
旅行で日本に訪れる外国人を「インバウンド」と呼ばれはじめて、ずいぶん経ちました。
インバウンドは近年、急激に増加しており、2018年には過去最高の3000万人を突破。政府は、東京オリンピックが開催される2020年に4000万人という目標を立てています。
そのような政府目標もあって、インバウンド対応への施策に対する補助金制度が多く用意されています。
その中から、当記事では次の7つの補助金・助成金制度を紹介します。
・宿泊施設基本的ストレスフリー環境整備事業
・地方での消費拡大に向けたインバウンド対応支援事業
・観光地の「まちあるき」の満足度向上整備支援事業
・インバウンド対応力強化支援補助金
・外国人観光客体験観光促進支援事業
・神奈川県外国人観光客受入環境整備費補助金
・外国人観光客受入環境整備助成金制度(京都市)
インバウンド対応をお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
INDEX
宿泊施設基本的ストレスフリー環境整備事業
国土交通省の観光庁が行う「訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業」の補助金のひとつです。
ホテルや旅館などが、外国人観光客が快適に宿泊できるように、環境整備を実施すると補助金が交付されます。
補助対象事業者
補助金を受けられるのは、旅館業法の営業許可を得たホテルや旅館などの宿泊施設です。
補助対象経費
補助金の対象となるのは、次のような取り組みにかかる経費です。
・無料Wi-Fiの導入、整備
・洋式便器の整備
・国際放送設備の導入
・案内表示の多言語化
・Webサイトの多言語化
・決済端末やタブレット端末の導入 等
基本的に、共有部分における環境整備が補助対象となりますが、一定の要件を満たすことで客室も補助対象になります。
補助金額
1事業者あたり150万円を上限に、補助対象経費の1/3以内の金額を受給できます。
地方での消費拡大に向けたインバウンド対応支援事業
こちらも、観光庁の「訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業」の補助金のひとつです。
外国人を含むすべての観光客のために、観光案内所や公衆トイレの整備などを行うと、経費の一部が補助されます。応募受付期間は例年4月から10月です。
補助対象事業者
補助対象となる事業者は、地方公共団体、民間事業者及び協議会等です。
補助対象経費
おもに次のような取り組みにかかった経費に対して、補助対象金が支給されます。
取り組み | 分類 | 補助対象となる経費 |
外国人観光案内所 | カテゴリー1認定(見込み含む) | 多言語案内用タブレット端末や多言語翻訳システム機器などの整備、無料Wi-Fiの導入費など |
外国人観光案内所 | カテゴリー2以上認定(見込み含む) | VR機器やデジタルサイネージなどの整備、多言語対応のホームページや案内放送などの整備など |
公衆トイレの整備、機能向上 | 基本整備項目 | 和式便器から洋式便器への交換、洋式便器の増設・新設など |
公衆トイレの整備、機能向上 | 追加整備項目 ※1 | 温水洗浄便器の設置など |
非常用電源装置の整備、情報端末への電源提供機器の整備 | 蓄電池システムなどの導入費 | |
多様な宗教・生活習慣への対応力強化 | 啓発事業 | 講師の旅費、会場費、セミナー開催の必要経費など |
視察事業 | 参加者の旅費、印刷・製本費など |
※1 基本整備項目を実施した場合、追加整備項目の経費も補助対象として認められます。
補助金額
補助される金額は、補助対象経費の1/3以内です。
なお、非常用電源装置の整備および情報端末への電源提供機器の整備に限り、補助対象経費の1/2以内が支給されます。
観光地の「まちあるき」の満足度向上整備支援事業
観光庁が行う「観光振興事業費補助金」のひとつです。
外国人旅行者の来訪が多い市区町村の観光地において、「まちあるき」の満足度を高める施策に取り組む事業者に対して補助金が支給されます。
補助対象事業者
補助対象となるのは、地方公共団体、民間事業者および協議会等です
補助対象経費
補助金の対象となるのは、次の事業にかかる経費です。
・多言語観光案内標識の一体的整備
・無料Wi-Fi環境の面的整備
・地域の飲食店、小売店等における多言語対応・先進的決済環境の整備
・公衆トイレの洋式化や機能向上
・外国人観光案内所の整備、改良
・観光拠点情報・交流施設の整備、改良
・外国人観光案内所における非常用電源装置及び情報端末への電源供給機器の整備
補助金額
補助対象経費の1/2以内の金額が支給されます。なお、上限額は設定されていません。
インバウンド対応力強化支援補助金
東京観光財団と東京都が行う補助金制度です。都内に訪れる外国人旅行者の利便性と快適性を高める取り組みを実施すると、補助金が支給されます。
応募期間は平成31年4月1日~令和2年3月31日までで、補助金申請額が予算額に達すると受付が締め切られます。
補助対象事業者
補助金を受給できるのは、次の事業者です。
・都内の旅館・ホテル(旅館業法の許可を受ける事業者に限ります)
・都内の飲食店(多言語対応に取り組む店舗に限ります)
・都内の免税店(中小企業者に限ります)
また、中小企業団体・グループは、外国人旅行者の受け入れ対応に取り組んでいる場合、対象となります。
補助対象経費
補助対象となる経費は、インバウンド対応の強化のために新たに実施する次の事業です
・多言語対応
・無線LANの整備
・洋式トイレ化
・キャッシュレス決済機器の導入
・客室の改装(和洋室化) ※宿泊施設に限ります
・テレビの国際放送対応 ※宿泊施設に限ります
・免税手続きのシステム機器導入 ※免税店に限ります
・外国人旅行者の受け入れ対応を目的とした人材育成
多言語対応とは、店内の案内表示や利用案内、ホームページ、パンフレットなどの多言語化などが該当します。また、多言語対応タブレットの導入も認められます。
補助金額
補助される金額は、1店舗あたり300万円を上限に、補助対象経費の1/2となります。
ただし、無線LANの導入・整備の場合や、中小企業団体・グループが申請する場合は補助金額が異なります。
外国人観光客体験観光促進支援事業
公益社団法人ひょうご観光本部が行う補助金制度です。
兵庫五国(摂津、淡路、丹波、播磨、但馬)の歴史やものづくり等をモチーフした、外国人旅行者向け体験型プログラムの開発などに対して、補助金が支給されます。
兵庫県公式観光サイトでは、対象となる事業の例として、「日本遺産を活用した各種活動体験」や「兵庫の職と観光を組み合わせたプログラム」などが紹介されています。地元の魅力をアピールするユニークな補助金制度といえます。
※令和元年7月に公募した制度です。
補助対象事業者
補助金を受けられるのは、おもに次の事業者です。
・観光関連事業を行う民間事業者
・兵庫県内の観光協会
・DMO
・公益法人
・第三セクター
・商工会議所、商工会、組合
・団体・企業などが参画する協議会 等
補助対象経費
補助金の経費となるのは、謝金、旅費、広報宣伝費、印刷製本費、通信運搬費、原材料費、備品・機器購入費、委託費など多岐に渡ります。
補助金額
補助金の支給額は、1000万円を上限に、補助対象経費の1/2です。
神奈川県外国人観光客受入環境整備費補助金
都道府県が行う補助金制度として紹介したいのが、神奈川県外国人観光客受入環境整備費補助金です。
この制度は、外国人観光客の県内観光地の周遊を促すために施設整備等に取り組んだ事業者に対して、補助金が支給されます。
公募期間は、例年6月~7月に行われます。令和元年度は、10月に第2回として追加募集されました。
補助対象事業者
補助金を受けられるのは、外国人観光客の県内観光地の周遊を促す民間事業者です。
補助対象経費および補助金額
補助対象経費に応じて、支給される補助金の額が下表のように変動します。
内容 | 補助率 | 上限額 |
無線LANの整備 | 1/2 | 20万円 |
外国語表記の整備 | 1/2 | 200万円 |
トイレ整備 | 1/2 | 300万円 |
無線LANを導入・整備した場合、1施設あたり20万円を上限に、かかった経費の1/2の額が補助されます。
外国語表記とは、おもに観光案内板や観光マップ、Webサイトなどの外国語表記が該当し、1事業者あたり200万円を上限に、費用の1/2が補助されます。
トイレ整備は、洋式便器への改修費や増設などが該当し、1事業者あたり300万円を上限に、費用の1/2が補助されます。
補助金額
補助金の支給額は、1000万円を上限に、補助対象経費の1/2です。
外国人観光客受入環境整備助成金制度(京都市)
市単位でもインバウンド対応への助成金制度を行っています。京都市観光協会で行っている外国人観光客受入環境整備助成金制度は、外国人観光客の受け入れ環境整備等に対する助成金制度です。
平成30年度は8月より申請受付が始まりましたが、令和元年度は6月に前倒しとなり、受付期間も1カ月未満と短縮されました。なお、令和元年度は第2期として9月にも公募されました。
助成対象事業者
助成を受けられるのは、京都市内で外国人観光客が訪れる施設等(集客の見込みがある施設も含む)です。
観光施設や宿泊施設、飲食店、小売店、銭湯、交通機関、寺院・神社など、幅広い施設での利用が想定されています。
なお、大企業やみなし大企業は対象外です。
助成対象経費
次のような取り組みの経費に対して、助成金が支給されます・
・キャッシュレスへの対応
・免税への対応
・Wi-Fiの整備
・トイレの洋式化
・多言語対応の整備
・外国語研修の開催
・ダイバーシティへの対応
・マーケティング推進
・災害対応 等
助成金額
1事業あたり20万円を上限に、事業経費の1/2の額が助成されます。
なお、複数の受け入れ環境整備が認められており、その場合の上限額は40万円となります。
まとめ
今回はインバウンド対応に活用できる7つの補助金・助成金制度を紹介しました。
ご覧いただいたように、省庁や自治体などでさまざまな制度が用意されています。
特に、自治体や観光協会が行う補助金制度はとても多く、今回紹介できなかった道府県や市などでも、同じような補助金制度を行っています。
インバウンド対応をご検討の方は、補助金や助成金をぜひ活用し、低コストで取り組まれることをおすすめします。