ファクタリングは売掛債権をファクタリング業者に売却するとで、支払い期日よりも現金化することができる金融サービスです。
ファクタリングを利用すれば、借入金にはならないため資金繰りも改善されでしょう。
しかし、ファクタリングの手数料が高額となれば話は別です。
あまりの利息や手数料に、「返還請求することはできないのか?」と感じている方は多いのではないのでしょうか?
そこで、こちらの記事では、ファクタリングの過払い金の返還請求する際のポイントを始めとして、返還請求の事例、過払い金の相談先などを解説していきます。
ヤミ金業者を廃業してファクタリング業者になったという業者も数多く存在していますので、しっかりと確認しておきましょう。
過払い金とファクタリング
一般的に言う過払い金とは、カードローンやキャッシングなどにおいて、貸金業者に払いすぎている利息のことを指しています。
「2010年6月17日以前に借入を開始した方」「借金を完済してから10年以内の方」が、過払い金を請求する条件となります。
ファクタリングは、過払い金の条件にあてはまることは難しくなります。
貸金業者の中には、貸金業法や利息制限法などの適用と過払い金返還請求が行われたために、貸金業者を廃業してファクタリング業者に転向した業者が増えてきました。
ファクタリングでは、このような転向した元貸金業者によるトラブルが数多く発生するようになってきています。
もしもファクタリングが高金利だと感じたら
ファクタリングの高額な手数料で悩んでいる方の多くは、30%/年~98%/年と言われており、この数値は完全に利息制限法や出資法の制限を超えています。
本来ならば、利息制限法や出資法の適用によって過払い金を取り戻すことができるのですが、ファクタリングにはそれらは適用となりません。
いくら上限金利を超えた手数料が請求されても、過払い金を取り戻すことは難しいと言えるでしょう。
しかし、ファクタリング業者の中には、ファクタリングも消費者金融も同じと考えている業者もおり、売掛債権の売却ではなく、売掛債権を担保として貸付をしていると考えるのであれば、当然過払い金の請求はできるはずなのです。
ファクタリング過払い金の返還請求できるか?
実際に、ファクタリング業者への過払い金の請求は行うことはできますが、それは全てのケースが該当するわけではありません。
ポイントとなるのは、「金銭消費貸借契約」の有無です。
「金銭消費貸借契約」があるのなら、ファクタリング業者への利息や手数料の返金を請求できる可能性が高まってきます。
どのようなケースが、過払い金の請求を行うことができるのか?2つの判例をもとに詳しく見ていきましょう。
過払い金の返還請求が可能となった判例①
「平成26年の大阪地方裁判(ワ)第11716号」の判例をもとにして考えていきます。
この判例の場合には、契約の実態が「金銭消費貸借契約」であることで、過払い金の請求ができるようになりました。
ファクタリングは金銭消費貸借契約ではなく、売買契約のはずですが、下記のようなケースだった時には「金銭消費貸借契約」であることが認められます。
◆ケース1:売掛債権の譲渡ではなく、売掛債権を担保にした貸付の場合
◆ケース2:売却した売掛債権を買い戻した場合
◆ケース3:償還請求権が有効な契約だった場合
ケース1の「売掛債権の譲渡ではなく、売掛債権を担保にした貸付の場合」には、利息制限法違反となります。
ケース2の「償還請求権が有効な契約だった場合」には、貸金業法や利息制限法に触れてしまうために、過払い金を請求できるかも知れません。
過払い金の返還請求が認められない判例②
ファクタリング業者への過払い金返還請求が認められなかった判例も、残念ながら存在しています。
平成29年5月23日に下されている「東京地方裁判所平成29年(ネ)第145号」の場合が認められなかった判例です。
この裁判ではファクタリング契約への過払い金返還請求を認めないという判決が下されており、最高裁への上告も棄却されています。
過払い金の可能性が高まる7つのポイント
2つの判例のように、ファクタリング業者に過払いを請求しようと思っても、ケースによって、請求が認められる場合と、認められない場合が存在しています。
認められるためには、「金銭消費貸借契約」の有無が大切と上記で説明しましたが、その他にも、高額な手数料を要求された、契約書が存在しない、継続的な取引を行っているなど、下記の7項目に該当すれば、過払い金請求への期待が高まります。
①契約書が存在しない
②高額な手数料
③継続的な取引をしている
④2社間ファクタリングを行った
⑤分割払いが可能となっている
⑥償還請求権がある場合
⑦保証人や担保を用意した
次に、ファクタリング業者への過払い金を請求の可能性が高まる7つのポイントについて、詳しくみていきましょう。
①契約書が存在しない
ファクタリング業者への過払い金の請求の一番のポイントとなるのは、契約書がないことです。
ファクタリングを行う際には、必ず債権売買をするために契約書が交わされますが、契約書自体が存在していないのならば、金銭消費貸借契約と認められるかもしれません。
また、もしも契約書があった場合にも、契約書の中に「債権売買」という言葉が明記されていないのなら、同じようなことがことが言えます。
◆契約書がそもそもない
◆契約書の中に「債権売買」が明記されていない
このような2つの場合には、利息制限法を超える手数料を請求することができます。
②高額な手数料
ファクタリングを利用する際に支払う手数料が高額の場合にも、過払い金の返還請求が可能となるかもしれません。
具体的に言うと、毎月10%以上をファクタリング業者へ手数料として支払っていると、金銭消費契約として判断されやすくなるのです。
借入金額によって異なりますが、下記の手数料を目安に、利息制限法の上限金利となる年20%を超えてないかをもう一度確認してみてください。
◆10万未満の場合には、年20%まで
◆100万円未満の場合には、年18%まで
◆100万円以上の場合には、年15%まで
③継続的な取引をしている
ファクタリング業者との間に、継続的に取引が行われているのなら、「金銭消費貸借契約」として判断される可能性が高まります。
毎月、数十%を超える額の手数料をつねにファクタリング業者から取られているなどの、継続的な取引があれば「金銭消費貸借契約」とみなされるでしょう。
④2社間ファクタリングを行った
ファクタリングには2社間ファクタリングと3社間ファクタリングがありますが、過払い金の請求ができるのは、2社間ファクタリングのみとなります。
3社間ファクタリングでは、売掛先から直接ファクタリング業者に支払いが行われるため、過払い金を請求することができませんので、ご注意ください。
2社間ファクタリングの契約しているのなら、過払い金の請求が可能となることを覚えておきましょう。
⑤分割払いが可能となっている
ファクタリングでは一括払いが原則です。
もしも、分割払いをしているのならファクタリング以外の契約をしていると考えられます。
分割払いを行っているということは、手数料と金利が発生しているとみなされ「金銭消費貸借契約」と認められる可能性が高まり、過払い金の請求ができるようになります。
⑥償還請求権がある場合
償還請求権がある契約の場合では、売掛債権の譲渡ではなく買戻しが前提とみなされます。
買戻しであれば、当然ながら売掛債権の譲渡ではないので、「金銭消費賃貸契約」と判断されることになり、過払い金を請求できるかもしれません。
⑦保証人や担保を用意した
ファクタリングでは、担保や保証人を必要としませんが、もしも担保や保証人が存在しているのなら、ファクタリング契約に反している行為となります。
そのような場合には、「金銭消費者貸借契約」とみなされることになり、過払い金の請求ができるようになるでしょう。
過払い金の相談先
ファクタリングの過払い金が上記の7項目が該当したとして、どのような形で請求していけばよいのでしょうか?
「1人では不安」と、誰もが感じると思いますが、そのようなときには専門家に相談することを視野に入れてみてはいかがでしょうか?
ファクタリングの過払い金の相談先には、国民生活相談センター、市役所、弁護士事務所、司法書士事務所、法テラスがあります。
国民生活相談センター
国民生活相談センターでは、ファクタリングの過払い金を無料で何回も相談することができます。
専門の相談員が問題を解決するためのアドバイスを行ったり、場合によっては事業者との交渉などに適した窓口を紹介してくれることもあります。
◆相談料 無料
◆成功報酬 なし
市役所
ご自身の管轄となっている市役所でも、ファクタリングの過払い金について相談することは可能です。
市役所で相談するときには、申し込みを行う必要がありますが、弁護士にファクタリングの過払い金について相談することができます。
◆相談料 無料
◆成功報酬 なし
◆1回につき 20分~30分
法テラス
法テラスとは、国が設けている法トラブル解決のために作られた案内所です。
相談は、一人当たり30分×3回までは無料で相談が行えます。
条件として、月収20万円以下の方のみが対象となっていますので、ご注意ください。
◆相談料 無料
◆成功報酬 なし
◆1人あたり 30分×3回まで無料
◆月収20万円以下の方のみが利用可能
司法書士事務所
司法書士事務所であれば、どこでも相談してくれるという訳ではありません。
ファクタリングの過払い金の相談が可能なのは、民事事件の代理業務が行える認定司法書士が在籍する司法書士事務所となります。
◆相談料 無料~5,000円
◆成功報酬 20%
弁護士事務所
弁護士事務所に相談する場合には、ファクタリングについて詳しい弁護士事務所に相談するようにしましょう。
幅広い範囲の法的手続き、さらには貸金業者との交渉をすることができます。
着手金や成功報酬が高めとなっていますが、心強い味方となってくれるでしょう。
◆相談料 無料~5,000円
◆成功報酬 20%
ファクタリングの手数料を年利で計算
ファクタリングの手数料の相場は、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングでことなり、3社間ファクタリングの手数料の方が低く設定されています。
◆2社間ファクタリングの手数料の相場 10%~30%
◆3社間ファクタリングの手数料の相場 5%~10%
このように手数料の相場を見ると、高いと実感がわかないかも知れませんが、年利に換算すると100%~200%にも上ってしまいます。
利息制限法で定められた「年利20%」に反するように感じられますが、ファクタリングは貸金でないために利息制限法に縛られません。
また、ファクタリング業者が債権の未回収リスクを背負うことになりますので、高い手数料となることは仕方ないことかもしれません。
ファクタリングの利用を考えるのなら、ファクタリングの持つ性質と同時に、ファクタリングを装った業者が存在していることを忘れないでおきましょう。
まとめ
ファクタリングの過払い金の返還請求ができるかについて、2つの判例を元にして解説すると同時に、過払い金の可能性が高まる7つのポイント、過払い金の相談先、手数料を年利で計算した場合などについて解説してきました。
正当なファクタリング業者がいるのなかで、残念ながら貸金業から転向したファクタリング業者も存在しています。
もしも、過払い金の返還請求を検討するのなら、まずは自身が利用したファクタリングに記事で解説した7項目に該当していないか確認しておきましょう。
ファクタリングを資金調達として利用するのなら、ファクタリングの知識を蓄えておくことが大切です。