従業員を健康な状態で働かせるためには、定期的に健康診断を実施しなければなりません。
しかし、それにかかる費用は全て事業主が負担することになります。
そのため、企業に健康診断の制度の導入を勧めるとそれなりの費用がかかってくるでしょう。
健康診断は、定期的に全ての労働者が受けるべきですが、それにかかる費用を考えると簡単ではありません。
そこで、使用したいのが、キャリアアップ助成金の健康診断制度コースです。
健康診断制度の導入にキャリアアップ助成金の健康診断制度コースは非常に役立つので本記事では、キャリアアップ助成金の健康診断制度コースついて詳しくご紹介します。
健康診断を導入するともらえる助成金について
健康でいることは、日々の労働にとって、とても重要なことです。定期的に健康診断を受けることで、生活習慣病などが未然に防ぐことができれば、事業主にとっても従業員にとってもメリットがあります。
健康を維持してよりキャリアアップを促進するために、国は事業者従業員に対して、健康診断を実施することで受給できる助成金を設けています。
賃金や非正規社員などの雇用状態や格差だけではなく、国が取り組んでいる働き方改革には、労働者の健康面も含まれています。
事業主は、「労働安全衛生法」によって、雇用する労働者に対して「健康診断」を受けさせる義務があります。
キャリアアップ助成金とは?
キャリアアップ助成金とは、従業員の意欲、能力を向上させ、事業の生産性を高め、優秀な人材を確保するために厚生労働省が管轄、支援してくれる助成金です。
派遣労働者、短時間労働者、有期契約労働者などの非正規労働者のキャリアアップを促進するために処遇改善などの取組みを計画し、実施した事業主に対して助成する制度です。
キャリアアップ助成金には8つのコースがありますが、健康に関して「健康診断コース」があります。健康診断コースは、事業主から健康診断の受診義務のない、非正規雇用労働者の健康を守ることが目的です。
人は健康が維持されてこそ、能力を発揮することができます。心身ともに健康な状態で働けることで、パフォーマンスも上がります。
事業主には、従業員を健康な状態で働かせる「安全配慮義務」があります。
もしも従業員に対して健康診断を実施せずに、健康被害が生じた場合には、事業主に安全義務違反の責任を負わされる可能性もあります。
しかし、健康診断にかかる費用は事業主の負担となります。この負担を減らすために使用できるのが「キャリアアップ助成金健康診断コース」です。
キャリアアップ助成金「健康診断コース」について
「厚生労働省」のパートタイム労働者等の健康管理事業調査報告書によると、パートタイムやアルバイトが在籍する事業所の従業員に対する定期健康診断の実施状況では、14.1%の事業所が、パートタイムやアルバイトの非正規社員を対象にしていませんでした。
キャリアアップ助成金の健康診断コースは、パートタイマーやアルバイトなどの有期契約労働者を対象とする、法律で定められた健康診断制度以外の健康診断制度を新しく導入し、4名以上の対象者に実施した場合に支給されます。
現在の日本では、派遣労働が解禁されてから、派遣労働者の労働災害が急増しています。
これらの働き方は、健康へのリスクが高いのにも関わらず、自身や健康障害を予防する安全衛生教育の機会が少ないことを厚生労働省も危惧しています。
また、パートタイムやアルバイトなどの非正規社員が、勤務先に対して最も実施してもらいたかった制度は、「メンタルヘルス」や「健康診断」よりも、「定期健康診断」が多く望まれていました。
健康診断コースとは?
非正規労働者の多くは、賃金が低いために長時間労働を強いられていたり、食事も炭水化物ばかりで野菜や肉、魚などが不足した偏った食生活になりがちです。
また、自分では健康診断を受けられないために、自らの体調悪化や健康被害に気づくのが遅くなります。
健康診断コースでは、従業員の健康管理を通じて、キャリアアップにつなげることを目標にしています。
対象となる事業主は?
キャリアアップ助成制度では、複数のコースがあり、共通している要件があります。
キャリアアップ助成金の全てのコースに共通する要件として、下記の項目があります。
・雇用保険適用事業所の事業主であること。
・キャリアアップ管理者(キャリアアップ計画を立て、有期契約労働者などのキャリアアップに取り組む者。1事業所あたり1人)を置いていること。
・キャリアアップ計画(有期契約労働者などのキャリアアップに向けた取組みを進めるために対象者や目標、取組み方法や期間などをイメージし、記載したもの)を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けていること。
・キャリアアップ計画期間内に、キャリアアップに取り組んだ事業主であること。
・該当するコースの措置に係る対象労働者に対する賃金の支払い状況等を明らかにする書類を整備している事業主であること。
これ以外に、健康診断制度コースのみの受給要件として、下記の項目があります。
・雇用する有期契約労働者4人以上に健康診断等を実施した事業主。
・有期契約労働者等を対象とする健康診断制度を、労働協約または就業規則に規定した事業主。
・規定した健康診断制度を継続して実施している事業主。
・実施した定期健康診断や雇用時の健康診断等の費用を全額負担している事業主。
・実施した人間ドック制度の費用を半額以上負担している事業主。
・健康診断制度等を適用するにあたり、実施要件がある場合は、労働協約または就業規則に規定している事業主。
・生産性要件を申請する場合、当該生産性要件を満たした事業主。
対象となる従業員は?
健康診断制度コースの支給対象となる従業員は、下記に当てはまる人です。
・支給対象事業主に雇用されている有期契約労働者であること。(雇用期間が1年未満、1習慣の所定労働時間が通常の人の3/4未満のいずれかである人)
・雇用時健康診断、もしくは定期健康診断、人間ドックを受ける日に申請事業主事業所において健康保険被保険者であること。
・助成金支給申請日に離職していないこと。
・事業主または取締役の3親等以内の家族ではないこと。
キャリアアップ助成金の健康診断の定義とは?
支給対象事業主は、キャリアアップ計画の実施期間中に、健康診断の実施義務のない有期雇用の従業員に対し、「雇用時健康診断」、「定期健康診断」、「人間ドック」の3つのうちいずれかを労働協約または就業規則に規定し、対象従業員4人以上に実施する必要があります。
雇用時健康診断とは?
労働安全衛生規則の第43条に規定されています。
常時使用する労働者に対して行う健康診断のことです。
定期健康診断とは?
労働安全衛生規則の第44条に規定されています。
これも、常時使用する労働者に対して行う健康診断のことです。
人間ドックとは?
・基本健康診断(問診、血圧測定、身体測定、尿検査、理学的検査、血糖検査、循環器検査、肝・腎機能検査など)に加えて、下記の検診のどれかの項目を実施することです。
・胃がん検診
・子宮がん検診
・乳がん検診
・大腸がん検診
・歯周疾患検診
・骨粗鬆症診断
キャリアアップ助成金申請の注意点
健康診断制度コースでの注意点は、4人以上に実施することです。助成金の申請は、4人目の健康診断が終わったタイミングで行います。
不正受給を防ぐ目的で、事業所に助成金の支給について調査が入る場合があります。その場合には、総勘定元帳、帳簿等の提出が求められますので日頃からしっかりと記載して管理しておいてください。
受給までの期間について
4名以上の対象となる従業員に健康診断を実施し、4人目の健康診断が終わってから2カ月以内に支給申請を行います。
支給申請の実施日から2カ月というのは、健康診断が実施された月の賃金支給日の翌日から数えるので注意して下さい。
助成金が手元に支給されるまでは、意外と時間がかかります。一般的に半年から1年半ほどの時間を要します。早くても半年はかかります。
特にキャリアアップ助成金の場合、申請の前後の期間が審査の重要な要素となるため、長めの時間設定が必要です。
受給までの流れは、「キャリアアップ計画の作成・提出」→「労働協約または就業規則に健康診断制度を規定」→「4人以上に健康診断制度を実施」→「支給申請」→「審査」→「受給決定」となります。
受給金額について
この助成金は、企業の規模によって支給額が異なるので注意してください。
一般的には、1事業所に対して38万円です。
大企業の場合は28万5000円です。
生産性の向上の要件が満たされている場合には、1事業所あたり48万円、大企業は36万円となります。
1事業所あたり1回のみとなります。
まとめ
以上、キャリアアップ助成金の健康診断制度コースについて解説しましたがいかがでしたでしょうか?
キャリアップ助成金の健康診断制度コースは、受給しやすい助成金です。この制度を利用することで、事業主にも従業員にも健康管理を促すことができ、結果として効率や生産力の向上が期待できます。
健康診断制度コースは、パートタイマーやアルバイトの非正規雇用労働者が対象ですが、人手不足が深刻化する中で、非正規社員や有期雇用の人に働いてもらうことは事業所にとっても戦力となります。
賃金格差や福利厚生等の待遇格差だけでなく、健康格差もなくすことは、企業や会社のモチベーションやパフォーマンスも上がり、労働性も上がります。
助成金は、返済不要です。福利厚生の向上を目的として国が設置したものですので、正しく活用することで従業員のスキルアップと人材開発をすることができます。
キャリアアップ助成金の健康診断制度コースを活用することで、さらに健康維持管理に目を向け、健康促進に取り組みましょう。