
介護には労力だけではなく、「介護を受ける側」も「介護してあげる側」もお金の負担がかかってきます。
そのような時に支援してくれる補助金や支援制度をきちんと把握していますか?
せっかく介護を支援してくれる制度が設けられているのに、知らないでいると介護負担は増える一方となってしまいます。
そこで、こちらの記事では介護をするときに利用できる7つの公的制度を解説していきたいと思います。
介護をしている方にとって、役立つ情報となっていますので、ぜひご覧になってみてください。
INDEX
介護を支援してくれる公的制度
介護をしている時に利用できる公的制度には、「介護保険」「高額療養費制度」「高額介護サービス費」「高額医療・高額介護合算療養費制度」「介護休業給付金」「介護保険住宅改修費」があります。
また、その他にも「各自治体によって介護をサポートする制度」が設けられている地域もありますので、知らないで損をしないように、しっかりと把握しておきましょう。
これら7つの公的制度について、詳しく解説していきます。
その1:40歳以上が加入する介護保険制度
「介護保険制度」は、誰もが聞いたことがあると思いますが、「介護保険制度」は40歳以上で介護を必要としている人が特定のサービスを受けられる制度です。
介護保険の被保険者となる方は、40歳以上の国民保険、健康保険加入者に限られ、年齢によっても介護サービスを受ける条件が違ってきます。
年齢は、65歳以上の「第1号被保険者」といい、40歳~65歳までの「第2号被保険者」と区別されています。
【介護サービスが受けられる条件】
第1号被保険者:原因には関係なく「要介護認定」と「要支援認定」が受けられる
第2号被保険者:加齢が原因で起こる16種の特定疾患となった場合のみ
介護保険制度を利用する手順
病院の健康保険証とは違い、「介護保険」利用するためには、手順を踏みながら手続きを行う必要がでていきます。
どのような手順で進んでいくのか、順を追ってみてましょう。
【利用するための手順】
①市区町村の窓口に要介護・要支援の認定申請を行う
②自宅に職員が認定のための調査に来る
③介護認定審査会で審査判定が行われる
④認定結果の通知が来る
⑤ケアプランを作成してもらう
⑥介護サービス利用の開始
初めて介護保険を利用するときには、要介護・要支援の認定の申請を行うために.市区町村役場の窓口に行く必要があります。
その後は担当となったケアマネージャーが手続きを進めてくれるので、心配いりません。
介護保険で利用できるサービス
介護保険で利用できるサービスは、数多くありますので、状況にあったサービスを有効的に利用していきましょう。
【利用できるサービス】
・訪問介護
・訪問看護
・福祉用具貸与
・通所介護(デイサービス)
・通所リハビリテーション(デイケア)
・短期入所生活介護(ショートステイ)
・特定施設入居者生活介護
・特別養護老人ホーム
・小規模多機能型居宅介護
・定期巡回・臨時対応型訪問介護看護
このように受けられるサービスは、数多くありますが、介護の段階によって受けられるサービスが変わってきます。
要介護1~5と要支援1~2のどの段階にに認定されるか確認しておきましょう。
要介護度とサービス費用
介護保険の負担額は一定ではなく要介護度に応じて、サービスの支給限度額と自己負担の割合が違ってきます。
支給限度額と自己負担額を下の表にまとめてみましたので、ご参考になってみてください。
【支給限度額と自己負担額】
設定区分 | 支給限度額 | 自己負担額(1割) | 自己負担額(2割) |
要支援1 | 50,030円 | 5,003円 | 10,006円 |
要支援2 | 104,730円 | 10,473円 | 20,946円 |
要介護1 | 166,920円 | 16,692円 | 33,384円 |
要介護2 | 196,160円 | 19,616円 | 39,232円 |
要介護3 | 269,310円 | 26,931円 | 53,862円 |
要介護4 | 308,060円 | 30,806円 | 61,612円 |
要介護5 | 360,650円 | 36,065円 | 72,130円 |
その2:支払いの多い月には高額療養費制度を利用
「高額療養費制度」は、決められた上限額に対して、病院や薬局の支払金額の1ヶ月分が上回った時に、超過した分が支給される制度のことをいいます。
「高額療養費制度」は、国民保険や健康保険に加入していれば、どなたでも「高額療養費制度」の対象となります。
また、1回の支払いで上限額に達しないのであれば、1ヶ月の中で、複数の受診費用を合算して申請することもでき、同じ保険に加入し同じ世帯となっていれば、家族内の受診費用も合算して申請できます。
【高額療養費制度のポイント】
・上限金額は、所得区分によって変わる
・健康保険ならば標準報酬月額、国民健康保険ならば総所得金額
・市区町村の国保、保険組合、協会けんぽなど、加入している保険窓口にて申請
その3:介護費用が増えたら高額介護サービス費
介護保険を利用した際に、「自己負担額」が大きくなってしまい、1ヶ月の自己負担の合計額が「負担上限額」を超えてしまった場合に利用できる制度です。
この時に超過してしまった金額が払い戻される事になっています。
高額介護サービス費とは、介護保険における1カ月の自己負担合計額が負担上限額を超えた場合、超過した金額が払い戻しされる制度のこと。
高額介護サービス費の対象となる方は、介護保険の被保険者です。
高額介護サービス費の対象となった際には、最寄りの地区町村から通知が届きますので、通知が届いたなら、市区町村の窓口に申請しに行ってください。
高額介護サービス費の「負担上限額」は、対象者となっている方の所得、同じ世帯の方の所得によって違ってきます。
下記に「負担上限額」の「対象者と負担上限額」を表にまとめましたので、参考になさってください。
【対象者と負担上限額】
対象者 | 負担上限 |
世帯に現役並みの所得者がいる人 | 44,400円 |
世帯に市町村民税課税者がいる人 | 44,400円 |
世帯全員市町村民税非課税の人 | 24,600円 |
前年の合計所得金額と
公的年金収入額の合計が80万円以下の人 |
24,600円(世帯)
15,000円(個人) |
生活保護を受けている人 | 15,000円 |
この表で見てみると、世帯全員市町村民税非課税となっている対象者の負担上限額は24,600円となっています。
もしも、30,000円を自己負担として支払っていた場合には、5,400円が払い戻されることになります。
ただし、高額介護サービスの対象となるものは、介護保険制度を利用した場合に限られています。
「老人ホームに入居した際の費用」や「福祉用具の購入した場合」は、高額介護サービスの対象にはなりませんので、注意しましょう。
その4:負担が大きな人におすすめな高額医療・高額介護合算療養費制度
医療費と介護費用の両方の負担が大きい人を援助するために「高額医療・高額介護合算療養費制度」は設けられました。
「高額介護サービス制度」を利用している方でも、高額医療・高額介護合算療養費制度」の基準を超えているのなら、その分の金額は払い戻されることとなっています。
高額医療・高額介護合算療養費制度とは、医療費と介護費用どちらの負担も大きい人を助けるための制度のこと。
高額療養費制度や高額介護サービス費制度を使ったとしても、高額医療・高額介護合算療養費制度の基準額を超えれば、超えた分の金額が払い戻されます。
【高額医療・高額介護合算療養費制度のポイント】
・介護保険と同時に、健保や国保などの医療保険で高額費用を支払っている方が対象
・健康保険組合と市区町村の介護保険の2ヶ所に申請する
・1年単位での計算となる
・基本的な基準額は1年56万円
・医療保険制度や年齢、所得よって細かく分類されている
その5:仕事を休んで介護をするなら介護休業給付金
家族の介護のために仕事を休む時に「介護休業給付金」は受け取ることができまます。
ただし、利用できるのは、家族や身内に、身体又は精神上の障害で、2週間以上つねに介護が必要となる方が対象となります。
【対象者となる家族】
配偶者・実父母・義父母・子供・祖父母・兄弟姉妹・孫
【給付金額】
賃金日額(休業開始時)✕支給日数✕67%
ただし、平成28年7月以前に介護休業を開始している場合は、給付割合は40%になります。
【支給日数】
介護しなければならない家族1人につき93日まで、3回の分割での取得も可能
介護休業と介護休暇の違いについて
介護休業と介護休暇は、似ているので混同しがちですが、どのような点が違っているのでしょうか?下記にその違いを表としてまとめてみました。
【介護休業と介護休暇の違い】
介護休業 | 介護休暇 | |
期間 | 1人につき93日(※1) | 1人につき年5日(※2) |
手続きの時期 | 基本的には2週間前まで | 当日でも可能 |
賃金 | 支払わなくてもよい | 支払わなくてもよい |
給付金 | 介護休業給付金を申請可能 | なし |
上の表からでもわかるように、介護休業と介護休暇の違いは、「期間の長さ」と「給付金」です。
長い期間の介護には「介護休業」が適しており、急な介護の場合には手続きが簡単な「介護休暇」を利用する事ができますが、「介護休暇」は、給付金を受け取ることができません。
また、「介護休業」は給付金が受け取ることができますが、条件に当てはまっているか事前に確認しておくことが大切です。
その6:介護保険住宅改修費と住宅特定改修特別税額控除
介護が必要となってくると、それと同時に住宅を介護のために不便なところをリフォームしなければいけなくなってきます。
このような介護のためのリフォームを行う場合には、「介護保険住宅改善費」と「住宅特定改修特別税額控除」を利用することができます。
最大18万円まで
介護のために自宅の修繕を行うと、改修費の9割相当額が返ってくるのが「介護保険住宅改修費」です。
【支給限度額】
20万円の9割である18万円が上限
基本的には改修費の9割が戻ってくる
【注意事項】
・工事の前に申請を行う
・領収書などの費用にまつわる書類を保管
・書類を保険組合に提出
【リフォームの例】
・手すり取り付け
・和式トイレから洋式トイレへの取り替え
・段差解消
・引き戸などへの取り替え
・床や通路の材料の変更(滑り防止などのため)
住宅特定改修特別税額控除で所得税の還付
介護のためのバリアフリーや省エネのリフォームを行ったときには、確定申告で「住宅特定改修特別税額控除」が受けられます。
ただし、改修費などに対して「50万円超える場合」などの条件がありますので、近くの市区町村の税務署に確認してみてください。
その7:各自治体の介護サポート制度をチェック
各自治体では、独自の介護サービスを行っているところもがあります。
代表的な介護サービスとして、「家族介護慰労金制度」「紙おむつ助成金支給制度」「福祉用具購入費の支給」などが設けられています。
どのような制度なのか見てみましょう。
家族介護慰労金制度
介護制度を利用せずに、自宅で介護をしている方に家族介護慰労金として10万円が支払われます。
ただし条件として、「要介護4・5の介護をしている」「1年以上同居し介護をしている」「介護保険を1年以上利用していない」「世帯が住民税非課税である」などを満たさなければいけません。
「家族介護慰労金制度」は、大阪市などの自治体に設けられている制度です。
紙おむつ助成金支給事業
紙おむつを無料で支給、または紙おむつの代金を助成してくれる制度です。
板橋区の設けている制度では、所定基準額よりも低い所得の人を対象として、希望の住所へ指定のおむつを無料で配達してくれます。
また、愛知県長久手市では、紙おむつの購入金額の9割を助成してもらえる制度を設けています。
福祉具購入費の支給制度
福祉用具を購入した費用を介護保険で助成してもらえる制度です。
江東区の場合には、福祉用具の種類は決まっており、「腰掛便座」「特殊尿器」「入浴補助用具」「簡易浴槽」「移動式用リフトの釣り具部分」の介護に役立つものに対して、上限10万円まで福祉用具購入費の支給制度が適用されます。
まとめ
介護の支援となる「介護保険」「高額療養費制度」「高額介護サービス費」などの公的制度を詳しく解説するとともに、各自治体が行っている介護サポートについてまとめてみました。
介護に対するサポートは、介護保険にとどまらず、高額療養や介護休業、住宅のバリアフリー化など幅広く多岐に渡り助成をおこなっています。
しかし、もしもこれらの介護サポートを「知らなかった」のなら、申請することなく損をしてしまうことになるでしょう。
そうならないためには、どのような介護の補助金が受けることができるのか、しっかり介護制度を確認し把握しておくことが大切です。
まずは、地域の市区町村の役場に介護認定の申請をすることから始めていきましょう。