最近では、国や自治体、様々な団体によって数多くの補助金や助成金が企画されており、受給している企業も増えてきました。
身近になっていく補助金ですが、受給後にきちんと会計処理を行っていますか?
「補助金の勘定科目は?」「補助金に税金はかかるのか?」など、補助金や助成金の性質を知った上で仕訳や処理を行っていく必要があります。
そこで、こちらの記事では、補助金や助成金を受け取った一般の事業法人や個人事業主向けの勘定科目や仕訳方法、事務処理する時の注意点などを解説していきます。
また、中小企業などに向いている補助金3選も合わせて紹介していますので、ぜひご覧ください。
補助金と助成金の違いを確認
補助金と助成金は、返済する必要のないお金と言う点では一致していますが、それぞれの特徴は少し異なっています。
会計処理を行うにあたって、補助金と助成金の本質的なものを正しく理解していないと適切に仕訳処理ができない場合もありますので、まずは「補助金と助成金の特徴」を確認してください。
補助金の特徴
国が交付者となり対象受給者へ支給される補助金は、「補助金などに係る予算の執行の適正化に関する法律」に基づいて行われます。
下記がその条文であり、国からの補助金の特徴となります。
(国からの補助金)
◆補助金の財源が税金であることに留意し、受給者は誠実に目的の事業を行うよう努めなければならない
◆受給者は政令で定められた申請が必要。交付者が審査し、交付の可否を決定する
◆交付者は受給者の事業実施状況を確認し、目的と異なる用途に使用した場合には取り消しができる
地方自治体が交付者となり対象受給者へ支給される補助金は「地方自治体法」が基準となっている補助金で、下記のような特徴を持っています。
(地方自治体からの補助金)
◆地方自治体の補助金も財源は税金から賄われている
◆国からの補助金と同様、交付者による適正な審査とモニタリングが行われ、納税者への説明責任が果たせる状況が必要となる
助成金の特徴
助成金は、上記の補助金のように根拠となる法律が記されていませんが、国や地方自治体、自治体以外の団体などが交付し、助成金の財源は、税金や雇用保険料などがあります。
一般的には、助成金は要件を満たしていれ受給できるとされていますが、明確な定義があるわけではありません。
補助金が発生した場合の仕訳方法
仕訳は事業で発生した取引を会計帳簿に記載するために行います。
取引が発生すると仕分けを行い、次に総勘定元帳への転記、試算表への集計と言った流れで行っていきます。
補助金を受給した場合は、下記の「雑収入で仕分けした場合」「固定資産を購入する場合の直接減額方式」「固定資産を購入する場合の積立金方式」の3つの仕訳パターンが考えられます。
勘定科目が雑収入による仕訳
補助金は営業外収入となるために、勘定科目は雑収入となります。
損益計算書原則では、「その他営業活動以外の原因から生ずる損益であって特別損益に属しない収益」が営業外収益となるため、補助金は営業活動による収益でないために、雑収入となるのです。
(補助金が10,000受け取った時の仕訳)
借方 | 貸方 | ||
預金 | 10,000 | 雑収入 | 10,000 |
固定資産を購入する場合の直接減額方式
補助金には、固定資産を購入するときに支給される補助金があります。
その場合には、圧縮記帳という方式をとり、補助金の効果を無くさないため法人税の課税を繰延する方式で仕訳をしていきます。
補助金には法人税がかせられてしまうので、受け取った補助金が減ってしまい固定資産が購入できなくなってしまう場合も考えられます。
圧縮記帳で補助金を仕分けすれば、このような事態を回避できるのです。
◆直接減額方式
(補助金10,000受け取り、固定資産30,000を購入した時の仕訳)
借方 | 貸方 | ||
現預金 | 10,000 | 補助金受贈益 | 10,000 |
固定資産 | 30,000 | 現預金 | 30,000 |
固定資産圧縮損 | 10,000 | 固定資産 | 10,000 |
固定資産を購入する場合の積立金方式
補助金には、固定資産を購入したときのもう一つの会計処理として、積立金方式があります。
積立金方式のやり方は、固定資産を圧縮せずに圧縮積立金を通して法人税の計算の中から、所得を圧縮するやり方です。
勘定科目となっている補助金受贈益と固定資産圧縮損は特別損益としても構いません。
補助金の勘定科目は、性質や金額によって判断されることになります。
◆積立金方式
(補助金10,000受け取り、固定資産30,000を購入した時の仕訳)
借方 | 貸方 | ||
現預金 | 10,000 | 補助金受贈益 | 10,000 |
固定資産 | 30,000 | 現預金 | 30,000 |
圧縮積立金積立額 | 10,000 | 圧縮積立金 | 10,000 |
補助金を仕分けする時期について
補助金は申請すればすぐに受給できるわけではなく、対象用途への使用までに時間がかかります。
では、補助金の仕訳はどのようなタイミングで行えばよいのでしょうか?
「補助金を申請した時」には、補助金の受給が確定したわけではないので、会計処理する必要がありません。
仕訳のタイミングは、「補助金が確定した時」「補助金を受給した時」となります。
補助金が確定した時
補助金が確定した時点では、まだ補助金は受け取れません。
確定から補助金の受け取りまで時間がかかる場合がありますので、下記のように仕訳を切ります。
借方 | 貸方 | ||
未収入金 | 10,000 | 雑収入 | 10,000 |
補助金を受給した時
補助金を実際に受け取った時には、下記のように仕訳を切ります。
確定時に未収入金として計上しているので、未収入金を預金に振り替えていきます。
(受給時の仕訳)
借方 | 貸方 | ||
預金 | 10,000 | 未収入金 | 10,000 |
返還したときの仕訳
もしも補助金を返還した時には、下記のように雑収入を取り消す形で仕訳を切ります。
(返還時の仕訳)
借方 | 貸方 | ||
雑収入 | 10,000 | 預金 | 10,000 |
決算をまたぐ場合の仕訳
補助金の一部には「決算をまたぐ場合には見積もりで計上する」と規定されています。
そのような場合のには、下記のように会計処理を行います。
(決算をまたぐの場合の仕訳)一部のみ
借方 | 貸方 | ||
未収入金 | 10,000 | 雑収入 | 10,000 |
『規定内容』
・休業手当、賃金、職業訓練費などの経費を補填するために受給する各法令に基づく給付金については、休業、就業、職業訓練などの事実があった事業年度の決算において仕訳を切る
・交付を受けるべき金額が具体的に確定していない場合であっても、その金額を見積もって計上し、法人税が課される
・申請中の補助金がある場合は、この規定に該当するかどうかの確認が必要といえる
補助金を事務処理する場合の注意点
補助金や助成金の申請を行っても、決定となり支給されるまでには数ヶ月かかることがあります。
その際の注意点として、補助金の交付確定後(受給される前)に決算となった場合には、未収入金と雑収入の勘定科目で計上することを忘れないようにしてください。
もしも、会計処理の漏れとなってしまった場合には、決算の修正や法人税修正申告が必要となってしまう場合もありえるのです。
また、固定資産購入で補助金を利用した場合には、法人税課税のタイミングがポイントとなります。
圧縮記帳はあくまでも選択適用で、強制ではありませんので、「圧縮記帳にするのか?」「圧縮記帳をしないのか?」を選択することになるでしょう。
そして、圧縮記帳にするのなら、圧縮記帳をよく理解した上で注意して会計処理を行うようにしてください。
(圧縮記帳の要件)
「補助金を受給した事業年度に返還不要が確定し、固定資産を取得すること」
補助金に対する税金について
補助金を受け取った法人は、収益と考えられるために課税対象となり法人税が課税されることになります。
補助金を受け取った個人事業主の場合には、所得税法第27条に基づいて行われ、事業から発生する所得に対して所得税が課税されます。
ただし、補助金には消費税については課せられる事はありません。
消費税は、4つの要件で課税要件がありますが、補助金は全ての要件を満たしていないので、不課税となります。
中小企業や個人事業向けの補助金3選
国や地方自治体、その他の団体から補助金や助成金が設けられています。
補助金や助成金の内容は、つねに最新の情報に更新されていきますので、申請する前には実施している団体のホームページなどで確認しておきましょう。
次に、具体的な補助金の例として、中小企業や個人事業主が利用できる補助金3選を紹介していきます。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、地域の商工会議所や商工会の助言を受けて、経営計画を作成し、その計画に沿って販売開拓などの取り組みに対して支援を行っています。
◆所轄
・中小企業庁
◆補助対象者
・会社および会社に準ずる営利法人(株式会社、合名会社、合資会社、合同会社、特例有限会社、企業組合・協業組合)
・個人事業主(商工業者であること)
・一定の要件を満たした特定非営利活動法人
◆補助額
・1事業者あたり上限50万円
・条件によっては上限500万円
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援するしています。
◆管轄
・全国中小企業団体中央会
◆補助対象者
・中小企業者
・特定非営利活動法人
◆補助額
・補助上限額 1,000万円(特別枠の場合+50万円)
・補助率
(通常枠) 中小企業 1/2、 小規模企業者・小規模事業者 2/3
(特別枠])A類型 2/3、 B・C類型 3/4
(事業再開枠])定額(10/10、上限50万円)
創業助成金
創業助成金は、東京都内の開業率の向上を目指し、東京都で創業のモデルケースになりうる創業予定の個人の方および創業から間もない方を支援している助成金です。
◆管轄
・東京都中小企業振興公社
◆補助対象者
・東京都内で創業を予定されている方
・創業後5年未満の中小企業者等で、一定の要件を満たす方
◆補助額
・補助上限額 300万円
・補助下減額 100万円
・助成率 助成対象と認められる費用の 2/3以内
まとめ
補助金を受け取った時の仕訳方法や仕訳をする時期、事務処理の注意点、補助金に対する税金について、詳しく解説してきました。
返済の必要がない補助金は、事業の資金調達につながる心強い支援ですが、受給後には適性な勘定科目と仕訳方法で適性に事務処理を行うことが大切となります。
固定資産を購入する際に受給した補助金は、圧縮記帳を行えば補助金の効果を保つことができるでしょう。
また、中小企業などに向いている補助金3選として「小規模事業者持続化補助金」「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」「創業助成金」も合わせて紹介していますので、参考にしてみてください。