「ウチは病院だし、補助金なんて…」と諦めてはいませんか?
実は、病院でも受け取ることができる補助金や助成金が、いくつもあります。
病院には大きく営利目的の企業である「個人病院」、都道府県の認可を受け非営利団体として登録される「医療法人」の二つがあります。
一般に企業が対象とされる補助金制度は、経営主体の「個人」「法人」を区別していませんが、医療分野では「個人病院」と「医療法人」を区別しています。
しかし、今回は「個人病院」と「医療法人」の違いを踏まえつつ、それぞれ申請可能な補助金・助成金について、5つの要点で紹介します。
・「個人病院」と「医療法人」の違い
・「補助金」と「助成金」の違い
・個人病院のみ申請可能な補助金
・個人病院・医療法人どちらも申請可能な補助金
・個人病院・医療法人どちらも申請可能な助成金
次項で各要点の特徴を紹介します。
「個人病院」と「医療法人」の違い
一般的な企業が補助金制度の補助対象となる場合は、経営主体について個人か法人かという事で区別されることが通常ありません。
しかし、医療分野では、営利目的の企業である「個人医院」と、都道府県の認可を受け非営利団体として登録される「医療法人」とでは、法制度・税制度等が異なるのはもちろん、補助金・助成金に関しても違いがあります。
「個人病院」の経営主体は経営者(オーナー)となり、開業医や医院長がつとめることが多いです。病院の建物・設備も含めて経営者の物となります。
一方、「医療法人」の経営主体は医療法人となり、開業医も従業員の一人の扱いとなります。また、医療法人は法人化の際に所有する資産を全て公共団体に提供することになる為、経営母体も実質的に地方公共団体ということになります。
大きい病院だから「医療法人」、小さい病院だから「個人病院」というように、病院の規模の問題ではなく、病院の登録形態による違いとなりますので、ご注意ください。
「補助金」と「助成金」の違い
各補助金・助成金の説明に入る前に、「補助金」と「助成金」の違いについても簡単に説明します。
助成金とは、主に国(厚生労働省など)・地方自治体等から人材育成・労働環境改善などについて支給されるものが多く、要件をクリアすれば受給確率は高いものです。
一方、補助金とは、主に国(経済産業省・中小企業庁・農林水産庁など)・地方自治体等から、起業・経営改善・事業活性化推進のために支給されるものが多く、事業計画書による審査・面接により受給の可否が決定されます。支給要件をクリアしても全て受給できるとは限らない点が、助成金とは異なる点です。
個人病院が申請可能な補助金・助成金
営利団体の「個人病院」は、一般的な企業と同様に申請可能な補助金があります。
ものづくり補助金
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)とは、国から支給される補助金です。
ものづくり・商業・サービス分野で「革新的」取り組みにチャレンジする中小企業者の設備投資、試作品・新サービス開発を支援する補助制度です。
この「ものづくり補助金」は、製造業のみを対象にした補助金と考えている人もいるかもしれませんが、実は歯科医院やサービス業の設備投資も対象になっています。
セレックなどのCAD/CAMシステム(3Dプリンター)や歯科用CT、マイクロスコープなどの導入に、最大で1000万円の補助金が出ます。
<全国中小企業団体中央会 / 平成30年度補正「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」の公募について>
個人病院・医療法人どちらも申請可能な補助金
ここからは個人病院・医療法人どちらも申請可能な「補助金」について説明します。
IT導入補助金
IT導入補助金制度とは、労働生産性の向上に寄与するITツールを中小企業や小規模事業者に導入してもらうために、かかる費用の2分の1までを政府が負担してくれる制度のことです。
導入するITツールが持つプロセス数(機能の数)によってA類型とB類型という2種類の申請区分が設けられています。A類型は40万円~150万円未満、B類型150万円~450万円以下です。
補助対象となるのは、大きく以下3つのITツール・サービスです。
①ソフトウェア:業務を手助けするソフトなど
②オプション:データ連携ソフトやレンタルサーバーなど
③役務:導入の際のコンサルティングやセキュリティ対策、保守・サポートなど
具体的なツール・サービス内容やA類型・B類型の区別については、以下のホームページでご確認ください。
<一般社団法人サービスデザイン推進協議会 / IT導入補助金 2019>
また申請には、自社のサイバーセキュリティ対策を行なった上で、SECURITY ACTIONの宣言手続きが必要です。
省エネルギーに関する補助金
経済産業省が実施している省エネルギーに関する補助金です。
既存の電気使用設備を更新・改修することによって、一定の省電力効果が見込める事業を補助の対象としています。
申請区分が2種類あり、補助対象を設備に限定する「設備単位」と、事業場の省電力化全体を対象とする「事業場単位」から選択する事が可能です。
<経済産業省 / 平成31年度「省エネルギー投資促進に向けた支援補助金(エネルギー使用合理化等事業者支援事業)」及び「電力需要の低減に資する設備投資支援事業費補助金」の概要について>
医療提供体制推進事業費補助金
医療機関向けの補助金には「医療提供体制推進事業費補助金」という厚労省の統合補助金(約60種類の補助金制度で構成)があります。
この補助金は都道府県を対象とした補助金制度です。
各都道府県は政府から交付される補助額と都道府県が交付する補助額を合算し、医療機関の支援を行う補助金事業を行います。
多くの都道府県で実施している補助金には以下のようなものがあります。
(1)有床診療所等スプリンクラー等施設整備事業
目的有床診療所などの防火対策の推進の為のスプリンクラーなどの整備のための補助金です。
新設の工事費及び工事請負費が対象となります。
<上限額>
・スプリンクラー 1㎡あたり17.8千円
・自動火災報知設備 1施設当たり1050千円
(2)地球温暖化対策施設整備事業
病院及び診療所が行う地球温暖化対策に向けた設備投資を支援する制度です。
太陽光発電システムや、高効率熱源機器の導入に活用する事ができます。
新設の工事費及び工事請負費の1/3以内が対象となります。
<対象事業>
・太陽電池を設置し、発電した電力を病院などで常時使用する電力に活用する為の整備
・太陽熱給湯器を設置し、太陽熱で温めた温水を暖房、給湯などに利用する為の整備
・建物の壁面や屋上などの緑化
・雨水をろ過し、トイレ洗浄水等に利用する為の整備
・高効率熱源機器(床暖房の熱源としての温水を作る機器など)の導入整備
(3)医療施設等アスベスト(石綿)除去等整備事業
病院などが施設に使用しているアスベスト等のばく露を防止対策を行う場合の補助金支援制度です。
新設の工事費及び工事請負費のうち、一棟あたり25万円/定額が対象になります。
<対象事業>
・ばく露の恐れがあるアスベスト(石綿)等の除去や囲い込み、封じ込め等の取組
個人病院・医療法人どちらも申請可能な助成金
ここからは個人病院・医療法人どちらも申請可能な「助成金」について説明します。
キャリアアップ助成金
有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者など、非正規雇用労働者に対し正社員化、処遇改善を実施した事業主に助成されます。各コース毎に助成金が支給されます。
(1)正社員化コース
有期→正規:57万円/1人、有期→無期:28.5万円/1人、無期→正規:28.5万円/1人
有期契約労働者等を正規雇用労働者等に転換、または直接雇用した場合(支給上限20人)
(2)賃金規定等改定コース
対象労働者数1人~3人:1事業所当たり95,000円
すべてまたは、一部の有期契約労働者等の賃金規定等を2%以上増額改定昇給した場合
(3)健康診断制度コース
1事業所当たり38万円
有期契約労働者等を対象に「法定外健康診断制度」を新たに規定、延べ4人以上実施した場合
(4)賃金規定等共通化コース
1事業所当たり57万円
有期契約労働者等に関し正規雇用労働者と共通の職務等に応じた賃金規定等を作成適用した場合
(5)諸手当制度共通化コース
1事業所当たり38万円
有期契約労働者等に関して正規雇用労働者と共通の諸手当制度を新たに設定適用した場合
(6)選択的適用拡大導入時処遇改善コース
1人当たり19,000円
有期契約労働者等を新たに被保険者とし、基本給を増額した場合
(7)短時間労働者労働時間延長コース…諸手当制度共通化コース
1人当たり19万円
短時間労働者の週所定労働時間を延長し、新たに社会保険を適用した場合
特定求職者雇用開発助成金
高齢者(60~65歳)、母子家庭の母親、障害のある方などを、ハローワークの紹介により雇用した場合、60万円が助成されます。
トライアル雇用助成金
職業経験、技能、知識等から安定的就職が困難な求職者を、ハローワークや職業紹介事業者等の紹介により、一定期間試行雇用した場合、12万円が助成されます。
キャリア形成促進助成金
職務に関連した専門的知識及び技能習得のための職業訓練などを実施、人材育成制度導入適用した際の、訓練経費、賃金の一部等が助成されます。
支給内容については多岐にわたり、スタッフのスキルアップには大変有益な助成金です。
まとめ
以上、病院でも受取ることができる補助金・助成金について解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
多くの制度を紹介しましたが、オススメは個人病院・医療法人どちらも利用可能な「IT導入補助金」です。補助対象となるITツール及び、事業者(ITベンダー)が登録制となっており、各ツールやサービスを提供しているITベンダーに、導入検討や申請方法について直接相談することが可能だからです。
また今回紹介した補助金・助成金ですが、各都道府県で名称や制度内容・条件などが異なっている場合があります。
気になる制度がありましたら、各制度に記載した参考ホームページより、最新の地域毎の制度内容についてご確認ください。