資金調達には様々な方法があります。中でも2017年に爆発的に流行したのがICOという方法ですが、法整備がされないままトークンの売買が行われたため詐欺的手法の横行や投機性が問題となり、現在ではICOという手法自体が信頼を失いつつあります。
その後、IEOやSTOという新たな資金調達方法が海外で登場。日本でも2020年4月からSTOが実施される見込みとなっており、IEOについてもCoincheckが検討を開始したりと、日本でも動きを見せています。
そして、今回ご紹介するのはこのような新しい資金調達方法の中でも最も新しい、中国で生まれたばかりの「IMO(Initilal Exchange Offering/イニシャル・モデル・オファリング)」という手法です。
この記事ではIMOの特徴や仕組み、IEOと比較したメリットなど、詳しくご紹介していきたいと思います。
4つの資金調達方法
現在、仮想通貨での資金調達方法としては以下の4つの方法が知られています。
- ICO(イニシャル・コイン・オファリング)
- IEO(イニシャル・エクスチェンジ・オファリング)
- STO(セキュリティ・トークン・オファリング)
- IMO(イニシャル・モデル・オファリング)
以上の方法については比較されることも多いため、他の3つの方法についても以下で解説していきます。
事業者とは資金調達を行う側であり、投資者は事業者に投資を行なう側です。
◆事業者
・ベンチャー企業やスタートアップ企業など、自社の事業を展開・拡大させるために資金調達を行う側。
・自社のブロックチェーン技術を使ったプロジェクトの強みを投資者にアピールし、資金提供という形で投資してもらう代わりに自社のサービス・システムなどを利用することが出来る権利である「トークン(ユーティリティトークン)」を提供する。
・トークンの発行体。
◆投資者
・将来有望だと思われる事業者に対し、事業者が発行するトークンの購入という形で資金提供を行う。
・購入したトークンの価値上昇で生じる利益や発行体が展開するサービスの割引や利用権利などのリターンが期待出来る。
ICOとは
ICO(Initial Coin Offering/イニシャル・コイン・オファリング)とは、ブロックチェーンを使った技術開発を行う事業者が提供するサービスやアプリケーション内で利用可能なトークンをサービス開発前に先に発行し売り出すことで、資金調達を行う方法のことです。
トークンセール、プレセール、クラウドセールなどと呼ばれることもあります。
事業者としては実際にサービスを開発しリリースする前に開発のための費用を得ることが出来るというメリットがあり、投資者にとっては安く買い高く売ることが出来るというメリットがあります。
誰でも手軽にトークンを売買することが可能なICOは2017年に爆発的な流行を見せましたが、規制の整備がされないまま売買が行われたため詐欺的手法が横行し、数多くの投資者が損失を被る事に。実際、Satis Groupが行った調査によれば、2017年のICOは実に78%が詐欺だったことが報告されています。
トークン | 事業者が発行するトークン。取引所に上場していない。 |
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信頼性 | 低い |
メリット | ・他の方法に比べ簡単に資金調達が出来る ・資金を返済する義務がない ・スピーディーな現金化が可能 ・手数料が安い |
IEOとは
IEO(Initial Exchange Offering/イニシャル・エクスチェンジ・オファリング)とは、ICOでは事業者が行っていたトークンの販売を仮想通貨取引所が行うというものです。
情報開示・販売・広告手法などについて規制のなかったICOでは、はっきり言ってしまえば「怪しい」プロジェクトもかなり存在していました。しかし、限られた情報しか開示されていないため、投資者はそれを見極める術を持っていなかったのです。
IEOはそんなICOの信頼性がないというポイントを改善したような手法で、「取引所を通して行うICO」であり、事業者がトークンを発行して資金調達を行うという面では同じですが、事業者が直接投資者に販売するのではなく、仮想通貨取引所を通して販売します。
仮想通貨取引所が事業者の審査を行っているIEOでは、取引所への上場が決まっているため投資者としてはICOより低いリスクで投資を行うことが出来るのです。
仲介してもらうということで手数料はかかりますが、事業者にとってもメリットがあり、ICOでは自社で行わなければなかったトークンの販売やマーケティングを仮想通貨取引所に行って行ってもらうことが出来ます。
海外の取引所では既にIEOの実績があり、世界最大の仮想通貨取引所であるバイナンスなどが行っています。日本ではまだ実施されていませんが、マネックスグループ子会社のCoincheckが2019年8月22日、IEOの検討を開始したことを発表しています。
トークン | 事業者が委託し取引所が発行するトークン。取引所への上場が決まっている。 |
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信頼性 | ICOに比べて高くなる |
メリット | ・マーケティングコスト削減 ・取引所から認定されたことで信頼度が高まる ・上場が決まっている |
STOとは
STO(Security Token Offering/セキュリティ・トークン・オファリング)はインターネット上では「ICOの上位互換」とも言われている手法ですが、ICOで発行されるトークンは発行体のサービスやシステムを利用する権利である「ユーティリティトークン」であるのに対し、STOで発行されるトークンは有価証券の性質を持っており、株式・債券・不動産など価値を裏付けされた「セキュリティトークン」となっています。
- ユーティリティトークン…法規制が適用されないため比較的自由に売買可能。資金調達も簡単に出来る。
- セキュリティトークン…法規制が適用されるため売買が制限される
誰でも手軽に購入することが出来たICOとは違い、STOのトークンを購入することが出来るのは一定以上の資産や年収があるプロ投資家(適格機関投資家)に限られており、日本で実施される際にもこのような参加者の制限があると考えられます。
STOは日本では2020年4月から施行される金融商品取引法に基づいて実施されていく予定で、2019年10月1月にはマネックス証券ほか証券会社5社が「日本STO協会」を設立。
STO業界の健全な発展のため自主規制の策定などを行うということを発表しています。
トークン | 「有価証券」と同等の扱いのトークン(デジタル証券) |
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信頼性 | 高い(金融商品取引法の適用対象) |
メリット | ・法規制されるため安心して取引可能 ・市場障壁が無くなる(24時間365日取引可能化、国や地域で隔たれた市場の統合) ・所有権を細分化出来る(不動産など物理的にそれ以上細かくすることが出来ない資産の所有権も分割することが可能となる) ・自動化、コスト削減(スマート・コントラクトで自動化することで大幅なコスト削減が見込める) |
IMOとは
IMO(Initinal Model Offering/イニシャル・モデル・オファリング)は中国で生まれたとされる新しい資金調達方法で、IMOでは事業者が資金調達を行うのとほぼ同時にトークンを上場させます。
未上場のトークンを購入するICOや、上場を予定して取引所で売り出されるIEOなど、これまでは資金調達を行った後でトークンを上場させることが常識となっていましたが、IMOはまさにこの常識を破った方法と言えるでしょう。
IMOではトークンは段階的に少しずつ販売されますが、購入した時点でトークンには90%ロックアップがかかります。ロックアップはトークンを持っている日数とアフィリエイト紹介額によって解除されます。解除されたトークンは取引所に移せば売却することが出来るようになります。
このように制限をかけることでトークンの価値が乱高下することを防ぐことができ、マーケットメイクしていくことが可能となるのです。
IMOは既に行われており、2019年9月9日のHCE(Health Care Ecosystem Platform)のIMOは3秒で売り切れになるなど今かなり注目を集めている方法ですが、現時点ではまだIMO Exchangeという中国の取引所でのみ取り扱いがあるようです。
トークン | 資金調達とほぼ当時に上場されるトークン。購入時に90%ロックアップが掛かる。 |
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信頼性 | ICOに比べて高くなる |
メリット | 以下の項目で詳しく紹介 |
IEOの問題点を改善したIMO
取引所を仲介しているため、ICOに比べて投資リスクを減らすことが出来ると話題になったIEO。しかし、実際に蓋を開けてみると、事業者にとってはあまりメリットなく、事業者が行っているプロジェクトの宣伝程度にしかならないということがわかってきたのです。
そして、そんなIEOの問題点を改善し、投資者だけでなく事業者だけにもメリットをもたらすことを目的として誕生したのがIMOです。
IEOは取引所の一人勝ち
ブロックチェーンプロジェクトを行っている業界では「IEOは取引所の一人勝ち」だと言われています。これはなぜかというと、以下の2つの点からです。
- 事業者が資金を集められない
- 事業者が取引所の食い物にされる構造
事業者が資金を集められない
ICO、IEO、IMO…そのどれも方法は異なりますが、どれも「事業者が資金調達を行うための方法である」ということは共通しています。
しかしながらIEOは実際に行ってみるとそもそも資金が集まらないという問題が出てきたのです。
- UNIFICATION – 400,000 USD
- AIS – 500,000 USD
- Mycro – 600,000 USD
上記は世界でも知られるBitForexのIEOによる調達額ですが、このレベルの資金しか集めることが出来ず、多くの資金を必要としている企業からすると不満の残る結果でしょう。
事業者が取引所の食い物にされる構造
取引所によっても異なりますが、ある取引所では一定期間に規定価格のパフォーマンスが求められたり、上場価格を割らないことが求められます。
投資家を保護するためなどの名目ですが、本来ならば開発など事業を進めるために使われるべき資金がトークンの価格を維持するために使われているというのは、事業者にとってはもちろん、リターンを期待して投資を行っている投資者にとっても不本意過ぎる結果です。
中にはトークンの価格維持のために資金を使った結果、IEOで得た資金のうち1割しか手元に残らないという取引所もあるそうです。
IMOの仕組み
IMOでは資金調達とほぼ同時にトークンが上場され、取引所で売買することが可能となります。
上場したトークンは調達した資金の一部を使ってバイバックやバーンが行われ、これにより取引所のトークン価格は値上がりしやすくなります。
特にIMOの初期では、トークンが流通している量が少なく売り圧力は弱いため取引所では高価格が保たれやすい状態です。その後、IMOの回数の増加につれてトークン流通量は増え、売り圧力が強まっていきます。
しかし、取引所のトークンは継続的にバイバックやバーンが行われているため価格が急激に変動することはなく、理論上ゆっくりと価格は上昇していきます。
IMOは複数回に分けて販売されるという特徴があり、HCEは365回ものIMOが予定されていますが、事業者はIMOの売出し価格を段階的に挙げていくことで1回あたりのIMOの調達額を増やしていくのです。
◆バイバック
買い戻し。発行体が自社トークンを買い取ること。
◆バーン
仮想通貨の一部を永久に使えないようすることで、その結果、仮想通貨の枚数が減るため価値が上がる
◆売り圧力
売り方や売りに参加している勢力のこと。売り圧力が強いと相場は下がり、逆に売り圧力が弱い場合は相場が上がる。
IMOのメリット
以上がIMOの仕組みですが、そこから見えてくる事業者側のメリット、投資家側のメリットを見てみましょう。
投資者のメリット
IMOにおける投資者のメリットには以下のようなものがあります。
- IMOの構造上、初期に投資することで儲かりやすくなる
- トークン購入後、一定期間売却出来ないというリスクを回避できる
事業者のメリット
IMOにおける事業者のメリットには以下のようなものがあります。
- 長期に渡る資金調達が実現でき、IEOに比べて多額の資金調達が可能となる
- 投資者はすぐにでもトークンを売却することが出来るため、売却できない期間が長期となった場合の投資者からのクレームを回避出来る
- 上場してすぐにトークン価格が暴落するということがない仕組みのため、投資者からの信頼を得やすい
現時点でIMOを提供しているのは「IMO Exchange」のみ
IMOに参加するためにはまず、IMO Walletのアカウント開設を行ない、更にトークンの売却のためにはIMO Exchangeのアカウント開設が必要となります。
IMO Exchangeのサイトトップの右上部分の「简体中文」にカーソルを乗せると言語選択が出来るので「日本語」を選択すると日本語でサイトを見ることもできます。
IMO ExchangeはTwitterアカウントもあるため、気になる人はチェックしてみるのもいいでしょう。
https://twitter.com/eco_imo
まとめ
IMOはIMO Exchangeという新しい取引所の登場によって誕生したまさに最先端の資金調達方法です。
取引所だけが儲かると言われているIEOとは根本的に仕組みが異なっているIMOは、トークンの価格をゆっくりと、しかし右肩上がりに上昇させることが出来るため事業者としても資金調達を実現でき、投資者もリターンを得ることが出来るという手法です。
詐欺的手法が横行し今や見向きもされなくなってしまったICO、取引所の一人勝ちという現状から下火になりつつあると言われているIEO、様々な規制や義務をクリアする必要があるため資金調達としてはハードルが高すぎるSTO…このどれとも違う、新しい方法がIMOです。
この記事でもご紹介のHCEのケースを見れば分かる通り、IMOは事業者・投資者双方にメリットがあることやその仕組み上、初期段階でIMOに参加すればかなり儲かるのではないかと注目を集めています。