みなさんはインターネット上で融資の申し込みから融資の実行まで完結できる「オンライン融資」がどんなものなのか知ってますか?
オンライン融資は、さまざまなデータ(企業のバランスシートなど)を活用して人工知能(AI)などで分析を行うことで、高度な与信モデルを作成し、スピーディな手続きや審査できるシステムです。
今回は、そんなオンライン融資の特徴を、9つのメリット・デメリットとあわせて紹介していきます。
メリット
①審査から実行までが速い
②審査に必要な書類が無い、あるいは少ない
③銀行からの融資が難しい業種でも借りやすい
④借りたいタイミングで借りやすい
デメリット
⑤融資金額が少ない
⑥金利が高い
⑦返済期間が短い
⑧中長期の関係づくりはできない
⑨銀行融資が難しくなる
オンライン融資
オンライン融資とは、その名の通りオンライン上で融資の手続きが完結するサービスです。
従来の銀行融資などと比較して、膨大な資料の準備も対面での申し込みも必要ありません。
会計データなどを元に人工知能(AI)が与信モデルを作成し、スピーディーに資金の借入が実現します。
オンライン融資と銀行融資の違い
企業が金融会社から借入を検討する際、まず思い浮かぶのが銀行からの融資ではないでしょうか。
銀行から融資を受けるためには、審査を受ける必要があります。
審査にあたっては、銀行の融資担当者に相談の上、以下の書類の提出が必要です。
・登記簿謄本
・印鑑証明書
・納税証明書
・決算書(損益計算書、貸借対照表)※2-3期分を求められることがあります
・確定申告書
・資金繰り表
・事業計画書
・試算表
・借入状況一覧
・手持工事明細表(建設業の場合)
・納税証明書
これらの資料をもとに企業は格付けされ、金利、返済期間・返済方法が決まります。
申込から融資の実行までは数ヶ月の時間を要しますが、そもそも上記の資料を用意するだけでも時間がかかるでしょう。
このような膨大な資料が必要な理由は、貸す側の銀行が出来るだけ貸し倒れのリスクを減らしたいためです。審査も慎重に行われます。
これに対して、オンライン融資はネットで手続きが完結する点が最大の特徴です。
銀行口座の入出金情報や会計ソフトに蓄積されたデータなどを分析し、金利や融資条件を算出します。
近年では、会計ソフトもオンライン融資の領域に参入しており、例えば会計ソフトのfreeeでは、これまでに蓄積した100万社超の財務データを元にAIが個別に3ヶ月先の残高と資金繰りを予測。
借入可能額や金利などの条件を試算し、提携先のカード会社が無担保で融資を提供します。
オンライン融資のメリット
オンライン融資の最大のメリットと言えば、全てサイト上で完結させる(さらにスマホで全部完結するタイプもある)ことから非対面で書類のやり取り(本人確認資料)やネット上でのやり取りで終わりることができる点が挙げられます。
①審査から実行までが速い
オンライン融資の最大のメリットは、申し込みから融資実行までが速い点。
銀行や日本政策金融公庫、各自治体が提供する融資制度に申し込むと、審査のために多くの資料を用意し融資実行までに数ヶ月を要します。
また、保証人や担保が必要なケースもあるでしょう。
それに対してオンライン融資は、日々蓄積された会計データなどを元に融資可能かどうかが判断され、最短で翌日に振り込まれるケースもあるほどです。
②審査に必要な書類が無い、あるいは少ない
オンライン融資における審査材料は、基本的に「データ」です。
そのため、銀行融資のように、試算表だ資金繰り表だなんだと、あらためて書類を準備する必要がありません(初回の本人確認書類、登記簿謄本などは別として)。
このように、「書類が必要ない」あるいは「書類が少なくてすむ」という手軽さは、オンライン融資のメリットのひとつとされています。
準備しなければいけない書類が少ないことは、融資実行までのスピードを速めるひとつの要因になっています。
③銀行からの融資が難しい業種でも借りやすい
ネットショップは比較的、銀行融資を受けにくい業種です。
なぜなら、一般に、扱う商品の流行り廃りが早く、事業の安定性(今後もずっと売れるか)を見込むことが難しいからです。
その点、オンライン融資では、ネットショップの取引・決済などのデータを審査材料とし、積極的な融資を展開しています。
このようなケースでは、銀行融資に替えて、オンライン融資を利用するという考え方もアリでしょう。
④借りたいタイミングで借りやすい
オンライン融資では、基本、「いま」の状況を見て、融資の可否が審査されます。
つまり。先々月は売上不振で状況が良くなかったけれど、先月の売上は絶好調。というのであれば、融資実行の可能性は高まっている、ということです。
いっぽうで、銀行融資の場合にはそこまでではありません。基本、いちばん最近の決算書です。試算表などで「いま」も見てはくれますが、いちばんは決算書。
ですから、決算が悪いと向こう1年は銀行融資が難しくなる、という傾向があります。
オンライン融資のデメリット
融資を受ける側にとってはメリットばかりではありません。
代表的なものとして、金利が高い、融資額が低いなどが挙げられます。
では、デメリットに関してもう少し詳しく紹介していきます。
⑤融資金額が少ない
融資金額は決して多くありません。むしろ少ないです。
上限 1,000万円と額が大きい「レンディング・ワン」も、資金使途(おカネを借りる理由)は運転資金に限られ、新規出店や設備投資などの「設備資金」には使えない、
という制限があったりします。
必要なおカネの金額・資金使途はケースバイケースではありますが。オンライン融資の上限金額は、銀行融資に比べると心もとなく、資金使途も限られている。これは、デメリットです。
融資を活用するポイントのひとつは、できるだけたくさんの金額を、きちんと借りること。言葉を選ばずに言えば、借りられるだけ借りることです。
⑥金利が高い
オンライン融資のほうが、銀行の融資よりも金利が高めに設定されています。
これは利便性とトレードオフになる部分です。
しかし長期的には、銀行も同様のサービスを提供すると予測されているため、その場合は金利も下がってくると思われます。
⑦返済期間が短い
オンライン融資は、返済期間がとても短いです。長くても、半年から1年のあいだに返済をしなければいけません。
これでは、せっかく借りたのに、またすぐに手元のおカネが不足してしまいます。そういう意味では、オンライン融資は「その場しのぎ」なのです。
すぐに返さなければいけないおカネでは、「きちんと借りた」とは言えません。借りるのであれば、できるだけ長く借りる。これも心得ておいたほうが良いと言えます。
今後、オンライン融資の実績が増えれば、返済期間が伸びたり、上限金額が増えたりは期待できるでしょう。それまではまだ、銀行融資のほうに分があります。
⑧中長期の関係づくりはできない
銀行は、「融資をした・返済をしてもらった」という実績を評価します。いちど融資をした、約束どおり返済をしてもらったということが信用になるのです。
実績が増え、信用が増えることで、融資を受けやすくなったり、融資条件がよくなること(金額が増える、金利が下がる、返済期間が長くなるなど)が期待できます。
このように、銀行融資においては、会社と銀行とのあいだで、中長期的な関係づくりができる。というメリットがあります。
しかし、オンライン融資にはそれがありません。良くも悪くも「いま」が審査の材料なのであり、中長期での関係づくりもできなければ、その関係に期待できるものもありません。
「できるだけたくさんの金額を、きちんと借りる」には、「きちんと借り続ける」ということも含まれています。
安定した資金を、長く借り続けることを考えるのであれば、やはり銀行融資は欠かせません。
⑨銀行融資が難しくなる
オンライン融資の中には、貸し手が銀行ではないものがあります。銀行ではなく、貸金業者、いわゆる「ノンバンク」です。
このようなノンバンクからの借入について、基本的に、銀行はネガティブな見方をしています。
業績が悪いなどの理由で、銀行から借りられないからノンバンクなんでしょ? ということで、審査上はマイナスの評価を受けるわけです。
オンライン融資についても、そのようなマイナス評価の対象になりうることは覚えておいたほうがよいでしょう。
また、そもそも、オンライン融資を受けた金額分は、その会社・事業の借入余力を減らすことになります。
たとえば、A社の借入余力が 1,000万円だとして。オンライン融資だろうが、銀行融資だろうが、借りればその金額分だけ、借入余力は 1,000万円から下がります。
ですから、どうせ借入余力を減らすのであれば、比較的「金利が低い」「返済期間が長い」銀行融資を優先すべき。そのように考えるのがよいでしょう。
オンライン融資が普及しつつある中でも、このメリットとデメリットをしっかりと把握して利用するかどうかをしっかりと考えることが当然求められることは念頭に置いておきましょう。
オンライン融資を提供する会社
オンライン融資を提供している会社には、オンライン融資を専門とする融資会社の他、最近では銀行や会計ソフトも参入してきています。
会社名 | サービス | 概要 |
みずほ銀行 | みずほスマートビジネスローン | みずほ銀行がクレジットエンジン株式会社と連携・提供するオンラインレンディングサービス。
利用者のデータやAI技術を活用した与信モデルで、申込から融資実行までオンライン完結、最短二営業日で融資実行可能。 |
freee finance lab (フリーファイナンスラボ)株式会社 | 資金繰り改善ナビ | 会計ソフトfreeeの100%出資子会社、freee finance lab (フリーファイナンスラボ)が提供するオンラインレンディングサービス。
会計freeeのデータを元にこれまでの資金推移と将来予測を自動表示。 利用可能な資金調達手段をオファーしてくれる。 オンラインレンディングの他、請求書を譲渡することで資金を得るファクタリングや、スモールビジネスのオーナーに特化したクレジットカードも提供。 |
三菱UFJ銀行 | BizSTATION | 三菱UFJ銀行が提供する法人向けポータルサイト。
このサービスの一つとしてオンラインレンディングを提供しており、決算書などの財務データではなく、入出金データなどに基づいて与信判断を行う。 最短2営業日で融資が完了する。 |
広がるオンライン融資
無料ネットショップを開店できるサービスは増えているものの、基本的に販売する商品は事前に仕入れることが必要になります。
また、売上が立ったとしても、オンライン故に手元にお金が入るまでにある程度のリードタイムが発生するため、EC事業者にとって資金繰りは非常に重要なものとなります。
急なECモールでのセールだけでなく、個人の情報発信力が強まった今、いつ話題を集め商品の仕入れが必要になるかわかりませんし、ビジネス拡大のきっかけはいたるところにあります。
まとめ
今回は、新融資サービスでもある「オンライン融資」についてご紹介しました。
インターネットが普及している世の中だからこそできるサービスでもあり、ネット業界の発展にも驚かされます。
AIによる分析技術などがより進化すれば、融資判断の妥当性も一層高まるでしょう。
ただオンライン融資に関しては金利が一般的な融資よりも高いなど、融資を受ける側にとってはメリットばかりではありません。
オンライン融資が普及しつつある中でも、このメリットとデメリットをしっかりと把握して利用するかどうかをしっかりと考えることが当然求められることは念頭に置いておきましょう。