事業者が資金調達として補助金や助成金を利用する際には、対象条件を満たしていることが前提となります。
しかし、中小企業や個人事業主においては対象条件に当てはまることが多い一方で、一般社団法人等は、対象外となってしまうことは少なくありません。
特に、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響に伴い設けられている助成金もあることから、「助成金の対象となっているのか?」と、心配している方は多いのではないでしょうか?
そこで、こちらの記事では、公益社団、財団法人、一般社団、財団法人も対象となっている雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響にともなる特例)を詳しくご紹介していきます。
INDEX
雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響にともなる特例)6つのポイント
新型コロナウイルス感染拡大は、今後も予断を許されない状況となっていますが、雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響にともなる特例)は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている事業主に向けて支援が拡充されています。
「雇用調整助成金の特例措置の内容がわかりずらい」と感じている方も多いと思いますが、抑えておきたいポイントは、次の6つです。
◆ポイント1
・助成率が最大で10割となる。
◆ポイント2
・上限額が15,000円に拡充された。
◆ポイント3
・上限額が引き上げ前の申請済み分においても、差額を精算してもらえる。
◆ポイント4
・過去分をさかのぼって増額しても、差額の申請が行える。
◆ポイント5
・申請形式が簡素化されたために、申請しやすくなった。
・特に概ね20名以下の場合
◆ポイント6
・特例措置の期限の延長
・厚生労働省が令和2年12月31日までに延長された
雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響にともなる特例)の紹介
雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響にともなる特例)は、新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動の縮小を余儀なくされた場合に、従業員の雇用維持を図るために設けられている助成金です。
労使間の協定に基づいて、雇用調整(休業)を実施する事業主に対して、休業手当などの一部を助成しています。
さらに、事業主が労働者を出向させることで雇用を維持した場合も、雇用調整助成金の支給対象となっています。
◆緊急対応期間:令和2年4月1日から12月31日まで
一般社団法人とは?
東京労働局によると、雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響にともなる特例)は、公益社団、財団法人、一般社団、財団法人も対象となっています。
一般社団法人とは、一定の財産(寄付も含む)に対して法人格が与えられた団体のことをさしています。
◆設立する人が価額300万円以上の財産を拠出し、その財産を事業の目的のために運用していくことが法人設立の条件
・事業内容や公益性の有無は問われません。
・一般財団法人には、理事3人、監事1人、評議員3人以上が必要なため、7人以上の人が集まらないと設立することはできません。
◆一般社団法人が社員の「活動」に重きを置いている
・なお、一般財団法人は「目的のために財産を活用する」という資金面に重点をおいています。
支給対象となる事業主
雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響にともなる特例)の支給対象となる事業主は、下記の条件を満たす全ての業種の事業主が対象となります。
①「新型コロナウイルス感染症の影響」により経営環境が悪化し、「事業活動が縮小」している
②最近1か月間の売上高または生産量などが前年同月比5%以上減少している
・比較対象とする月についても、柔軟な取り扱いとする特例措置があります。
③「労使間の協定」に基づき休業などを実施し、休業手当を支払っている
◆「新型コロナウイルス感染症の影響」とは?
次のような理由で経営環境が悪化していることをいいます。
【理由の一例】
① 観光客のキャンセルが相次いだことにより、客数が減り売上が減少した。
② 市民活動が自粛されたことにより、客数が減り売上が減少した。
③ 行政からの営業自粛要請を受け休業したことにより、客数が減り売上が減少した。 など
◆「事業活動が縮小」とは?
売上高または生産量などの事業活動を示す指標の最近1カ月間(休業した月もしくは、その前月または前々月でも可)の値が1年前の同じ月に比べ5%以上減少していることです。
・1年前の同じ月を比較対象とすることが適当でない場合は、2年前の同じ月との比較が可能です。
・1年前や2年前の同じ月と比較しても要件を満たさない場合、休業した月の1年前の同じ月から休業した月の前月までの間の適当な1ヶ月との比較が可能です。
・対象期間の初日が令和2年4月1日より前の場合は、10%以上減少していることが要件とな
ります。
・いずれの場合も、比較する月は1カ月間を通して雇用保険適用事業所であり、かつ1ヶ月を通して雇用保険被保険者を雇用している月である必要があります。
◆「労使間の協定」とは?
雇用調整助成金は、休業の実施時期や日数、対象者、休業手当の支払い率などについて、事前に労使との間で書面による協定がなされ、その決定に沿って実施することを支給要件としています。
・労使とは、事業主と労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合、労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者のことです。
・新型コロナウイルス感染症の影響により、事前に書面による協定を結ぶことが難しい場合
は、労働組合等との確約書等による代替が可能となっています。
助成対象となる労働者
雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響にともなる特例)の助成対象となる労働者は下記の通りとなります。
◆事業主に雇用された雇用保険被保険者に対する休業手当などが、「雇用調整助成金」の助成対象です。
・学生アルバイトなど、雇用保険被保険者以外の方に対する休業手当は、「緊急雇用安定助成金」の助成対象となります。(雇用調整助成金と同様に申請できます)
助成額
雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響にともなる特例)の助成額の算出、助成上限額、助成率は下記の通りとなります。
◆助成額の算出方法
『 (平均賃金額 × 休業手当等の支払率)× 下表の助成率 』
・上記の「平均賃金額」の算定について、小規模の事業所(概ね20人以下)は簡略化する特例措置を実施しています。
◆助成上限額
・1人1日あたり15,000円が上限です。
◆助成率
区分 | 大企業 | 中小企業 |
新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業主 | 2/3 | 4/5 |
解雇をしていないなどの上乗せの要件を満たす事業主 | 3/4 | 10/10 |
「中小企業」とは、以下の要件に該当する企業となりますので、ご確認ください。
・小売業(飲食店を含む): 資本金5,000 万円以下 または従業員 50 人以下
・サービス業: 資本金5,000 万円以下 または従業員 100 人以下
・卸売業: 資本金1億円以下 または従業員 100 人以下
・その他の業種: 資本金3億円以下 または従業員 300 人以下
支給限度日数
雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響にともなる特例)の支給限度日数は、下記の通りとなります。
◆本助成金の支給限度日数は原則として1年間で100日分
◆3年で150日分ですが、緊急対応期間中(令和2年4月1日~令和2年12月31日)に実施した休業などは、この支給限度日数とは別に支給を受けることができます。
追加支給
雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響にともなる特例)の追加支給は、下記の通りとなります。
◆令和2年6月12日付けの特例措置により、助成金の「上限額の引き上げ」と「助成率の拡充」を令和2年4月1日 にさかのぼって適用します。
◆既に支給決定を行っている事業主などに対して、差額(追加支給分)を令和2年7月以降順次お支払いしております。
雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響にともなる特例)の申請方法
雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響にともなる特例)の申請する前に、支給までにどのような手順を踏んで支給されるのか、確認しておいてください。
次に、雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響にともなる特例)の支給までの流れ、申請手続きの方法、申請に必要な書類について、紹介していきます。
支給までの流れ
雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響にともなる特例)の申請は、下記のような手順で進められていますので、申請する前によく確認しておきましょう。
なお、緊急対応期間中の特例として、計画届の提出が不要となっています。
◆ステップ1:休業等計画・労使協定
・休業等の具体的な内容を検討し、労使間で休業に係る協定の締結を行います。
◆ステップ2:休業等の実施
・計画届に基づいて休業等を実施します。
◆ステップ3:支給申請
・休業等の実績に基づいて、支給申請を行ってください。
・支給対象期間ごとに申請を行います。
・申請期限は、支給対象期間の末日の翌日から2ヶ月以内となります。
◆ステップ4:労働局の審査
・支給申請の内容について、労働局で審査されます。
◆ステップ5:支給決定
・支給決定額が、指定口座に振り込まれます。
申請手続きの方法
雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響にともなる特例)の申請方法は、下記の通りとなります。
◆事業所の所在地を管轄する都道府県労働局またはハローワークで受け付けています。
◆郵送での申請も受け付けています。
申請に必要な書類
雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響にともなる特例)の支給申請に必要な書類は下記の表の通りとなります。
(申請様式と送付書類の一覧)
書類名 | 備考 |
・様式特第4号 ・雇用調整事業所の事業活動の状況に関する申出書 |
【添付書類】 ・生産指標の低下が確認できる書類 ・「売上」等がわかる既存書類の写しも可(売上簿、営業収入簿、会計システムの帳簿、客数のデータ、客室等の稼働率など) |
・様式特第6号 ・支給要件確認申立書・役員等一覧 |
・計画届に役員名簿を添付した場合、別紙の役員等一覧は不要 |
・様式特第9号または12号 ・休業・教育訓練実績一覧表 |
・自動計算機能付き様式 |
・様式特第8号または11号 ・助成額算定書 |
・自動計算機能付き様式 |
・様式特第7号または10号 ・(休業等)支給申請書 |
・自動計算機能付き様式 ・所得税徴収高計算書を用いる場合は 当該計算書を添付 |
・休業協定書 労働組合等との確約書等でも代替可 |
【添付書類】 ・労働組合がある場合:組合員名簿 ・労働組合がない場合:労働者代表選任書 ・実績一覧表(様式特第9号又は12号)の署名または記名・押印があれば省略可 |
・事業所の規模を確認する書類 | ・既存の労働者名簿及び役員名簿で可 ・中小企業の人数要件を満たしている場合、資本額を示す書類は不要 |
・労働・休日の実績に関する書類 | ・出勤簿、タイムカードの写しなど(手書きのシフト表などでも可) ・必要に応じ、就業規則または労働条件通知書の写しなど |
・休業手当・賃金の実績に関する書類 | ・賃金台帳の写しなど(給与明細の写しなどでも可) ・必要に応じ、給与規定または労働条件通知書の写しなど |
まとめ
一般社団法人も対象となっている雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響にともなる特例)について、6つのポイント、支給対象となる事業主、助成対象となる労働者、助成額、支給限度日数、追加支給、申請方法、申請に必要な書類を詳しく解説してきました。
雇用調整助成金の特例措置では、一般社団法人も対象となっていますので、コロナ禍を乗り越えるためにも、資金調達としてぜひご活用ください。
なお、雇用調整助成金の特例措置は簡易化されていますが、期限が決められていますので、見逃すことのないように申請することをおすすめします。