インターネットを介して、多くの人々から資金を募るクラウドファンディング、魅力あるプロジェクトに応援が集まり、資金が集まることによってプロジェクトを成功へと導いてくれます。
ただし、「プロジェクトが成功したから終わり」ではなく、クラウドファンディングで募った資金にかかる税金や確定申告などの会計処理はきちんと行わなければなりません。
クラウドファンディングでは、種類によって確定申告が必要だったり、控除が受けることができたりと、意外と複雑な仕組みとなっているために、戸惑う方は多いのではないでしょうか?
こちらの記事では、クラウドファンディングの種類に加えて、種類別の確定申告や控除などをご紹介していきます。
クラウドファンディングを利用した方、これから始めようとしている方にとって役立つ記事となっています。
INDEX
クラウドファンディングの種類によって異なる確定申告
クラウドファンディングは、立ち上げるプロジェクトの資金をインターネット上で数多くの資金提供者を募り、資金を集める資金調達方法です。
資金を集める人、資金を提供する人、双方のマッチングの場を提供するクラウドファンディング運営事業者の3者で構成されています。
クラウドファンディングの種類は、大きく分けて主にリターンを求める投資型と、寄付を求める非投資型に分けられています。
また、非投資型には寄付型や購入型、投資型には貸付型、ファンド型、株式型等に分けられており、その種類によって税金や確定申告の方法は違ってきます。
税金や確定申告を間違いなく行うために、まずは「自身の行っているクラウドファンディング」を確認しておきましょう。
◆非投資型
・寄付型クラウドファンディング
・購入型クラウドファンディング
◆投資型
・貸付型クラウドファンディング
・ファンド型クラウドファンディング
・株式型クラウドファンディング
クラウドファンディング非投資型の2つの種類
非投資型のクラウドファンディングには、お金以外のサービスや物などのリターンが受け取れる、寄付型と購入型の2つの種類があります。
寄付型と購入型のクラウドファンディングについて、みていきましょう。
1.寄付型クラウドファンディング
寄付型のクラウドファンディングは、認定NPO法人や自治体、公的な活動を行う団体に出資をするクラウドファンディングの仕組みを活用した寄付です。
募金などと同じ税法が提供され、税金逃れとならないために細かく設定がされています。
2.購入型クラウドファンディング
購入型クラウドファンディングは、商品開発等に必要な資金を募り、その代わりに開発された商品などがリターンとなるクラウドファンディングです。
購入型を利用した場合には、通常の商取引行為となり売買契約にも基づいた商品やサービス等となります。
クラウドファンディング投資型の3つの種類
投資型のクラウドファンディングは、金銭的なリターンを得ることができるクラウドファンディングです。
投資型のクラウドファンディングには、貸付型、ファンド型、株式型の3つのクラウドファンディングに分類されています。
3.貸付型クラウドファンディング
貸付型クラウドファンディングは、融資型、ソーシャルレンディングとも言い、融資を受けたい会社と融資をしたい複数の個人をマッチングしていくクラウドファンディングです。
インターネット上で融資したい個人から小口資金を集め、まとめて大口化し企業に融資を行うという仕組みです。
4.ファンド型クラウドファンディング
ファンド型クラウドファンディングは、クラウドファンディング事業者が個人投資家から出資を募り、売上や成果、出資額に応じた金銭のリターンを出資者が受け取ります。
貸付型クラウドファンディングとの違いは、事業の売上に基づいてリターンが決定される点です。
目標に達していないと元本割れのリスクを負いますが、プロジェクトによって生産された物やサービスを受け取れる場合もあります。
5.株式型クラウドファンディング
プロジェクトを行っている非上場企業株主に出資を募るのが、株式型クラウドファンディングです。
未公開株であるためにリスクが高く資金の回収が難しい反面、ベンチャー企業の株主となりますので、経営に関与できるケースや上場や買収により大きな利益がでる可能性が含まれています。
次に、クラウドファンディングごとの確定申告等について見ていきましょう。
1.寄付型クラウドファンディングの確定申告
寄付型クラウドファンディングでは、提供された資金が税額控除の対象になり寄付金控除か、寄付金特別控除(税額控除)を選択することになります。
ただし、寄付型クラウドファンディングの全てが寄付控除の対象となるわけではなく、確認するためにはプロジェクトの寄付先が、認定NPO法人、学校法人等の条件を満たしている団体が優遇を受けることになります。
◆寄付金控除か、寄付金特別控除(税額控除)を選択する
確定申告で受けられる控除
寄付金控除か寄付金特別控除(税額控除)の選択は、確定申告の際には計算したうえで、有利な方を選ぶことができますので、下記の計算式にあてはめて計算してください。
◆寄付金控除の計算式
納税額=課税所得(総税収-各種諸控除合計)×税率
寄付金控除額=(前年1月1日から12月31日までに出資し受領された合計金額-(2,000円)
・寄付金の合計金額は所得金額の40%相当額が限度
・前年1月1日から12月31日までの収入金額から経費を差し引いた金額が所得金額
◆寄付金特別控除の計算式
納税額=課税所得(総収入-諸控除)×税率-寄付金特別控除
寄付金特別控除=(前年1月1日から12月31日までに出資し受領された合計金額-2000円)×40%
・寄付金の合計金額は所得金額の40%相当額が限度
・特別控除額の合計は、所得税額の25%まで(100円未満は切り捨て)
・寄付金特別控除を利用する場合は、諸控除に寄付金控除を含めることはできません。
2.購入型クラウドファンディングの確定申告
購入型クラウドファンディングで資金を提供された者は、税金を納める必要はありません。
購入型の場合は、商品開発等の資金のリターンとして、物やサービスが提供されます。
この場合、税法上では製品の購入と解釈されることになりますので、税金を納める必要がないのです。
◆税金を納める必要なし
3.貸付型クラウドファンディング・4.ファンド型クラウドファンディングの確定申告
貸付型、ファンド型のクラウドファンディングは、お金を貸してリターンとして利子を受け取ることになります。
ファンド型は、クラウドファンディング事業者が資金を募り、その資金を様々なビジネスに投資し、売上や成果、出資額に応じた金銭のリターンを配当金として分配します。
貸付型とファンド型を所得税法に基づいてみてみると、分配金は雑所得として分類されることになります。
◆雑所得の課税方式は、総合課税です。
総合課税とは?
総合課税で算出する場合、給与所得や不動産所得・事業所得など他の所得と合算した課税所得に、所得税の税率をかけて所得税額を出します。
所得ごとに計算して合算し、社会保険料控除や基礎控除などの各種控除額を控除した金額に税率を掛けて所得税の計算をしていきます。
なお、税率は累進課税方式となっており、合計した所得が多ければそれだけ税率も上がり、所得によって税率は下記の5%から45%の7段階に分かれています。
◆所得税の速算表
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
源泉徴収が行われている
貸付型とファンド型のクラウドファンディングの分配金は、クラウドファンディング事業者が所得税の前払いとなる源泉徴収を行っています。
分配金支払いの際に、クラウドファンディング事業者より源泉徴収される金額は下記の計算式で算出されます。
所得税20%+復興特別所得税0.42%=20.42%
年間の所得を合算し、所得控除(基礎控除、社会保険料控除等)をした金額が、総合課税の所得となります。
もしも所得税よりも多くの源泉徴収額が引かれてしまった場合には、確定申告で還付金を受けてください。
貸付型クラウドファンディングで確定申告の義務が生じない場合
貸付型クラウドファンディングで収入を得た場合に、下記①~④のケースとなっているのなら、所得税の確定申告の義務はありません。
①給与の支払いが1カ所のみに加えて、年間給与収入が2000万円以下、かつクラウドファンディング、その他の所得の合計が20万円以下の場合
②給与の支払いを2カ所以上から受けている場合には、年間給与収入が2,000万円以下、加えて年末調整をされていない給与の収入金額と、クラウドファンディング、その他の所得の合計が20万円以下の場合
③公的年金の収入金額が400万円以下、加えて公的年金以外の給与およびクラウドファンディング、その他の所得の合計が20万円以下の場合
④給与、および公的年金、クラウドファンディングなどその他の収入の額が、基礎控除(38万円)や社会保険料(年金保険料や健康保険料)控除などの控除額合計以下の場合
住民税の申告は忘れないように
貸付型やファンド型クラウドファンディグでは、上記のように所得税の源泉徴収は行われていますが、住民税はご自身で申告する必要があるので忘れないようにしてください。
なお、住民税は基本的に一律10%、ただし申告方法は市区町村によって異なります。
5.株式型クラウドファンディング
株式型クラウドファンディングでは、上場企業していない企業の株主になり、配当金が利益として受け取れ、株式を売却し値上がり益を得られる可能性があります。
この場合、配当金は配当所得となり、総合課税の対象となりますが、貸付型やファンド型のように、源泉徴収され20.42%の所得税がすでに引かれているので、確定申告の必要はありません。
株式を売却して利益を得たときには、譲渡所得となり分離課税の対象となり、確定申告は下記の通りとなります。
・利益に対して20.315%の課税(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)
・給与所得と退職所得以外の所得が20万円以上ある場合には確定申告
まとめ
クラウドファンディングを行った際の確定申告ついて、クラウドファンディング非投資型と投資型の種類の説明を始めとして、寄付型、購入型、貸付型、ファンド型、株式型のクラウドファンディングのそれぞれの確定申告について、解説してきました。
クラウドファンディングでは控除されるもの、源泉徴収されているもの、納税の必要のないものなど、確定申告の方法は様々です。
自身が行っているクラウドファンディングの種類を確認してから、どのような確定申告となるのか、事前によく確認しておくことが大切となります。
資金調達として役立てたクラウドファンディングの確定申告についても、会計処理をきちんと行うようにしてください。