
日本では、若者が正社員にならずに、雇用問題が深刻になっています。
例え、正社員で入社してもすぐに辞めてしまう事が企業を悩ませています。
そこで、日本の経済を活性化させるため、さまざまな政策がとられている中、人材教育に力を入れた助成金が注目を集めています。
その中のひとつである「人材開発支援助成金」についての以下のような疑問を、ここでは答えていきます。
人材開発支援助成金とは何か?
人材開発支援助成金とは、労働者の職業訓練開発にかかる経費や賃金の一部を助成する制度のことです。
すなわち、労働者が業務に必要な専門的な知識や技術を学ぶとき、企業が負担する費用の一部を助成金で補うことができるということです。
人材開発支援助成金の目的は、職業能力開発の促進です。
専門的な知識や技術を身に着けスキルアップすることで、企業の生産性が向上され、経済の活性化へと繋がります。
また、人材開発支援助成金を利用することで、人材育成に力を入れやすくなります。
労働者の人材育成は、企業にとって大きな負担になることもあるでしょう。
とくに、人材を確保するだけでも精一杯な中小企業の場合、人手不足によってしっかりとした教育をすることができないこともあります。
さらに、人材育成の財源がないなどの問題を抱えている企業もあり、人材開発支援助成金ではそのような企業を支援することができる助成金となっています。
キャリア形成促進助成金との違い
人材開発支援助成金は2016年度以前までは、キャリア形成促進助成金という名称でした。
しかし、コース内容が見直されて大幅にリニューアルされ、助成金の金額なども調整されました。
それによってキャリア形成促進助成金よりも、より利用がしやすく、人材育成にも力を入れやすい制度となっています。
キャリアアップ助成金との違い
労働者のキャリアアップを目的とした助成金として、「キャリアアップ助成金」があります。
一見、キャリアアップ助成金と人材開発支援助成金は似ている制度のように見えますが、実際はまったく異なる制度です。
【対象者の違い】
まず人材開発支援助成金の場合、対象となるのは雇用保険に加入している被保険者となります。
一方、キャリアアップ助成金は有期契約労働者など、正規雇用労働者以外が対象となっています。
要するに、人材開発支援助成金なら、雇用保険に加入さえしていれば、非正規雇用でも正規雇用でも、雇用形態に関係なく対象となることができるのです。
【目的の違い】
また、目的に関してもキャリアアップ助成金の場合は、非正規雇用から正規雇用への転換を主に目的としているため、人材そのものの育成を目的にしているわけではありません。
なので、そもそもの目的が違うということになります。
人材開発支援助成金の種類と各コースの特徴
人材開発支援助成金にはいくつかのコースが用意されており、コースによって助成金の金額や対象条件などが異なります。
では、それぞれのコースの特徴や条件などについて解説していきます。
なお細かな条件については、厚生労働省の資料を確認することをおすすめします。
特定訓練コース
労働生産性を向上する訓練や、若年者に対する職業訓練およびOff-JTとOJTを組み合わせた訓練など、10時間以上の訓令に助成するコースです
■ OFF-JT
知識や技術を学びインプットすること(研修、座学、グループワークなど)
■ OJT
学んだ知識や技術を活かし、実践(アウトプット)していくこと
対象は、中小企業、中小企業以外の企業、事業主団体などです。
対象メニューは、下記のようになります。
・職業能力開発促進センターなどによる在職者訓練(硬度職業訓練)
・専門実践教育訓練
・生産性向上人材教育支援センターによる訓練等
・事業分野別指針に定められた訓練
人材開発支援助成金のデメリット
人材開発支援助成金は、低コストで人材育成を行うことができますが、その反面でデメリットももちろん存在します。
ここでは、そのデメリットについて3つほど紹介しておきます。
研修が終了してから助成金を受け取る
次の項でも解説しますが、助成金の支給は研修を終え、所定の手続きを終えてからでないと支給されません。
これはつまり従業員への給与については、先に全額支払うことになるため、財務状況が厳しい企業にとってはかなりの痛手となるでしょう。
あくまでも、先に支払うべき分の資金がある状態で、人材開発支援助成金は活用しなくてはなりません。
Off-JT中は社内の人が減る
Off-JTの中は、外部に出て研修を行うことになります。
そのため、社内に本来いるべき人数が減るため、業務状況によっては支障をきたすこともあるでしょう。
人がいない場合は、その従業員が受け持っていた仕事を、誰が引き受けるのかという点もあらかじめ決めた上で、人材開発支援助成金は活用していきましょう。
また研修内容によっては、日付をまとめてではなくバラして受講する方もいます。
しかし社内の混乱を最低限に抑えるのであれば、まとめて受講して短期間で終了させるようにしましょう。
従業員の穴埋め対策をあらかじめ決めておけば、短期間の不在があっても十分に対応できるでしょう。
バラバラの場合では、研修に行っている従業員のスキル定着にも悪影響を及ぼします。
支給申請の手続きが複雑
知識の無い方は、申請をするには非常に複雑な要素が含まれています。
人材開発支援助成金の申請は、対象者の条件も多く、また申請時に必要な書類についても項目が多く面倒に感じることも少なくないでしょう。
助成金を受けた経験があり慣れているのであれば、とくに問題にはなりませんが、そうでないのであれば、苦労も絶えません。
もちろんこの記事でも、手順を紹介していますが、それでもわからなければ助成金のアドバイスをしてくれるサポート会社を頼ることも手となります。
人材開発支援助成金の支給申請方法と流れ
人材開発支援助成金を申請する流れは、コースによって若干違います。
基本的な流れは以下の通りです。
①まずは企業が訓練計画を作成して、実施する1ヶ月前までに管轄都道府県の労働局に提出します。
②提出した訓練計画に則って、訓練を実施していきます。
③訓練が終了したら、2ヶ月以内に支給申請書を、訓練計画書を提出した労働局に提出します。
④審査を通過したら助成金が事業主の指定した口座に振り込まれます。
【※注意点】
特定訓練コースのみ、訓練計画書を提出する前に厚生労働大臣より、実践型人材育成システム実施計画などの認定をもらわないといけないため、厚生労働省に申請する必要があります。
認定をもらったあとに、訓練計画書を労働局に提出する流れになります。
ちなみに、労働局へ提出する書類は、厚生労働省のホームページよりダウンロード可能なので、わざわざ労働局に問い合わせたり書類を取りに行く必要はありません。
また、必要書類のチェックシートもダウンロード可能なので、書類漏れ防止の際に使用してください。
申請前に確認するべきこと
じつは、人材開発支援助成金を申請するためには、最低適用人数に達していなければなりません。
最低適用人数に達していることがそもそもの申請の条件であるため、訓練計画書を提出する前に確認しておきましょう。
なお、最低適用人数は雇用保険の被保険者の人数によって違ってきます。
ちなみに支給対象者が重複している場合は、どちらか一方しか受給することはできませんが、複数のコースの申請を一気に行うことが可能です。
人によって訓練内容が異なってしまっても、条件に当てはまっていれば問題ありません。
人材開発支援助成金の具体的な活用方法
では、人材開発支援助成金は具体的にどのように活用していけばよいのかご紹介します。
たとえば、中小企業で人材を育成するために、受講料は10万円の専門実践教育訓練を、10時間行うとします。
この場合、当てはまるコースは、特定訓練コースなのでOFF-JTで経費助成45%、賃金助成が1時間760円ということになります。
これを計算すると、
10万円-(10万円×45%+10時間×760円)
=10万円-(45,000円+7,600円)
=47,400円
となり、助成金を利用することで本来なら10万円負担しなければならないところ47,400円で済ますことが可能になります。
助成金を利用すれば、費用を抑えつつ人材育成コースをすることが可能になり、従業員がスキルアップすることで、企業にとってよりよい未来を作ることができるようになります。
人材教育に使える人材開発支援助成金以外の助成金
人材教育は、企業や日本の経済的未来に必要不可欠です。そのため、意外にもさまざまな助成金制度が設けられています。
ここでは、人材開発支援助成金以外の助成金制度について紹介していきます。
※人材教育そのものを目的とした助成金ではありませんが、人材教育に使用できる助成金をご紹介しています。
業務改善助成金
中小企業および小規模事業者が対象の助成金制度です。
生産性向上を支援し、事業場内最低賃金を引き上げることを目的としています。
助成対象は、事業場内最低賃金が1時間あたり1,000円未満の中小企業および小規模事業者です。
支給条件は下記の通りです。
■賃金引き上げ計画を作成し、一定額以上賃金を引き上げることを就業規則などに規定すること
■引き上げ後にきちんと賃金額を支払うこと
■生産性向上につながる機器や設備の導入により、業務改善を行うこと
※経費削減や職場環境改善、事業活動に伴う経費は対象外
■解雇および賃金引き下げなどの不交付事由がないことなど
地域雇用開発助成金
雇用機会が不足している地域の事業主が、事業所の設置および整備を行ったうえで、その地域の求職者などを雇用する場合、設置整備費および対象労働者の増加数に応じて助成金が支給されます。
1回目の支給条件は、下記の通りです。
・同意雇用開発促進地域および過疎等雇用改善地域または、特定有人国境離島地域内の事業所にて、設備の設置や整備を行い、地域住民の求職者を雇用する計画書を労働局長に提出すること
・事業で利用する施設や設備を計画した期間内に設置および整備を行うこと
※最大で18ヶ月まで
※設備費用は1点あたり20万円以上、合計300万円以上
・地域求職者などを計画した期間内に、雇用保険一般被保険者として3人以上雇用すること
※創業の場合は2人以上
・事業所の雇用保険一般被保険者の増加
2~3回目の支給条件は、下記の通りです。
・事業所における雇用保険一般被保険者数の維持
・2回目の支給日、3回目の支給日にて、雇用保険一般被保険者数が下回っていないこと
・支給対象者が維持されていること
・支給対象者が職場に定着していること
※離職した場合は一定範囲内で補充可能ですが、支給準備日までに離職者の数は1/2以下もしくは3人以下であることが条件
まとめ
企業の未来、そして日本の経済の活性化には人材教育は必要不可欠です。
しかし、人材を育てる費用も見過ごせる額ではありません。
助成金を利用することで、より負担額を抑えて低コストに人材教育をすることが可能になります。
今後の厳しい経済状況を乗り越えるためにも、ぜひ人材開発支援助成金を上手に利用して、従業員のキャリアアップを狙ってみてはいかがでしょう。