全く新しいビジネスモデルやサービスを生み出すことに挑戦するベンチャー企業やスタートアップ企業が事業を展開し企業を大きく成長させていくためには、どうしても資金が必要になります。しかし、まだ実績を残していないベンチャー企業は銀行などからの融資を受けることは出来ず、多くのベンチャー企業は「資金不足」という大きな壁に阻まれます。
特に、起業したばかりや事業を開始したばかりの段階のベンチャー起業の場合、資金がなければ事業を展開することも出来ないため思い描いていた事業計画通りに進めることが出来ず、ライバルとの争いに負け、廃業に追い込まれてしまうという場合も少なくありません。
このような起業したばかり、もしくは事業を始めたばかりのベンチャー起業やスタートアップ起業は会社の成長ステージの4つ段階の中の一番最初の段階である「シード」ステージと呼ばれますが、このような企業を主に対象として出資を行っているのがシードアクセラレーターやインキュベーターと呼ばれるベンチャーキャピタル(VC)です。
今回この記事でご紹介する「KDDI ∞ Labo(ムゲンラボ)」はスタートアップ支援ナンバーワンとも呼ばれているベンチャーキャピタルであり、今まで数多くのベンチャー企業へ出資を行ってきています。
駆け出しのベンチャー企業にとって、このようなシードアクセラレーター・インキュベーターから出資を受けるということは事業を成功させるためにも非常に重要なこととなります。
KDDI ∞ Laboという会社について、特徴、今までの投資実績や投資方針などをご紹介していきますので、ベンチャーキャピタルから出資を受けたいと考えている方はぜひ参考にしてみてください。
KDDI ∞ Laboについて
2011年に立ち上げられたKDDI ∞ Labo(ムゲンラボ)はパートナー連合と新しいビジネスモデルやサービスを推進するベンチャー企業やスタートアップ企業へ投資を行うシードアクセラレータープログラムです。
1期あたり5社と少なめですが、出資や事業提携、メンタリング、リリース後サービスの広告、販売促進などのプロモーション、その他にもコミュニティスペースの提供などでベンチャー企業をサポートしています。
何と言っても注目すべきはその多種多様な企業のアセット、ノウハウが結集されたパートナー連合ではないでしょうか。KDDI ∞ Laboではエントリーの際にベンチャー企業がどのパートナーと事業共創を行っていきたいかを選択することが可能となっています。以下がKDDI ∞ Laboの主なパートナー連合に名を連ねる企業です。
- KDDI
- JOYSOUND
- クラブツーリズム
- 関西電力
- 近畿日本ツーリスト
- KOKUYO
- サントリー
- J:COM
- 住友生命
- 住友不動産
- 西武鉄道
- セブン&アイホールディングス
- Sony Music
- TAISEI
- DNP
- TDK
- テレビ朝日
- テレビ東京
- フジテレビ
- 電通
- 東急
- TOPPAN
- Microsoft
- 日本郵便
- バンダイナムコ
- 日立
- 日立物流
- ビックカメラ
- BIGLOBE
- mixiグループ
- 三井不動産
- 三菱UFJニコス株式会社
- ヤマトホールディングス
このように、KDDI ∞ Laboのパートナー連合には誰でも名前を知っているような大企業が在籍しており、数多くの協業や出資を実現しています。
更に、2012年にはKDDI Open Innovation Fundを設立。KDDI Open Innovation FundはKDDIとファンド運営者であるグローバルブレインが国内外の将来性のあるベンチャー企業に投資をするというコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)となっています。
このKDDI Open Innovation FundではKDDIという大企業が持っている幅広いネットワークやマーケティングスキルを活かし、auスマートパスなどの各種サービスとの連携、そして今では多くの人がその名を知る企業となった「メルカリ」や「ラクスル」、「ワンダープラネット株式会社」、「ONE MEWDIA」など数多くの企業へのベンチャー企業をサポートしてきた経験と実績を持ったグローバルブレインの事業運営支援によって、投資先に強力なサポートを行います。
エントリーし、採択後はメンターとともにβ版のリリースを3ヶ月間で目指していきます。β版が完成したらKDDI∞Labo Demodayでの公表を行います。
KDDI ∞ Laboの特徴
KDDI ∞ Laboはベンチャー企業やスタートアップ企業を熱心にサポートする企業として知られています。ベンチャー支援は他の企業も行っており、ソフトバンクグループやトヨタ自動車もベンチャー支援を行っていますが、それらの企業を抑えて、ベンチャー支援ではナンバーワンとの呼び声も高いのがKDDIなのです。
一体なぜKDDIがこうもベンチャー支援に力を入れることになったのかというと、それはガラケーからスマートフォンの時代になったことで、EZwebのようなプラットフォームが、キャリアからAppleやGoogleなどのOS側に移ったことが背景としてあります。
EZwebなどのプラットフォームを使ってデジタル化されたサービスの提供を行っているのはそのほとんどがベンチャー企業となっており、そんなベンチャー企業の成長のためには資金が必要だということでベンチャー企業やコーポレートベンチャーキャピタルを立ち上げ、支援を行ってきました。
KDDI Open Innovation Fundは今までに50社ほどへ出資を行っており、そこに更にKDDI ∞ Laboで関わった企業を加えればベンチャー企業への支援実績は100社を超えます。フラッシュセール型ECサイト「LUXA」を運営するルクサやデータマネジメントプラットフォームのSupershipはKDDIグループに参加しており、このような有望なベンチャー企業とのM&AはKDDIにとって重要な成長戦略でもあるのです。
このことからもわかるように、現在ではシードアクセラレーター以上にコーポレートベンチャーキャピタルの面が強くなってきています。
KDDI ∞ Laboの投資方針
KDDI ∞ Laboが募集を行っているのは以下のような分野です。
- エンターテインメント…非日常体験を深化するサービスや技術、製品
- スポーツ…スポーツの観戦、体験、支援に繋がる技術など
- モビリティ…様々な交通手段や移動手段を1つに統合するサービスなど
- スマートシティ…街中での暮らしを豊かにする技術やサービス
- ワークイノベーション…働き方改革に繋がるサービスや技術、製品
- トラベル…旅行体験をアップデートするサービスや製品
- フード…食の関連領域とITテクノロジーを掛け合わせた事業
- その他…ヘルスケア、不動産などパートナー企業と事業共創を行っていきたい技術やサービス
また、KDDI Open Innovation Fundは2018年4月にKDDI Open Innovation Fund3号 (KOIF3号) を立ち上げましたが、これは200億円という巨大ファンドとなっています。(1号、2号ファンドは50億円)
KDDI Open Innovation Fund3号 (KOIF3号)の主な投資領域を以下でご紹介します。
- AI
- IoT
- Big data
- xR
- Healthcare
- Robotics
- Home
- New Technologies
- Financial
- Sports
- Entertainment
- New Space
名称 | KDDI Open Innovation Fund 3号ファンド |
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運用期間 | 2028年3月までを予定 |
投資対象 | 国内外のスタートアップ企業 |
運営者 | グローバル・ブレイン株式会社 |
運用総額 | 200億円 |
KDDI ∞ Laboの投資実績
KDDI ∞ Laboは今まで1〜11期プログラム採択チーム、事業共創プラットフォーム採択チームへサポートを行ってきています。
1期プログラム採択チームではスモールギフトサービスの「giftee」、Facebookのアカウント情報を使いビジネスランチセッティングを行う「ソーシャルランチ」、誰でも簡単にAndroidアプリが作れる「リアージュ」、アニメデコを使って気軽にチャット出来るサービス「anime talk」、同じ電子書籍を読んでいるユーザーと交流出来る「Qlippy」などユニークなサービスへの投資を行っています。
コーポレートベンチャーキャピタルのKDDI Open Innovation Fundとしては2019年10月25日現在で合計で65社への出資を行っています。以下でその一部をご紹介します。
- TOLOT
- モイ
- ライバー
- 4D REPLAY, Inc. (Korea)
- ワンメディア
- ORIGAMI
- MONOCO
- giftee
- LUXA
- Creema
- レアジョブ
- ジモティ―
- nanapi
- TSUMIKI
- VentureBeat (US)
- ログリー
- スマートキャンプ株式会社
- Ossia (US)
- ZOYI (Korea)
- Allganize (US)
- Mad Street Den (US)
- Kids Diary
- Pogoseat (US)
- ホスティ
- Neutron Holdings, Inc (Lime)
- Telexistence
- UnaBiz (シンガポール)
- Resin.io (UK)
- Pebblebee
- ハコスコ
- Halo Neuroscience (US)
- CAMPFIRE
- 株式会社アラヤ
- Aspectiva (Israel)
- イタンジ
- ナノエッグ
KDDI ∞ Laboから投資を受けるメリット
KDDI ∞ Laboのシードアクセラレータープログラムに参加することやコーポレートベンチャーキャピタルのKDDI Open Innovation Fundから出資を受けることの大きなメリットと言えば、やはり大企業からの支援を受けることが出来るということです。
KDDI ∞ Laboならば上でもご紹介したKDDIを始めた様々なパートナー企業との事業共創に取り組んでいくことが出来ますし、KDDI Open Innovation FundならばKDDIグループからの支援を受けることが出来ます。大企業の持つノウハウや幅広いネットワークの提供を受けることが出来るというのは資金提供以上のメリットがあると言えるでしょう。
KDDI ∞ Laboに掲載されている卒業生の声の中から「giftee」を提供している株式会社ギフティの代表取締役・太田睦氏のコメントをご紹介します。
一緒に参加している他チームは同志でもありライバルでもあるので、「彼らには負けたくない」という気持ちで毎日遅くまでサービス開発を進め、何度も人前でサービスのプレゼンをしました。
担当のメンターとは同じ目線で議論を重ね、本当に一緒にサービスを作っていった感覚がありました。
とにかく3カ月という短い期間で集中的に詰め込むので、サービスとして、チームとして急成長できたという点がとても良かったと思います。
卒業後は∞ Laboへの参加をきっかけとしてKDDIと資本関係を結び、auスマートパスとのサービス連携や法人向けソリューションの共同提案など協業関係も進んでいます。特にスタートアップが苦手とする集客や信用力の面でサポートしてもらえてるのはとても助かっています。
∞ Laboにはこの他にも会社の登記に必要な法務面や資金調達に関わるファイナンス面でのサポートもありますので、スタートアップを立ち上げるのにベストな環境が揃っていると思います。
出典元:卒業生の声
KDDI ∞ Laboでは大企業からの後押しを受けることが出来るだけでなく、同じように選び抜かれた優秀なライバルチームも参加しているため、ライバルからも多くを学ぶことが出来ます。
また、3ヶ月という非常に短い期間の集中的なプログラムもチームとして急激なスキルアップを感じることが出来たり、メンターとどのようにしてサービスを作り上げていくかなど、企業の今後にとってプラスとなる部分が多くあります。
KDDIとの資本関係や信用力、集客力など、ベンチャー企業が求めていたサポートを受けることができるだけでなく、非常に多くのメリットがあるのです。
まとめ
以上、KDDI ∞ LaboやKDDI Open Innovation Fundについてご紹介しました。
現在ではシードアクセラレーター以上にコーポレートベンチャーキャピタルとしての面が強くなっているKDDIですが、現在でもスタートアップ支援ではナンバーワンと言われており、KDDIとの事業シナジー効果を生み出すことが出来るであろうベンチャー企業にとってはぜひ出資を受けたい企業の一つでしょう。
スタートアップ企業の選考基準については「これがあれば便利」というところ以上に「これがあったら楽しい」というエンターテインメント性を重視しているため、このような点も自社の事業と合うのかどうか、検討してみましょう。
また、経営者のどこを見るかということについては「ビジョンの大きさ」が重要で、国内市場ではなくグローバル志向が高い経営者に注目したいと考えているようです。