近年では、積極的に障害者採用を進める企業が増えています。
その活動を支援する目的で、障害者雇用を促進するため、さまざまな助成制度が設けられています。
1週間で20時間以上勤務できるか?
一定期間のトライアルか?
継続して雇用できるか?
など、条件によって使える助成金が異なってきます。
「どんな仕事が適しているか?」を、継続雇用の前に確認できる制度「トライアル雇用」などや、賃金、設備設置を助成する各種助成金、雇用継続のための人的サポート「ジョブコーチ支援」など、目的や状況にあわせて是非活用したいところです。
この記事では、障害者雇用を考えているときに活用できる助成金について解説します。
障害者の方を雇用するときに活用できる助成金は、申請する期間が決められていたりもするので、事前に確認しておくことが大切でしょう。
助成金とは?
まずは、助成金とは何か、というところからお話しましょう。
今回紹介する障害者雇用に関する助成金は関係する、厚生労働省が管轄するもので雇用保険法かかる助成金を指します。
雇用保険の適用事業所が対象にいて、雇用保険料として会社が支払ったものの一部が原資になっています。
そのため、雇用保険料を支払っている会社が対象になっており、従業員を雇用していても雇用保険料を支払う程度までの勤務時間ではない従業員の場合は対象になりません。
※週20時間以上の勤務をする事で雇用保険の対象になります。
ちなみに、助成金で交付されたお金の用途は自由で、返済も不要となっていまふ。
各助成金ごとに要件が違ってくるので、要件に合うような計画を立ててハローワークや管轄機関に届出をしたのち、計画通りに実行をしましょう。
その後、一定期間以内に支給申請の届出をしなければいけません。
また、助成金の目的は、雇用を拡大したり、従業員にとって良い仕組みを会社内につくることを目指してもらいたいということです。
そのため、一定期間内に解雇をしている会社は対象になりません。
そして、虚偽の申告を行ったり、不正を行ってしまうとペナルティが課せられるので十分に注意してください。
障害者雇用に関する助成金とは?
障害者等関係の助成金と言っても、様々な制度が用意されています。
現在公表されている障害者関連の助成金は、以下のものがあります。
・特定求職者雇用開発助成金
(特定就職困難コース)
(障害者初回雇用コース)
(発達障害者・難知性疾患患者雇用開発コース)
・トライアル雇用助成金
(障害者トライアルコース)
・障害者雇用安定助成金
(障害者職場定着支援コース)
(障害者職場適応援助コース)
(障害や傷病治療と仕事の両立支援コース)
(中小企業障害者多数雇用施設設置等コース)
・障害者作業施設設置等助成金
・障害者福祉施設設置等助成金
・障害者介助等助成金
・重度障害者等通勤対策助成金
・重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金
全ての助成金を受け取ることができる訳ではないため、各助成金の内容や要件をきちんと理解して申請することが必要です。
障害者に関連する助成金は、金額が大きいものがあるため、申請を考える企業が多いのも現状です。
一方で、平成30年には不正受給によって報道で社名が公表されています。
目先の利益よりも「会社にとって事業計画の導線上に必要な行為」に助成金が紐づいていると理解しましょう。
助成金の流れ
この中から、比較的申請を考える企業などが多いと思われる助成金「障害者雇用安定助成金」を例に挙げて話を進めてみましょう。
障害者雇用安定助成金の措置
障害者雇用安定助成金は、下記の、次の7つの決められた措置の中から実施した場合に支給されるものです。
例えば、従業員が心身の不調によって休職を余儀なくされた場合、職場復帰に必要な仕組みを設けるとします。(措置5)
復帰後に外部から職場支援員としてジョブコーチとの契約をします。(措置4)
合わせて社内でのサポートの仕方や接し方について、そのジョブコーチから講習を受けます。(措置7)
従業員の方が障害を負ったことを契機にして、社内の体制を整えるのであれば、このように、助成金を使う事ができるでしょう。
ちなみに上記3つの措置を実施した場合の合計助成金額は、最大で192万円となります。(措置7は講習に要した経費によって変動します)
計画の届出を行う
支給されるまでの流れは、最初の措置を開始する日の前日から起算して1ヶ月前まで計画を届を提出します。
計画の届け出の提出は、会社の管轄のハローワークとなります。
計画には、7つの措置のうち一番最初に実施する措置についての具体的な日付の記載が必要となるので注意してください。
支給申請を行う
措置実施後に、一定期間経過した場合給申請を行います。
支給は6カ月を1期として支給申請をします。
支給申請は、各計画期間中の最初にくる支給対象期分の賃金を支給した日の翌日から2ヶ月以内です。
助成金の用途
支給が決定すると、助成金が振り込まれます。
振り込まれた助成金の用途は従業員の賃金の原資に使ったり、教育や設備投資にするなど様々な方法があります。
事業計画に沿って必要な事に有意義に使うようにしましょう。
助成金の要件や助成額
障害者雇用助成金には上記で紹介した例以外にも様々な種類が存在します。
助成金によって要件や支給金額も変わってくるので、一つ一つ確認し、使える助成金を検討してみてください。
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース )
助成額:最大240万円
高年齢者や障害者等の就職困難者をハローワーク等の紹介により、継続して雇用する労働者(雇用保険の一般被保険者)として雇い入れる事業主に対して助成されます。
トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)
助成額:月額最大4万円*精神障害者は月額8万円
ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により、就職が困難な障害者を一定期間(原則3ヶ月)雇用することにより、その適正や業務遂行可能性を見極め、求職者及び求人者の相互理解を促進すること等を通じて、障害者の早期就職の実現や雇用機会の創出を図ることを目的としています。
トライアル雇用助成金(障害者短時間トライアルコース)
助成額:月額最大2万円
継続雇用する労働者として雇用することを目的に、障害者を一定の期間(3ヶ月〜12ヶ月)を定めて試行的に雇用するものであって、雇入れ時の週の所定労働時間を10時間以上20時間未満とし、障害者の職場適応状況や体調等に応じて、同期間中にこれを20時間以上とすることを目指すものをいいます。
特定求職者雇用開発助成金(障害者初回雇用コース)
助成額:120万円
障害者雇用の経験のない中小企業(障害者の雇用義務制度の対象となる労働者数50~300人の中小企業)が障害者を初めて雇用し、当該雇入れによって法定雇用率を達成する場合に助成するものであり、中小企業における障害者雇用の促進を図ることを目的としています。
障害者雇用安定助成金(障害者職場適応援助コース)
助成額:4時間以上16,000円
職場適応・定着に特に課題を抱える障害者に対して、職場適応援助者による支援を実施する事業主に対して助成するものであり、障害者の職場適応・定着の促進を図ることを目的としています。職場適応援助者(ジョブコーチ)による援助を必要とする障害者のために、支援計画に基づき職場適応援助者による支援を実施する事業主に助成します。
障害者雇用安定助成金(障害者職場定着支援コース)
助成額:月額1.5万円〜*各措置によって異なる
障害特性に応じた雇用管理・雇用形態の見直しや柔軟な働き方の工夫等の措置を講じる事業主に対して助成するものであり、障害者の雇用を促進するとともに、職場定着を図ることを目的としています。職場定着支援計画を作成し、「柔軟な時間管理・休暇付与」「短時間労働者の勤務時間延長」「正規・無期転換」「職場支援員の配置」「職場復帰支援」「中高年障害者の雇用継続支援」「社内理解の促進」のいずれかの措置を講じた事業主に助成します。
中小企業障害者多数雇用施設設置等助成金
助成額:最大3,000万円
労働者数300人以下の事業主が、障害者の雇入れに係る計画を作成し、当該計画に基づき障害者を10人以上雇用するとともに、障害者の雇入れに必要な事業所の施設・設備等の設置・整備をした場合に、当該施設・設備等の設置等に要する費用に対して助成を行うものであり、中小企業における障害者の一層の雇入れ促進を図ることを目的としています。
特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発助成金)
助成額:最大120万円
平成29年4月1日より、発達障害者・難治性疾患患者雇用開発助成金は特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)に名称変更されました。発達障害者や難治性疾患患者をハローワーク等の紹介により、継続して雇用する労働者(一般被保険者)として雇い入れる事業主に対して助成されます。
障害者職業能力開発助成金
助成額:支給対象の3/4
障害者の職業能力の開発・向上のために、対象障害者に対して障害者職業能力開発訓練事業を行うための施設または設備の設置・整備または更新を行う事業主および対象障害者に対して障害者職業能力開発訓練事業を行う事業主に対して助成するものです。
障害者作業施設設置等助成金・障害者福祉施設設置等助成金
助成額:最大4,500万円
保育施設や託児施設、給食施設等の設備費に、最大で2,250万円が支給されます。設備費等に、最大4,500万円が支給されます。障がい者の方が働くのに必要な設備や施設の購入にかかる経費の一部を支援する助成金です。
障害者雇用納付金制度
障害者を雇用するためには、作業施設や作業設備の改善、職場環境の整備、特別の雇用管理等が必要となるために、健常者の雇用に比べて一定の経済的負担を伴うことから、障害者を多く雇用している事業主の経済的負担を軽減し、事業主間の負担の公平を図りつつ、障害者雇用の水準を高めることを目的として 「障害者雇用納付金制度」が設けられています。
障害者の法定雇用率を達成した企業には、その経済的負担を調整する意味で障害者雇用納付金を財源とした助成金(障害者雇用調整金、報奨金、在宅就業障害者特例調整金、在宅就業障害者特例報奨金及び各種助成金)が支給されます。
まとめ
以上、障害者雇用に関する助成金について紹介しました。
本記事で紹介した通り、障害者に関する助成金は多数あります。
障害者が健常者と同様に社会に出て働く事は非常に大変なことです。
そこで、政府は障害者が健常者と同様に会社に順次できる様、様々な助成金を駆使して障害者のバックアップを行っています。
今後、障害者の雇用を検討している事業主の方は、是非これらの助成金を活用し、障害者雇用に役立ててください。