補助金詐欺 実刑

補助金詐欺は犯罪で実刑になる要素3つと行政処分の詳細を説明

補助金

みなさんは、補助金や助成金の不正受給という事件を知っていますか?

近年では、雇用関係の助成金の不正受給を防ぐため、労働局の審査は厳しくなりつつありますが、実際に不正受給が行われた場合、裁判所も厳しい判決を下すようになってきているようです。

実際に、助成金受給の申請を呼びかけるコンサル業者が増えており、中には不正受給を促すケースもあるようです。

よくわからぬまま甘い言葉に惑わされぬよう、経営者としては注意が必要です。

今回は、「助成金不正受給」の重大なペナルティと、注意すべきコンサル業者の特徴について解説します。

助成金の不正受給で実刑判決

補助金詐欺 実刑

助成金は事業を円滑に動かすために活用するものなので、不正受給は実刑判決になってしまうこともあります。

そのため、いくら簡単にお金が手に入りそうと思ったとしても不正受給を行ってはいけません。

とは言っても、助成金の申請自体は簡単に行えますが、不正受給を防ぐために様々な内容が定められているので簡単に不正受給はできないでしょう。

しかし、それでも不正受給を目論む企業は絶えずおり、2017年6月14日には「太陽光発電システム販売会社」が助成金の不正受給を行い、実刑判決が下ったこともあります。

中小企業向けの国の助成金をだまし取ったとして、詐欺などの罪に問われた太陽光発電システム販売会社の実質経営者、前山亜杜武(あとむ)被告(52)に対し、東京地裁は14日、懲役2年8カ月(求刑懲役4年6カ月)の実刑判決を言い渡した。

(2017年6月14日 朝日新聞DIGITALより抜粋)

この不正受給は「中小企業緊急雇用安定助成金」を受ける際に、研修会社と共謀し、架空の社員研修を装い、「研修費用」などを騙し取るために虚偽の申告をしてしまったのです。

「助成金の不正受給」3つのペナルティ

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これから助成金の申請を考えている経営者の中には、社労士にさえ頼めば要件が満たされていなくても、なんとか通してくれると、勘違いをしている方がいます。

例えば、雇用の助成金である「キャリアアップ助成金」を申請するために、無期契約の雇用契約書を助成金申請のために書き換えれば良いのでは?という方もいます。

しかし、これは明らかな偽造で不正受給に当たるでしょう。

このように、あからさまな不正受給もありますが、要件についてをしっかり把握せずに助成金を受け取ってしまっているために、悪意なく不正受給になってしまうことも少なくありません。

悪意のあるなしに関わらず、助成金を不正受給してしまうと「犯罪行為」になってしまい思いペナルティが課せられてしまいます。

以下に、そのペナルティの内容を具体的に説明します。

行政上のペナルティ

当然ですが、助成金の不正受給を行うと行政上のペナルティが課せられます。

既に受給している助成金の支給が取り消されてしまうのはもちろんのこと、不正受給発覚後には、発覚してから3年間は助成金の申請が一切できなくなってしまいます。

また、不正受給を行ってしまうと、ニュースやメディアなどの会社名が晒されてしまい、社会的信用も失ってしまうでしょう。

民事上のペナルティ

次に助成金の不正受給で民事上のペナルティが課せられます。

助成金が支給されたあとに、監査が入って不正受給が発覚してしまうと、支給された助成金が全額返還が命じられます。

既に設備投資などで使ってしまったとしても、使った分の助成金も対象となるので注意しなければなりません。

刑事上のペナルティ

最後に、助成金の不正受給を行うことによって詐欺罪が成立し、刑事上のペナルティが課せられます。

刑法上の詐欺罪では、10年以下の懲役になり、執行猶予がつかず、実刑となる場合が多くあります。

そのため、助成金の不正受給を行ってしまうと、助成金の返還だけではなく、犯罪者として実刑判決になってしまうこともあるのです。

不正受給防止のための調査

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不正受給が発覚とは言っても、いったいどのタイミングで発覚してしまうのでしょうか?

雇用関係の助成金では、「抜き打ち監査」「出勤簿の確認」「賃金台帳などの確認」「従業員からの意見」などで発覚することが多くあります。

また、先程紹介した不正受給の例のように、研修などの助成金で不正受給が発覚してしまうケースでは、「就業規則」「給与規定」「出勤簿」などと矛盾点がないかを照らし合わせて発覚します。

「このくらい大丈夫だろう」と安易な気持ちで不正受給を行わないようにしてください。

開口一番に助成金を奨めるコンサル業者に注意

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助成金の申請を検討しているときにコンサルタント業者に相談をする経営者も少なくないでしょう。

ほとんどのコンサルタント業者はまっとうに助成金の申請を手伝ってくれますが、中にはルールを無視して「助成金で儲けましょう」などと、甘い言葉をかけて不正受給を促すケースも少なくありません。

経営者からしたら、確かに「儲かる話」は喉から手が出るほど魅力的な話かもしれませんが、そもそも助成金は会社が儲けるための仕組みではなく、社員のスキルアップや待遇を改善するために支給されるまのです。

そのため、「この助成金を申請すれば儲かりますよ」というような言葉を掛けてくるようなコンサルタント業者は怪しい業者と思ってください。

助成金の申請書類作成や申請代行できるのは「社労士」だけ

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コンサルタント業者が助成金を勧めてくることはありますが、助成金の書類や申請が行えるのは社労士だけです。

つまり、コンサルタント業者が「申請代行も任せてください。」と言うようであれば、間違いなく法律違反となります。

もし、コンサルタント業者に助成金の相談をしているのであれば、申請時には社労士を紹介してくれるのかを確認するようにしてください。

また、ほとんどの場合、助成金の代行費用は成果報酬となっているので、着手金として払う必要がある業者には注意しましょう。

過去の判例

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先ほど紹介した研修に関する助成金の不正受給以外にも、多くの不正受給が発覚している過去があります。

もし、不正受給が発覚してしまうと様々なペナルティが課せられ、社会的信用を失い、復帰することすらできなくなってしまうでしょう。

過去に起こった不正受給の判例を下記に紹介するので、経営者の方は不正受給を行わないように意識してください。

中小企業緊急雇用安定助成金の不正受給

2011年11月7日に、中小企業緊急雇用安定助成金制度を悪用し、約1千万円の不正受給を行った風俗店の社長ら5人が逮捕されました。

中小企業緊急雇用安定助成金制度は社員を休業させた際に、休業中に相当する金額の一部を助成してくれる制度です。

この社長らは平成21年12月から計約1400日間を休業させるという虚偽の申告を京都労働局助成金センターへ提出し、不正受給を行いました。

 

厚生労働省の中小企業緊急雇用安定助成金制度を使った約1千万円の不正受給について、詐欺の容疑で元社長ら5人を逮捕。

中小企業緊急雇用安定助成金は、社員を休業させたときに休業手当相当額の一部などを助成する制度です。

容疑者らは平成21年12月から昨年4月までの間、経営する風俗店の従業員延べ約110人について、勤務実体がないにも関わらず計約1400日間休業させるという虚偽の申請書を京都労働局助成金センターに提出し、計約1千万円を不正に受給していました。

合併浄化槽設置事業の不正受給

2003年7月に、福岡県の合併浄化槽設置事業の補助金を悪用する補助金不正受給がおきました。

この不正受給では、懲役が言い渡されたH被告とT被告は当時の同町建設課下水道係長らと共謀し、H被告が営業予定だった飲食店で対象外となる浄化槽設置工事の費用を受給するために虚偽の申告を行いました。

補助金約87万円をだまし取ったとして、H被告に懲役2年6月,執行猶予5年(求刑懲役2年6月),T被告には懲役2年,執行猶予4年(求刑懲役2年)が言い渡されました。

新興国市場開拓等事業費補助金、不正受給

平成26年度新興国市場開拓等事業費補助金を不正に受給した業者がいました。

発覚時には既に2,108,436円の交付が決まっていましたが、不正受給が分かり、補助金の全額返還と加算金の支払いが命じられました。

また、入札を含む日本貿易開発機構との契約関係を9ヶ月停止させられる処罰も受け、事業主名・代表者指名・事業の概要がホームページに公開されていました。

茨城県の助成金、不正受給

茨城県の助成金制度を悪用し、詐欺の疑いで男性2名が逮捕された問題です。

2014年6月、実態のないリフォーム会社を経営しているとウソをつき、銀行から1000万円の融資をだまし取った容疑がかけられています。

茨城県の中小企業向けの融資制度を利用して、ウソの書類で助成金申請をし、銀行を信用させていたそうです。

まとめ

補助金詐欺 実刑

今回は、補助金や助成金を不正に申請して騙し取る詐欺について、実刑などの処罰された内容を紹介しました。

補助金や助成金は、従業員の雇用状態を改善するのに活用できたり、事業を円滑に動かすためにも活用できる非常に素晴らしい制度です。

しかし、「助成金は儲かる」という話がインターネット上にあふれていたり、コンサル業者も魅力的な文言を並べて営業していますので、「我が社もこの流れに乗らなければ」という気持ちになってしまうかもしれません。

ですが、そこまで美味しい話は実際にはありませんし、不正受給とまでは言わずとも、助成金が欲しいがために、助成金に合わせて本来の人事制度を捻じ曲げたり、社員に受けたくもない研修を受けさせて業務効率が下がるなどが起きてしまっては本末転倒です。

まずは「助成金」という制度に左右されず、本業をしっかりと行い、どのような会社にしたいのかというビジョンを固めましょう。

その上で、自社に合っていて活用できそうな助成金があれば活用する、という順序を間違わないようにしたいですね。

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