
どのような企業に就職すべきか。これは就職活動中の人にとっては大きなテーマです。特にこれから社会に出るという学生の人ならば「大企業」に就職するのか、それとも「ベンチャー企業」に就職するのかと考えたことを一度は考えたことがあるでしょう。
企業に就職すれば安定を得ることが出来ますが、自由についてはある程度制限されることは避けられません。ベンチャー企業に就職、もしくは起業すれば自分のやりたいことを自由にチャレンジしていくことが出来るためやりがいはありますが、その分安定性は無くなり自分一人にかかる責任は多くなります。
「ベンチャー企業に就職すると成長できる」と言われていますが、果たして本当にそうでしょうか?現実のベンチャー企業について知らないままイメージだけで就職してしまい、理想と現実とのギャップに後悔する人は本当に多いです。
この記事ではベンチャー企業と大企業のメリットとデメリットやベンチャー企業に向いている人、向いていない人などについて詳しく解説していきます。イメージではない現実的な「違い」を知り、自分に合った後悔のない選択が出来るようにしましょう。
INDEX
ベンチャー企業への一般的なイメージ
まずは一般的に言われているベンチャー企業のイメージについていくつか書き出してみます。
ベンチャー企業に就職すると…
- 自由に仕事が出来る
- 責任ある仕事を任される
- 成長するスピードが早い
- 出世が早い
- 給与が上がるのが早い
- 自分のペースで仕事できる
- 定時退社
色々な点がありますが、大雑把にまとめれば人材にしても企業にしても「成長スピードが早い」ということが言えると思います。ベンチャー企業は短期間に急激に成長することが求められるため、成長スピードが早いのも確かです。
大企業に比べてほとんどが小規模・中規模なベンチャー企業はそのスピードこそが強みでもあります。即戦力になる優秀な人材だけを集め、成長フェーズに合わせた目標の達成に向けて全力で取り組んでいくベンチャー企業は目まぐるしいほどの勢いで人も企業も成長していきます。
しかし、数多くのベンチャー企業の中で成功を手にすることが出来るのはほんの一握り、1割にも満たないと言われています。
そしてこれと同様に、ベンチャー企業に就職して成長できる人もいれば、成長できない人もいるのです。
ベンチャー企業に向いている人・向いていない人
ベンチャー企業に就職して成長できる人と成長できない人の違いはどこにあるのでしょうか?
これはただ単に能力や努力の違いだけとは言い切れません。相性や、その人の性格、自分の理想とする仕事や考え方など、様々な事に左右されます。ベンチャー企業に向いているから有能だとか、ベンチャー企業に向いていないから無能だということはなく、合う合わないもあるのです。
「具体的にベンチャー企業でどんなことをやりたいのか?」「どのような形で企業に貢献していくのか」ということを考えることも大切ですが、そもそもベンチャー企業での働き方は自分に合っているのか?ということを考えるのも忘れないようにしましょう。これを忘れてしまい、「自分には合わなかった」と転職を選択する人は少なくありません。
ベンチャー企業に向いている人
- やり遂げたい目標がある
- 新しいことに挑戦することが好きだ
- 自発的に行動するのが得意
- 熱中して取り組むことができる
- 人に聞くのではなくまずは自分でやってみる
- 色んなことにチャレンジして吸収したい
- 好奇心旺盛で勉強熱心
- 自ら進んで計画、実行、評価、改善(PDCA)が出来る
- 自分で自分の評価を決めず柔軟な考えを持っている
- 自分の考えはどんどん発言していきたい
ベンチャー企業に向いているのは、自分の中にはっきりした目標があり、そのために自分で計画を立てて行動し物事を吸収していける人です。新しい経験に対する抵抗が少なく、どんどん色んなことに挑戦していくのが好きだという人からは革新的なアイディアが生まれてくるものです。
一方で、あれこれ手を出してすぐにやめてしまうのではなく「これだ!」と思ったら熱中してやり遂げる事が出来る忍耐も必要です。ベンチャー企業は少数精鋭で少ない社員数で事業を行っていくため、一人一人がとても重要で、誰に言われず自発的に行動し仕事をこなすことが出来る人材こそ求められる人材であり、ベンチャー企業向きの人材です。
ベンチャー企業に向いていない人
- 自らトップを走るより2番手としてサポートしたい
- 決められたポジションで能力を発揮したい
- マニュアルに沿った仕事をしたい
- 自分の意見はあまり発言したくないタイプである
- 誰かに言われた仕事をきちんとこなしたい
- 自己評価を高く見積もってしまいがち
- 結果を出すためには自分の力より環境や周りの人が大切だと思っている
- 失敗するのが苦手
自分で何かを決断したり自発的に行動するのはあまり好きではなく、誰かのサポートをしたりマニュアルに沿って黙々と仕事をこなしていきたいという人はベンチャー企業には向いていないと言えます。
ベンチャー企業というのは、今まで世の中に無かったものを生み出す組織です。今までにない新しいものというのは当然前例がありませんから、マニュアルは存在しません。毎日が知らないことばかりで、挑戦の連続です。そんな中で、誰かの指示を待つのではなく「どんな仕事をすればいいのか」ということすらも自分で見つけていかなければいけません。
どんなに優秀な人材でもこの「働き方」の合う合わないは重要で、合わない環境での仕事はストレスや不満の連続になるため潰れて自信を喪失してしまう可能性もあります。
専門職に就きたいという人にこそ大手企業がおすすめです。大手企業の方が仕事も細分化されており、自分にぴったりの仕事も見つけやすくなっています。
ベンチャー企業に就職した場合のメリット
では実際、ベンチャー企業に就職した場合にはどのようなメリットがあるでしょうか?
成長スピードが早い
ベンチャー企業は自発的にどんどん自分の計画を実行し検証し、評価し、改善策を見つけることが出来る人にとっては考えられないようなスピードで成長することが出来る場所でもあります。
企業によっては毎日が残業の連続など、かなり忙しいところもありますが自分の目標に向かってとにかくがむしゃらに突っ走っていきたい、なんとしてでも目標を達成したいという人からすれば毎日が楽しくて仕方ない環境になることでしょう。
昇進・昇給も早い
成長スピードが早い分、昇進や昇給も早い傾向にあります。ただし、ここは成長と同じで期待し過ぎてはいけない部分でもあります。どれだけその事業に力を注ぐことが出来るか、事業を成功させることが出来るかにもかかっているからです。
とはいえ、通常の企業と比較すればその昇進スピードは考えられないほど早いでしょう。特に企業の立ち上げ段階からのスタートであれば事業に貢献することでより早く昇進が見込めます。
また、大企業の場合は給与は安定していますが、ベンチャー企業はそうはいきません。そもそも創業したばかりや駆け出しの頃は事業を成長させることに全力を注ぐ必要があるため、赤字の連続です。だからこそよりシビアに無駄のない仕事をする姿勢が身につきます。
自分の意見が反映しやすい
大企業では社員数も多く、社長や役員との距離や隔たりは大きなものになります。しかし、ベンチャー企業の場合はそもそも多くの経営者が縦の関係にこだわらず、能力や人柄重視で人材を選ぶ傾向にあり、自分の意見を発言しやすい環境になっているのです。
自分の提案が経営者の目に止まり、採用されればすぐにプロジェクトが開始されます。提案者ということで重要なポジションを任されたり、責任もやりがいもある仕事をすることが出来ます。プロジェクトを無事成功に導けば信頼され、より大きな仕事を任されるようになります。そうして企業に無くてはならない存在になれば、将来的には幹部として経営者により近い立場で仕事が出来るようになるのです。
ベンチャー企業に就職した場合のデメリット
メリットも多いベンチャー企業ですが、デメリットについても見ていきましょう。
倒産の可能性がある
ベンチャー企業は競争が激しい世界です。資金不足のためライバルに勝つことが出来ず、将来有望なサービスや商品を持ちながら潰れていったベンチャー企業は山のようにあります。
大企業ならばよほどのことがなければ倒産はしませんが、ベンチャー企業の場合は呆気ないほど簡単に倒産してしまうのです。就職するベンチャー企業に本当に将来性があるのか、資金調達先はあるのかなどについても事前に調べておくことをおすすめします。
初任給は安いことが多い
給与の金額については企業によっても異なりますがベンチャー企業の場合、初任給はどうしても安くなる傾向にあります。また、賞与が出る保証もありません。福利厚生など、大企業に比べれば劣る部分も多く、場合によってはローンが通らないこともあります。
こればかりは企業にもよるため一概には言えませんが、そのような場合もあると言うことは覚えておきましょう。
保護されていない
大企業の場合、研修期間があったりと徐々に仕事を覚え成長していくのが一般的です。しかしベンチャー企業の場合は、入社してすぐに実際の業務に取り掛からなければいけないということもあります。右も左もわからないような状態で仕事をしなければならないという状況になる可能性もあるのです。
そのためベンチャー企業に就職したばかりの時には大きな負担やプレッシャーを感じることもあるでしょう。また、場合によっては長時間労働をしなければいけなくなったり、人手不足からなかなか休みが取れないという状況になってしまうことも考えられます。
大企業に就職した場合のメリット
ここからは大企業に就職した場合のメリットやデメリットについてご紹介していきます。まずはメリットからご紹介しましょう。
働きやすい
今までの実績がある大企業では研修や教育制度が確立されており、中小企業ではとても導入することができないような高価な機材を使ったハイレベルな講習・研修を受けることが出来たりと、自分の強みになる専門的なスキルを身に付けることが出来ます。
また、大企業は社員数も多く経営についても安定しているため、産休や育休、病休もとりやすく、労働環境についても固定休や有給を取れたりと働きやすい環境になっています。
安定している
財務の体質も強固な大企業は中小企業に比べると初任給は高くなりますし、更に賞与の額も大きくなるでしょう。会社が持っている病院や保養所を利用することが出来たりと福利厚生が充実しているのも大企業の特徴でしょう。
大企業に就職していることはステータスとみなされることもあり、自分の家族や親戚だけじゃなく、結婚相手の家族に与える印象も良いものになるでしょう。これは何も個人に限ったことではなく、金融機関のローン審査に通りやすくなるなど、社会的な信用力アップにも繋がります。
大企業に就職した場合のデメリット
働きやすさ・安定感は抜群な大企業にもデメリットは存在しています。
自由度が低い
大企業では何かのプロジェクトを行う時、基本的に部署やチームごとに動きます。そして、プロジェクトの決定権を持っているのは一部のトップの人たちです。
もっとよく出来るアイディアがあったとしてもそれをトップに聞き入れてもらえなければ実践することはもちろん、口出しすら出来ずただ言われたことをこなすという仕事になってしまいがちです。
そのため、自分から自発的に色々なことに挑戦し成長していきたいという人からすればストレスを抱えてしまうことでしょう。
企業によってルールが決まっている
大企業の場合、事務手続きやその他の業務などルールが固定されている場合も多いです。その企業のルールに適応出来たとしても、他の企業ではまたルールが違うため、転職することになった時にまた1から新しいルールに馴染んでいく必要があります。
中小企業と違って大きな会社は余裕があるため、実力は無いのに上に気に入られる振る舞いをしている人間が出世したり役職を得ることも少なくありません。大企業のこのような社風や人間関係に違和感を覚えて転職する人もいるようです。
なかなか昇給しない
大企業の場合、ベンチャー企業に比べて初任給は高い傾向にあり、賞与も出ることがほとんどだと思いますが、社員も多く上の世代も多い大企業では若手の給料を急激に上げるということはなかなかありません。
安定しているというメリットがあるにせよ、自分の功績が上の人間に還元される仕組みというのは大きな不満の種となります。現在では年功序列の弊害が指摘され変化も起こってきていますがまだまだ古いシステムが機能している大企業は多いです。
とはいえ、大企業でも外資系の場合はまた話が変わってきます。外資系大企業は個人主義の風潮や強く、成果を上げればそれだけ早く昇進・昇給に繋がります。大手の外資系金融でバリバリ仕事をして結果を残せば入社一年目にして数千万円の給与を得ることも不可能ではないでしょう。ただし、それだけに責任も大きく激務になります。
まとめ
ベンチャー企業と大企業では大きな違いがあるということがおわかり頂けたと思います。
ただ単にメリット・デメリットだけで見てしまうと選択の余地も狭まってしまうため自分に合うか、合わないか、自分の求めている環境なのかという部分も考えながら就職先を選ぶようにするといいでしょう。
流行り廃りの激しい現代では大手企業がベンチャー企業を買収するという事も多く、ベンチャー企業だからと言って不安定だとは限りませんし、その逆で大手なら安定という考え方も正しくありません。
終身雇用という今まで定番とされてきた働き方のモデルは崩れつつあり、それを考えればどんな場所でもやっていくことが出来るように自分の能力を伸ばすということも重要だと言えます。そんな場所として、ベンチャー企業を選ぶのも選択肢のうちの一つではないでしょうか。