補助金 花粉対策

花粉症対策における事業の無駄な出費を抑える補助金制度を徹底解説

補助金

花粉症患者は、日本人の約3人に1人にまでのぼると言われています。春先にはマスクやティッシュを手放せない方も多いのではないでしょうか?
花粉症はインフルエンザなどと異なり、事業を停止する程の影響は生じません。しかしながら、連続的にくしゃみや鼻水が続くことで、業務を一時中断せざるを得ません。顧客への営業や講演会のスピーチなどの最中にくしゃみや鼻水が出てしまうわずらわしさを経験したことがある方も多いことでしょう。
また、花粉症による経済的損失が国全体で4兆円を超えるという試算もあり、多額な経済的損失を生じさせています。
花粉症は、戦後の日本の高度成長にともなって増加しており、歴史はそれほど古くありません。加えて、スギやヒノキの森林整備が進んでいないことや、車社会の普及による排ガスの増加などにより、花粉症の被害は年々増加しています。
花粉症の被害が増加している現状に鑑み、政府は補助金制度を実施するなど、花粉症対策に乗り出しています。
以下では、(1)~(3)構成で、花粉症対策の補助金制度について解説していきます。花粉症対策は日本社会にとって急務です。林業で新たなビジネス機会を探っている方は、ぜひ検討してみては如何でしょうか。

(1)日本における花粉症の深刻さ
(2)花粉症による経済的損失
(3)花粉症対策の補助金制度

日本における花粉症の深刻さ

補助金 花粉対策

花粉症は、日本社会にとって深刻な問題です。
最初に前提として、日本社会における花粉症の現状や、日本で花粉症が増大した原因などについて簡単に整理していきます。

日本の花粉症の現状

現在の日本では、花粉症が深刻な問題になっています。
日本全体でおよそ2,500万人が患っていると言われています。これは国民の約3分の1にのぼります。
花粉症は、空気中を浮遊している花粉が鼻粘膜に付着し、それを取り除こうとして鼻水、鼻づまり、くしゃみが起こるアレルギー反応です。
花粉症になると、透明のさらっとした鼻水、鼻づまり、発作的で連発するくしゃみ、目のかゆみなどの症状が出ます。また症状が重くなると、皮膚のかゆみや頭痛、だるさ、不眠なども引き起こされます。
花粉症を引き起こす植物はたくさんありますが、日本ではスギやヒノキによる花粉症が圧倒的に多い状況です。
日本のスギやヒノキの花粉は2月から4月まで飛散するため、花粉症患者はこの時期に急増します。
スギやヒノキなど、風によって花粉を運ぶ植物(風媒花)は、虫が花粉を運ぶ植物(虫媒花)よりも多量の花粉をつくります。
そのため、スギ科やヒノキ科は花粉症の原因になりやすいとされています。
現在、日本のスギ林の面積は、全国の森林の約18%、国土の約12%を占めており、花粉症患者の約70%はスギ花粉が原因となっています。
ヒノキ科花粉症も同様に深刻ですが、日本全体で見ると、ヒノキ科はスギ科よりも幼齢林が比較的多く、スギ花粉の割合が多くなっています。

日本で花粉症が増大した原因

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① スギやヒノキの植林の推進
花粉症の日本社会での増加は、1960年代の高度成長期において農林水産省が推奨した大規模なスギやヒノキの植林政策に端を発しています。
戦後の経済復興に伴い、日本の木材需要は急速に高まりました。
国内木材の供給量が不足気味になり、林業の拡大と造林が急務になっていました。
加えて、大雨による土砂崩れなどの水害防止のための造林も課題となっていました。
こうした理由により、日本各地の山間部に、スギやヒノキなど成長率が高く建材としての価値が高い樹木の植林や代替植樹が進められました。
そして大量の花粉が発生することとなったのです。

②林業衰退によるスギやヒノキの植林の放置
上述のように、農林水産省が積極的にスギやヒノキの植林を推進したものの、高度経済成長において木材需要が高まると、外国からの良質で安価な木材の輸入が増加しました。
そのことで、割高な日本産のスギやヒノキは価格競争力に敗れ需要が低迷しました。
加えて、経済の成熟化に伴い、木材の需要自体が低下していきました。
こうした日本の林業の衰退とともに大量に植えられたスギやヒノキの伐採や間伐なども行われなくなり個体数が増加しました。
このことも、花粉症患者増加の原因となっています。

③日本社会の都市化の進展
戦後の国土整備により、土や砂からアスファルトやコンクリートなど、花粉が吸着・分解されにくい地盤に代替されました。
アスファルトは土と違って花粉を吸収しないため、一度地面に落ちた花粉が、何度も再飛散する状態を生み出します。
加えて、車両の排気ガスや工場からの排気などに含まれる光化学スモッグによってアレルギー反応が増幅されたことも、花粉症を発症・悪化させる原因となっています。

④食生活や生活習慣の変化
花粉症は、ビタミンA、C、Eなどを摂取し、活性酸素の発生を抑えることで防ぐことができます。
そのため、野菜、きのこなどの副菜もしっかりと食べる必要があります。
コンビニエンスストアやファーストフード店の増加により、人々の栄養バランスが崩れ免疫力が低下したことも、花粉アレルギーを起こしやすい体質を作りだしています。
また、睡眠不足や不規則な生活、ストレスも自律神経を乱し、花粉アレルギーを増幅させています。

花粉症による経済的損失

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日本における花粉症の状況を把握したところで、花粉症によってもたらされる経済的損失について説明していきます。

花粉症による業務の支障

専門家の試算によると、花粉症による労働生産性低下がもたらす経済的損失は、日本全体で年間約4兆円以上とされています。

また、製薬会社であるノバルティスファーマが、2019年10月に会社の人事担当者300人および管理職700人に対して行った調査によると、花粉症によって、以下のように業務に支障が出ているという回答がありました。

  • 人事担当者の61.0%、管理職の45.6%が、「花粉症により従業員のパフォーマンス低下を感じている」と回答。
  • 人事担当者の 52.7%、管理職の 47.4%が、「治療してほしいと思うことがある」と回答。
  • 人事担当者61.0%、管理職38.7%が「症状が業務の支障になっていると思う」と回答。

実態調査と共に行われたインタビュー調査においても、花粉症による生産性低下が報告されています。

  • くしゃみや鼻をかむことで作業を中断させられてしまう。
  • 目のかゆみや鼻水のせいで集中力を保ちづらくなる。
  • 目のかゆみでパソコン画面が見づらくなる。

企業の花粉症対策による出費

こうした花粉症による業務への支障を回避するため、下記のような花粉症対策に取り組む企業も出てきています。
このように、花粉症は企業に余計な出費を強いています。

  • 「花粉症手当」として、医療機関への受診、検査料、治療薬の費用など通院でかかった費用を支給する。
  • 花粉症専用マスクやティッシュ、目薬などの花粉症対策グッズを支給する。
  • 社屋の出入口にエアシャワーを導入する。また在宅勤務用に空気清浄機や加湿器を支給する。
  • 花粉症のセルフケア術について社員に向けた啓発活動を行う。
  • 花粉症のピーク時にリモートワークを導入する。

花粉症対策の補助金制度

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これまで見てきたように、花粉症は事業停止とまではいかないものの、企業活動に大きな支障を与えています。
一方で、日本の林業が衰退している昨今において、スギ林やヒノキ林の整備がなされておらず、花粉症は年々悪化しています。
こうした状況を改善するため、林野庁は「花粉発生源対策事業」という補助金制度を、2009年度~2023年を期間として実施しています。
年間予算額は、毎年約1億円強となっており、和令元年度は、予算115百万円が計上されていました。
公募は毎年春先に行われており、今年度は下記の期間に公募されました。

(1) 公示期間:令和2年2月3日(月曜日)から令和2年3月2日(月曜日)17時まで
(2) 提出期限:令和2年3月9日(月曜日)17時(郵送の場合は期限内必着)
下記に補助金制度の概要を紹介します。

補助金制度の詳細や応募方法は、林野庁のホームページをご覧ください。

補助金制度の概要

補助金 花粉対策

①補助金制度の名称
花粉発生源対策推進事業

②補助金制度の狙い
花粉症対策苗木への植替えの支援、花粉飛散防止剤の実証試験、スギ・ヒノキの雄花着花状況調査等を実施します。

<背景/課題>
近年では国民の3割が罹患し国民病とも言われている花粉症は、医療費の支出、労働生産性の低下等国民経済上のマイナス要因となっています。
これまで花粉症対策苗木の供給量が9万本(平成17年度)から426万本(平成27年度)に増加していますが、スギ苗木供給量全体に占める花粉症対策苗木の割合はまだ約2割という状況です。
このため、花粉症の緩和に向け、関連した事業をより効果的、効率的に実施するとともに、総合的な花粉発生源対策の強化及び普及を促進することが必要です。

③政策目標
スギ苗木の年間生産量に占める花粉症対策に資する苗木の割合を変更する(平成27年度:2割⇒平成44年度:約7割)

<主な内容>
1.総合的な花粉発生源対策の強化及び普及
花粉発生源対策に係る調査及び技術開発の成果の普及、特色ある植替促進等の取組の情報収集及び発信を支援します。

2.花粉症対策苗木への転換の促進
(1)花粉症対策苗木への植替えの促進
花粉発生源となっているスギ林において花粉症対策苗木への植替えやコンテナ苗による植栽結果の検証等を促進するため、スギの加工業者等が行う森林所有者への働きかけ等を支援します。

(2)花粉症対策品種の開発の加速化
スギ雄花着花特性を短期間・高精度で検査する手法の開発について支援します。

3.スギ花粉飛散防止剤の実用化試験
花粉飛散防止剤の実用化に向け、ヘリコプターによる液剤の林地散布を実施し、空中散布の基本技術を確立するとともに、低コスト・高品質な大量培養技術等の開発を支援します。

4.スギ・ヒノキ花粉の発生量推定の推進
スギ・ヒノキの花粉飛散量推定のための雄花着生状況調査及び実証調査を支援します。

まとめ

補助金 花粉対策

これまで見てきたように、花粉症は、インフルエンザのように事業停止陥るほどの怖さは無いものの、度重なるくしゃみや鼻水による業務の中断はとても煩わしいものです。
日本全体で見ると毎年4兆円以上の経済的な損失を生じさせているという試算もあります。
花粉症は日本の高度成長に伴って増加してきました。
そして、日本経済が成熟を迎えた後も、スギやヒノキ林の放置や車両の排ガス増加などにより、日本社会で増加し続けています。
こうした状況を改善すべく、政府は花粉症対策として補助金事業を推進しています。
花粉症対策は日本社会にとって急務です。
こうした補助金により花粉症の改善が期待されます。
林業で新たなビジネス機会を検討している方は、是非、補助金制度に注目してみてはいかがでしょうか。

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