
お子さんを望まれているのに「なかなか赤ちゃんが授からない」と、悩んでいる方は少なくありません。しかし最近では、様々な不妊治療によって、妊娠・出産となったご夫婦が数多く存在するようになりました。
子どもを持てる可能性となる不妊治療ですが、健康保険が適用されず医療費がネックとなります。特に高額な人工授精となれば、家計にとっても大きな負担となってしまうでしょう。
そこで、こちらの記事では、経済的な負担を軽減してくれる「特定不妊治療助成金制度」のご紹介をしていきます。
今回は、具体的な例で見ていくために「神奈川県川崎市の事例」を参考にしてみました。不妊治療をしている方の手助けとなれば幸いです。
INDEX
人工授精や不妊で悩む方への特定不妊治療費助成制度
「特定不妊治療費助成制度」は、高額な医療費となる、体外受精、顕微授精の一部を支援してくれる助成金制度です。不妊治療は、健康保険の適用となりませんが、「特定不妊治療費助成制度」を利用すれば、医療費をサポートすることができるようになります。
「特定不妊治療費助成制度」は、国が実施している「不妊に悩む方への特定治療支援事業」に基づいて設けられ、都道府県、指定都市、中核市のそれぞれが主体となり運営を行っています。
【川崎市の場合】人工授精のサポートとなる助成金
全国の各自治地帯によって実施されている「特定不妊治療費助成制度」ですが、実際に行われている「神奈川県川崎市の場合」を見ていきたいと思います。
様々な自治体で実施されている「特定不妊治療費助成制度」は、多少異なっていますが、基本的には【川崎市の場合】と同じ形となります。
また、川崎市に住む方は、こちらの記事を参考にしてみてください。
申請のタイミング
助成金を利用する際には、1回の治療終了後、60日以内に申請を行うようにしてください。
この場合の1回とは、妊娠の確認の日、もしくは医師の判断によってやむを得ず治療を終わらせた日を指しています。
なお、この時の妊娠の有無は問われることはありません。
詳しくは、医療機関に確認してみましょう。
助成額について
一組の夫婦に対して行った「特定不妊治療」(保険外診療)の際にかかった費用のなかで、「体外受精」「顕微授精」の治療ステージに定めているA~Fの治療内容のいずれかにあてはまる方が助成金を受給できます。
1回の治療につき上限15万円までの助成となりますが、治療内容のCとFの場合は75,000円までが上限です。
また、初回治療の方なら30万円まで助成されますが、この場合も治療内容のCとFにあてはまるのであれば、上限額は75,000円となります。
ここで言う「初回治療」とは、初めて診察したことではなく、初めて助成金の申請を行った事を指しますので、注意しましょう。
男性不妊治療の助成額
平成31年4月1日より、男性不妊治療を行う場合でも助成金を受け取ることができるようになりました。
対象者となるのは、「特定不妊治療」の際に治療の一環として、精子を精巣または、精巣上体から摂取した場合に支給されます。
初回の場合は、上限30万円まで、それ以降は15万円までとなっています。もしも、平成31年3月31日よりも前に、男性不妊治療を行っていた場合は、初回でも15万円となっていますので、お気をつけください。
助成期間と助成回数を確認
ご自身の助成期間と助成回数は、平成25年度までに助成を「受けたことがあるか?ないか?」で違ってきます。詳しく知るためには、「通算助成回数早見表」で確認してください。
【注意点】
◆川崎市に転入する前に、他の自治体で助成を受けていた場合は、年度内の回数、通算年度、通算回数を含むことになります。
◆通算期間は、連続した年度でなくてもよい
◆助成年度は、申請書類を受理した日でとなります。治療が終了した日ではなく、申請書類が受理された日となるので、気をつけましょう。
◆ここで言う「年度」とは、4月1日~3月31日までの期間です。
助成を受けるために要件をクリアする
川崎市の「特定不妊治療費助成制度」を利用するためには、以下の6つの要件を満たす必要があるので、チェックしていきましょう。
【助成金を利用するための6つの要件】
①夫婦のいずれか一方が、申請時に川崎市内に住所を有すること。
②治療開始日において、戸籍上の夫婦であること。
③治療開始日の妻の年齢が43歳未満であること。
※治療開始日とは、採卵準備のための投薬開始日若しくは以前に行った体外受精又は顕微授精により作られた受精胚による凍結胚移植を行うための投薬開始日となります。なお、自然周期で採卵を行う場合には、投薬前の卵胞の発育モニターやホルモン検査等を実施した日が治療開始日となります。
④特定不妊治療以外の治療法によっては妊娠の見込みがないか又は極めて少ないと医師に診断されたこと。
⑤治療を行った医療機関が、川崎市又は所在地の自治体の指定を受けていること。
⑥夫婦の前年(1月から5月までの申請については前々年)の所得*の合計額が730万円未満であること。
なお、所得額については、下記の「特定不妊治療助成における所得額の計算方法」を参考にしてください。
助成を受けるための治療内容
「特定不妊治療費助成制度」はの助成を受けるためには、治療内容が助成金の対象となる必要があります。次の表を見て、ご自身と当てはまる項目がないか、確認しておきましょう。
男性不妊治療の対象となる手術療法と注意事項
男性不妊治療が補助金の対象となるためには、次の上げる手術療法を行った場合です。保険適用の場合は、対象外になりますので、よく確認しておいてください。
ア 精巣内精子回収法(TESE)
イ 精巣上体精子吸引法(MESA)
ウ 精巣内精子吸引法(TESA)
エ 経皮的精巣上体精子吸引法(PESA)
【注意事項】
ア 特定不妊治療費助成の妻の助成上限回数の範囲内で、助成を受けられます。
イ 指定医療機関又は指定医療機関に紹介された医療機関において実施した手術に限ります。
ウ 特定不妊治療費助成の申請と同時に申請する必要があり、原則男性不妊治療単独での助成申請はできません。ただし、採卵実施前に男性不妊治療を行ったが精子が得られない又は状態の良い精子が得られないため治療を中止した場合のみ、助成の対象となります。
申請方法をチェック
神奈川県川崎市の「特定不妊治療費助成制度」の申請方法は、治療終了後に60日以内に住所のある「児童家庭課児童家庭サービス係」に申請書類を全て揃えて提出します。
郵送での提出も受け付けていますが、申請期限必着となっているので注意してください。
不安な場合は、事前に連絡しておくと安心です。
また万が一、申請書類がすべて申請期限までに揃わすことができないのなら、あらかじめ相談しておくとよいでしょう。
申請書類を申請した後は、審査となり、その後「決定通知書」が送られていきます。申請をしてから、助成金が振り込まれるまで、およそ3ヶ月と考えておいてください。
ただし、夫婦で川崎市に転入した場合には、前住所の助成状況の確認となるので、審査日数が増えることがあります。
◆申請書類を準備しておく
◆治療終了後(医師の判断でやむを得ず中止した場合も含む)60日以内に、お住まいの区の児童家庭課児童家庭サービス係に申請書類をそろえて提出
◆郵送での提出も可能(申請期限までに必着)
◆申請書類の一部が申請期限までに揃わないなら、事前に相談する
◆申請書類の審査後、およそ3か月程度で決定通知書が届く
申請書類を準備しておく
申請するときには、申請書類を必ず準備しておかなければなりません。ダウンロードすればすむ書類もありますが、領収書など事前に保管して取っておく必要がある書類もあります。申請する前に、どのような書類が必要となるのか、きちんと把握しておきましょう。
【申請するときに必要な書類】
書類名 | 説明 | |
1 | 『不妊に悩む方への特定治療支援事業申請書』 | ・各区児童家庭課で配布、又は川崎市ホームページからダウンロード |
2 | 『不妊に悩む方への特定治療支援事業受診証明書』 | ・各区児童家庭課で配布(複写式)、又は川崎市ホームページからのダウンロード(ダウンロードしたものを使用する場合は、同じものを2通医療機関に記載していただくか、1通記載していただきコピーを取ってください)
・治療を受けた指定医療機関で証明を受けたもの(医療機関所定の手数料がかかることがあります) ・医療機関によっては証明書作成に時間がかかる場合がありますのでご注意ください |
3 | 『領収書』のコピー | ・治療を受けた指定医療機関が発行したもので、受診証明書に記載の領収金額分 |
4 | 夫婦二人の続柄が記載された『住民票』※マイナンバーの記載のないもの、コピー可 | ・夫婦の住所が異なる場合は、それぞれの住民票 ・発行日から3か月以内のもの ・同一年度内2回目以降の申請で住所の変更がない場合は省略可 |
5 | 『戸籍謄本』又は『戸籍抄本』
※通算1回目の方は必須 ※コピー可 |
・発行日から3か月以内のもので、夫婦の婚姻日が確認できること ・夫婦ともに外国籍の方は、戸籍謄(抄)本の代わりに夫婦の婚姻日が確認できる公的な証明書(日本語訳付き)の提出が必要 ・通算2回目以降又は他の自治体で助成を受けたことがある場合で、住民票から夫婦であることが確認できる場合は省略可 |
6 | 夫婦それぞれの所得証明書類
『住民税課税(非課税)証明書』 ※コピー可 |
・夫婦の前年(1月から5月までの申請は、前々年)の所得額及び各控除額が記載されているもの例)令和元年6月~令和2年5月の申請 → 令和元年度(平成30年分の所得)の証明書 ・課税される所得のない場合や、控除対象配偶者となっている場合でも省略事項のない非課税証明書の提出が必要 ・前回の申請で提出した証明書と同一の課税年度となる場合は省略可 ・源泉徴収票、確定申告書の提出控え、税額決定通知書等は不可 ・対象期間において海外在住等を理由に、証明書が発行されない場合は、対象期間に海外に在住していたことが証明できる書類〔戸籍の附票(海外に転居の際に手続きをしている場合のみ)、在職証明書、パスポートのコピー等〕の提出が必要(なお、対象期間中日本に在住していた期間があれば課税額証明書も必要) ※証明書の名称は、自治体によって異なり、課税年度の1月1日時点で住所のあった自治体で発行されます。川崎市の証明書を取得する場合は、市内の市税事務所・市税分室及び区役所・支所の市税証明発行コーナーで「課税額証明書」もしくは「非課税証明書」を取得してください。(証明書取得の際に必要な書類等は、川崎市ホームページで御確認ください) |
7 | 助成金の振込先の口座番号が分かるもの
『通帳又はキャッシュカード』のコピー |
・支店名、口座番号、口座名義人が確認できる部分のコピー ・ゆうちょ銀行は、振込用の店名、預金種目、口座番号の記載部分をコピー ・夫婦どちらかの名義の口座であること |
まずは不妊・不育専門相談センターで無料相談
川崎市では、不妊、流産、早産を繰り返してしまう「不育症」に関する悩みを「公益社団法人 川崎市看護協会」に委託し、無料相談を実施しています。
このような悩みをお持ちの方は、一度相談してみてはいかがでしょうか?
相談窓口では、専門医師、不妊症看護認定看護師が受け付けてくれる信頼できる無料相談です。
◆内 容:専門医師や不妊症看護認定看護師による相談
◆場 所:川崎市ナーシングセンター (中原区今井上町1-34 和田ビル3階)
◆開設日時:毎月1回 土曜日 午前9:30~11:30 (予約制 一組30分程度)
◆予約方法:電話で公益社団法人川崎市看護協会まで
◆電話番号:044-711-3995
不妊に悩む方への特定治療支援事業
厚生労働省では、不妊に悩んでいる夫婦への支援事業を行っています。
平成22年度には、助成件数は96,458件でしたが、平成25年度には148,659件、平成26年度には152,320件、平成27年度には160,733件と伸びてきました。助成件数が増加しているのを見ても、不妊に悩む方へのサポートとなっていることがわかります。
もしも、不妊治療をと検討しているのであれば、積極的に「特定不妊治療費助成制度」を活用してください。
まとめ
「特定不妊治療費助成制度」において、神奈川県川崎市の事例をもって、実際に行われている助成制度の内容を解説してきました。助成額、受給条件、治療内容、申請書類、手続き方法などが、具体的に把握できたのではないでしょうか?
「特定不妊治療費助成制度」は、治療内容によって受給できない場合もあり、準備する書類は数多くあるので、全て揃えておくことは大変かもしれません。
しかし、高額となる人工授精などの治療費を支援してくれる「特定不妊治療費助成制度」は、不妊治療にとって力強い存在となってくれるはずです。
不妊治療を考えるのであれば、まずは「特定不妊治療費助成制度」の助成制度を知ることから始めて見てください。