日本政策金融公庫は、会社を起業する中小企業者、個人事業主にとって資金調達する際に頼りになる存在です。
日本政策金融公庫の利用を検討している方もいると思いますが、「いくら借りられるか?」は、誰もが最初に考える一番のポイントとなるのではないでしょうか?
会社によって借りれる金額や必要な金額はことなり、審査の基準も違っているため、借りられる金額がいくらになるのかは、一概には言い切れません。
そこで、こちらの記事では、日本政策金融公庫でいくら借りられるか?を考える同時に、融資の金利、審査基準、自己資金が必要となる場合などを解説していきます。
INDEX
日本政策金融公庫でいくら借りますか?
日本政策金融公庫を利用する際に、最初に聞かれる一番多い質問が「日本政策金融公庫からいくら借りられますか?」です。
起業する方にとっては、資金調達の金額を確認することによって事業の計画も立てられるかも知れません。
しかし、肝心なのは借りられる金額ではなくて、事業にとって必要な金額です。
必要な金額がわかれば、日本政策金融公庫は必要なお金を融資してくれますが、漠然とした金額を提示しても、融資は行ってくれないでしょう。
日本政策金融公庫の平均融資額
融資の金額は会社によって違ってきますが、一番多くの利用されている融資金額を下記の表で見てみると、50百万円超100万円以下21.8%、30百万円超50百万以下20.0%の金額帯の融資です。
続いて、100万円超16.3%、10百万超20百万円以下14.3%と続いていきます。
日本政策金融公庫で行っている融資の状況は、ホームページで確認することができます。
希望融資の計算方法
融資の希望額は、事業の状況によって異なりますが、こちらでは事業を始めるにあたっての希望融資額の決め方を説明していきます。
希望融資額を計算するには、ひと月に返済できる金額から考えることができます。
ひと月の返済額
まずは「ひと月にどのくらい返済できるのか?」をみてみましょう。
見積もりを取り、事業に始めるのに必要な予算を正確に計算していきます。
続いて、売上の予測です。
売上の予測は、堅く予測をしておくほうがよいので、低いと思えるぐらいの金額にしておきましょう。
そして、その売上を得るための必要経費を細かく計算して、売上から経費を引いた利益を出してみます。
最後に、利益から自身の生活費を引きます。
最終的に手元に残った金額が、融資の返済にあてられるひと月の上限金額となります。
手元に10万円が残った場合
上記のような計算で、最終的に10万円が手元に残ったとすると、日本政策金融公庫から設備資金、返済期間7年の融資の上限は840万円となります。
上記で計算した事業を始めるのに必要な資金から、自己資金等を引き、その金額が840万円よりも下であれば、融資を受けても返済することが可能となります。
その反対に、840万円よりも金額が超えている場合には、融資が受けられないことに加えて、返済できない可能性があります。
融資上限額と借入限度額
日本政策金融公庫で融資を受ける時には、「融資上限額」と「借入上限額」がありますので、双方の意味を把握しておきましょう。
◆「融資上限額」とは、借りる目的や借主の状況によって、利用できる上限額がそれぞれ決まっています。
それぞれの融資制度で定められている最大可能な限度額が「融資上限額」となります。
◆「借入限度額」とは、「融資上限額」と異なり、自身が借りられる最大の金額をさしています。
自身が借りられる限度額は、「融資上限額」ではなく、会社の実力や信用度などに基づいた借入れ限度枠が設定されるのです。
希望融資額を受けるための3つのポイント
融資の借入限度額は、上記のように日本施策金融公庫で会社の実力や信用度に基づい設定されますが、自身の希望融資額を通すためにはどうしたらよいのでしょうか?
希望融資額を受けるためには、根拠のある書類を提出したり、過去や今行っている事業と同じ事業で開業したり、自己資金が多いと融資が通りやすくなります。
次に希望融資額を受けるための3つのポイントをみていきましょう。
ポイント1:証拠となる書類の提出
日本政策金融公庫で必要な設備資金や運転資金を融資してもらうためには、証拠となる書類の提出が必要となります。
設備資金を借りたいのであれば、不動産の仮契約書、見積書などを提出し、運転資金を借りたいのであれば、金額がきちんと表記されている明細書を提出するようにしてください。
◆運転資金
・事業に必要な機械、施設、建物、土地、車両などの購入に必要な資金のこと
◆運転資金
・事業を運営するために必要な人件費、家賃、仕入費用などの支払いに必要な資金のこと
ポイント2:未経験よりも過去や現在で行っている事業にする
未経験で始める事業の融資は通りづらくなっていることが少なくありません。
もしも、現在の事業がラーメン屋なのであれば、再びラーメン屋で開業するのであれば希望の融資が通る可能性が高くなります。
その反対に、美容師などの違う業種での開業を考えていたのなら、経験がないため断られる場合もあります。
ポイント3:自己資金はできるだけ多く
自身で蓄えられた自己資金はできるだけ多く準備している方が、融資を受けやすくなります。
日本政策金融公庫には、データとして提出することになりますので、自宅で保管しているお金は口座に入金し、通帳記入しておくことで自己資金として認識されます。
また、自己資金の多さは信用や事業への意欲、計画性を証明するものにもなりますので、自己資金が100万円以下であれば、100万円を目指して自己資金を貯めるようにするとよいでしょう。
日本政策金融公庫の融資
日本政策金融公庫の借入金額を考えるためには、融資の金利や審査基準などを確認しておく必要があります。
次に、日本政策金融公庫の大まかな融資の内容として、融資の平均金利、融資金利が決まる審査基準をみていきましょう。
金利はおよそ2.5%前後
日本政策金融公庫の金利は時期によって異なりますが、事業のためにお金を借りるときの平均的な金利は、およそ2.5%前後となっています。
返済期間は事業融資の場合、運転資金は平均して5~7年(運転資金)、設備資金は5~10年以内となっています。
具体的に融資受けた場合を知りたいのなら、日本政策金融公庫のホームページでシミュレーションしてみるとよいでしょう。
融資金利が決まる審査基準
日本政策金融公庫での正式な金利は、最終的には審査をした上で決定されます。
金利が決まるのは、「どの融資プランを利用するか」「4点の審査基準」によって金利がきまります。
「4点の審査基準」は、下記の項目を基準とした審査となりますので、ご確認ください。
◆自己資金の金額
・銀行通帳に記載されている定期的に貯められた預貯金がどれぐらいあるのか?
◆借金の金額
・公庫から借りたお金をしっかり返済できるか、生活苦ではないか?
◆事業計画
・きちんと収益を上げられそうな事業であるか、収益の根拠はあるか?
◆自身の事業経験
・未経験ではないか、未経験でもカバーできるだけの資格や受賞歴などはあるのか?
新創業融資制度で借りられる金額
日本政策金融公庫では、新創業融資制度という新たな事業を始める方、事業を開始して間もない方に、無担保、無保証人で利用できる融資プランがあります。
法人だけではなく個人事業主でも利用でき、これまで事業を行っていな方でも条件をクリアすれば、無担保無保証で最大3,000万円(うち運転資金1,500万円)までの融資が受けられます。
新事業融資制度の要件
新事業融資制度が利用できる方は、下記の①~③のすべての要件に該当する方となります。
①創業の要件
・新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方
②雇用創出等の要件
・「雇用の創出を伴う事業を始める方」、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」、「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方」又は「民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める方」等の一定の要件に該当する方(既に事業を始めている場合は、事業開始時に一定の要件に該当した方)
・本制度の貸付金残高が1,000万円以内(今回のご融資分も含む)の方については、本要件を満たすことになります。
③自己資金要件
・新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金)を確認できる方
ただし、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」、「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方」等に該当する場合は、本要件を満たすことになります。
10%の自己資金が必要
日本政策金融公庫の新創業融資制度を利用する場合には、借入額に対して自己資金の割合が大切となってきます。
日本政策金融公庫の新創業融資では自己資金は1/10以上必要となっていますので、利用する際には、要件をクリアできるか確認しておきましょう。
融資限度額が3,000万円となっていても、自己資金の割合が1/10を満たないのならば、融資は受けられないのです。
つなぎ融資で借りられる金額
売掛金などの収益はあげられているのに、手元に現金がないために資金繰りが苦しくなった場合には、つなぎ融資を受ければ事業は運営していくことができます。
もしも、売掛金の未回収などがある場合には、今の状況を日本政策金融公庫や担当者の方に相談し、売掛金があるという証拠書類の提出します。
ただし、売掛金は不良債権の可能性があるために、売掛金全額の融資を受けることは難しくなるかも知れません。
多額の融資を受けている業種
日本政策金融公庫が融資をする際には、事業主が必要となる金額が元となり書類を提出する事で、審査が始まります。
そのため、大きな設備が必要となる事業ほど融資の額が増えていきます。
機械などの設備が必要となる製造業の融資額が一番多く、続いて物品販売業、サービス業、運輸・情報通信業などの融資額が続いていきます。
このように、業種別によっても借りる金額が異なっていますので、自身が行っている事業と比較してみてください。
まとめ
日本政策金融公庫の融資で「いくら借りられる?」について、いろいろな角度から解説してきました。
融資を利用する際に、どのくらいの金額を借りられるのかは気になるところですが、まずは必要となる融資がいくらになるかの計算から始めてください。
そして、希望の融資を受けるために、日本政策金融公庫の融資の内容を確認し、証拠となる書類や自己資金を準備しておきましょう。
起業や業種、つなぎ融資など、事業の状況によって融資の金額は様々ですが、身の丈にあった日本政策金融公庫のの融資を、運営資金や設備資金の資金調達としてお役立てください。