
NPO法人の立ち上げを考えている方、そもそもNPO法人とはどのような法人なのか、ご存知でしょうか?
NPO法人を設立すると、その後法人名で契約したり、銀行口座を開設できるようになります。
助成金や補助金の多くは中小企業向けのものが多くある印象を受けますが、NPO法人でも貰える助成金があります。
今回は、NPO法人を立ち上げるにはどうしたらいいか、NPO法人がもらえる以下の助成金5つを紹介していきます。
①JT NPO助成事業
②キャリアアップ助成金
③トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
④職場定着支援助成金
⑤特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
NPO法人とは?
NPO法人のNPOは「非営利活動(Non-Profit Organization)法人」といいます。
NPO法人は「特定非営利活動促進法」の規約を基準に保人格を取得した団体のことで、正式名称を「特定非営利活動(NPO)法人」といいます。
事業活動で得た収益は社会貢献活動にあてられるため、所属している人に収益を分配することはありません。
発展途上国や過疎地域・震災地域など、行政サービスや民間企業がサポートできないような地域での活動や、動物愛護や難病などをサポートする団体が多いです。
NPO法人の設立要件
特定非営利活動促進法により法人格を取得できる団体は、「特定非営利活動」を行うことを主な目的とし、活動目的として次の要件を満たす団体です。
⑴営利を目的としないこと。
⑵宗教活動や政治活動を主目的としないこと。
⑶特定の公職の候補者若しくは公職にある者又は政党を推薦、支持、反対することを目的としないこと。
⑷特定の個人又は法人その他の団体の利益を目的として、事業を行わないこと。
⑸特定の政党のために利用しないこと。
⑹特定非営利活動に係る事業に支障が生じるほど「その他事業」を行わないこと。その他事業の会計については、特定非営利活動に係る事業の会計から区分して経理することが必要であり、その利益は、特定非営利活動に係る事業に充てること。
⑺非社会的組織、暴力団又はその構成員若しくはその構成員でなくなった日から5年を経過しない者の統制下にある団体でないこと。
設立の流れ
NPO法人を設立する流れは次のようになります。
申請(3ヵ月以内/公告・縦覧1ヵ月間)→認証(2週間以内)→登記
NPO法人を設立するためには、まず国が法律で定めている書類と申請書を所轄庁に提出します。提出する書類は次の10種類です。
1.定款
2.役員名簿(役員の氏名および住所又は居所並びに各役員についての報酬の有無を記載した名簿)
3.役員の就任承諾書および誓約書の謄本
4.役員の住所又は居所を証する書面
5.社員のうち 10 人以上の氏名および住所又は居所を示した書面
6.認証要件に適合することを確認したことを示す書面
7.設立趣旨書
8.設立についての意思の決定を証する議事録の謄本
9.設立当初の事業年度および翌事業年度の事業計画書
10.設立当初の事業年度および翌事業年度の活動予算書
必要書類を受理した所轄庁は、公告事項と申請書の「定款」「役員名簿」「設立趣旨書」「設立当初の事業年度および翌事業年度の活動予算書」を、受理した非から1ヵ月間民間人が縦覧可能にします。公告事項は次のようなものになります。
・公告事項
・申請年月日
・NPO 法人の名称
・代表者氏名
・主たる事務所の所在地
・定款に記載された目的
書類などに不備がなく特に問題がなければ、書類受理から3ヵ月以内に書面で認証審査結果が届きます。
認定が下りた後に申請した人物が、事業所の所在地で法人登記を行うことでNPO法人が設立できます。
NPO法人設立の登記は、法令に従い認証通知が届いてから2週間以内に済まさなければなりません。
そして登記を終えた後にすみやかに「登記事項照明書」とNPO法人設立時に作成した「財産目録」と共に、所轄庁にNPO法人設立の届を行います。
しかし認証を受けてから6ヵ月以内を過ぎても登記を行わない場合は、認証が取り消されることがあります。
NPO法人設立のメリット
NPO法人設立の最大のメリットは、社会的信頼性が高いということです。
団体の活動を行うにあたって事務所の賃貸、通信回線などのほか、行政や企業などとなんらかの契約が必要になる場面は少なからずあるでしょう。
このときに法人格がないと団体としての契約ができない場合や、助成金や行政などからの委託事業など「法人格があること」が応募条件になっている場合もあります。
特に不動産登記などは任意団体の名義ではできませんので、やむをえず実質的に代表者個人名で処理しているケースがみられます。
しかし、代表者の交代や死亡の場合なども考えられるので、このような場合は、ある程度活動が安定してきたら法人化を検討した方が良いでしょう。
また、少額の費用で設立できるという点も挙げられます。
法律上NPO法人には資本金・出資金のような決まりがありませんので、法人の財産がなくても設立可能です。
登記時の登録免許税もかかりませんので、きわめて少額で設立手続きを行うことができます。
NPO法人設立のデメリット
デメリットとして、NPO法人を設立するまでには、最低でも3か月以上という時間がかかりるということです。
一般的な営利企業の設立手続きは1~2週間程度で完了しますので、非常に時間がかかるといえます。
災害対応活動などで「いますぐ!」と思って動きだしても、すぐに法人にはできません。
また、社員を10人以上いなければならないというのも制約の一つです。
そして、活動分野が決められている、情報公開が必要といった点もデメリットと言えるででょう。
NPO法人がもらえる助成金
NPO法人でも従業員を雇用する機会は一般の法人と同じです。
従業金を雇用して、労働の対価として給与を支払い、助成金の要件を満たしていれば、株式会社や合同会社と同じように、助成金を受給する事ができます。
助成金は助成金額の総額が決まっており、事業内容や規模によって支給される助成金が変わり申請資格なども変わります。
ここでは活動分野の問われない助成金1つと、法人立ち上げに際して人件費に関わってくる助成金4つを紹介していきます。
①JT NPO助成事業
助成対象となるのは日本国内で活動を行っていることが前提になります。
活動分野は問われませんが、地域コミュニティにつながる活動が対象で地新規性が高い先駆的な事業、大規模な自然災害で発生してしまった地域問題に取り組む事業が優先されます。
助成金の上限は1件あたり150万円です。
【応募条件】
以下の要件を満たす団体を対象とします。
(1)公益性を有し非営利法人であること。
(2)2018年8月31日時点で、法人化を有して1年以上の活動実績があること
(3)主たる活動と常設事務所が日本国内であること
(4)法人の設立目的や活動内容が、政治、宗教、思想に偏っていないこと
(5)反社会的勢力でないこと、または反社会的勢力と交友関係を有する法人でないこと
【応募方法】
郵便または宅急便で送付してください。電子メール、FAX、持参による応募は受け付けません。
②キャリアアップ助成金
様々な助成金・補助金があるなかで特に人事が注目したいのが「キャリアアップ助成金」です。
「キャリアアップ助成金」とは、有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者といったいわゆる非正規雇用労働者(有期契約労働者等)のキャリアアップ等を促進する取り組みを実施した事業主に対して一定額の助成金が支払われるという制度です。
非正規雇用労働者の地位や処遇の向上などが課題となっているなか、こうした取り組みを積極的に行った会社を支援し、それによって非正規雇用労働者のキャリアアップを図ろうというものです。
具体的には、非正規社員の正社員への転換や、人材育成、賃金規定の改定、健康診断制度の導入などが評価されます。
③トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
トライアル雇用とは求職者の採用に当たり、正規雇用としての適正を見極める目的として、一定期間(原則3か月)の試用期間を設けた上で採用すること。企業と求職者の相互理解を促進し、雇用を創出しようとするものです。
ハローワークからの紹介でトライアル雇用を行った場合、最長3か月間、対象企業に助成金が支給される、トライアル雇用助成金制度があります。
〇トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)は対象者を雇い入れた日から原則として最長3か月間支給されます。支給対象者1人当たりの上限は月額4万円で、助成金は対象期間中の月額合計が一括で支給されます。
また支給対象者による期間中の離職や、トライアル雇用から正規雇用への切り替えなどによって、
・トライアル雇用期間中の就労が1か月に満たない月がある
・休暇や休業があった
場合は就労した日数から計算した額が支給されます。
④職場定着支援助成金
新たに次の雇用管理制度を導入し、実施したときに制度導入助成金が支給されます。
1.評価・処遇制度
2.研修制度
3.健康づくり制度
4.メンター制度
5.短時間正社員制度(保育事業のみ)
上記の導入期間終了後、終了後1年間と認定申請前1年間の雇用保険被保険者の離職率を比較し、一定割合で離職率が低下していた場合に助成される、目標達成助成金があります。
上記のとおり、この助成金は、2段階になっています。離職率が低下しなかった場合でも、制度導入の助成金のみ受給することは可能です。
〇助成金の金額
制度導入助成金:1制度につき10万円
目標達成助成金:57万円<72万円>
※目標達成助成金は、1制度導入でも5制度導入でも、受給できる助成金は57万円1回のみです。
⑤特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
特定求職者雇用開発助成金は、高年齢者(60歳以上65歳未満)や障害者、シングルマザー等の就職困難者をハローワーク等の紹介により、継続して雇用する労働者(雇用保険の一般被保険者)として雇い入れる事業主に対して支給されます。
この制度はかなり以前からあり、『人を雇ったときに貰える助成金』としては代表的なものと言えるでしょう。
〇対象労働者に支払われた賃金相当額の一部として、
⑴高年齢者等 60万円(中小企業の場合)
⑵身体・知的障害者 120万円(同上)
⑶重度障障害者 240万円(同上)
が支給対象期間(6カ月)ごとに支給されます。
⑴については30万円を2期、⑵については30万円を4期、⑶については40万円を6期に分けて申請することになります。
なお、対象労働者を短時間労働者として雇い入れた場合には、⑴が40万円、⑵および⑶は80万円となります。
まとめ
今回はNPO法人を立ち上げる方法とNPOがもらえる助成金5つを紹介してきました。
NPO法人の立ち上げには留意点や、設立後にやるべきことも増えますが、その分個人ではなく公益的な法人として信頼性を飛躍的に高めて、活動を推進してくことができます。
またメンバーが変わったとしても、法人として存続できることになります。
上記に挙げた助成金以外にもたくさんの助成金を出している団体があります。自分の活動に合った助成金を見つけることができると思います。
多様化する社会ニーズに対し、持続的に応えていくためにも、NPO法人の法人立ち上げを検討してみてもいいと思います。