中小企業がスムーズに事業承継を行っていくためには、後継者や経営継続等の問題を乗り越える必要があります。
もしも、企業経営者が高齢となり、事業継承が滞ってしまい廃業に追い込まれたのなら、全ての従業員が解雇となってしまうでしょう。
また最近では、新型コロナウイルス感染症の影響によって事業の先行きが不安定となったために、不安を抱えている企業経営者も少なくありません。
社会問題にもなっている事業継承ですが、中小企業庁ではこのような状況を踏まえて様々な支援策が講じられています。
こちらの記事では、事業継承の資金調達として活用できる経営資源引継ぎ補助金と事業継承補助金の2つの補助金をご紹介していきます。
INDEX
経営資源引継ぎ補助金
中小企業庁では、中小企業が行う事業再編や事業統合等の後押しをするために経営資源引継ぎ補助金が設けられました。
経営資源引継ぎ補助金は、事業再編や事業統合によって行われる経営資源の引継ぎに必要とな経費の一部を補助しています。
特に新型コロナウイルス感染症の影響で懸念されている中小企業に対して「経営資源の引継ぎを促すための支援」「経営資源の引継ぎを実現させるための支援」の支援を行うことで、新陳代謝を加速させ経済の活性化を図ります。
経営資源引継ぎ補助金の補助対象となる事業は、事業再編、事業統合等を促進するという目的から、下記の「買い手支援型」と「売り手支援型」の2つの支援類型に分かれています。
買い手支援型
経営資源引継ぎ補助金の買い手支援型は、事業再編・事業統合等に伴う経営資源の引継ぎを行う予定の中小企業・小規模事業者となり、下記の全ての要件を満たさなければなりません。
◆事業再編・事業統合等に伴う引継ぎの後に、シナジーを活かした経営革新等を行うこと
が見込まれること。
◆ 事業再編・事業統合等に伴う引継ぎの後に、地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引
する事業を行うことが見込まれること。
売り手支援型
経営資源引継ぎ補助金の売り手支援型は、事業再編・事業統合等に伴い経営資源の引継ぎが行われる予定の中小企業・小規模事業者となり、下記の全ての要件を満たなければなりません。
◆地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業を行っており、事業再編・事業統合
等により、これらが第三者により継続されることが見込まれること。
補助対象者
経営資源引継ぎ補助金の補助対象となる方は、①〜⑥の要件を満たし、「経営資源引継ぎ
の要件」を満たす最終契約書の契約当事者となる中小企業、個人事業主となります。
①補助対象者は、日本国内に拠点もしくは居住地を置き、日本国内で事業を営む者であること。
②補助対象者又はその法人の役員が、暴力団等の反社会的勢力でないこと。反社会的勢力との関係を有しないこと。また、反社会的勢力から出資等の資金提供を受けている場合も対象外とする。
③補助対象者は、法令順守上の問題を抱えていないこと。
④補助対象者は、経済産業省から補助金指定停止措置又は指名停止措置が講じられていないこと。
⑤補助対象事業に係る全ての情報について、経営資源引継ぎ補助金事務局から国に報告された後、統計的な処理等をされて匿名性を確保しつつ公表される場合があることについて同意すること。
⑥ 事務局が求める補助対象事業に係る調査やアンケート等に協力できること。
補助対象経費
経営資源引継ぎ補助金の補助対象となる経費は、補助対象事業を実施する際に必要となる経費で、事務局が適切と認めた下記の経費となります。
1.使用目的が補助対象事業の遂行に必要なものと明確に特定できる経費
2.補助事業期間内に契約・発注をおこない支払った経費
3.補助事業期間完了後の実績報告で提出する証拠書類等によって金額・支払等が確認できる経費
タイプ | 補助対象経費の区分 |
買い手支援型(I型) | 謝金、旅費、外注費、委託費、システム利用料 |
売り手支援型 (Ⅱ型) | 謝金、旅費、外注費、委託費、システム利用料 (廃業費用)廃業登記費、在庫処分費、解体費、原状回復費 |
補助額
経営資源引継ぎ補助金の買い手支援型と売り手支援型の補助上限額と補助率は、下記の表の通りとなります。
タイプ | 補助率 | 補助下限額 | 補助上限額 |
買い手支援型(I型) | 補助対象経費の2/3 | 50万円 | ①経営資源の引継ぎを 促すための支援 100万円 |
②経営資源の引継ぎを 実現させるための支援 200万円 | |||
売り手支援型(Ⅱ型) | 補助対象経費の2/3 | 50万円 | ①経営資源の引継ぎを 促すための支援 100万円 |
②経営資源の引継ぎを 実現させるための支援 650万円 |
事業継承補助金
事業継承補助金は、事業を引き継いだ中小企業や小規模事業者を支援するために設けられた補助金です。
事業継承後の新しいチャレンジを支援し、4つの新制度が加えられています。
4つの新制度
事業継承補助金の4つの新制度は下記の通りとなります。
◆新制度①:GビスIDプライムの取得が必須
◆新制度②:補助上限額が変更
・補助率1/2以内の場合 225万円
・補助率2/3以内の場合 300万円
◆新制度3:補助率2/3の要件が変更
・ベンチャー型事業継承枠の要件を満たすこと
・または生産性向上枠の要件を満たすこと
◆新制度4:補助対象とできる「廃業費」の範囲が広がる
・「廃業費」とは、事業転換(少なくとも1つの事業所又は事業の廃業・廃止を伴うものをいう)により発生する、下記の補助対象経費を指します
「廃業登記費、在庫処分費、解体・処分費、原状回復費、移転・移設費用(Ⅱ型のみ)」
・「廃業費」が発生する場合は、補助上限額が上乗せされます。
・被承継者が支払った「廃業費」も補助対象経費とすることが出来ます。
・被承継者もしくは承継者以外の事業者が支払う「廃業費」を補助対象経費として認められる(事務局が認めた場合)
補助対象事業
事業継承補助金の補助対象となる事業は、事業継続が困難になることが見込まれている中小企業者等となります。
経営者の交代又は事業再編・事業統合を契機とした承継者が行なう経営革新等に係る取組を対象として補助しています。
①中小企業者等である被承継者から事業を引き継いだ中小企業者等である承継者による経営革新等に係る取組であること。
②補助対象事業は、以下に例示する内容を伴うものであり、補助対象事業期間を通じた事業計画の実行支援について、認定経営革新等支援機関の記名・押印がある確認書により確認される事業であること。
・新商品の開発又は生産
・新役務の開発又は提供
・商品の新たな生産又は販売の方式の導入
・役務の新たな提供の方式の導入
・事業転換による新分野への進出
・上記によらず、その他の新たな事業活動による販路拡大や新市場開拓、生産性向上等、事業の活性化につながる取組 等
◆補助対象事業は、以下のいずれにも合致しないこと。
・公序良俗に反する事業
・公的な資金の使途として社会通念上、不適切であると判断される事業(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第121号)第2条において規定される各営業を含む)
・国(独立行政法人を含む)の他の補助金、助成金を活用する事業
なお、本補助対象事業期間内に、同一の事業計画で国(独立行政法人を含む)の他の補助金、助成金の交付を受けている、又は受けることが決まっている場合は対象外となりますので、お気をつけください。
2つの支援類型
事業継承補助金の補助対象となる事業は、後継者継承支援型(I型)と事業再編・事業統合支援型(Ⅱ型)の2つの事業があります。
◆後継者継承支援型(I型)
経営者交代による継承の後に、新しい取り組みを行った方を補助する
(対象となる取組)
・親族内継承
・外部人材招聘など
◆事業再編・事業統合支援型(Ⅱ型)
事業再編・事業統合の後に、新しい取組を行った方を補助する
(対象となる取組)
・合併
・会社分割
・事業譲渡
・株式交換、株式移転
・株式譲渡など
補助対象者
事業継承補助金の補助対象者は、下記の①から⑦の要件を満たし、「事業継承の要件」を満たす中小企業となります。
①補助対象者は、日本国内に拠点もしくは居住地を置き、日本国内で事業を営む者であること。
②補助対象者は、地域経済に貢献している中小企業者等であること。地域の雇用の維持、創出や地域の強みである技術、特産品で地域を支えるなど、地域経済に貢献している中小企業者等 であること。
③補助対象者又はその法人の役員が、暴力団等の反社会的勢力でないこと。反社会勢力との関係を有しないこと。また、反社会的勢力から出資等の資金提供を受けている場合も対象外とする。
④補助対象者は、法令順守上の問題を抱えている中小企業者等でないこと。
⑤補助対象者は、経済産業省から補助金指定停止措置または指名停止措置が講じられていない中小企業者等であること。
⑥補助対象事業に係る全ての情報について、事務局から国に報告された後、統計的な処理等をされて匿名性を確保しつつ公表される場合があることについて同意すること。
⑦事務局が求める補助事業に係る調査やアンケート等に協力できること。
補助対象経費
事業継承補助金の補助対象となる経費は、補助事業を実施するために必要となる経費で、なおかつ事務局が適切と認めたものが対象となります。
下記の①~③の条件をすべて満たす経費となります。
①使用目的が本事業の遂行に必要なものと明確に特定できる経費
②承継者が交付決定日以降、補助事業期間内に契約・発注をおこない支払った経費 (原則として、被承継者が取り扱った経費は対象外)
③補助事業期間完了後の実績報告で提出する証拠書類等によって金額・支払等が確認できる経費
◆事業費
・人件費、店舗等借入費、設備費、原材料費、知的財産権等関連経費、謝金、旅費、マーケティング調査費、広報費、会場借料費、外注費、委託費、
◆廃業費
・廃棄登録費、在庫処分費、解体・処分費、原状回復費、移転・移設費用(Ⅱ型のみ計上化)
補助額
事業継承補助金の「補助率1/2以内(原則枠)」と「補助率2/3以内(ベンチャー型事業継承枠または生産性向上枠)」の補助率、補助上限額、上乗せ額は、下記の表の通りとなります。
◆補助率1/2以内(原則枠)
類型型 | 後継者承継支援型(I型) | 事業再編・事業統合支援型(Ⅱ型) |
補助上限額 | 225万円 | 450万円 |
上乗せ額 | +225万円以内(補助上限額の合計は450万円) | +450万円以内(補助上限額の合計は900万円) |
◆補助率2/3以内(ベンチャー型事業継承枠または生産性向上枠)
類型型 | 後継者承継支援型(I型) | 事業再編・事業統合支援型(Ⅱ型) |
補助上限額 | 300万円 | 600万 |
上乗せ額 | +300万円以内 (補助上限額の合計は600万円) | +600万円以内 (補助上限額の合計は1,200万円) |
まとめ
事業継承の資金調達として利用できる経営資源引継ぎ補助金と事業継承補助金の補助対象事業 、2つの支援類型、補助対象者、補助対象経費 、補助額を紹介してきました。
事業継承補助金では、新たな4つの制度についても触れていますので、事業継承を検討している方は、これらの補助金をぜひご活用ください。
ただし、補助金には申請期間が設けられておりますので、事業継承の検討をしている方は、来年度に向けて申請が行えるように準備を始めていきましょう。