会社経営において「資金繰り」を意識することは経営者が常に抱える大きな課題点でもあり、会社を成長させるための重要なポイントになります。
資金繰りが悪化すると事業をスムーズに行うことができなくなり、支払いが滞り会社としての信用を失うリスクが発生しその結果利益減少に繋がってしまいます。
また資金繰りを改善することで、必要のないコストを削減でき利益を増やすこともできます。資金不足ではない会社でも資金繰り改善は必要です。
そこでこの記事では資金繰りの必要性や、資金繰りが必要なことは分かっているけど具体的にどんな方法が分からないという方に向けて資金繰りを効率よく改善する方法を紹介していきます。余裕のある資金を確保することで、会社を大きく成長させていくことができるので常に意識するようにしましょう。
資金繰りが必要な理由
事業運営に必要不可欠なのが「資金」です。主にすぐに使うことができる現金のことを指し、支払いや決済義務の手段となります。
例えば100万円(資金)で仕入れたものが180万円(売上金)で売れたとします。売るために30万円(コスト)の経費が掛かったとすると利益は50万円になります。
このように資金がないと利益を生み出すことができないのです。さらに売上金の180万円はすぐに支払いがあるとは限りません。主に仕入れの100万円とコストの30万円が先を先に支払うことが多いのでコストも資金として考える必要があり、50万円の利益を出すために130万円の資金が必要になります。
この一連の流れが「資金繰り」になります。例だけを見ると会社はうまく利益を生み出せているようにも見えますが、入金があるまではまだ成功とは言えません。入金までに資金が尽きてしまうと会社が倒産するいわゆる「黒字倒産」になることにもなり得ます。そのため会社のお金を管理する「資金繰り」は経営において必要不可欠になります。
また資金繰りを改善することでコスト改善もできます。例で言えば30万円かかっている経費を20万円まで削減すれば利益を60万円に増加させることができます。実際に利益をしっかり出していると思っていても、常に資金繰り改善を意識することで資金を増やすことができます。
資金繰り悪化によるリスク
資金繰りがスムーズに行っていれば新たな利益を生み出すことができ、経営が上手にできている状態になります。では逆に資金繰りが悪化して行くとどういうことが起こるのかをご説明します。資金繰りの重要性をもっと分かっていただくためにスムーズに行えていない時のリスクを解説していきます。
まずは資金繰りが悪化することで「資金」を準備することができなくなってしまうことが大きなリスクとなります。「資金繰りが必要な理由」で説明した通り、資金がないと利益を生み出すことができなくなります。そうなると経営計画で思い描いていた通りに事業を進めることができなくなり、資金繰りが悪化し悪循環に陥ってしまいます。その結果、会社経営では一番避けたい赤字状態へとなり倒産の可能性が一気に高まってしまいます。
さらに場合によっては仕入れの支払いが滞ってしまうこともあります。支払いの滞納を繰り返すと会社の信用が大きく失われ、利益を生み出すための流れを作ることが難しくなります。また従業員への給与を支払えなくなったりすると、優秀な人材を逃してしまう可能性もあります。取引する会社からも、働いてくれている従業からも信用を得ることは経営者には必要な要素になります。
資金繰りが悪化する原因とは?
資金繰りが悪化するリスクの怖さは分かってもらえたと思います。ではどのようなことが原因で悪化しているのかをご説明します。改善することももちろん重要ですが、悪化する原因を追究し把握することも同じくらい重要になります。今から会社を経営しようとしている人も、資金繰りが上手く行っていない人も悪化する原因をしっかりと把握しておきましょう。
ROI数値が低い設備投資を行う
ROIとは投下資本収益率のことを言います。投下した設備の金額に対して得られた利益のことです。例えば工場で最新の機械を導入した時に、どれだけ利益を上げることができるのかを示すもので、数値が大きければ大きいほど利益が増加します。
しかしこのROIが示す数値が低いものに投資をすると、投下した資金を回収できないまま終わるケースがあります。このように資金回収期間を考慮せずに過剰な設備投資を行うことは資金繰り悪化に繋がります。無理な投資ではないか?どれくらいで投資した分を回収できるのか?投資したものの寿命はどれくらいなのか?を慎重に見極める必要があります。
取引先の経営状態を把握できていない
利益は取引先が入金してようやく発生します。そのためもし取引先の経営状態が上手く行っていない場合、売掛金を回収できない危険性があります。資金だけが減ってしまい、一気に経営が悪化する原因になります。そのため取引先の経営状態を把握しておくことは必要不可欠です。取引先も利益を出すために必死なので表面だけでは分からないこともあります。特に大きな取引の際はしっかりと調査を行うようにしましょう。どれだけ上手く資金繰りを行えていても、一度の損害で会社は大きく傾いてしまいます。
効果が薄い広告宣伝費の使用
広告宣伝費を使うことで売上を増やすことができます。商品の宣伝だけではなく様々な広告宣伝費があります。基本的に使った宣伝費と同等かそれ以上の売上アップがないと意味がありません。もし、使った広告宣伝費よりもアップした売り上げが少ないと無駄な投資となり。経費、コストが増えるだけでなってしまいます。
それでも効果が薄い広告宣伝にお金をかける経営者の方はいます。その心理としては「大きな広告で会社の宣伝になった」と良かったことだと考える人はいますが、それは別で用意するべき費用になります。実際にその商品などの売上アップになっていないなら無駄な費用だと断言できるでしょう。
資金繰りが悪化する原因は色々ありますが、基本的には投下した資金以上に利益を出すこと。そしてそれを地道に続けることが資金繰りには必要だと思います。リスクを少しでも減らせるように資金繰りを改善していきましょう。
資金繰りを改善するための方法
中小企業の経営者や個人事業主は資金繰りの改善を行うことは大きな課題となっています。資金に余裕ができればさらな利益を生みだすことができ、経営が安定します。その波に乗るためにも資金繰りの改善は必要なことなのです。
では本題の資金繰りを改善する方法を以下の3つに分けて解説していきたいと思います。
キャッシュフロー
銀行融資
VC
ファクタリング
エンジェル投資家
- キャッシュフローの改善
- 資金調達を変更し利益を増やす
- 売掛金の回収を早める
以上の3つを行うことで資金繰りをスムーズにすることができます。景気低迷の影響もあり個人事業主や中小企業が生き残りは大変になってきています。以前にも増して資金繰りは厳しくなってきていますが、改善を行うことは可能です。正しい方法や知識を身に着けて会社を大きく成長させていきましょう。
キャッシュフロー改善のために資金繰り表を作成する
事業の支出や利益など会社全体のお金の流れをキャッシュフローと言います。このキャッシュフローを改善することは資金繰りを改善することに直結します。さらにキャッシュフロー改善に必要不可欠なのが「資金繰り表」です。資金繰り表とは会社のお金の出入りを示す表のことです。費用と収益を元に企業の損益をあらわす損益計算書とは違い、売上による入金や、仕入れなどの支払いによる出金に基づいて、企業の資金繰りをあらわすものです。このことで損益計算書では分からないような細かい実際のお金の出入りを把握することができます。
会社では多くの支出・収益があり、小さな会社の経営でも頭の中だけですべてを把握することは不可能に近いです。そのためどんな会社でも資金繰り表を作成し、現金輸入や現金支出を表にまとめる必要があります。より細かく作成することで明確に会社の財務状況を把握することができます。
資金繰り表には様々な形式がありますが、「六分法」による資金繰り表を作ることをオススメします。
- 前月繰越分:前の月から繰り越されたお金
- 収入:事業に関する収益
- 支出:人件費や仕入れに必要なお金
- 差引収支過不足:収入合計から支出合計を引いた利益となるお金
- 財務収支:借入の返済金や設備への投資などによる収支
- 翌月繰越:前月繰越分、差引収支過不足、財務収支を足して表される翌月へ繰り越せるお金
この6つの項目で毎月「資金繰り表」を作成すれば会社のキャッシュフローを明確にすることができます。6番目の翌月繰越の項目が0未満だった場合は経営がスムーズに行っていないことになります。逆にこの欄で多くの金額を繰り越せるのなら問題なく経営を行うことができている証拠になります。その状況を一目で把握することが資金繰りを改善するための第1歩になります。まずはこの資金繰り表を作成し、キャッシュフローをしっかりと把握しましょう。
資金調達を行い利益を増やす流れを作る
資金が不足することで資金繰りが一気に悪化してしまうことはご説明しました。ということは会社の資金を増やすことができれば、ある程度の利益を見込むことができ、お金の流れをスムーズにして資金繰りを改善することができるのです。しかし、資金繰りが上手く行っていないから資金が足りない状況になっていますよね?そこで資金を増やす方法の一つとして借り入れやベンチャーキャピタルによる投資を受けるなどがあります。
しかし中小企業では資金調達を行っている会社がほとんどだと思います。そこで資金調達方法の変更を考えてみてはいかがでしょうか?資金調達の変更による資金繰り改善には2つの方法があります。
- 低金利の借入先に変更する
- 返済がいらない資金調達方法にする
以上の2つに分けることができます。まずは最初の低金利の借入先に変更するという方法ですが、もちろん金利が少ない方が支払う費用が少なくなり利益率が上昇します。そのため常に今よりも低金利の借入先を探すようにしましょう。また現在の借入先に金利の交渉を行ったり、返済方法を交渉することも重要になります。月次返済額の減額、返済期間の繰延、つまり利息のみ支払いや、元金返済を一次猶予にしてもらうなどの方法もあります。実行されることは簡単ではないですが、交渉を行う価値はあります。
2つ目は返済がいらない資金調達方法を利用することです。金融機関や銀行から借り入れることだけでが資金調達ではありません。中小企業などは社債を利用して資金を調達することは難しいですが、助成金や補助金を利用することができます。条件は厳しいですが返済の必要がなく利用できる資金なので、資金繰りを改善するにはうってつけの方法です。
売掛金の回収を早める
資金を用意し売り上げが見込めても実際に現金が入るまでに時間差が生じてしまいます。入金が3か月後の予定となっている場合それを1か月縮めて2か月後の入金になるだけで、現金残高が一気に増えることがあります。そうすることで資金を増加させて資金繰りを改善することができます。逆にその時間差が長い期間になると会社の経営が傾き、利益が見込めているにも関わらず倒産するリスクもあります。
では実際にどのようにして売掛金の回収を早めることができるのかを紹介していきます。まず一つ目の方法は取引先に「早めに入金して欲しい」と伝えることです。手間もコストも必要ないので方法ですが、取引先もいきなりそんなことを言われても対応できない場合があります。そのため確実な方法とは言えず、信用を失う可能性もあります。もし伝える場合はデメリットがあることも考慮するべきでしょう。
二つ目の方法はファクタリングを利用することです。ファクタリングとは企業が持っている売掛金をファクタリングを行っている会社などに売却し、支払い期日前に売掛金を回収する手段のことです。A社から3か月後に支払われる予定だった売掛金をファクタリングB社に売ることで、もっと早い期日で利益を得ることができます。方法によっては手数料が高くなる場合もあったり、売掛先に通知が行く可能性などのデメリットもありますが、資金繰りを改善する方法として検討するべきだと思います。
まとめ
今回は資金繰りを改善することと悪化した時のリスクを紹介しました。会社を経営する上で資金の改善は常に付き纏う課題だと思います。3つの改善方法を解説しましたが、特に資金繰り表を作成することが最も大事なことだと考えています。今まで損益計算書しかやっていなかった方は、まずは資金繰り表を作ることからオススメします。
資金繰り表では説明した通り、利益や支出などが一目で分かるようになります。そのためどこを改善するべきなのかも見えてくるはずです。利益を上げる方法やコストを削減する方法を常に考えて資金繰りを滞りなく行いましょう。キャッシュフローの中で悪化になる原因を突き止めて、どうやって改善するのが良いのかを繰り返すのが会社の成長に繋がることではないでしょうか?