが、その中でもよく利用されている以下5つの種類をご紹介します。
①信用保証協会の保証付き融資
②プロパー融資
③不動産担保融資
④売掛債権担保融資
⑤手形貸付
それでは、一つ一つ細かく見ていきましょう。
①信用保証協会の保証付き融資
中小企業が銀行から融資を受けるときの強い味方が、信用保証協会です。
信用保証協会は、中小企業が銀行から融資を受ける際に保証人になってくれる公的な金融機関です。
信用保証協会が保証人になってくれれば、銀行は安心してお金を貸すことができます。
融資制度によってことなりますが、信用保証協会は、融資額の80~100%を保証してくれます。
「信用保証協会の保証付き融資」の特徴
①信用力が小さい企業でも融資を受けられる可能性がある
信用保証協会の保証が受けられれば、銀行や金融機関は貸し倒れリスクを負う必要がないので融資をしてくれます。
「信用保証協会の保証付融資」は銀行も審査をしますが、基本的には貸し倒れリスクを負う信用保証協会が審査をするようなものなのです。
・赤字決算
・業歴が浅い
・起業間もない
・売上規模が小さい
企業であっても、信用保証協会であれば保証を受けられる可能性が高いのです。
②長期の借入が可能銀行単体で融資をするプロパー融資の場合は、銀行が貸し倒れリスクを負うため、信用力が小さければ短期の融資しかできません。
しかし、信用保証協会の保証があれば、銀行は貸し倒れリスクを負わないのですから、保証協会の保証が有効な期間は長期融資をしてもリスクはなく、利息収入が増えることになるため、長期の返済期間の設定が可能になるのです。
5年~10年というスパンでの長期の資金調達が可能になります。
「信用保証協会の保証付融資」で銀行融資を受ける際の注意点
「信用保証協会の保証付融資」の利用対象企業は下記のようになっています。
①規模(資本金・従業員数)
②業種
ほとんどの商工業の業種が対象
NG業種
農林・漁業
金融業
遊興娯楽業のうち風俗関連営業
宗教法人
NPO(非営利団体)
中間法人
その他、信用保証協会の判断
「信用保証協会の保証付融資」で銀行融資受ける手順
申込む方法は
1・銀行に申込む
2・信用保証協会に申込む
3・市役所等から申込む
3つの方法があります。
銀行に申込むのが一番スムーズに「信用保証協会の保証付融資」を受けられる方法です。
②プロパー融資
プロパー融資とは、銀行が直接融資を行う仕組みを指します。
ただし、銀行で「プロパー融資」という商品はありません。
プロパー融資は金融機関が「金融用語」として使っているもので、意味合いとしては「保証協会などを使わず、銀行から直接融資をする」ことを指しています。
銀行のプロパー融資を利用するメリット
〇保証料がかからない
〇限度額がない
信用保証協会の保証付融資には上限があります。
通常、無担保保証の場合は8000万円、有担保保証の場合は2億8000万円以上の融資を受けることはできません。
起業したてのころならばこれだけの金額でも十分やっていけるでしょう。しかし、事業規模が大きくなり運転資金や設備資金がかさむようになると、この枠以上の融資が必要になることがあります。
プロパー融資にはこのような上限が設定されていないため、銀行の審査さえ通れば必要な額を借り入れることが出来ます。
銀行のプロパー融資を利用するデメリット
〇審査が厳しい
信用保証協会から保証を受けると銀行からの審査に通りやすくなります。
一方、プロパー融資は審査が厳しいため、事前に十分に対策を練る必要があります。
逆にいえば、一度審査にさえ通ってしまえばそのあとはメリットが多いのがプロパー融資といえます。
銀行のプロパー融資で重視される「審査のポイント」
最初にチェックされるのが税引き後当期利益です。
当然、利益が多ければ多いほど審査に受かりやすくなります。
また、自己資本についても厳しくチェックされます。
自己資本が充実していればしているほど審査に通りやすくなります。
逆に無駄な資産を持っている場合にはマイナス評価となることもあります。
③不動産担保融資
不動産担保融資とは、土地や建物などの不動産を担保にして銀行やその他の金融機関からローンを借り入れることを指します。
利用する際には不動産の担保価値や借入者の支払い能力などについての審査を受け、それらに応じて融資金額などが決定される仕組みになっています。
一般的に無担保融資よりも一度に借りられる額が大きく、金利が低く長期返済も可能といった特徴があり、多くの人々に利用されています。
不動産担保融資のメリット
①受けられる融資が高額
多くの無担保融資では借入者の年収などにより融資額の上限が設定されているため、高額の融資を受けることはなかなか難しいです。
一方不動産担保融資の場合、不動産という比較的確実な担保があるため、担保不動産の価値によっては高額融資も受けられるというメリットがあります。
②返済期間を長期に設定できる
比較的確実な担保があることにより、多くの場合、無担保融資と比べ返済期間を長期にして月々の返済額を低く設定することも可能です。
そのため余裕を持った返済計画を立てられるというメリットがあります。
③金利が低い
不動産を担保にすることによって金融業者にとっては回収不能のリスクを減らすことができるため、無担保融資と比べると低金利での融資を受けることができます。
不動産担保融資のデメリット
①利用時に諸費用が必要となる
不動産担保融資を利用する場合、融資額の1~3%の手数料が必要となる場合があります。
また、抵当権の登記費用や、場合によっては不動産の鑑定費用なども支払う必要があります。
そのため、予めある程度の現金を用意しておく必要があります。
②返済不能時には不動産を失う
これは当然のことですが、不動産を担保に入れて融資を受けているため、返済できなくなった場合には不動産を売却しなければなりません。
③融資を受けるまでに時間がかかる
不動産の担保価値の評価などを行うため審査に時間がかかり、融資までに1~2週間かかることが一般的となっています。
そのため、早急に融資を受けたい場合などには適していません。
④売掛債権担保融資
銀行融資やビジネスローンを利用するときに担保を求められるケースもあります。
この場合に利用される担保のひとつに「売掛債権担保」というものがあります。
売掛債権担保とは
商品やサービスを提供した会社が顧客から代金の支払いを受ける権利のことを言います。
売上債権とも言われます。
ビジネスの取引はほとんど信用取引で行われます。
先に商品やサービスなど役務の提供を行って、納品が完了したら請求書を発行して、翌月末、翌々月末に支払いが行われるものです。
顧客からの支払いが1ヶ月~2ヶ月後になるため、入金があるまでの期間「売掛債権」を保有することになるのです。
売掛債権担保とは「売掛債権」を担保として、融資を受けるもので、売掛債権担保融資、売掛債権担保ローンと呼ばれます。
売掛債権を担保にする時の方法
①売掛先に承諾を得る(契約、同意書を交わす)
②売掛先に通知をする(通知書へ確認してもらう)
③売掛債権の譲渡を法務局に登記する(売掛債権登記)
いずれかの方法で売掛債権を担保にすることができますが、売掛先にばれない「売掛債権登記」が利用されるケースが多いようです。
日本では、売掛債権を譲渡するという行為が売掛先(クライアント)に知られてしまうと「この外注先は資金繰りや経営状態がひっ迫しているのでは?」と勘繰られてしまい、今後の取引に悪影響を与える可能性があるからです。
これを敬遠する中小企業が「ファクタリング」を利用するケースが多いのです。
ファクタリングは売掛債権を担保とする融資ではなく、売掛債権の譲渡です。
そのまま買い取ってもらうのがファクタリングです。
売掛債権担保の担保評価
売掛債権の担保評価は債務者である売掛先(顧客)の信用力に依存します。
①大手企業の売掛債権 → 信頼性が高い → 掛目が大きい(債権額の90%)
②中堅企業の売掛債権 → 信頼性が普通 → 掛目も普通(債権額の80%)
③中小・零細企業の売掛債権 → 信頼性が小さい → 掛目も小さい(債権額の70%)
銀行や金融機関にとっては「確実に売掛債権が支払われるかどうか?」が売掛債権担保の評価に直結するため、融資を受ける企業の信用力ではなく、支払いをする売掛先の信用力が重要になるのです。
売掛債権担保を利用するときの注意点
〇売掛債権の譲渡を禁止する特約があるケース
クライアントとの間の契約書に「売掛債権譲渡禁止特約」があるのであれば、売掛債権の譲渡はできません。
⑤手形貸付
「手形貸付」とは借入用の手形を銀行に差し入れて融資を受ける方法のことを意味します。
「手形」とは「いつ、いくら、お金を支払うか?」を約束する書面のことで、銀行に当座預金を開設すると利用できるものです。
「手形貸付」は1年以内の短期融資に利用されることの多い融資方法で、融資に関する取り決めについては手形の振り出し前に銀行に差し入れる契約書「銀行取引約定書」に記載されています。
はじめに契約書を締結し、後はその内容に従って手形を振り出す形になるので、いちいち契約書を交わす必要がありません。
手形にははじめから銀行名が記載されているため、融資を受ける企業の署名、捺印のみで利用することができる手続きが簡単な融資方法と言えます。
「手形貸付」の特徴
①1年以内の短期融資に利用される融資方法
手形貸付は、はじめの契約で融資条件が決まれば、後は簡単に振り出しが可能なスタイルの融資方法ですので、「証書貸付」よりも、何度も繰り返し利用する融資で用いられます。
設備投資やメインの運転資金は長期の融資となるので「証書貸付」が採用されますが、経常運転資金やつなぎ資金など返済の裏付けが明確なケースで短期の資金繰りに利用されるのです。
②経常運転資金
売掛金や受取手形などすでに将来お金になることが決まっている金額のことを意味するもので、すでに入金見込みがある分だけ、「手形貸付」で短期の融資をしてもらう形になります。
③つなぎ資金
・商品を仕入れて販売するまで
・商品を販売して売掛金が入金されるまで
・商品を販売して手形が現金化できるまで
の一定期間、資金が不足してしまうケースで「手形貸付」による資金調達が利用されるのです。
④1年ごとに一括返済を繰り返す方法もよく使われる
1年以内の短期融資で利用される「手形貸付」ですが、経常運転資金のために「手形貸付」で資金調達して1年後に一括返済と取り決められていたとしても、1年後だから一回返済できるものではありません。
経常運転資金は継続的に資金調達が必要になるため、1年後にストップしてしまったら、資金繰りが破たんしてしまう種類のものなのです。
そのため、「手形貸付」では1年後に一括返済となっていても、1年後にまた同じ金額の「手形貸付」で借り換える形がとられるのです。
⑤審査は「証書貸付」よりも通りやすい
「証書貸付」は長期の貸付になるため、銀行側の貸し倒れリスクは大きくなります。
一方で、「手形貸付」の場合は返済の裏付けがあるものに対する融資であること、1年未満の短期の融資であることから、銀行側の貸し倒れリスクは小さく、融資の審査は「証書貸付」よりも通りやすくなるのです。
「手形貸付」で銀行融資を受ける際の注意点
〇支払期日に手形を決済出来ない場合は不渡りになる
融資を受けた企業が支払期日に手形を決済できない場合に「不渡り」になってしまいます。
「不渡り」を6か月以内に2回だしてしまうと「銀行取引停止」になってしまいます。
「不渡り」を出してしまうと
・手形交換所規則に基づく「不渡り処分」を受け、全金融機関に通知
・6か月以内に2回だしてしまうと「銀行取引停止」→当座預金取引・貸出取引(融資)が2年間停止
・上場企業の場合 → 上場廃止
と、なってしまします。
銀行取引が停止されてしまい、それが全金融機関に通知されてしまえば、融資を受けられませんし、対外的な取引先からの信用も失墜してしまいます。
まとめ
本記事では、起業の際に必ず知っておきたい銀行融資の5種類を紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
紹介してきたものの中においては、信用力がまだ小さい企業でも融資を受けられる可能性がある、「信用保証協会の保証付き融資」の活用をおすすめします。
銀行から融資を受ける場合は、いろいろなハードルがあります。
特に新規融資や借入枠を超えた追加融資の場合は門前払いの可能性も見え隠れしています。
書類や会計などをきちんと整理し、銀行員が納得できる説明ができるかといった点がカギとなるでしょう。