大手メガバンク三井住友ファイナンシャルグループが立ち上げた子会社の1つであるグローバルファクタリング株式会社。その会社で取り扱っているサービスがグローバルファクタリングで、その内容はファクタリング事業者が輸出債権を買い取るというものです。
外国企業へ輸出を行い貿易取引を行なっている企業は、国境を超えた決済や為替レートの変動など、国内取引では発生するはずがない様々なリスクと常に向き合う必要があります。特に輸出代金をきちんと回収できるかどうかは非常に大切な問題であり、常に不安を抱えながら外国企業と取り引きを行なっている経営者は決して少なくはありません。
安心して輸出業務を行なう為にはグローバルファクタリングの仕組みを理解しておく必要があり、特徴や注意点を抑えておく事でリスクを抑えたより安全な輸出業務を継続して行なっていく事が可能になります。外国企業との貿易に関する知識と共にグローバルファクタリングについて分かりやすく解説していきたいと思います。
グローバルファクタリングとは
冒頭でも説明したように、輸出企業は海外企業に輸出する時に「代金回収をきちんと行う事が出来るのかどうか」という大きなリスクを常に抱える事になります。貿易取引をする輸出企業が海外の輸入企業に対して輸出を行なう時に、輸入企業からの代金を確実に回収する為に行なうファクタリングをグローバル(国際)ファクタリングと言います。
リスクを伴う理由
国内の企業同士の取り引きであれば、相手企業の信用情報は帝国データバンク等の民間調査会社の情報で簡単に入手する事が可能です。万が一支払いがない場合でも直接催促する事ができ、最悪の場合は訴訟を起こして支払いを強制する事も国内の企業であれば可能ですよね。
しかし取引先相手が海外の企業だとそうはいきません。海外企業との取り引きで常に大きなリスクを伴う理由は大きく分けて以下の3点に集約されます。
- 海外企業の信用情報は気軽に入手する事が出来ない
- 海外企業の倒産リスクは把握しにくい
- 万が一支払いがなくても現地に行く訳にもいかず、どうしたら良いのかも分からない
海外企業との取り引きではこのような代金回収のリスクがかなり大きく、国内企業と取り引きするよりも大きなリスクを伴います。しかし国外への輸出が起業の経営母体になっている場合は、いくらリスクが大きくても簡単に取り引きを辞める事はできません。そんな代金回収リスクを軽減してくれるのが国際ファクタリングの強みなんです。
グローバルファクタリング株式会社の概要
グローバルファクタリングはサービスの性質上、民間のファクタリング会社は取り扱っていません。日本国内で取り扱っているのは大手メガバンクのみ。その中でも特に力をいれているのは、三井住友ファイナンシャルグループが立ち上げた子会社であるグローバルファクタリング株式会社です。
会社名 | グローバルファクタリング株式会社 |
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所在地 | 東京都港区三田3-5-27 住友不動産三田ツインビル西館10階 |
設立年月日 | 1992年12月 |
問い合わせ電話番号 | 03-5444-1535 |
営業時間 | 平日9時~17時 |
公式HP | https://www.smbc.co.jp/g_privacy/globalfact/ |
サービス内容は輸出債権を買い取るというもので、三井住友グループの完全子会社という事で、公式ホームページも三井住友グループの中に含まれています。資本金などの資金力は民間では太刀打ちできない位の膨大なものである事が予想されますが、手数料や取引額などの基本的な情報は一切記載されていません。
完全法人向けのサービスとなっている事もあり、詳細は全て伏せ、全ての具体的な情報は問い合わせをしてからという事になります。国内企業同士の買取債権を買い取る一般的なファクタリングではなく、海外へ輸出を行なっている企業向けの国際ファクタリング業務のみを取り扱っている企業という事は事前に理解しておきましょう。
グローバルファクタリングの仕組み
輸出債権を買い取り、海外企業がきちんと代金を支払ってくれるか否かのリスクをなくす事が可能なグローバルファクタリング。契約が締結するまでの簡単な流れと仕組みを解説していきます。
- 輸出企業と輸入企業が売買契約を締結する
- 輸出企業が輸入企業に対してグローバルファクタリングを利用する事の承諾を得る
- 輸出企業から国内ファクタリング会社へ信用保証の引受依頼
- 国内ファクタリング会社から海外ファクタリング会社へ信用保証の引受依頼
- 海外ファクタリング会社が輸入企業の信用調査を開始
- 信用調査が問題なければ信用保証の引受受領を国内ファクタリング会社へ伝える
- 国内ファクタリング会社から輸出企業へ信用保証の引受受領を伝える
- 輸出企業が契約通りに商品を船に積む
- 契約通りに商品を船積みした事の証明(「B/L等」)を提出して国内ファクタリング会社へファクタリングを依頼する
- 輸入企業から海外のファクタリング会社へ支払い
- 海外のファクタリング会社から国内のファクタリング会社へ支払い
- 国内のファクタリング会社から輸出企業へ支払い
以前までは信用状が貿易取引における支払いを保証してくれるスキームでしたが、グローバルファクタリングでは「日本と現地のファクタリング会社」が支払いを保証してくれるスキームです。
信用調査
輸出企業⇒日本ファクタリング会社⇒現地ファクタリング会社⇒輸入企業
最終的にその企業がきちんと料金を支払うかどうかの信用調査を行なうのは現地のファクタリング会社です。信用調査に問題ありとされるとグローバルファクタリングを行う事が出来ません。
支払い
輸入企業⇒現地ファクタリング会社⇒日本ファクタリング会社⇒輸出企業
料金の支払いも通常であれば商品を受け取った輸入企業から輸出企業へ直接支払う形になりますが、グローバルファクタリングを利用していると、まず輸入企業は現地のファクタリング会社に支払い、そこから日本のファクタリング会社に支払った後に輸出企業へと支払われます。
通常のファクタリングと違う点としては、事前に現金で受け取れるという訳ではないという事です。あくまで海外企業の支払いを保証してくれるスキームであるという考え方で、輸出債権を買い取ってもらった段階で現金が支払われるという訳ではないという事は理解しておきましょう。
グローバルファクタリングの5つの特徴
海外企業へ輸出を行なっている経営者は必ず知っておきたいグローバルファクタリング。上記で仕組みや概要を紹介してきましたが、通常の輸出入と異なる点や特徴はどういった所にあるのでしょうか。大きく括ると5つの特徴と利点がグローバルファクタリングには存在します。
- 信用状なしで取り引きが出来る
- 輸入業者の信用調査が出来る
- 代金回収が100%保証される
- 書類送付ディレイが発生しない
- 厳格な審査がないのでスムーズ
グローバルファクタリングの特徴から、利用する事によるメリットを以下で1つずつ解説していきたいと思います。
『信用状 L/C』が不要な点
上記でも説明した様にグローバルファクタリングは日本と現地のファクタリング会社が支払いを保証してくれるスキームになります。一方で通常の貿易取引では、「信用状 L/C」を利用した日本の銀行と現地の銀行が支払いを保証してくれるスキームです。
銀行が支払いを保証してくれるという事は、銀行に融資を受ける時のような厳格で厳しい審査が待っているという訳です。輸出企業側の信用状開設のハードルはそこまで高くないのですが、輸入企業側は支払いをする側ですから銀行の審査が非常に厳しいです。
グローバルファクタリングを利用する場合でも一定の信用調査は勿論行なわれますが、信用状開設と比較すると厳しくないのが一般的ですから、審査が厳しい信用状制度を利用しなくても代金回収リスクを軽減する事が出来るのは非常に大きなメリットであると言えます。
更に信用状は発行するまでに審査だけでなく様々な事務手続きが必要になります。事務作業の時間や費用を軽減するだけでなく、面倒な行程を省くことが出来まするのも大きな利点であると言えるでしょう。
海外企業の信用調査が出来る
輸入業者の信用調査を行なってくれるというのは輸出業者からすると大きなメリットになります。輸出業者は貨物の代金を常に支払い続けてもらうには、輸入業者の経営状況や信用状態に関して、常に最新の情報を入手しておく必要があります。財務状況が思わしくないのであれば輸出を停止するなどの対策を事前に行なわなければならないからです。
しかし所在地が海外である輸入業者の信用情報を入手するのは大きな困難が伴います。しかしグローバルファクタリングを利用すれば、国内のファクタリング会社が提携している現地のファクタリング会社に信用調査を行なってもらうように依頼をし、信頼が置ける信用調査を行なってくれるので確実に資金決済が行われるかどうかを判断する事が可能です。
自社の財務的な安全を確保するという面で考えても、輸出企業の財務状況がどうなっているのか、資金決済を行なえる経営状況にあるかどうかの最新情報を常に手にいれる事は非常に重要です。信用調査を行なえて回収リスクを軽減できるという点でグローバルファクタリングを利用されている方は多く、自社の財務をリスクにさらす事なく守るという意味でも、利用を検討してみるのが良いでしょう。
代金回収リスクがなくなる
船積みされた貨物の代金を回収できなければ、輸出業者は大きなダメージを受けます。規模が大きければ大きい程ダメージは大きく、資金繰りが悪化する事は勿論ですが、業績が悪化して事業の継続が困難になってくる可能性も否定できないでしょう。経営状況が不透明な海外輸入企業との取り引きは常に代金回収リスクを伴うのが普通です。
しかしグローバルファクタリングを利用すれば、現地のファクタリング会社による信用審査があり、それに通過しなければ契約が成立しませんので、審査を通過できないような財務状況が悪い海外企業との貿易取引を未然に防ぐ事も出来ます。
現地ファクタリング会社の審査が通り契約が成立すれば、輸出に関する売掛債権の回収は100%保証されると考えて間違いありません。貿易取引を確実に安心して行える環境が整うというのは、貿易取引において最も欠かすことが出来ない問題ですから、代金回収リスクを少しでも軽減したいと考えている方は必ずグローバルファクタリングの利用を検討してみるのが良いと思います。
書類送付のディレイが発生しない
信用状を利用した貿易取引では、銀行に「B/L」を提出して銀行を経由し輸出企業から輸入企業へ書類が送られます。書類送付のディレイが発生するのは、
商品は到着してるのに書類が到着していない
という事態が発生するケースが多くあります。荷物の引き取りは書類を持って行なわれるのが一般的ではありますが、書類が到着していないのに商品が到着してしまっては荷物の引き取りに大きな支障を与え、スケジュール全体が遅延します。
しかしこれがグローバルファクタリングになると、基本的に書類は輸出企業から輸入企業へ直接送付になり、出荷を証明する書類のコピー書類でファクタリングの支払いを受ける事が可能なので、銀行を経由しませんので書類のディレイが発生する事がないのです。業務遅延やトラブルの原因になる書類送付のディレイが発生しないというのは、貿易取引において大きなメリットであると言えます。
厳格な審査はない
通常の貿易取引で利用される「信用状L/C」では『書類取引の原則』と呼ばれる、非常に厳格で厳しい審査があります。裏を返せば非常に融通が効かない制度であるとも言えます。
- 信用状と船積書類の内容が一致していれば買取を行なう
- 書類のタイプミスを含む不一致がある場合は買取を行なわない
非常に厳格で厳しいのが「信用状L/C」による『書類取引の原則』です。悪質輸入企業の場合はほんの僅かな違いを指摘して支払いを拒絶するケースがある事から、「信用状L/C」での取引は勿論メリットもありますがデメリットも多くあるのです。
しかしグローバルファクタリングでは「信用状L/C」による取り引きではありませんので、このような書類取引の原則は必要ありません。極論を言えば、もしも必要書類の数字にミスが見つかっても、そこを指摘して修正を行なえば取引がなくなる事はありません。
グローバルファクタリングの3つの注意点
海外企業との取り引きで常に付き纏う代金回収リスクを軽減してくれるなど、多くのメリットを持つグローバルファクタリングですが、利用前に注意しなければならない事もあります。それは大きく分けると以下の3点。
- 相手企業に利用する事が通知される
- 手数料が高額
- 取り扱い企業が極端に少ない
3つの注意点に関しても、以下で1つずつ分かりやすく解説していきたいと思います。
輸入企業の承諾がなければ契約できない
日本国内同士で売掛債権を売買する通常のファクタリングサービスでは、売掛先企業に通知される3社間と通知されない2社間を選択する事が可能です。大手メガバンクではリスクを避ける為に2社間は行なわず3社間のみを行なっていたり、反対に民間企業の場合は手数料を高額にして積極的に2社間取引を行なっていたり、取引先企業に通知するか否かは基本的には選択する事が出来ます。
しかしグローバルファクタリングではそうはいきません。契約成立の為には、輸入企業の信用調査が必須であり、その調査を行なう為には輸出業者がファクタリングを利用したいと考えている旨を必ず通知し、輸出業者がその契約に応じなければならないのです。今後も長い付き合いで良好な関係を築きたいと考えているのであれば、もしかしたらファクタリングを利用した事で、両企業の間に少しだけ溝が出来てしまうかもしれません。
高額な手数料が必要
グローバルファクタリングは信用状を利用して銀行を保証スキームにする通常貿易よりも高額な手数料が必要になるケースが多いです。メリットが多くあり代金支払いも保証してくれますが、その変わりに多額の手数料をファクタリング会社に支払わなければなりません。
信用状を使った場合
年利0.5%~1.0%の保証料
電信料1万円程度
為替手数料
信用状を利用した「L/C」の場合は、輸出入企業両方共が厳しい審査を通過しているという事で信用度が非常に高く、貸し倒れリスクがほとんどないという観点から、手数料は非常に格安です。
グローバルファクタリングを使った場合
インボイス金額に対して月利0.7%~2.0%の保証料
信用調査費1万円程度
為替手数料
信用状の仕組みを利用した「L/C」を使った方が手数料という観点のみで考えると安くコストを抑える事が出来ますが、そこは上記で説明したメリットと比較して考えてみるのが良いでしょう。信用状を利用した「L/C」にもグローバルファクタリングにもそれぞれメリットデメリットがあるという事です。
扱える業者が少ない
一般的な企業間の売掛債権売買のファクタリングに関しては、大手メガバンクの参入以外にも様々な民間企業が参入していますので、利用者目線で考えると色々な企業を比較し、自分の条件と最も合致している企業を選ぶのが定石です。しかしグローバルファクタリングに関してはそのような比較が出来ません。その理由はグローバルファクタリングを取り扱っている業者が日本国内で2社しかないという理由です。
取り扱い業者が少ない理由は、グローバルファクタリングサービスを利用するにはFCI(Factors Chain International)と呼ばれる世界各国の銀行と子会社のファクタリング業者で構成されているネットワークを利用しなければならないというものがあります。このネットワークを利用する事が出来なければサービスを提供する事が出来ないので民間企業ではサービス提供ができず、必然的に大手メガバンクのみが参入できるという仕組みになってしまっているのです。
扱える業者が少ないという事は競争がないという事です。という事は必然的に手数料相場は下がって行く事はありません。勿論大手メガバンクですから、世界基準で見たら相応の手数料でサービスは展開してはいるのですが、民間企業が参入して低い手数料でサービスを提供するといった事がありませんので、手数料は据え置きでこれからも下がる事はないでしょう。
グローバルファクタリングが使われる主なケース
海外企業との貿易取引に置いて大きな力を発揮するグローバルファクタリングですが、一体どのようなケースで利用される事が多いのでしょうか。利用されるケースで最も多いのは、
海外の輸入企業が「L/C」利用を断ってきた時
このパターンが最もグローバルファクタリングが利用されるケースとして多いものパターンです。「L/C」の利用は輸入企業が利用に応じなければ成立しません。利用を断ってきた場合は輸出入企業間での直接の送金でのやり取りになります。しかし直接の送金では輸出債権の支払いが保証されませんので、グローバルファクタリングを利用して、輸出債権の支払いを保証してもらおうとする訳です。
海外の輸入企業が「L/C」を断ってくる理由は以下の3点が考えられます。
- 発生するコストと手間
- 書類遅延などで荷物の引き取りに悪影響を及ぼす可能性がある
- そもそも「L/C」を開設できる信用度がない
往々にして考えられるケースは以上の3点です。上記でも説明していますが、「L/C」を開設するのは銀行融資と同じか、またはそれ以上に厳しい審査を通過しなければなりません。輸出企業に関しては優しい審査なのですが、輸入企業は直接代金支払いに関係しますので、輸出企業よりも厳しく財務状況や経営状況を審査されます。そもそもその審査に通過できなければ、開設する気があっても「L/C」を利用する事が出来ないという訳です。
更に上記でも説明した書類送付のディレイが発生する可能性があるというデメリットもあります。輸入企業からすると商品が届いてからすぐに作業に取り掛かりたいと考えていても、信用状が届いてないなどのディレイが発生したら作業開始が遅れますし、その間は時間だけが経過する負債となります。コストや手間を考えて利用しないと決めている海外の輸入業者は多いのです。
輸入業者は必ず代金を支払う気があるので「L/C」を利用する必要はないと考えます。しかし輸出業者からすると、相手企業の財務状況は分からない訳ですから、代金回収のリスクは負いたくないですよね。ここで活用出来るのがグローバルファクタリングという訳です。一連の手続きの流れやメリットデメリットに関しては上記で説明したような内容になります。
まとめ
貿易取引に置いて欠かす事が出来ないグローバルファクタリングの仕組み、特徴や注意点などを紹介してきましたが参考になりましたでしょうか。心から信頼が置けて、長い期間取り引きを行なっている外国企業であれば信用度がありますのでグローバルファクタリングを利用する必要はないかと思いますが、初めて利用する外国企業であれば、代金回収リスクは必ず付き纏います。相手取引先企業の信用調査を兼ねるという意味合いでも、初めて取り引きを行なう企業の場合はグローバルファクタリングの利用を考えてみるのが良いかと思います。
通常貿易で利用される「信用状L/C」も勿論多くのメリットがありますが、グローバルファクタリングにはないデメリットも多くあります。双方のメリットでメリットを上記記事で理解し、自社に対して恩恵が大きい方を利用するようにしましょう。最終判断を見誤ることで自社に大きな損失を与えてしまう可能性があるのもグローバルファクタリングです。特に注意しなければいけないのは手数料が高いという点です。どの企業も手数料は公開していませんので、必ず手続きや契約時に確認しておくようにしましょう。