
安心できる農業生産を続けていくには、食品安全に気を配る必要があります。
また、農業生産による環境への負荷、さらには環境保全し労働安全も確保しなければならないでしょう。
このような農業生産のおいての取り組みを行っているのが、GPA(農業生産工程管理)です。
農業生産者にとって、農産物の安全の確保、環境保全、労働安全は欠かすことができません。
最近では、流通や小売業者等も、JGAP、ASIAGAP、GLOBALG.A.P.などの第三者認証GAPの取得した農場から供給される農産物を調達しようという動きも大きくなってきました。
こちらの記事ではGPA(農業生産工程管理)を紹介すると同時に、関連している補助金をご紹介いたします。
農業生産に携わっている方にとって、役立つ記事となっていますので、ぜひご覧ください。
INDEX
食品安全や環境保全などを確保するGAP(農業生産工程管理)
GAP(農業生産工程管理)は、Good Agricultural Practiceの頭文字をとった言葉です。
直訳すると「よい農業のやり方」となりますが、一般的には「農業生産工程管理」という意味になります。
農業生産を行うにあたって「食品安全」「環境保全」「労働安全」の確保と継続を、GAP(農業生産工程管理)は取り組んでいます。
GAP(農業生産工程管理)の取り組みを、農業者や産地が受け入れることによって、持続可能性の確保、競争力の強化、品質の向上が期待されます。
さらに、農業経営の改善や効率化につながれば、結果的に消費者や実需者の信頼の確保へとつながっていくでしょう。
GAPが取り組む5つの内容
GAP(農業生産工程管理)の取り組みは、下記の食品安全、環境保全、労働安全、人権保護、農業経営管理という5つです。
それらを計画し、実行、評価、改善していくPDCAサイクルによって、よりよい取り組みにつなげていきます。
次に、取り組んでいる5つの内容について、ひとつずつ詳しくみていきましょう。
1つ目:食品安全
食品であるからには、安全を保ち継続していくことは欠かせません。
こちらの取り組みでは、食品の安全を保つルールを作り、実施しています。
◆農薬の適正使用と保管、異物の混入防止、作業者自身の健康・衛生管理、農機具等の安全な保管・取扱い、収穫した農作物の保管方法など
2つ目:環境保全
環境と密接に関わる農業生産においては、環境についての配慮が必要です。
こちらの取り組みでは、農場および周辺の環境の安全を守るためのルール作りを行い、実施しています。
◆農薬による環境汚染の防止、適切な施肥、土壌侵食防止、廃棄物の適正処理・利用、排水処理方法、施設・機械等の使用時のエネルギー消費の節減など
3つ目:労働安全
農業分野においては、ときに死に至る危険性が伴うこともあるため、労働者の安全の確保は最優先となります。
こちらの取り組みでは、労働者の安全確保のためのルールを作り実行していきます。
◆危険な作業の把握、安全に作業を行うための服装や保護具着用、機械等の適正な使用、燃料の保管方法、農作業安全講習会の受講など
4つ目:人権保護
人権保護では、農業生産を行う従業員の基本的人権を守るためにルールを作り実施しています。
◆休憩場所・休憩時間の確保、社会保険・労災保険への加入など
5つ目:農場経営管理
農業管理では、農業経営にとって必要なルールを作り実施していきます。
◆教育訓練の実施、作業・活動の記録、運営上必要な情報の記録、外部委託者の監視、クレーム対応の手順と記録など
神奈川県GAP(農業生産工程管理)導入推進方針をチェック
神奈川県では、平成21年4月より「神奈川県GAP手法(農業生産工程管理手法)導入推進方針」を策定して、主要な産地などにCAP(農業生産工程管理)の導入を推し進めています。
そのためのGAPチェックシート「神奈川県GAPチェックシート」が推奨されています。
このチェックシートは、GAP(農業生産工程管理)の高度化を図るためのものです。
神奈川県GAPチェックシートのご紹介
次にご紹介するチェックシートは、農林水産省が策定した「農業生産工程管理(GAP)の共通基盤に関するガイドライン」に準拠する農業者向けに作られたチェックシートです。
平成29年12月に神奈川県によって、作成されました。
自身の状況を把握するためにも、チェックしておきましょう。
神奈川県の第三者認証GAPの取得支援
GAP認証は、GAP(農業生産工程管理)の取り組みを第三者によって審査し証明してくれる認証です。
GAP認証を取得することによって、取引先や消費者が直接確認できない生産工程における食品安全、環境保全、労働安全等の持続可能性を確認することができます。
認証されることによって、取引上選択されやすくなり、消費者に安心してもらえることにつながっていくでしょう。
神奈川県の第三者認証GAPの取得支援では、取得する農業者等に対して、GAP認証に必要となる経費の一部を補助し支援を行っています。
埼玉県の民間GAP認証取得支援事業のご紹介
神奈川県以外でもGAP認証取得支援が行われています。
埼玉県が行っている民間GAP認証取得支援事業は、民間GAP認証を取得しようとする農業者等に対し、審査費用などの認証取得に必要な経費の補助を行っている助成事業です。
県産農産物のよりいっそうの安全性と同時に、信頼性の向上を目的として設けられました。
次に、民間GAP認証取得支援事業の補助対象者、補助対象事業、補助対象経費、選択要件、補助上限額をみていきましょう。
補助対象者
民間GAP認証取得支援事業の補助対象は下記の通りとなります。
・農業者
・農事組合法人(農業協同組合法(昭和22年法律第132号)に定める農事組合法人をいう。)
・農事組合法人以外の農地所有適格法人(農地法(昭和27年法律第229号)第2条第3項に規定する法人をいう。)
・農業協同組合
その他農業者の組織する団体(代表者の定めがあり、かつ、組織及び運営についての規約の定めのある団体に限る。)
・農業の専門学科を有する教育機関(授業カリキュラムにGAPの実施に関する教育を位置付けている機関又は位置付けることとしている機関であって、県が設置する教育機関以外に限る。)
・その他県が支援の対象とすることが適当と認める者
補助対象事業
民間GAP認証取得支援事業の補助対象となる事業は、地域のモデルとなる農業者等が、新規にGLOBALG.A.P.、ASIAGAP、JGAPの認証を取得するため必要な下記のような取り組みとなります。
ただし、「認証審査」は必至となっていますので、お気をつけください。
・認証審査
・認証取得に係る環境整備
・研修指導の受講
補助対象経費
民間GAP認証取得支援事業の補助対象となる経費は、下記の通りとなります。
◆認証審査費用
・審査費用(登録費用、認証発行手数料等の諸費用を含む)審査員旅費等
◆認証取得に係る環境整備費(GAP認証取得に必要なものに限る)
・設備改修資材導入費※、分析費(残留農薬、水質、土壌等)、ICTサービス利用料等
※農薬保管庫やトイレ等の施設整備を除く。また、取得単価が50万円未満のものに限る。
◆研修指導の受講費
・研修指導費用、講師旅費等
採択要件
民間GAP認証取得支援事業の採択要件は、下記の通りとなります。
◆支援対象のGAP認証を新たに取得する者であること。
・ただし、GLOBALG.A.P.、ASIAGAP、JGAPのいずれかをすでに取得している農業者等が、他のGAP認証又は同認証の新たなカテゴリーの認証を追加で取得する場合は支援対象とする。
また、農業者の団体がGAP認証を取得しており、当該団体を構成する農業者等が新たにGAP認証を取得する場合にあっては、新たに追加される農業者等による取得部分に限って支援対象とすることができる。
◆事業実施年度を含めた3年間、継続して認証を取得する事を確約する者であること。
・ただし、農業の専門学科を有する教育機関を除く。
◆S-GAP実践農場またはS-GAP実践農場2020であること。
・事業実施主体がGAP認証を取得する年度中に、S-GAP実践農場またはS-GAP実践農場2020になることが確実であることを含む。
補助上限額等
民間GAP認証取得支援事業の補助金額は、下記の表のように認定の種類によって異なります。
認証の種類 | 個別に認証を取得する場合 | 団体で認証を取得する場合 |
GLOBALG.A.P. | 295千円 | 295千円×(団体の構成員数の平方根+2) |
ASIAGAP | 150千円 | 150千円×(団体の構成員数の平方根+2) |
JGAP | 130千円 | 130千円×(団体の構成員数の平方根+2) |
必要書類
民間GAP認証取得支援事業の申請を行う際の必要となる書類は下記の通りとなります。
・事業実施計画承認申請書
・法人又は団体の概要書(構成員、生産、販売等の概要)
・団体の規約、構成員一覧
・事業費の根拠となる資料(参考見積書、資材等のカタログ等)
・(実需者からGAP認証取得を求められている場合)実需者の具体的名称や認証が必要な時期を確認できる資料
・その他、知事が必要と認める資料
JGAPの導入手順
日本GAPは、農場管理および団体管理の基準で、認証制度を行っており、JGAPの審査と認証を受けることができるのは、農場や団体のみとなります。
農場が受けるJGAPの審査および認証を「個別審査・個別認証」といい、団体が受けるJGAPの審査および認証を「団体審査・団体認証」といいます。
JGAPを導入するには、次の手順をふむこととなります。
JGAPを導入・個別認証の場合
①現状状把握 (JGAPの理解)
・「JGAP 農場用 管理点と適合基準」を入手します。
できている部分とできていない部分を把握します。
②審査から3ヶ月以上前
・「JGAP 農場用 管理点と適合基準」に基づく手順を構築し、運営します。
その際、帳票を揃え、運営の記録を残します。
ステップ1:農場内の責任分担の明確化
ステップ2:生産環境の確認とリスク検討
ステップ3:「農場管理の作業手順」づくり
ステップ4:ルールの周知徹底と従業員教育
ステップ5:記録と検証と自己審査
以上のステップ1~5を繰り返しながら改善を図っていきます。
③申込
・JGAP審査申込み
なお、審査費用は、農場規模や作物数などによって異なります。
④審査当日
・JGAP審査
管理点は全て審査され、それぞれの結果が「適合」「不適合」「該当外」のどれかに決定されます。
⑤審査後 4週間以内
・不適合項目を直します
不適合の指摘を受けた項目をなおし、是正報告書を審査・認証機関へ送付します。
⑥判 定
・審査の判定
合格基準を満たした農場にJGAP認証書が与えられます。審査・認証機関が判断します。
まとめ
GPA(農業生産工程管理)が取り組む5つの内容を始めとして、GAP導入の際に利用できる交付される神奈川県の第三者認証GAPの取得支援、埼玉県の民間GAP認証取得支援事業紹介、JGAPの導入手順を紹介してきました。
GAP導入することで、農業生産者は農産物の安全の確保、環境保全、労働安全に対して気を配れるようになり、持続可能性の確保、競争力の強化、品質の向上につながっていくでしょう。
このような農業生産者のサポートとなるGAP導入を検討しているのなら、記事でご紹介した補助金を活用することをおすすめします。