共働きの両親が増え、祖父母と同居している世帯が減少していることから、学童保育の利用は増えています。
しかし、保育園や幼稚園の待機児童の問題は、この学童保育にも影響があり、国や民間の運営者はひとりでも多く学童保育に入所させようとする試みがなされています。
そのような民間の運営者を支援するために、各自治体ではその運営者に対して補助金が出されています。
こちらの記事では学童保育の概要と、民間の学童保育運営者が受けられる東京都の補助金を紹介していきます。
①練馬区放課後児童等の広場(民間学童保育)事業運営費補助金
②中野区民間学童クラブ運営費補助金
③放課後児童支援員キャリアアップ処遇改善事業補助金
学童保育とは
学童保育とは、正式名称を放課後児童健全育成事業と呼び、厚生労働省が管理しているものを指します。
放課後子供教室は文部科学省が管轄していて、民間学童保育は厚生労働省の管轄外です。
事業の内容
厚生労働省は、学童保育の事業内容を以下のように定めています。
・課後児童の健康管理、安全確保、情緒の安定
・遊びの活動への意欲と態度の形成
・遊びを通しての自主性、社会性、創造性を培うこと
・放課後児童の遊びの活動状況の把握と家庭への連絡
・家庭や地域での遊びの環境づくりへの支援
・その他放課後児童の健全育成上必要な活動
対象児童
学童保育の対象児童は、保護者が労働等(疾病や介護・看護、障害なども対象となる)により昼間家庭にいない小学校に就学している児童です。
その他に特別支援学校の小学部の児童も加えることができます。
運営形態
学童保育施設には、公的機関が設置したものと、民間事業者が設置したものがあり、運営の形態によって「公設公営」「公設民営」「民設民営」の3種類に分けられます。
⑴公設公営
自治体が設置し、直接運営しているものです。
以前はこの事業形態が最も多かったのですが、自治体が人件費を削減するために運営を民間に委託するケースが増え、現在は公設民営の事業形態が最も多くなっています。
⑵公設民営
自治体が設置し、運営をNPOや民間企業、父母会などに委託しているものです。
現在はこの事業形態が最も多くなっています。
⑶民設民営
民間企業や学校法人、NPO、父母会または個人が設置し、運営しているものです。
行政から運営費補助を受けているものもあります。
施設・設備
⑴小学校の余裕教室や小学校敷地内の専用施設の活用を図るほか、児童館、保育所・幼稚園等の社会資源や民家・アパートなども活用して実施できます。
⑵放課後児童健全育成事業を行う場所には、遊び及び生活の場としての機能並びに静養するための機能を備えた区画を設けるほか、支援の提供に必要な設備及び備品等を備えなければなりません。
⑶専用区画の面積は、児童1人につきおおむね1.65㎡以上でなければならないとされています。
⑷専用区画並びに⑵の設備及び備品等は、放課後児童健全育成事業所を開所している時間帯を通じて専ら当該放課後児童健全育成事業の用に供するものでなければなりません。
⑸専用区画等は、衛生及び安全が確保されたものでなければならないとされています。
職員体制
放課後児童支援員の数は、一の支援の単位ごとに2人以上となります。
ただし、その1人を除き、補助員(放課後児童支援員が行う支援について放課後児童支援員を補助する者)をもってこれに代えることができます。
学童保育を始めるには
学童保育施設の経営・運営に特別な資格は必要なく、職員の配置にも条件は設けられていません。
提供するサービスについても、送迎サービス・夜間預かり・食事の提供・学習サポートなどそのニーズは多岐にわたっており、設立するときに、売りとなるサービスを用意しておくといいかもしれません。
開業資金
まずは学童保育を経営する物件の取得費用が必要になります。
物件の費用は目安として80万円ほどかかります。
内装費は内容にこだわれば高くなっていきますが、数十万円から500万円位で大きく変わってきます。
送迎サービスを実施するなら、車の費用で200万円ほどかかると踏んでおいた方がいいでしょう。
その他、人材の確保や机、冷蔵庫、テレビなどの経費と宣伝用のチラシ、ホームページの立ち上げなど必要経費は多数あります。
これらを合計すると、大体1500万円ぐらいかかるといわれています。
学童保育指導員
2015年より学童保育指導員には資格が必要となりました。
学校とは違うので、指導や教育を行う場面は、基本的にないのですが、中には障害のある子どもや配慮が必要となる子どもも居るので、そのような子供との接し方も学ぶ必要があります。
また、大事な子どもを安心して預けられるように、ほとんどの施設が保育士・幼稚園教諭・看護師等の資格保持者を雇用しています。
資格取得の条件
放課後児童支援員の資格を取得するには、各都道府県が実施している研修を受ける必要があります。ただし、その研修を受けるためにも、条件があります。
・研修を受けるために必要な条件
⑴保育士
⑵社会福祉士
⑶教員免許
⑷大学もしくは大学院で社会福祉学、教育学などの該当する課程を修めて卒業
⑸大学で該当する学科の単位を修得し、大学院への入学が認められている
⑹高卒以上に相当する学歴と2年以上児童福祉事業での勤務経験
⑺高卒以上に相当する学歴と2年以上学童保育の仕事経験があり、市町村長の認可がある
開業資金の調達
学童保育の開業には多額の資金が必要だと前項で述べました。
資金を自力で用意することができないときは、日本政策金融公庫からの融資を利用する方法があります。
日本政策金融公庫は、国が100%出資する金融機関で、中小企業の資金調達に非常に役立つ存在です。
一般の金融機関で資金調達できない場合でも、日本政策金融公庫からなら借りれる場合があります。
物件の選び方
学童保育を開設するにあたり、適した物件は以下の通りです。
・学校の近くに設置する
一番の条件は、子供が通う学校の近くに設置することが望ましいです。
しかし、少子化の影響もあり、ひとつの学校だけでは、子供の数が少なすぎることもあります。
そのようなときには送迎バスなどが必要になってきます。
・騒音に関して配慮できる場所
小さな子供の声などが騒音となり、近隣の住民から苦情が来ることも考えられますので、騒音に関して配慮できる場所選びが必須となるでしょう。
次項では、学童保育の運営者向けに、東京都で受けられる補助金を例にとって紹介していきます。
①練馬区放課後児童等の広場(民間学童保育)事業運営費補助
練馬区では、放課後児童等の広場(民間学童保育)事業に対する補助金の交付を実施しています。
運営に要する経費の一部を補助することにより、事業の利用を必要とする児童の受入先を確保するとともに、多様な保育ニーズに対応するサービスの提供の機会を図ります。
補助対象者
補助金の交付対象となる運営主体は、事業の内容が実施要綱の規定に適合しており、かつ、放課後児童の広場における登録児童が10人以上(開設初年度は除く)であるもののうち、つぎに揚げる要件のいずれかに該当する事業を行うものとなります。
⑴事業の実施場所が、練馬区立の学童クラブにおいておおむね2年以上待機児童が生じている小学校の学区域内であるもの。ただし、既に当該区域内において放課後児童等の広場(民間学童保育)事業を実施しており、この要綱の規定に基づく補助金の交付を受けている場合は除きます。
⑵長時間保育事業として、早朝または夜間に開設時間から1時間を超えた延長保育を実施するもの。
⑶事業の実施場所が、練馬区の区域内の駅周辺にあるもの。
⑷区内事業者が実施するもの。
⑸大規模集合住宅等の建設に際し、練馬区まちづくり条例(平成17年12月練馬区条例第95号)第108条第2項に定める協議による協定に基づいて整備された施設で実施するもの。
補助対象経費および補助金額等
この補助金の交付の対象となる経費および補助金の額は、以下の表を参考にしてください。
②中野区民間学童クラブ運営費補助
中野区において民間事業者が放課後児童健全育成事業を実施する場合の運営に要する経費の一部を補助することにより、事業の利用を必要とする児童の受入先を確保するものです。
補助対象者
中野区民間学童クラブ運営費補助の補助対象者は以下の通りです。
(1) 区長が事業の実施を必要と認める地域において、当分の間、継続的かつ安定的に事業を実施するための経験及び経営の実績を有すること。
(2) 中野区立学童クラブ条例、中野区放課後児童健全育成事業の設備及び運営の基準に関する条例並びに学童クラブ事業(放課後児童健全育成事業)実施要綱及び都型学童クラブ事業実施要綱の規定に準じて事業を実施すること。
(3) 専ら事業の用に供する施設において事業を実施すること。
(4) 施設の面積がおおむね事業を利用する児童の人数に1.65平方メートルを乗じて得た面積以上であること。
経費・補助金の額
中野区民間学童クラブ運営費補助の経費・補助金の額は以下の表を参考にしてください。
③放課後児童支援員キャリアアップ処遇改善事業
放課後児童クラブに従事する放課後児童支援員について、勤続年数や研修実績等に応じた賃金改善に要する費用が補助されます。
補助基準額
1支援の単位あたり⑴~⑶の合計額
⑴12万4千円[1人当たり年額]:放課後児童支援員
⑵24万8千円[1人当たり年額]:概ね経験年数5年以上の放課後児童支援員で一定の研修を受講した者
⑶37万2千円[1人当たり年額]:概ね経験年数10年以上の放課後児童支援員で一定の研修を受講した事業所長的立場にある者
※ 1支援の単位あたりの国庫補助基準額の上限額は86万8千円
補助率
放課後児童支援員キャリアアップ処遇改善事業の補助率は以下の通りです。
国1/3、都道府県1/3、市町村1/34
キャリアアップの段階
勤続年数や資格の有無などにより、補助される金額が変わります。⑴から順番に補助費が高くなっていきます
⑴放課後児童支援員基本的生活習慣の習得の援助、自立に向けた支援、家庭と連携した生活支援等に必要な知識・技能を習得するための認定資格研修を受講したもの
・年額12万4千円(月額約1万円)
⑵育成支援の内容の向上を担うため、より専門性の高い研修を受講した勤続年数5年以上の放課後児童支援員
・年額24万8千円(月額約2万円)
⑶事業所長(マネジメント)的立場にある勤続年数10年以上の放課後児童支援員
・年額37万2千円(月額約3万円)
まとめ
ここまで学童保育の概要と設立・運営に関すことや、運営者が受け取れる補助金「練馬区放課後児童等の広場(民間学童保育)事業運営費補助」「中野区民間学童クラブ運営費補助」「放課後児童支援員キャリアアップ処遇改善事業」を紹介してきました。
現在、学童保育を運営されている方は、放課後児童支援員キャリアアップ処遇改善事業の補助金を活用することをおすすめします。
また、近年の学童保育に対するニーズは多様化しており、それに対応できる学童保育を作ることが運営成功の鍵となります。