あなたが自分の事業のために資金を調達したいと思ったとき、必ず事業計画書が必要になります。
事業計画書は、自分の事業の内容を説明するだけではなく、どれほどの熱意や深い思いがあるのかというメッセージを伝えるツールでもあります。
では、どうすれば相手の心を動かすような事業計画書を作ることができるのでしょうか?
本記事では、これから起業を考えている方、すでに起業をされている方など融資を検討している方へ向けて事業計画書の書き方について解説していきます。
事業計画書の必要性
事業計画書とは、事業の方針や戦略と収益性などを説明するものです。
自分が事業を始める、または継続していく際に必要な資金を得るために作成します。
また、イメージや勢いだけで無計画に起業して、実際には思ったように収益が上がらずに事業が行き詰ってしまうケースも多くあります。
ご自身の事業について、きちんと計画を立てながら何度も精査していくことで、論理的に自分の事業について考え、客観的に見つめなおすためにも事業計画書が非常に役立ちます。
ところで、「事業計画書」と検索しても、いろいろなサイトが出てきますが、まずは一般的な事業計画書がどんな形式をしているのかを見てみるのもよいと思います。
たとえば日本政策金融公庫のサイトで見られる創業計画書のテンプレートは、もっとも有名で、ダウンロードもできます。このようなものをいくつか見て、事業計画書のイメージをつかんでみましょう。
いろいろな事業計画書のテンプレートを見てみても、求められているものはだいたい似ていると思います。そのポイントを順番に見ていきましょう。
①創業者のプロフィール
企業が融資を受けようとする場合、金融機関はその企業の実績を見ることで「この企業はお金を計画通りきちんと返済してくれそうだな」といった感じで、相手に融資が可能かを判断をしますよね。
しかし創業をする場合、自分にはまだ実績がありません。
そこで、自分が創業する目的や動機が実績の代わりになります。自分がこれまで経験してきたことを、自分のプロフィールとして書いていきましょう。
例えば、会社でウェブサイトのデザインを10年続けてきた人が、デザイン会社を創業する場合は、自分が会社員だったころの経歴や実績がプロフィールとなります。
「これだけの実績があるのでこの事業を成功させられる」という形でアピールをしましょう。
ちなみに、事業に関係のない資格や実績等を綴っても意味がないので気を付けましょう。
履歴書と似ていますね。
またプロフィールと共に、会社概要(屋号・住所・役員・電話番号・ホームページアドレス・メールアドレス等の基本的な情報)もここに記載しましょう。
②事業の理念や目的
自分がなぜこの事業を始めようと思ったのか、何を目指しているのか、自分の強い思いを書きましょう。
当然ですが自分や社員だけが理解できる内容では相手に響きません。
相手(融資の担当者など)にどれだけ共感してもらえるかということが重要です。
ここで担当者に共感してもらえないようでは、事業として、その先にいる多くの顧客に自分の思いが届くことも難しいはずなので、どれだけ深い理念や強い目的があるのかが伝わるような文章を書きましょう。
例えば洋菓子店を経営したいと考えている場合、なぜ自分がその店を経営する必要があるのか、顧客に自分ならではのどんなサービスを提供できるのかを改めて考えましょう。
たとえばアレルギーを持っている人でも食べられるお菓子を作りたいという理念を持っていて、材料にこだわっていたり、仕入れ方を工夫して原価と売価を安くできるなど、自分の目的・自分の強み・顧客のメリットなどを、簡潔に分かりやすく書きましょう。
③競合他社との比較
ここまで自分の事業について考えてきましたが、競合が考えられる別の会社との比較も重要です。
競合他社については「マーケティングの4P」に沿って考えましょう。
マーケティングの4Pとは
【1】Products(製品)
【2】Price(価格)
【3】Place(流通)
【4】Promotion(販売促進方法)
です。
これらについて、洋菓子店に当てはめて考えてみます。
【1】洋菓子店の製品といえば、ケーキや焼き菓子などがありますね。
これらを販売している店はどこにでもあるので、洋菓子店というジャンルがすべて競合と言えるかもしれませんが、その中で差別化をはかるためにどのような製品である必要があるのか考えましょう。
熟練した職人が作る商品であるとか、アレルギーを持つ人向けの、アレルゲンの入っていない商品であるとか、地元産の食材を使用しているなど、様々な製品が考えられますね。
【2】価格については、たとえば小さな事業だと、全国展開している大手には負けてしまうかもしれません。
しかし【1】と組み合わせて考えることで、値段相応の価値が顧客に提示できれば、単純な価格の争いにはなりません。
他社に比べて値段が高くても、その製品にしかない価値があると思ってもらえれば、競合に勝てる見込みもありますね。
【3】駅の中やその近辺などには、既に大手の洋菓子店が参入していることが多いと思います。
競合があったとしても【1】の製品に絶大な自信があれば、人通りの多い立地にはやはり魅力がありますし、逆に駅から離れた家賃の安い住宅街等でも、わざわざそこを目指して来てもらえるほどの価値が製品にあれば、大きな利益を上げられるかもしれません。
また今ではオンラインでの販売も一般的にとても浸透しているので、対面販売と並行してオンラインショップでの流通を充実させるなどの方法もあります。
【4】大手はテレビCMやネットの広告などにも大変力を入れていると思いますが、【1】~
【3】の中で自分の強みを生かし、対抗できるような販売促進方法を考えましょう。
これらを踏まえて、自分の競合となりそうな店を何店舗かピックアップし、【1】~【4】までの項目について比較をしてみましょう。
たとえば、以下のポイントについて、競合となる店と具体的数値を比較しましょう。
【1】・品物の種類・品質・材料
【2】・ケーキの価格・焼き菓子の価格
【3】・駅からの距離・駐車場の有無・営業時間・イートインスペースの有無
【4】・CM・ホームページの有無・広告・クーポン
これらを表にして自分の事業と比較してみると、自分に何が足りないのか、その分をどこで補えばいいのか、どこがより秀でているのかが明確になります。
④マーケティング戦略
③で競合他社の比較をしてみると、自分のすべきことがかなり明確になってくると思います。
次に、マーケティングに特化して考えてみましょう。
誰に売るのか
例えば、駅ビルに入っているような洋菓子店は、恐らく駅を利用する老若男女をターゲットにしていますよね。
値段も他店舗とそこまで開きがなく、手土産に喜ばれそうなラインナップになっていると思います。
では、自分はどんな商品を作りたいのでしょうか?万人受けするような手ごろで分かりやすい商品なのか、熟練した職人が作る高価格で見た目も美しい商品なのか、アレルギーを持つ人も食べられる商品なのか、添加物や砂糖を一切使わずに甘味を出す健康志向の商品なのか、それらを明確にすることで、誰に売っていきたいのかを明確にしましょう。
ここが明確になると、そのための課題が見えてきます。
どこでどのように売るのか
分かりやすい万人受けする商品を売るとなると、やはり単純に人通りが多い立地の良い場所に出店することになります。
そうなると、家賃も高く競合も多くなります。
その上で自分ができることを考えると、材料費や仕入れの方法や人件費、または店のデザインや雰囲気、いかにスマホで写真に撮って拡散したくなるか、などがポイントになるかもしれません。
商品がずば抜けて美味しかったり、オーガニックにこだわっていたり、そこでしか手に入らないような希少価値が高くなると、家賃が安く立地が悪い場所でも集客ができる可能性があります。
また、ネット通販も並行して行うなどすれば、さらに可能性が広がります。
⑤売上計画
事業の目的、商品の販売方法と流通(立地)などが決まったら、売り上げ予想を立ててみましょう。
洋菓子店であれば、立地と売り場面積によって一般的な客単価は予測ができます。
それを自分の商品に当てはめた場合、何円のものを一日何個製造して販売できるのか、それが実際に売れるのかということを客観的に書く必要があります。
また、ネット販売や、別の場所に納品する(卸す)という手段もあります。
既に納品できる場所や契約が決まっていれば、明確な売り上げになるので、融資を受けるのにとても有利です。
また、このように、商品や材料を仕入れたり、場所を借りたりなど様々な取引先の協力が必要となることもありますよね。
そういった取引先についても、事業計画書に記載する必要があります
⑥開業資金
自分の事業を始めるにあたり、かかる費用のすべてを記載する必要があります。
・店舗を借りる費用・内装工事費・材料費・人件費・光熱費・広告費等
自己資金で幾らまかない、その上で幾ら融資を受けたいのかを記載します。
⑦年単位の計画
自分の事業が5年後にどうなっていたいのかを明確にしましょう。
会社や店舗の規模はどのくらいになっているのか、どこでどのような商品を販売し、売り上げはどのくらいになっているのか、具体的な数値を決めましょう。
そこから振り返ると、1年単位ですべきことが見えてくるはずです。
年単位の目標に落とし込んだ時に、それが実現可能かどうかも見えてくるので、まず5年後の自分の事業について検証し、そこまでの具体的な道筋を書きましょう。
まとめ
ここまで、事業計画書に必要な項目を見てきましたが、特定のフォーマットはありませんので、ご自身の意思が明確に伝わるように、①~⑦の項目について分かりやすく作成しましょう。できれば、WordやExcelやパワーポイントなどが編集しやすく、相手も見やすいと思われます。
また冒頭にも記載していますが、日本政策金融公庫のサイトで見られる創業計画書などを参考にしてもよいと思います。
事業計画書とは、自分が実現したい事業について、客観的に可能かどうかを判断してもらえる指針です。
作成しながらより自分がすべきことが明確になってくるはずです。
何度も精査しながら、自分がこれ以上追及する予知がないくらいまで突き詰めてみましょう。