
仮想通貨を利用した資金調達方法で最も一般的な手法であるICOに次ぐ、新たな資金調達方法として2019年頃から高い注目を集めているのがIEO(イニシャルエクスチェンジオファリング)と呼ばれる手法です。
大流行したICOに変わる新たな資金調達方法として今後も利用される事が予想されているIEOとは一体どのようなものなのか。特徴や問題点、ICOとの違いやIEOへの参加方法まで、新時代の資金調達方法として世界中から高い注目を集めているIEOを初心者にも分かりやすいように解説していきたいと思います。
IEOとは
グローバルな資金調達を低コストで行えて流動性が高いという観点から、画期的な資金調達法として大ブームを巻き起こしたICO。しかし一般の全ての方が参加する事ができ、法整備も整っていなかった事から詐欺行為が蔓延し、90%が詐欺であると発表された事で投資家の信頼をなくしICO市場は冷え込んでいます。
しかしICO自体は上記で述べた様に資金調達の面ではメリットが多くある為に、各国は投資家保護の観点からICOを規制する流れになっており、各取引所はそれぞれのプロジェクトを精査する事で投資家保護を強化しつつICO取引を行っていこうという流れの中で誕生したのがIEOです。
仕組み
IEOとはInitial Exchange Offeringの略称で、簡単に仕組みを説明すると…
プロジェクトを行いたい企業が発行した仮想通貨(トークン)を、その企業の変わりに仮想通貨取引所が販売やセールを行う
資金調達を行いたい企業はまずトークンを発行します。発行したトークンは通常であれば自社で販売や配布、セールやプロモーションを行い投資家にアピールして購入を催促する訳ですが、IEOではそれらの活動を企業に変わり取引所が行います。
勿論IEOでプロモーションされるICOは事前に取引所の審査を受けますし取引所でエスカレーター式で上場する事が決まっていますので、これまで信憑性の薄かったICOを手探りで購入していた投資家からすると信頼性が高く、安心して投資を行う事が出来るようになるという訳です。
ICOとの違い
IEOとICOとの違いを一言で簡単に説明すると以下のようになります。
ICOはプロジェクト開発者が自らトークンセールを行うが、IEOは仮想通貨取引所がトークンセールを行う
つまり『販売主体が違う』という事がICOとの大きな違いです。これまで頻繁に利用されて大ブームを巻き起こしてきたICOは、資金調達したい企業が直接トークンを発行してセールを行い販売してきました。その為スキャムと呼ばれる詐欺行為が頻繁に繰り返されるようになり投資家は大きなダメージを負いました。
80%~90%が詐欺であるとICOアドバイザリーのサティスグループが発表した事により、ICOは黎明期と比べて市場規模は激減し、まともなプロジェクトでさえも資金を調達できにくくなり大きな影響を受けています。このようなデメリットを解消する為に用いられるようになったのがIEOで、トークンセールを取引所が主体となって行う事で信頼性を高めて安心して投資を行えるようにしたという訳です。
トークンセールとは事業資金を集める為に発行したオリジナルトークンを購入してもらい資金調達する方法の事を指します。早く安く購入できるが情報が少ない分リスクの高いプレセールと、情報が確立していてリスクは低いがプレセールよりも高いクラウドセールの2種類があります。
つまりトークンセールとは、ICOにおける別称の一種であり、企業がトークンを発行&販売して資金調達を行う行為の事を指すと覚えておくと間違いないかと思います。
国内の展望
海外では大手仮想通貨取引所のバイナンスやフォビなどがIEO事業に参入して成果を出していますが、国内では現在もまだIEOプラットフォームは存在していません。しかし、国内最大手の仮想通貨取引所であるコインチェックが2019年8月22日に、取引所が主体となってトークンの審査や販売を行うIEO事業への検討を開始したと発表しています。
コインチェックは発表文の中で「企業やプロジェクト等に新しい資金調達の機会を提供する仕組みの実現を目指します」と述べています。国内で最も早くIEOプラットフォームを提供するのはコインチェックである可能性が高く、海外で既に成功している手法なので、そう遠くない将来に実現されると見て良いかと思います。
IEOが注目されている理由
国内ではまだ開始されていませんが、アメリカを始めとする海外では成功を収めていて、ICOに変わる新たな資金調達の手段として高い注目を集めているIEO。ICOが抱えるデメリットのいくつかに対応している事でメリットであるとされていますが、高い注目を集める理由は大きく分けて3つ考えられます。
- 取引所が審査するので信用度が向上する
- 調達資金の持ち逃げ詐欺が起きにくい
- 実施取引所への上場がほぼ確約されている
IEOがICOに変わる新たな資金調達の場であるとされている理由は大きく分けて上記3つの特徴を兼ね備えているからです。以下で1つつず詳しく解説していきます。
取引所が企業を審査する
IEOではトークンセールの販売主体が取引所なので、トークンを発行して販売してほしいと依頼してきた企業を技術力や将来性、正当性などを審査して取り扱うかどうかを決定します。これまでのICOでは開発者がそのままトークンを発行して販売していましたので、企業の信頼性や将来性、正当性や技術力などを審査する機会がなく、トークンを購入する個人が自ら調べて調査する必要がありました。
個人が行う調査には限度がありますが、取引所は幾つもの上場通貨を審査してきている為、全幅の信頼を置けるという訳ではありませんが、個人が行う審査よりは信頼が置けるものであると言えるでしょう。
企業側にも取引所が審査要件を満たした将来性のある優良企業であると言う事を投資家にアピールする事が出来ますし、ICOと比べると資金調達実現までのハードルは上がりますが、取引所に認められた信頼度の高いプロジェクトであると言う事を強く主張する事が出来るので資金が集まりやすくなります。
更に取引所の審査が通貨するとセールストークンと共にプロモーションについても引き受けてくれます。本来であれば取引所に上場する為に多くの時間とコストとリソースを割く必要がありますが、IEOを行う事でそれら全てを取引所が行ってくれますので、それらのプロセスが不要になり、プロジェクト進行の開発やコミュニティ管理に集中する事が出来るようになるという訳です。
中身がないプロジェクトは淘汰されていく
上記でも紹介したように、IEOを利用する為には取引所が定める厳しい審査に通貨する必要があります。技術力や正当性が高く中身があるプロジェクトのみがIEOを利用する事が出来ますので、相対的に中身がない技術力が伴わないプロジェクトは淘汰されていきます。
ICOで乱発した何の開発もしていないのに資金を調達し持ち逃げするような被害が、IEOの普及が全世界に広がる事で被害が減少されていくようになるという訳です。
IEOでは取引所がトークンセールを行い、そのトークンはその後ICOを行った取引所に上場されます。つまり、その取引所が上場してもOKだと判断したトークンでなければIEOが行われないという事になりますから、詐欺コインであるリスクはかなり低いものが販売されると居えます。
投資家がプロジェクト内容について詳細を調べる必要性は変わらず存在しますが、取引所が予め審査をしてIEOを行っているトークンであればある程度の安全性は担保されていると言えます。投資家観点からすると、無数にある怪しいICOの中から優良プロジェクトを見つけるよりも、IEOで取り扱われているトークンの中からより良いものを選別していく方が、リスクなく大きなリターンを得る事が出来る手順であると言えるでしょう。
後に取引所で売買できる
上記の項目でも説明したように、IEOで販売されたトークンはトークンセール終了後の早い段階でIEOを実施した取引所に上場される場合がほとんどです。ICOの場合は販売されたトークンの上場先が不透明であり、なかなか上場されなかったり、上場しなかったりと言ったトラブルが多く発生しました。
一方IEOで販売されたトークンに関しては、将来的に大規模の取引所への上場がほぼ確定している為、投資したプロジェクトのコインを将来的に必ず取引する事が出来るという安心感があります。この安心感はICOでは絶対に得られる事が出来なかった、デメリットを払拭したものであると言えるでしょう。
IEOが抱える問題点
ICOが抱える全ての問題点を解消しているかように感じるIEOですが、実は一概にそうであるとは言えません。IEOならではの新たな課題であったり、ICO時から続く払拭できていない問題点がある事も事実です。
投機的要素を取り除けていない
IEOプラットフォームの中には、より安定した価格形成を促進する為の資金調達法を考案している所もありますが、大半のケースではICOと同様に、IEOで取り扱われたトークンの上場と共に即売りして利益を上げるというケースが非常に多いのが現状です。
ICOで問題視されていた投機的要素(不確実だが当たれば利益の大きい事を狙ってする行為)をIEOで完全に取り除けているかと問われれば、これには疑問符がつきます。
大手取引所の集権
IEO事業は大手取引所が主導でトークンセールを行うものですが、取引所トークンを需要を助長する為のツールとして機能しているという点が問題視されています。世界最大規模の取引所であるバイナンスでIEOに参加するには、取引所トークンであるバイナンスコイン(最低10万円分)を保有しなければいけません。
バイナンスコイン保有量に応じて抽選券が配布され、付与された抽選券に応じて抽選が行われ、IROで取引されるトークンを購入する事が出来る権利を得られるかどうかが決まります。
ブロックチェーン技術に分散型社会確立の可能性を見出している方にとっては、大手取引所の集権的な取り扱い方法に疑問を感じている方も多く、更に取引所が扱うIEOはセール結果のみが報告される場合が多いので、透明性の確保という点でも以前より難しくなっています。
IEOに参加できる取引所
日本国内ではまだIEOプラットフォームは存在していませんが、海外では取引を行う事は可能です。その中でも日本でも特に注目度の高い、世界でも有数のIEOを取り扱っている優良仮想通貨取引所を3つ紹介していきたいと思います。
バイナンス(Binance Launchpad)
世界最大級の規模を誇るバイナンスが提供するIEOプラットフォーム『Binance Launchpad』は、2017年12月にローンチされた世界初のIEO取引所です。2017年末に2件のIEOを行ってから、ICO全盛時代は放置されていましたが、2019年に入ってからは毎月1件のペースでIEOが行われ全て大盛況となっています。
Binance LaunchpadでIEOに参加するにはバイナンスコイン(BNB)を保有している必要があります。保有量に応じて抽選券が配布され、付与された抽選券に応じて抽選が行われます。
BNB保有量 | 抽選券枚数 |
---|---|
50~200 | 1枚 |
200~300 | 2枚 |
300~400 | 3枚 |
400~500 | 4枚 |
500~ | 5枚 |
事前に告知されるIEO実施日から逆算して過去数日間のBNB平均保有量に応じて抽選券が付与されるという仕組みになっています。抽選に当選するとIEOで販売されるトークンを購入する事が可能です。
ちなみに50BNBは現在のレートで大体10万円です。抽選券枚数最大の5枚を獲得したいのであれば、常に約500万円分のBNBを保有しておく必要があります。国内取引所からBTCまたはETHを送金する必要がありますが、国内の取引所から簡単に入手する事は可能です。
フォビ(Huobi Prime)
中国3大取引所の1つであるフォビが提供しているIEOプラットフォームが「Huobi Prime」です。過去30日間のフォビ独自トークンHTの平均所有量が500以上であれば誰でも参加する事が可能であり、バイナンスとは違い抽選ではなく先着順です。IEOが開始されたらすぐに申し込まないと購入する事は出来ません。
更にファビがIEOプラットフォーム事業で成功している理由はHuobi Primeと呼ばれる、販売を3回に分けるDPO方式を採用しているという点です。購入権利を持つ全ての人がいくらかずつは購入する事が可能であり、更に2019年5月からは、より参加条件が緩和された「Prime Lite」も登場し、IEOにかなり力を入れていて資金調達という面でも大成功を収めています。
BitMAX
香港を拠点に運営するBitMAXも近年IEOに力を入れている企業の1つです。初回から日本国籍の方も参加できるようになっていて、第2回目の銘柄はDUO Network(DUO)と呼ばれるもので、トークン化されたデリバティブを取引・決済できる分散型のプラットフォームの運営を目的に開発された仮想通貨です。
開催時間は4月27日午後9時~午後10時までの1時間で、トークンはUSDTのみで購入する事が可能であり、アカウント毎に最大2500DUOの購入が可能でした。
BitMAXでIEOを購入する時の注意点としては、支払いが完了した後、ユーザーは24時間以内にプレセールコードを購入したトークンネットワークで直接提出する必要があると言う事です。この提出がない場合は、プレセールの参加資格を放棄したと見なされますので、最初に支払ったUSDTは返金されて購入する事が出来ません。
IEOのトークンセールに参加するには予めBitMAXのKYCをV2レベルで完了させておく必要があり、口座にポジションを持ちたい額の≧10000を予め入れて置く必要がありますので、この点も利用前にしっかりと確認しておくようにするのが良いでしょう。
まとめ
詐欺行為が頻繁した事で下火になったICOを救済するべく誕生したIEOは現在高い注目を集めている資金調達方法として確立しています。ICOのデメリットを解決すると共に、IEOになった事による問題点も浮上してきていますが、バイナンスなどで開催されているIEOは全て大盛況で、現在の所IEOは世界的に大成功を収めていると言っても良いでしょう。
日本国内最大手のコインチェックがIEO取引に前向きな姿勢を見せていることで、国内でも新しい資金調達の形として誕生する日は近いかもしれません。IEOを購入する為にはと取引所トークンを保有していなければいけませんし、抽選や先着順ですから非常にハードルが高いのですが、現在でも海外の取引所であれば参加する事は可能です。
国内でスタートするよりも先にIEO取引に参加したいと考えている方は、是非上記で紹介した3つのプラットフォームで体験してみて下さいね。