鶏卵生産者にとって、変動する鶏卵の需要、季節ごとに変動する価格を予測することは難しく、時には供給過剰となってしまうケースも少なくありません。
需給見通しができないことで、不安を感じている鶏卵生産者は多いのではないでしょうか?
農林水産省ではこのような状況を踏まて、鶏卵生産者の経営と鶏卵価格の安定を図っていくために「令和3年度鶏卵生産者経営安定対策事業」を設けて支援を行っています。
鶏卵生産者の経営と鶏卵価格の安定を目的とした補助金となっていますので、資金調達の一つとしてお役立てください。
こちらの記事では、「令和3年度鶏卵生産者経営安定対策事業」について、詳しく解説していきます。
令和3年度鶏卵生産者経営安定対策事業の3つの事業
令和3年度鶏卵生産者経営安定対策事業は、鶏卵価格が低落した場合、経営規模に拘わらず価格差補塡を⾏い、更に低落した場合には、鶏舎を⻑期に空けて需給改善を図る取組を支援しています。
また、鶏卵の鶏卵の需給⾒通しの作成も支援しており、鶏卵の需給と価格の安定を図るために設けられている補助金です。
◆政策⽬標
鶏卵価格の安定化
卸売価格の変動幅︓平均卸売価格の±25%以内(毎年度)
令和3年度鶏卵生産者経営安定対策事業には、鶏卵価格差補塡事業と成鶏更新・空舎延長事業、さらに需要見通しの作成の3つの事業が設けられています。
事業1:鶏卵価格差補塡事業
事業2:成鶏更新・空舎延長事業
事業3:需要見通しの作成
次に、令和3年度鶏卵生産者経営安定対策事業の3つの事業について、詳しくご紹介していきます。
鶏卵価格差補塡事業
鶏卵価格差補塡事業は、標準取引価格(月ごと)が補塡基準価格を下回った場合において、その差額の9割を鶏卵生産者に補塡する事業です。
なお、補塡基準価格と安定基準価格の差額が上限となります。
価格差補塡交付金の交付対象者
鶏卵価格差補塡事業の価格差補塡交付金の交付対象となる者は、下記の通りとなります。
ア: 採卵用成鶏めすを常時100羽以上飼養し、鶏卵を販売する鶏卵生産者であって、その生産する鶏卵の全量について「価格差補塡契約」を締結し、かつ協力金を納付したものとする。
・複数の鶏卵生産者が集団となって鶏卵販売を行い、収益を分配するなど生産者間で経営の協力体制が構築されている生産者団体も含まれます。
・ただし、採卵用成鶏めす50,000羽以上を飼養する鶏卵生産者にあっては、国又は事業実施主体が行う生産量等の調査に協力する者に限られます。
イ :交付対象者は、「環境と調和のとれた農業生産活動規範について」(平成17年3月31日付け16生産第8377号農林水産省生産局長通知)に基づき、環境と調和のとれた農業生産活動を行うよう努めるものとする。
価格差補塡契約
鶏卵価格差補塡事業においての価格差補塡契約とは、下記の通りとなります。
ア :価格差補塡交付金の交付を受けようとする鶏卵生産者は、下記に掲げる事項に関し、事業年度ごとに事業実施主体と価格差補塡契約を締結する必要があります。
その際、事業実施主体は正当な理由なく当該契約の締結を拒むことはできません。
a 契約数量に関する事項
b 積立金及び協力金の納付に関する事項
c 新規加入に関する事項
d 生産者積立金からの交付に関する事項
e 契約数量の変更に関する事項
f 契約の解除に関する事項
g 生産者積立金からの交付金の返還等に関する事項
h その他契約の適正かつ円滑な履行のために必要な事項
イ :鶏卵生産者は、アの契約を締結するには、下記に掲げる書類を事業実施主体に提出する必要があります。
a その他事業推進に必要な事項に関する書類
積立金の納付
鶏卵価格差補塡事業の積立金の納付は、下記の①~④の通りとなります。
①事業実施主体は、毎事業年度開始前に、鶏卵1キログラム当たりの積立金の額を定めるものとする。
②鶏卵1キログラム当たりの積立金の額は、鶏卵の需給の見通し、当該事業年度の補塡基準価格、前事業年度末における積立金の残額等を勘案して定めるものとする。
③ 事業実施主体は、アの積立金の額を定めるに当たっては、あらかじめ生産局長の承認を受けるものとする。これを改定しようとする場合も同様とする。
④ 事業実施主体は、毎事業年度、鶏卵1キログラム当たりの積立金の額に「価格差補塡契約」の価格差補塡契約を締結した鶏卵生産者(以下「加入生産者」という。)に係る契約数量(「価格差補塡契約」のアの契約数量をいう。)を乗じて得た額を、当該加入生産者に積立金として納付させるものとする。
補助対象経費
鶏卵価格差補塡事業の補助対象となる経費は、下記の通りとなります。
◆毎月の標準取引価格が補塡基準価を下回った場合に、その差額の9割を補塡するのに要する経費
補助率
鶏卵価格差補塡事業の補助率は下記の通りとなります。
◆補助率 8分の1以内
・ただし、予算額の格を下回った場合に、その差額の 範囲内を上限となります。
成鶏更新・空舎延長事業
成鶏更新・空舎延長事業は、鶏卵の毎⽇の標準取引価格が安定基準価格を下回った場合、その下回る⽇の30⽇前から上回る⽇の前⽇までに、成鶏を出荷し、その後60⽇以上鶏舎を空ける取組に対して奨励金を交付しています。
奨励金交付対象者、奨励金交付対象成鶏及び事業対象鶏舎
成鶏更新・空舎延長事業の奨励金交付対象者、奨励金交付対象成鶏及び事業対象鶏舎となる者は、下記のア~ウの要件を全て満たしたものとなります。
ア:奨励金交付対象者
奨励金交付対象者は、鶏卵価格差補塡事業の加入生産者であって卵価低落時に通常の更新の範囲を超えて採卵鶏の導入を行わない者及び事業の対象となる成鶏の出荷先である食鳥処理場とする。
イ:奨励金交付対象成鶏
奨励金交付対象成鶏は、「奨励金の対象となる成鶏の出荷期間」の奨励金の対象となる成鶏の出荷期間中に食鳥処理場に出荷し、食鳥処理された成鶏とする。
・当該成鶏を飼養している鶏舎において飼養されている全羽数を出荷した場合に限る。
・なお、鶏舎から全羽数を出荷した後に、予期せぬ事故等により出荷した羽数の1割以上の食鳥処理が不可能となった場合において、事業実施主体が個々の事例について審査の上、やむを得ないものと認める場合のうち、生産局長が特に認めるときは、出荷羽数の9割を上限として奨励金の交付対象成鶏とすることができるものとする。
ウ:事業対象鶏舎
①この事業において「鶏舎」とは、採卵用成鶏めすを飼養するための一棟の建物又はその建物のうち壁、カーテン、金網、ケージ区画、床等によって構造上明確に区分された部分であってその部分で飼養される成鶏の全羽数を出荷した後に水洗等による清掃を独立して合
理的に行うことができるものをいう。
②事業対象鶏舎(当該鶏舎が複数の場合は、それぞれの当該鶏舎ごと)には、飼養している全ての成鶏の出荷が完了した日の翌日からひなの再導入を開始する日の前日までに、60日以上の空舎期間を設けるものとする。
③事業対象鶏舎には、事業対象成鶏出荷後120日以内にふ化場又は育すう業者から採卵用ひなを導入するものとする。
ただし、再導入する採卵用ひなの鶏舎ごとの導入羽数は事業対象鶏舎ごとに食鳥処理場で食鳥処理された羽数の3割以上でなければならない。
なお、予期せぬ事故等により事業対象成鶏出荷後120日を超えて採卵用ひなを導入することとなった場合において、事業実施主体が個々の事例について審査の上、やむを得ないものと認める場合のうち、生産局長が特に認めるときは、奨励金交付対象とすることができるものとする。
奨励金の対象となる成鶏の出荷期間
成鶏更新・空舎延長事業の奨励金の対象となる成鶏の出荷期間は、下記の通りとなります。
◆奨励金の対象となる成鶏の出荷期間は、標準取引価格(日ごと)が安定基準価格を下回る日の30日前から標準取引価格(日ごと)が安定基準価格を上回る日の前日までとする。
・当該日までに、その食鳥処理について食鳥処理場に申し込んでいる成鶏については、安定基準価格を上回った日から30日後までとする。
◆奨励⾦単価
・ 空舎期間 60⽇以上 90⽇未満 210円/⽻(310円/⽻)
・ 空舎期間 90⽇以上120⽇未満 420円/⽻(620円/⽻)
・ ⾷⿃処理場への奨励⾦ 47円/⽻
なお、( )内は10万⽻未満飼養⽣産者の奨励金単価となります。
補助対象経費・補助率
成鶏更新・空舎延長事業の奨励金の補助対象となる経費と、各経費ごとの補助率は下記の通りとなります。
①事業実施主体が、事業に参加した鶏卵生産者に対して奨励金を交付するのに要する経費
・奨励金交付対象成鶏1羽当たり、空舎期間60日以上90日未満:210円以内、空舎期間90日以上120日未満:420円以内。
ただし、採卵用成鶏めすの飼養羽数が10万羽未満の鶏卵生産者については、空舎期間60日以上90日未満:310円以内空舎期間90日以上120日未満:620円以内。
◆補助率 4分の3以内
②事業実施主体が、事業の対象となる成鶏の出荷先である 食鳥処理場に対して奨励金を 交付するのに要する経費
・食鳥処理場で食鳥処理された成 鶏1羽当たり47円以内。
◆補助率 4分の3以内
③事業実施主体が、成鶏更新・空舎延長事業を実施するのに必要な 事務経費のうち、次にに該当するものとなります。
◆補助対象経費
・事業費、旅費、賃金、委託費、雑役務費など
◆補助率 定額
需要見通しの作成
需要見通しの作成は、全国的な鶏卵の需給 に関する情報を収集・分析の上、「鶏卵需給見通しに記載すべき項目」に掲げる項目を記載した鶏卵の需給に係る見通しを作成する事業です。
生産者を始めとする関係者に情報を提供する事を目的としています。
補助対象経費・補助率
需要見通しの作成の補助対象経費は、需要見通しの作成の事業に、必要となる経費となり、補助率は下記の通りとなります。
◆補助率 定額
まとめ
農林水産省で実施している令和3年度鶏卵生産者経営安定対策事業の鶏卵価格差補塡事業、成鶏更新・空舎延長事業、需要見通しの作成の3つの事業について、詳しく解説してきました。
鶏卵の季節ごとの需要の変化や価格の変動の予想は難しいことですが、令和3年度鶏卵生産者経営安定対策事業では、鶏卵生産者の経営と鶏卵価格の安定を目的とした支援が行われています。
鶏卵生産者がこれからの経営と鶏卵価格の安定を考えるのであれば、これらの補助金を活用して、安心できる事業の運営や継続につなげてください。
資金調達の一つとして役立つ、鶏卵生産者が利用できる補助金の紹介でした。