
これから大きく急成長する見込みのあるベンチャー企業やスタートアップ企業、中小企業に対して投資を行い、大きなキャピタルゲインを得ることを目的にするベンチャーキャピタル。常に資金を欲しているベンチャー企業にとって、ベンチャーキャピタルは非常に心強い存在といえます。
そんなベンチャーキャピタルの中にも様々な系統があり、銀行が親会社の銀行系ベンチャーキャピタルや政府系ベンチャーキャピタルなど、様々です。
今回ご紹介するのはそんな中でも独立系ベンチャーキャピタルと言われる「フューチャーベンチャーキャピタル」についてです。
ベンチャーキャピタルの中には都内の企業に対して投資を行うことが多いところもありますが、京都に本社ビルを構えるフューチャーベンチャーキャピタルは地域に密着した投資活動を行っています。
フューチャーベンチャーキャピタルの会社概要や特徴、投資の流れ、投資実績、事業内容やビジネスモデルなどについて詳しく解説していきます。
INDEX
フューチャーベンチャーキャピタルについて
フューチャーベンチャーキャピタルは正式名称フューチャーベンチャーキャピタル株式会社(英: Future Venture Capital Co., Ltd.)といい、FVCと略されます。1998年に設立し、2001年に東京証券取引所ジャスダックスタンダード上場。
創業時には三井住友銀行、日本アジア投資出身の川分陽二(フューチャーベンチャーキャピタル創業者)氏、ブラウンブラザーズハリマン出身の冨田賢氏などの有力なベンチャーキャピタリストが在籍していたことでも知られています。
川分陽二氏退任後は今庄啓二氏が代表取締役社長に就任しており、2016年には今庄啓二氏が会長に、松本直人氏が代表取締役社長に就任しました。
本社は京都市中京区にあり、その他にも国内の各地に拠点を持ち。地域密着型の投資活動を行っています。
フューチャーベンチャーキャピタルの事業内容
ファンドの企画、管理、運営やベンチャー企業への投資などの伝統的なベンチャーキャピタルの業務全般を行っており、投資先は国内のベンチャー企業が多いものの、一部海外企業への投資も行っています。
また、コンサルティング事業やシェアオフィスの運営を通じてベンチャー企業や中小企業の支援を行うコワーキング事業も行っています。
地方創生ファンド
フューチャーベンチャーキャピタルでは創業率向上、雇用の創出、経済の活性化に貢献する本格的な地方創生の手段として地方創生ファンドを組成。IPOによるイグジットを目指しているベンチャー企業や中小企業に限らず、IPOを目指していない場合や、エクイティファイナンスを活用し事業継承を行いたい企業など、幅広い投資を行います。
- 創業…地域の創業率向上
- 事業継承…地域の廃業率の減少
- CSV…地域課題の解決に取り組む
以上の3つを「地方創生ポートフォリオ」として最適解を提案し、適用した事業やビジネスモデルには様々なハンズオンプランによって成長をサポート。事業やビジネスモデルの価値向上や永続化を目指しています。
創業したとしても、経営や起業の経験、知識、ノウハウ、人脈や人材などがなければ大きな成長はとても見込めません。そこで、フューチャーベンチャーキャピタルが投資と更にハンズオンプランでサポートを行い、成長をサポートするのです。
フューチャーベンチャーキャピタルが地方に注目するようになったきっかけは2001年に石川県知事から地元にベンチャーキャピタルを誘致したいと相談されたことからだそうで、それ以降、岩手県、三重県、青森県からも声がかかり、今では数多くのファンドを立ち上げることになりました。フューチャーベンチャーキャピタルの今までの地方創生ファンド実績には以下のようなファンドがあります。
- 京都市スタートアップ支援ファンド
- こうべしんきん地域再興ファンド
- 磐城国地域振興ファンド
- あきた創業ファンド
- かんしん未来ファンド
- 秋田元気創生ファンド
- もりおか起業ファンド
- おおさか創業ファンド
- ふくしま夢の懸け橋ファンド
- こうべしんきんステップアップファンド
- 信用組合共同農業未来ファンド
- おおさか社会課題解決ファンド
- トマト創業支援ファンド
- かんしん未来2号ファンド
- えひめ地域活性化ファンド
- びわこ・みらい活性化ファンド
- イノベーションCファンド
CVCファンド
フューチャーベンチャーキャピタルでは人材関連企業、化学品、サービス業、製造、素材メーカーなど数多くのCVCファンドの運用実績があり、その他にも共同研究や事業連携が数多く生まれています。
全国の信用金庫、地方銀行、自治体と連携し、年間1000社を超えるベンチャー企業の情報を得ており、フューチャーベンチャーキャピタルのキャピタリストとしっかりコミュニケーションを取りながら戦略に沿った投資を提案。
小回りの良い独立系ベンチャーキャピタルの持ち味を活かしつつも上場企業としての効率的・組織的な投資やファンド運用体制を保っているため、他のベンチャーキャピタルでは対応することが出来ないような小規模なファンドでのスモールスタートにも対応しています。
ベンチャーファンド
新しいアイディアや優れた技術・サービスを持ち、将来的に急激な成長を見込むことが出来るベンチャー企業やスタートアップ企業に対して投資を行うファンドです。
シェアオフィス
フューチャーベンチャーキャピタルは様々なシェアオフィスを提供しており、ただ空間を共有するだけでなくネットワークやコミュニケーションのツールとしても活用することが出来る「FVC Mesh KYOTO」、今西土地建物株式会社とフューチャーベンチャーキャピタルで共同運営の「share YODOYABASHI deck」、盛岡市で新しく創業を考えている人や創業間もない人を支援する「盛岡市産業支援センター」を運営しています。
FVC Mesh KYOTO
住所 | 京都市下京区烏丸通仏光寺下ル大政所町680-1第八長谷ビル 2F、3F |
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電話番号 | 075-741-6597 |
受付対応時間 | 10:00~17:30 (平日のみ) |
Webサイト | https://www.fvcmesh.com/kyoto/ |
share YODOYABASHI deck
住所 | 大阪府大阪市中央区北浜4丁目2-13 淀屋橋今西ビル4F |
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電話番号 | 06-6222-3344 |
受付対応時間 | 10:00~18:00 (平日のみ) |
Webサイト | http://shareyodoyabashi.com/ |
盛岡市産業支援センター
住所 | 岩手県盛岡市大通3丁目6番12号 開運橋センタービル3階 |
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電話番号 | 019-606-6700 |
受付対応時間 | 9:00~18:00 (平日のみ) |
Webサイト | http://www.moriokaisc.jp/ |
フューチャーベンチャーキャピタルのビジネスモデル
フューチャーベンチャーキャピタルのビジネスモデルはファンドからの管理報酬で経費をまかない、キャピタルゲインと成功報酬によって利益を得るというもので、他のベンチャーキャピタルと同様です。
フューチャーベンチャーキャピタルをGPとしてベンチャー企業・スタートアップ企業に投資するためのファンドを企画し、LP投資家や事業会社を募集して資金を集め、ファンドを作ります。
運用期間は一般的に10年程度で、場合によってはLPの三分の二の承諾があることを前提にファンド期限が延長されることもあります。(通常の場合、最大で2年)
ファンド設立から3、4年の間に投資先企業の候補を探し、選定を行って投資を行います。将来有望だと思われるベンチャー企業・スタートアップ企業には追加投資を行うこともあるため、追加投資も希望するならば早い段階である程度結果を出したり、事業計画を進展させる必要があるでしょう。
また普通株式の引受による投資のほか、近年積極的な投資を行っている地方創生ファンドではリスクを軽減するために取得請求権付株式による投資も増えています。(取得請求権付株式とは、株式を発行した会社に買い戻しを請求することが出来る権利のある種類株式のこと)
フューチャーベンチャーキャピタルの投資の流れ
フューチャーベンチャーキャピタルでは、以下のような流れでベンチャー企業への投資やサポートを行っています。
- アプローチ
- 審査
- 投資
- 支援
- イグジット
アプローチ
まず最初は成長性のあるベンチャー企業その接触です。独自のルートを使い、フューチャーベンチャーキャピタル側から企業へアプローチを行うことも多くあるようです。
フューチャーベンチャーキャピタルに限らず、ベンチャーキャピタルではこのようにベンチャーキャピタル側からアプローチがあることもあるので、ピッチイベントなど様々なイベントに参加して人脈を広げておくのも大切です。
審査
審査期間は通常3ヶ月で、フューチャーベンチャーキャピタルの投資哲学と合う企業に対し行われます。そもそも投資哲学と合わなければ審査対象ですらなくなってしまうため、時間を無駄にしないためにも下調べをしっかり行い、フューチャーベンチャーキャピタルと自社が合うのかどうかを検討しておきましょう。
- 経営者や経営陣と数回面談を行い、創業経緯、事業内容、強みや弱み、目標などの聞き取り。事業計画書などの書類の提出、審査対象企業の関係先へのヒアリングなど
- 担当者審査を行った後に社内で様々な視点での審査を行う
審査ではリスクとリターンのバランスが確認されます。IPOを目指す場合でもそうでない場合でも事業計画を達成することができるのかということは審査において非常に重要なポイントで、その背景となる「経営者の脂質」「市場の規模・成長性」「事業制・参入障壁」などが審査されます。
投資
審査が終わり、投資決定がなされた後は投資契約を締結します。契約書には目標とする上場時期(IPOを目指す場合)、資金の使途などについても記載する必要があります。
投資後は契約書に記載されたそれらの項目についてモニタリングを行うため、しっかりと考えた上で記載するようにしましょう。
支援
提出した事業計画の達成、IPOでのイグジットを果たすため、投資以外にも様々なサポートを行います。
具体的には経営、財務、人事、営業の各種戦略の策定支援、投資先企業の企業価値を向上させる可能性がある金融機関、証券会社、提携先、監査法人、顧客などの紹介、コーポレートガバナンス・情報開示・予実管理など管理体制構築のための支援を行います。
この他にも会議への参加、定期訪問、経営者との密なコミュニケーションを行い、支援ニーズを汲み取り結果に繋げられる支援を行います。
イグジット
IPOなど、投資した時点で設定した目標を達成した場合は株式を売却します。
ファンド期限までに目標を達成することが出来なかった場合にも株式の売却などを行いますが、可能な限り投資先企業と友好的な関係を築くことが出来る企業や人へ売却できるように行われます。
フューチャーベンチャーキャピタルの投資実績
ベンチャーキャピタルの投資先としてはITサービス関連が非常に人気で、日本最大手のベンチャーキャピタルのジャフコや、日本生命保険を親会社としたニッセイ・キャピタルはITサービス関連企業への投資割合がかなり多くなっていました。
しかし、フューチャーベンチャーキャピタルの場合は電気機械器具・電子部品製造が24.6%と、投資割合では一番多くなっています。その後はコンピュータ・情報通信分野21.6%、サービス・飲食・レジャー17.0%、卸売・小売・物流16.0%、医療・バイオ8.7%、素材製造・建設・鉱業6.8%、精密・輸送用機械器具製造5.0%、農林水産・食料品製造0.3%となっており、一つの業種に限らず幅広い業種に投資を行っているということがわかります。
- 電気機械器具・電子部品製造…24.6%
- コンピュータ・情報通信分野…21.6%
- サービス・飲食・レジャー…17.0%
- 卸売・小売・物流…16.0%
- 医療・バイオ…8.7%
- 素材製造・建設・鉱業…6.8%
- 精密・輸送用機械器具製造…5.0%
- 農林水産・食料品製造…0.3%
主な投資成功例としてはウェブサイトを通して食事などの宅配を行う「出前館」で知られる夢の街創造委員会(2006年6月5日上場)、医療システムメーカーのファインデックス(2011年03月23日上場)があります。
まとめ
フューチャーベンチャーキャピタルは従来、投資先企業の成長をサポートしなるべく早い段階でIPOやM&Aというイグジットを果たすために経営に深く関わるハンズオン型ベンチャーキャピタルとして活動してきましたが、社長が代わり、現在の松本社長体制となってからはハンズオンへのこだわりは弱まってきており、この点で言えばベンチャーキャピタルに経営権を握られてしまうのではないかと心配している起業家、経営者にとっては安心出来るポイントと言えるかもしれません。