
脱サラして自分で事業を起こそうと思ったときに、一番に重要なのでが開業資金です。
新規事業を起業する際に、貯金が少なく不安に思うことはありませんか?
そんな時は国から支給される補助金・助成金の制度を利用して資金面の不安を解消できます。
個人事業主が受けられる助成金、子育て中の女性の開業支援をする助成金など、起業に関する補助金・助成金には種類があります。
この記事では、女性起業家にも役立つ開業助成金・補助金の種類と受給条件、もらい方や手続きのほか、失敗しないポイントや受給のメリットについてご紹介します。
そもそも、助成金と補助金の違いは?
「助成金」と「補助金」は、どちらも「国もしくは地方自治体から交付され、返済義務がないお金」という意味では同じですが、両者の目的と意義には明確な違いがあります。
助成金は「従業員教育」や「育児休暇活用」等、企業努力の結果一定の条件をクリアした場合に給付を受けることができるお金です。
つまり先に目的を達成して初めて受け取ることができるのが助成金です。
対して補助金は設備投資やホームページの導入など、これから行う(または現在行っている)事業拡大や活性化のために不足している資金に対して補助として給付されるお金です。
つまり、「結果」に対して給付されるのが助成金、「目的」に対して給付されるのが「補助金」ということです。
助成金・補助金は大きく分けて4種類ある
日本には数多くの助成金や補助金がありますが、主催している団体はおもに4つです。
サポートする目的やサポート対象となる事業・企業がそれぞれ違いますので、まずは団体別に助成金・補助金の特徴をチェックしましょう。
経済産業省
日本経済や産業の発展を管轄しているのが経済産業省(経産省)です。
小規模な事業者や起業を考えている人を支援する役割を持つ中小企業庁も管轄となっています。
経産省の補助金は、地域の活性化や中小企業の振興を目的としたものがほとんどです。
会社の設立直後であれば、創業期の企業や事業規模が小さい企業の成長を助ける目的の補助金が利用しやすくなっています。
また、地域にインバウンド旅行客を呼び込む事業や、省エネを促進する事業をしている企業に対して支給される補助金も用意されています。
ちなみに、経産省が管轄しているのは補助金だけで、助成金はありません。
厚生労働省
厚生労働省は、福祉や労働、雇用などを管轄している省庁です。
職業能力向上のための補助金や雇用促進を目的とした助成金が用意されています。
高齢者や障害者の雇用や第二新卒者を雇ったときに利用できるもの、沖縄県内で若者たちを雇ったときに利用できるものなど、雇用に関する助成金が多いことが特徴です。
会社設立時に限らず、従業員を雇う計画がある場合は、一通りチェックしておくことをおすすめします。
地方自治体
各市区町村の自治体が主催している補助金もあります。
それぞれの地域の活性化を目的としていることから、趣向を凝らしたおもしろいものが豊富です。
例えば、長野県松本市では、新規に事業を始める方に対して家賃を負担する「新規開業家賃補助制度」があります。
これは、最大2年間受け取ることができ、上限は1年目が月額80,000円、2年目が月額60,000円です。
事業所の近隣にある商店街への活動協力などが条件となっています。
詳しくは「松本市公式ホームページ」を参考にしてください。
東京都港区の場合は、家賃補助だけでなく、Webサイトを新規で作成したいときや販路を拡大したいときに、その費用を補助してくれる制度もあります。
詳しくは「港区公式ホームページ」、及び港区産業観光ネットワーク「MINATOあらかると」を参照してください。
しかし、中には補助金に注力していない自治体もありますので、起業する際は注意してください。
また、福祉系の補助金は充実しているものの、産業系は少ないといったところも少なくありません。
また、その時々の自治体の方針によって、制度のあり方や金額が大きく異なることもあります。
いずれにしても、一度は自分が登記した(する予定の)市区町村のホームページを確認しておいたほうが良いでしょう。
民間団体・企業
公益団体や民間企業などが、社会公益を目的として行っている助成金・補助金制度もあります。種類や条件、支給額はその団体によりさまざまです。
例えば、三菱UFJ技術育成財団には、新技術や新製品の開発に対する助成金制度があります。
事業の実現可能性から目新しさ、社会への貢献具合など審査内容はきびしいですが、最高300万円まで助成してもらうことができます。
こちらは、創業後5年以内であれば応募可能となっていますので、技術に自信のある方はチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
詳細は、三菱UFJ技術育成財団の公式サイトでご確認ください。
起業&開業時に利用できる助成金&補助金4つ
次に開業のときに活用出来る補助金を4つ紹介します。
この補助金は、事業を始める際に非常によく使われている助成金です。
会社を設立したり、個人事業主で開業を検討する際は、ぜひ下記の4つを頭にいれ、税理士や社労士に相談してみましょう。
①キャリアアップ助成金
契約社員(有期契約労働者)・パートタイマー(短時間労働者)・派遣社員(派遣労働者)等の正社員ではない労働者=非正規雇用労働者を社内でキャリアアップさせるため、その促進や正社員化、待遇改善や人材教育を行った事業主に対して給付される助成金制度です。
キャリアアップ助成金を受給するためには、雇用保険事業所毎にキャリアアップ管理者を要し、対象となる労働者のキャリアアップ計画書を作成して管轄の労働局長から受給資格の認定を受け、実際にそのキャリアアップ計画に取り組む必要があります。
また、キャリアアップ助成金には「正社員化コース」や「人材育成コース」、そして「処遇改善コース」があり、条件を満たせれば起業・開業時に助成金を受給することができます。
②創業・事業承継補助金
創業補助金とは、創業にかかる必要経費の一部を国または地方公共団体から補助を受けることのできる制度です。
年度によって名称が変更されており、2018年からは「地域創造的起業補助金」という名称となっています。
この補助金は、起業することでその地域に新たな需要や雇用を創出し、経済を活性化させることをその目的としています。
事業継承補助金とは、中小企業を対象に経営の世代交代に伴い、経営改善・革新などを実施しようとしている企業が受給できる補助金のことです。
事業継承補助金を受給することで、経営改善等に該当する各種事業等に必要な経費を事業継承補助金で充てることができるようになります。
後継者が事業継承した後に経営改善を行う場合に給付されるⅠ型と、事業再編や統合など、事業継承やM&A実行後に経営改善を行う場合に給付されるⅡ型に分かれます。
③小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金とは、従業員数の少ない会社や個人事業主等が日本商工会議所や全国商工会連合会の支援を受けて、事業の経営計画(事業計画もしくは創業計画)を作成し申し込むことで補助金を受給できる制度です。
この補助金を受けるためには、申込みを行う時点ですでに起業していることが必要です。
創業の「予定」がある(まだ創業していない)場合、申込みすることができません。
また、従業員が20名以下(一部業種は5名以下)でなければいけません。
この補助金の給付を受けるためには、申込み書類作成の段階で商工会議所もしくは全国商工会連合会の支援を受け、承認印を貰う必要があります。
支援無しで申込申請はできないので注意してください。
④地域中小企業応援ファンド【スタート・アップ応援型】
「地域中小企業応援ファンド【スタート・アップ応援型】」とは、中小企業基盤整備機構(中小機構)と各都道府県の公共団体や金融機関などが共同出資して設立された官民ファンドのことです。
中小企業が取り組む新規事業に対して地域貢献度が高いものとしてファンド運営会社(各都道府県の中小企業支援機関等)が採択すれば、そのファンドの運用益から補助金の給付を受けることが可能です。
地域の農林水産物や伝統技術を使い商品開発や販路開拓といった取り組みを行う中小企業を対象とする「地域中小企業応援ファンド」と、地域の農林漁業者と連携して商品開発・販路開拓を行う中小企業が対象となる「農商工連携型地域中小企業応援ファンド」の2種類があります。
助成金&補助金を利用するメリット
助成金や補助金の制度を利用するメリットは主に2つあります。
ひとつは、助成金や補助金が「返済不要」であるという点です。
助成金は、雇用や労働環境などといった課題をクリアし、環境を整備した結果給付を受けることができるものです。
また、補助金は地域の活性化など社会的に意義のある事業として採択され、それに要した費用の一部が補助されるというものです。
つまり、助成金や補助金は申請すれば自動的にもらえる=「ただでもらえるお金」ではなく、あくまで自己努力やその達成の結果給付されるお金です。
しかし、助成金や補助金には返済の義務はなく、利息を取られることのない「自己資金」とすることができるお金です。
自己資金力が増えることは金融機関の融資を受けやすくなるなど、様々なメリットがあります。
もうひとつのメリットは助成金や補助金を受給したという事実が、政府や地方自治体の定める基準を満たしたことを意味し、いわば国や自治体から「お墨付き」をもらうことになります。
これは企業の信用を大きく向上させることに繋がります。
女性が個人事業主になるには?
女性の社会進出にともない、女性が料理教室やカメラマン、ネイルアーティストといったカタチで自ら起業するケースも増加の傾向にあります。
東京商工リサーチの調査によれば、全国の女性社長の数は2010年に約21万人だったのに対し、2016年には1.7倍の約37万人に増えています。
女性起業家増加の傾向は今後も続くことでしょう。
こうした女性起業家増加の流れを受け、国や地方自治体などが資金面でのサポートを目的とした、さまざまな助成金や補助金の制度を設けています。
東京都中小企業振興公社は、女性や若手男性が新規開業時にかかる店舗の新装や改装、さらには設備導入に必要な経費の一部を助成する「若手・女性リーダー応援プログラム助成事業」を制度として設けています。
豊橋市の産業部商工業振興課が行っている補助金制度「女性スキルアップ支援補助金」は市内の中小企業などを対象に女性従業員が国家資格取得を目指す場合にその費用の一部を補助するというものです。
起業に失敗しないための注意点
新たに起業を考える場合、その最初に立ちはだかるハードルとなるのが資金の問題です。
通常、起業資金を追加で準備したい場合、まず日本政策金融公庫をはじめとした銀行からの融資を考えるのが普通ですが、起業前や起業した直後では会社の信用力が乏しいために、融資を受けるにも一定以上の自己資金が求められ、あるいは所有する不動産などを担保にすることを求められることが一般的です。
このような場合、大いに役に立ってくるのが助成金・補助金の制度です。
助成金・補助金は前述の通り返済の必要がなく、借金やその利子といったリスクを負うことはありません。
さらに、助成金や補助金を受給したという事実が、会社の信用度を高める効果もあります。
新規起業する場合は、積極的に助成金や補助金の制度を利用することを考えた方が得策です
まとめ
助成金・補助金は国や地方自治体などの公共団体が定める一定基準を満たしたと認定された場合、お金を受給できるという制度です。
返済の義務がないので、借金や利息のリスクを負うことなく利用できるという点が最大のメリットです。
起業時に利用できる助成金・補助金の制度には「キャリアアップ助成金」「創業・事業承認補助金」「小規模事業者持続化補助金」「地域中小企業応援ファンド」と言ったものがあります。
金融機関からの信用を得にくい新規起業に際しては、助成金や補助金は非常に重要な財源となるので、積極的に利用することを考えましょう。
助成金・補助金の制度を受けるための手続きは意外と複雑なものなので、工数を削減してスムーズに支給を受けたいという時は、お気軽に税理士もしくは社労士に相談しましょう。