
人事評価改善等助成金は最近になって設けられた「生産性を上げると同時に、離職率を低下させる」と支給される助成金です。
「生産性を上げると同時に、離職率を低下させる」と言われても難しいですが、こちらの記事では人事評価改善等助成金の仕組みを始めとして、必要な書類、申請方法などを紹介していきます。
新たに設けられた人事評価改善等助成金の内容を把握して、間違いなく助成金を受給できるようにしていきましょう。
INDEX
人事評価改善等助成金の目的
正規労働者向けの「評価制度」を導入し、評価基準を明確にする目的で作られた制度です。「評価制度」を導入することによって、明文化および規約化し労働者のモチベーションを上げ、生産性の向上と離職率の低下につなげていくことが期待されます。
日本の生産性は世界18位
世界の先進国のなかで日本の生産性は、第18位(2016年度)となっています。このように先進国の中で低水準となっている日本の生産性を高めるために、人事評価改善等助成金は考案されました。
人事評価改善等助成金の内容
人事評価改善等助成金では、「制度整備助成」と「目標達成助成」という2つの支給要件が設定されています。まずは「制度整備助成」をクリアし、さらに次の「目標達成助成」がクリアされることで、追加の助成金が得られる制度です。
制度整備助成
厚生労働省の方針に従い、人事評価制度を導入、または既に存在している人事評価制度を整備します。
「制度整備助成」では、人事評価制度を導入することで、新しい労働者の採用と採用後の教育や研修、すでに働いている労働者への研修、昇給、労務などをわかりやすくしていき、働く人達全てのやる気をアップさせていきます。
人事評価制度の整備がすみましたら、下記に紹介している書類を労働基準監督署に提出します。
計画に認定となりましたら、助成金をもらうために支給申請の提出を行ってください。制度整備助成では2回の書類提出が必要となります。
目標達成助成
「目標達成助成」では、下記の①生産性の向上、②賃金の増加、③離職率の低下の3つを項目を、満たすことで追加の助成金を受け取ることができます。
①生産性の向上:人事評価制度等の実施日の翌日から数えて1年を経過する日に「生産性要件」を満たしていること。
参照:労働生産性を向上させた事業所は労働関係助成金が割増されます|厚生労働省
②賃金の増加
1人の人事評価制度を整備し、実施の結果により、人事評価制度等の実施日の属する月の前月に支払われた賃金と比べて、その1年後に支払われる賃金の額が2%以上増加していること。
③離職率の低下
1人の人事評価制度を整備し、実施の結果により、人事評価制度等の実施日の翌日から1年を経過するまでの期間の離職率が、人事評価制度等整備計画を提出する前1年間の離職率よりも、下表に掲げる目標値(※)以上に低下させること。
助成金の受給金額
人事評価改善等助成金の受給額は50万円となります。そして、さらに目標を達成することで、80万円が支給されます。総額の受給額は、130万円です。
制度整備助成に必要な書類を確認
人事評価改善等助成金を受給するために、まずは制度整備助成をクリアしなければなりません。クリアするためには必要な書類を間違いなく準備することが大切です。
制度整備助成金に必要な書類は、「行動計画書申請」のための書類と「助成金申請」のための書類が必要です。
行動計画申請のための4つの書類
◆人事評価制度等整備計画(変更)書
人事評価制度等整備計画(変更)書に、計画を作成して、事業主管轄の労働局に提出します。既に計画をたてて認定されている場合は「変更書」に二重線で訂正して提出してください。
書類は厚生労働省のサイトからダウンロードをすることができます。
◆整備する人事評価制度等の概要票(別紙)
人事評価制度の現状は、新たに新設する人事評価制度の概要、目的、対象者、処遇、反映時期、賃金支払日を記入します。注意点は、就業規則の労働基準監督署への届出予定日、労働協約の届出予定日です。事業主が勝手に導入するものではなく、経営者と労働者側との間で労働協約を結ぶ必要が出てきます。
以下の人事評価制度をチェックすることで、人事評価制度の助成金に該当するか確認することができます。
・正規労働者党を適用対象とする制度である
・人事評価の評価対象と基準が明確である
・人事評価が年1回以上は行われる
・賃金表を定めていること
◆賃金アップ計算書
対象者となる正社員等が、1年後の給料がどのくらいアップしたのかを証明する書類です。
1年後の給料が2%アップしていることが必要となり、2%以上アップしていないと提出することはできません。
◆合意書
人事評価改善等助成金を受けるためには、就業規則を変更し就業規則を労働基準監督署へ提出するか、もしくは労使間の合意書を労働基準監督署に提出する必要があります。
合意書は、厚生労働省のホームページからダウンロードすることが可能です。
助成金申請のための書類
◆人事評価改善等助成金(制度整備助成)支給申請書
人事評価改善等助成金(制度整備助成)支給申請書を提出するときには、以下の書類も添付しなければなりません。
◆事業所確認表
◆人事評価制度等の適用者名簿
人事評価制度対象者(正社員等)の名前、雇用保険被保険者番号、職種、勤務事業所等を記入します。また、対象労働者本人が確認し署名する欄もあります。
◆整備した人事評価制度を確認できる以下のいずれかの書類
・労働協約
・就業規則
・賃金規定
・賃金表
・賃金アップ計算書(これは、書類①と同じ様式です)
・労働条件通知書または雇用契約書
・人事評価をおこなったことが確認できる書類
・対象労働者の出勤簿など出勤状態が分かるもの
・支給要件確認申立書
・その他管轄労働局が必要と認める書類
行動計画書の申請方法
行動計画書の書類は、人事評価制度を整備する月の初日から逆算して、6ヶ月前より1ヶ月前の日の年月までに提出しなければなりません。
人事評価改善計画(変更)書の提出先は、管轄している労働局です。提出された後には、適切な人事評価制度計画と認定されれば「認定通知書」が郵送されます。
申請しただけで終わりではなく、作成した人事評価制度計画に基づいて人事評価制度を実施していきます。
助成金支給申請の申請方法
助成金支給申請の期限は、人事評価制度の実施日の翌日から数えて2ヶ月以内です。申請書の提出先は、各都道府県の労働局です。
人事評価改善等助成金の受給までの流れ
人事評価改善等助成金は、決められた期限までに提出する必要がありますので、助成金を受給するまでの流れを事前に把握しておくようにしてください。
「制度整備助成」の支給を経て、「目標達成」の支給となります。特に「目標達成」は、認定申請後の3年後の翌日から数えて2ヶ月以内となる、数年にも及ぶ流れです。
制度整備助成の流れ
まずは、人事評価制度計画整備計画の作成を行い、提出期間内に、管轄とする都道府県労働局へ提出します。
「認定通知書」が届き認定となりましたら、整備計画に基づいて「人事評価制度等の整備」(労働規約または就業規則の明文化)し、人事評価制度を実施していきます。
整備した人事評価制度等に基づいて、賃金が最初に支払われた日の翌日から数えて2ヶ月以内に、2%以上の賃金のアップが行なわれたら支給申請を行います。この際の助成金の支給額は50万円です。
目標達成の支給の流れ
認定申請の3年後の日の翌日から数えて2ヶ月以内に、人事評価制度等整備計画の申請書をて管轄する都道府県労働局へ提出します。
この時に受け取れる助成金は、80万円です。
【人事評価改善等助成コース支給までの流れ】
統合された人事評価改善等助成金
平成30年度から人事評価改善等助成金は、人材確保等支援助成金(人事評価改善助成コース)へ統合されることになりました。
統合するにあたって、「目標達成助成の支給が可能となる時期」と「生産性の比較」が以下のように変更となっています。
【目標達成助成の支給が可能となる時期】
平成29年度は「人事評価制度等の実施日の翌日から起算して1年を経過する日の翌日から起算して2か月」だったものが、平成30年度は「人事評価制度等整備計画の認定申請の3年後の日の翌日から起算して2か月」となります。
【生産性の比較について】
「目標達成助成の支給申請を行う直近の会計年度とその3年度前を比較」から、「計画認定申請日の属する会計年度の前年度とその3年後の会計年度の比較」となります。
参照:人事評価改善等助成金
人事評価改善等助成金の注意点
人事評価制度計画整備計画を作成し認定されてから、計画書に基づいて実施することで受給できる助成金ですが、申請時期のタイミングをよく確認してから計画的に申請するようにしてください。離職率については、過去1年を遡って計算するのもポイントとなります。
提出する書類は、「行動計画申請」で必要な4つの種類を厚生労働省のホームページからダウンロードして、準備しておくとよいでしょう。
「助成金申請」を行う際にも、いくつかの書類が必要となるので、見落とすことのないようにしてください。書類に不備があると、助成金が受給できなくなります。
まとめ
人事評価改善等助成金の仕組みについて解説しながら、「行動計画申請」と「助成金申請」に必要な書類を紹介してきました。
評価制度を導入によってきちんと明文化することにより、労働者は、安心とやる気が起き、生産性の向上につなげていける可能性が大きくなっていきます。「規則はあるのに明文化していない」「給料を能力によってきちんと上げたい」と思っている事業主は、人事評価改善等助成金を積極的に活用して、事業の資金調達につなげていきましょう。