ダービーで活躍した競走馬でもあっても、引退馬となり長い余生を養っていくためには多くの費用がかかってしまいます。
預託料だけでも年間40万円~100万円程度にもなり、かかる費用に頭を悩ませる方も多いのではないでしょうか?
悩んでいるのなら、引退馬に対して行われている補助金制度をぜひご利用ください。
こちらの記事では、引退馬の支援として行われている「引退名馬繁養展示事業助成金」と「引退競走馬の養老・余生等と支援する事業」について解説しています。
引退馬の余生とかかる費用
活躍した競走馬を生涯養っていくことは、簡単なことではありません。
競走馬を引退した後に養老牧場などに預託する場合には、毎日の放牧管理のみで毎月12万以上はかかり、馬の寿命は20年~30年であることから長い間養っていくことになります。
一般的な競走馬の引退は5才~6才というのをみても、引退馬となった期間の方がいかに長いかがみてとれます。
引退した馬は、養老牧場や乗馬クラブに引き取られていく一方で、殺処分などの処置が行われてしまう馬も存在しています。
引退馬にかかる費用
引退した競走馬が養老牧場等へ預託することになると、預託料だけでも年間で50万円~120万ほどかかり、その他にも馬代金、移動するための馬運車代、削蹄料、ワクチン接種、獣医療費、飼料代など多額な費用がかかるります。
また、死亡時には、死亡診断書、運搬トラック代、処理費用など合わせて10万円程度必要です。
このように費用がかかる引退馬ですが、引退馬に対して補助金が交付される事業が設けられています。
次に、どのような事業が設けられているのか紹介していきます。
引退名馬繁養展示事業とは?
引退名馬繁養展示事業は、公益財団法人 ジャパン・スタッドブック・インターナショナルが行っている助成事業です。
事業では、競馬、繁殖や乗馬として供用されなくなった高齢の引退競走馬(競走を引退した馬)などの支援を行っています。
競走馬として活躍するとともに、多くのファンに夢や希望を与え競馬の発展に貢献した名馬の繋養展示活動に対し助成金や繋養先などの情報を提供しています。
活動への助成等を通じて、生命の大切さや弱者に対する思いやりの心を育て、競馬に対する信頼の確保などに貢献している事業です。
引退名馬繋養展示事業助成金
引退名馬繋養展示事業助成金は、益財団法人 ジャパン・スタッドブック・インターナショナルが行っている引退名馬繁養展示事業のなかの助成金交付事業です。
助成対象馬や助成対象者に対して、助成金を交付し支援を行っています。
2月および9月下旬になると、ホームページにて助成金申請の案内が掲載されていますのでご確認ください。
助成対象馬
引退名馬繋養展示事業助成金の補助対象となる馬は、競走、繁殖及びその他の用途から引退していずれの用途にも使われることなく、余生を送るために繋養されている馬となります。
中央競馬重賞競走の勝馬又は地方競馬で実施されたダートグレード競走(ダート競走格付け委員会又は日本グレード格付け管理委員会において格付けされた指定交流重賞競走)の勝馬であり、下記の要件を満たす馬が助成金の対象です。
◆中央競馬の競争馬登録又は地方競馬の馬登録を抹消していること
◆本財団の繁殖登録を受けた馬にあっては、用途変更の届けをしていること。
◆公益財団法人 日本馬術連盟の乗馬登録及び公益社団法人全国乗馬倶楽部振興協会の乗用馬登録を現に受けていないこと
◆第6条第3項に規定する助成対象期間において10歳以上であること
◆国内において、善良な管理が行われていること
◆競馬ファンを含め一般に対し、常時展示されていること
助成対象者
引退名馬繋養展示事業助成金の助成対象となる方は、助成対象馬を所有する者となります。
また、交付を受けた助成金の会計処理を適正に行うことができ、業務執行および監査に関する体制が適正であると認められた方になります。
交付金額等
引退名馬繋養展示事業助成金の助成額は、下記の通りとなります。
◆1頭にあたり 月額1~2万円ほど
なお、助成対象期間が1年間であり、その期間内に20歳、25歳、30歳、35歳を迎えた馬には、特別助成金として1頭あたり10万円が支給されます。
(2020年度 助成額・例)
①中央競馬重賞競走の勝馬 1頭当たり月額20,000円
②地方競馬で実施されたダートグレード競走の勝馬 1頭当たり月額10,000円
①又は②のいずれかの金額となります。
申請に必要な書類
引退名馬繋養展示事業助成金の申請に必要となる書類は下記の通りとなります。
◆引退名馬繋養展示事業助成金交付申請書(様式第1号)(A3用紙にて印刷)
引退名馬繋養届(様式第2号)(A3用紙にて印刷)
助成金の交付申請~実績報告書までの順序
引退名馬繋養展示事業助成金を受給するには交付申請を行い、その後、飼養状況確認書や実績報告書を送付していく下記のような順序で行われていきます。
(申請から通知まで)
①ジャパン・スタッドブック・インターナショナルはホームページで、2月及び9月下旬に、ホームページに助成金交付申請の案内を掲載します。
②所有者(申請者)は、3月下旬及び10月までに、助成金交付申請書(様式第1号、及び様式第2号)に必要事項を記入の上、署名、押印し送付してください。
③ジャパン・スタッドブック・インターナショナルは、申請書類の審査、実馬及び繋養環境を調査の上、助成金の交付を決定し、6月上旬または1月下旬に申請者に通知します。
(報告と助成金の交付)
①ジャパン・スタッドブック・インターナショナルでは、6月末に飼養状況確認書(様式第4号)、11月末に事業実績等報告書(様式第5号)を送付します。
なお、助成金は前期と後期に分けて交付します。
②所有者(申請者)は、飼養状況確認書(様式第4号)を7月上旬までに、事業実績等報告書(様式第5号)は12月上旬までに必要事項を記入の上、署名、押印し返送します。
③ジャパン・スタッドブック・インターナショナルは、7月下旬、12月下旬までに、前期又は後期分の助成金を受給対象者に交付します。
引退競走馬の養老・余生等を支援する事業
引退競走馬の養老・余生等を支援する事業は、引退競走馬に関する検討委員会が事業主体となっている引退競走馬を取り巻く環境の改善と向上を図ることを目的とした事業です。
「引退競走馬に関する検討委員会」が2017年設置され、引退競走馬を取り巻く環境の改善・向上について、協議・検討を行っています。
2020年度には、「引退競走馬の養老・余生等を支援する事業」を行うことになりました。
事業内容
引退競走馬の養老・余生等を支援する事業の事業内容は、下記の通りとなります。
◆引退競走馬の養老・余生等に関する取組みを行っている団体等(引退競走馬のセカンドキャリア促進のための活動と併せて、これを実施している者等を含む。)について、検討委員会でその活動が引退競走馬を取り巻く環境の改善・向上等に結びつく優良なものと認められた場合等にその活動を支援する活動奨励金を交付する事業。
支援対象とされる者
引退競走馬の養老・余生等を支援する事業の支援対象の候補となる方は、下記のいずれかに該当し、なおかつその活動を一定の規模で3年以上継続して行った方となります。
また同時に、本事業の趣旨を理解し、了承する団体等です。
◆引退競走馬の養老・余生等に関わる活動をしている団体等(養老牧場等)
◆引退競走馬等の受入れ先に関わる調整・提案等(主に養老・余生やリトレーニング)の活動を行っている団体等(NPO法人等)
◆引退競走馬のリトレーニング等の利活用促進と併せて、高齢・引退馬対策(養老・余生的な活動)となる活動を行っている団体等(乗馬クラブ等)
なお、その他これらと同様と考えられる活動を行っている生産・育成牧場等、あるいは、小規模・個人レベル等で行っている者が該当となる場合もあります。
2020年度事業(1月から12月が事業期間)の予定
引退競走馬の養老・余生等を支援する事業の2020年度の事業予定は下記のようになっています。
◆引退競走馬の養老・余生等に関する取組みを行っている者について
・書類調査(それぞれの団体等における養老・余生等の活動内容および状況、繋養頭数、施設環境、今後の活動見込み等)
・実地調査(4月から10月の期間)
・その活動内容や活動実績を検証
・検討委員会にて交付対象者の選定
・活動奨励金を交付する予定(年末)
注意事項
引退競走馬の養老・余生等を支援する事業の注意事項は下記の通りとなっておりますので、よくご確認ください。
①交付対象者は、検討委員会で選定されることとなっており、各種資料の提出や実地調査への対応が必要となります。
②これらの活動をする団体や個人全てが直ちに支援対象とはならないこと、支援事業の予算枠に応じて実施されることをあらかじめご承知おきください。
③一定の要件を有する引退名馬を対象とする「引退名馬繋養展示事業」(公益財団法人ジャパン・スタッドブック・インターナショナル(JAIRS)によるもの)とは、異なる制度となります。
④本事業による活動奨励金の交付に際しては、その使途に関しての制約を受けることとなります。また、後日、その使途についての調査を行うので、実施内容を報告していただくこととなります。
⑤調査票の提出等を希望する団体等は、検討委員会のメールアドレス(intai.rt@jra.go.jp)あてに連絡願います。
問い合わせ先
引退競走馬の養老・余生等を支援する事業の質問や問合せ先は下記の通りとなります。
◆引退競走馬に関する検討委員会(事務局)
・メール intai.rt@jra.go.jp
・電話 03-3591-5251(代表)
・ダイヤルイン 03-5785-7503・7533
・JRA日本中央競馬会(馬事部・馬事振興室)内
・担当者 西尾・田村・滝澤ほか
まとめ
競走馬を引退した引退馬の余生とかかる費用と同時に、引退馬に対しての補助金や助成金について紹介してきました。
競走馬の引退年齢は約5才と早く、20才~30才までの寿命をまっとうするには預託料だけでも多くの費用がかかってしまいます。
そのような費用でお悩みなら、こちらで紹介した「引退名馬繁養展示事業助成金」や「引退競走馬の養老・余生等と支援する事業」の助成金や奨励金を、ぜひご活用ください。
引退馬のための資金調達へとつなげていける補助金や助成金を利用して、競走馬の安心できる余生を整えてあげましょう。
特に「引退名馬繁養展示事業助成金」は毎年助成事業を行っていますので、申請時期を見逃すことのないようにしてください。