
福井県の老舗企業には、伝統的な技術はもちろんのこと製造や製造販売など、自社にしかない希少性が備えられています。
しかし老舗企業は小規模事業者が多く、新商品開発や販路開拓、建物の改装や設備導入の資金調達には、なかなか手が回らないのではないでしょうか?
自社独自の特殊技術やオリジナル商品、製造にかかわる特許などを持っていても、商品開発や設備の導入に踏み出せないのは、もったいない限りです。
福井県では、そのような老舗企業に対して「ふくいの老舗逸品承継発展事業助成金」を設けて支援を行っています。
返済の必要がない助成金となっておりますので、老舗企業の方は積極的にお役立になってみてください。
老舗企業が全国で一番多い福井県
全国にある老舗企業数は、全国で約29,000件ほど存在していますが、その中でも福井県は老舗企業が最も多い県となっています。
老舗企業の平均は人口10万人あたり約23軒となっていますが、福井県では人口10万人あたり約66.2軒です。
このような高い数値をみても、福井県の老舗企業の多さがわかります。
福井県の次に老舗企業が多い県は、2位の山形県で約63.4軒、3位は新潟県の約57.7軒、4位は島根県の約53.1軒、5位は富山県の約48.8軒と続いています。
老舗企業には、清酒製造業や織物、衣服、身の回りの品の小規模事業者が多く、寺院や神社が多いと老舗企業の数も比例して増えています。
老舗企業が全国でトップの福井県は、老舗企業とともに成長し発展をしてきた地域だと言っても過言ではないでしょう。
次に、このような福井県の老舗企業を支援している「ふくいの老舗逸品承継発展事業助成金」を詳しくみていきます。
ふくいの老舗逸品承継発展事業助成金の概要
ふくいの老舗逸品承継発展事業助成金は、福井県の老舗企業の維持発展のために行われる助成金です。
創業から50年以上を経過した小規模事業者が行う新商品の開発や販路開拓、設備導入や建物の改装など、企業の維持と発展に必要となる経費の一部の補助しています。
後継者等の新たなチャレンジを応援するために設けられました。
助成事業対象者
ふくいの老舗逸品承継発展事業助成金の補助事業対象者は下記の全てを満たす方が対象となります。
ただし、みなし大企業、フランチャイズ契約を締結して事業を行っているものは除かれますのでご注意ください。
①福井県内に主たる事業所を有する小規模事業者。ただし、補助事業者の範囲に、企業組合、協業組合を含む
②創業から50年以上を経過している者
③自社独自の長く伝わる技術等を用いて商品の製造または製造販売を行っており、かつその技術に希少性があるものとして、商工団体等が認める者
④代表者または代表者の後継者が20歳以上50歳未満である者
⑤④の代表者または代表者の後継者が商工団体等と連携して、自らが実施する今後5年間の事業計画書(様式第1)を策定し、今後も事業継続する意欲がある者
助成対象事業
ふくいの老舗逸品承継発展事業助成金の助成対象となる事業内容は、下記の①から③のいずれか、または①から④の複数の事業内容となります。
① 新商品開発・販路開拓
② 事業用建物の改装費
③ 設備導入費
④ その他、上記に附帯する取組み
助成対象経費
ふくいの老舗逸品承継発展事業助成金の助成対象となる経費は、事業を実施するために必要となる経費です。
下記の①~③のすべてを満たすものが助成対象経費となります。
① 事業の遂行に必要なものと明確に特定できる経費
② 交付決定日以降の契約・発注により発生かつ事業期間内に支払いが完了した経費
・交付決定日: 採択された後に発行される「交付決定通知書」の日付
③ 証拠書類等によって金額・支払等が確認できる経費
・証拠書類: 見積書や発注書(契約書)、納品書、請求書、領収書など
(経費区分と内容)
経費区分 | 内容 | |
新商品開発費 | 従業員旅費、専門家謝金、専門家旅費、資材購入費、外注 加工費、借損料、会場借料、会場整備費、サンプル作成費、 雑役務費、通訳・翻訳料、委託費(ただし、その事業の全て を委託するものを除く)、産業財産権等取得費、資料購入費、 印刷製本費、通信運搬費、消耗品費 | |
販路開拓費 | 従業員旅費、専門家謝金、専門家旅費、会場借料、会場整 備費、サンプル作成費、借損料、雑役務費、通訳・翻訳料、 委託費(ただし、その事業の全てを委託するものを除く)、資 料購入費、広告宣伝費、ホームページ作成費、印刷製本費、 通信運搬費、消耗品費 | |
事業用建物の改装費 | 建物修繕費 | 事業用建物の改装に要する経費(デザイン料等の設計に要 する経費を含む) |
構築物費 | 構築物の購入、建造、改良、据付、修繕又は借用に要する 経費 | |
設備導入費 | 機械装置費 | 機械装置等の購入、製造、改良、据付、修繕又は借用に要 する経費 |
新商品開発、販路開拓、建物改装、設備導入に附帯する経費 | 工具・機器・備品 | 工具・器具・備品の購入、据付又は借用に要する経費 |
広報費 | 印刷物作成費、広告媒体の活用等の助成事業に要する経 費 | |
その他 | 支援センターが助成事業に必要と認める経費 |
助成額・助成対象期間
ふくいの老舗逸品承継発展事業助成金の助成率と助成限度額、助成対象期間は、下記の通りとなります。
◆助成率 対象経費の3分の2以内
◆助成限度額 300万円以内
◆助成対象期間 交付決定日の日より2021年1月31日まで
なお、採択の状況により、助成限度額が減額になる場合があります。
希少性(優位性)の解説と採択基準
ふくいの老舗逸品承継発展事業助成金の助成事業対象者となる条件として、「③自社独自の長く伝わる技術等を用いて商品の製造または製造販売を行っており、かつその技術に希少性があるものとして、商工団体等が認める者」となっています。
この中で「希少性」とは、下記の内容をさしています。
・自社独自の長く伝わる特殊技術がある
・オリジナル商品を有しており周知度が高い
・製造に係る特許を取得している
・商標登録商品を扱っている(部品製造含む)
・商工団体等の区域内において同様な技術を持つ小規模事業者が少数であり、同技術を次世代に承継していくことが重要と認められること
・地域産業に影響力があり重要な位置付けとなっている
・その他
採択基準
ふくいの老舗逸品承継発展事業助成金の採択基準は、下記にあげる基準を総合的に勘案され、予算の範囲内で採択されます。
審査委員会で計画書の内容を審査し、下記に掲げる条件のほか、計画内容が適切かつ充分な成果を期待し得る事業であるかなども考慮されます。
◆申請者が有する技術や商品に優位性、または希少性があること
◆事業に成長性、継続性が見込まれること
◆地域経済への波及効果が見込まれること
◆加点項目(交付要領参照)
応募する際の3つの注意事項
ふくいの老舗逸品承継発展事業助成金を応募する際には、自身で資金を調達しなければなならないことや対象外となってしまう場合がありますので、応募する前にはよく確認しておくことが大切となります。
次に、対象外になってしまう助成金受給、対象外になってしまう経費、必要となる資金調達の3つの注意事項についてみていきます。
過去3年間に受けた場合は対象外
応募する際には、過去3年間に下記の県産業労働部関係補助金等を受けた方は対象外となりますので、よく確認しておいてください。
・おもてなし産業魅力向上支援事業助成金
・ おもてなし商業エリア創出事業【ハード整備等】(個店改修支援分)補助金
・ ふくいの老舗逸品承継発展事業助成金
・ ふくいの老舗企業チャレンジ応援事業助成金
・ ふるさと企業経営承継円滑化事業(事業改善型)助成金
・ ふるさと企業経営承継円滑化事業(事業創継・再編統合型)助成金
・ ふくいの逸品創造ファンド助成金
・ 新分野展開スタートアップ支援事業助成金
・ 創業支援事業助成金
・ U・Iターン移住創業支援事業助成金
・ 繊維企業連携新素材開発等支援事業補助金
・ 将来のふくいを牽引する技術開発支援事業補助金
・ 産学官金連携技術革新推進事業補助金
助成対象とならない経費
下記の経費は、ふくいの老舗逸品承継発展事業助成金の助成対象の経費として含まれませんので、ご注意ください。
・ グループの各企業の間の取引にかかる費用
・ 給排水工事(据付工事を除く)、運搬費、保守管理費、諸経費、不動産の購入費、保証金、敷金、保険料、公租公課(消費税及び地方消費税額を含む)
・ 飲食費、接待費、交際費、遊興、娯楽に要する費用
・ 直接売上や利益につながる費用(ただし、当該事業で作成するパンフレットやホームページ等による宣伝・広告の際に、当該商品の説明や価額、申込方法等を記載することはこの限りではない。)
・産業財産権等取得において特許庁に納付する出願手数料、審査請求料、登録料等
・ フランチャイズ契約、代理店契約等における保証金、加盟金、契約金等
・ 他の国、県、市町の補助金の補助対象となっているもの
・不動産貸付業、駐車場業、または自転車駐車場業にかかる経費
・ その他、公的資金の使途として社会通念上、不適切と判断する経費(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第121号)第2条により定める営業内容等)
自己資金が必要
ふくいの老舗逸品承継発展事業助成金が交付されるのは、事業が完了日の約1ヶ月~1ヶ月半後となります。
助成事業期間中は、自己資金や借入金で必要な経費を調達する必要がありますので、資金繰りをよく確認しておくようにしてください。
事業計画書の提出までの流れと添付書類
ふくいの老舗逸品承継発展事業助成金の事業計画の作成から、提出の流れは下記のようになります。
なお、応募様式は産業支援センターのホームページからダウンロードできますので、ご利用ください。
① 商工会議所、商工会等に相談
② 様式に従って作成(商工団体等の「意見書」
及び関係書類をそろえる)
③ 産業支援センターに提出
添付書類をチェック
補助金の申請には、下記の添付書類が必要となりますので、事前に準備しておいてください。
15つの添付書類となっていますので、忘れている書類がないようにチェックしておきましょう。
①申請者の詳細
②事業実施計画書
③収支予算積算内訳
④中期経営計画
⑤【個人事業者】住民票(応募日以前3カ月以内に発行、マイナンバー不要)
⑥直近三期分の決算書資料(損益計算書、貸借対照表、勘定科目内訳明細書)
※個人事業主の場合は、直近三期分の確定申告書
⑦ 直近の確定申告書別表二(同族会社の判定に関する明細書)※法人のみ
⑧後継者または代表者の年齢がわかる書類(運転免許証写しなど)
⑨創業年が証明できる書類 【業歴50年以上がわかればよい】
⑩県税に滞納がない旨の証明書(応募日以前1カ月以内発行)または県税の納税状況の確認について
⑪会社概要のわかるもの【パンフレット等】
⑫写真(事業所の内外観、主な商品、改装箇所等)
⑬【代表者が満60歳以上の場合】事業承継診断票
⑭【新型コロナウイルスの影響により、前年同月比10%以上の売上減少が生じている場合】新型コロナウイルスの影響による売上減少に係る証明書および根拠書類
【新型コロナウイルスの影響によるサプライチェーンの毀損に対応するための設備投資等に取り組む場合】新型コロナウイルスの影響によるサプライチェーンの毀損への対応について【事業継続計画(BCP)を策定している場合】BCPの写し(計画期間内のものに限る)
【経営革新計画の承認を受けている場合】県からの経営革新計画の承認通知の写し(計画期間内のものに限る)
⑮意見書 商工会議所または商工会等が作成し押印のあるもの
問合せ先
ふくいの老舗逸品承継発展事業助成金の問合せ先は下記の通りとなりますので、ご相談や疑問などがありましたら、問い合わせてみてください。
◆(公財)ふくい産業支援センター
・販路・資金支援部 資金支援グループ
〒910-0296
坂井市丸岡町熊堂3-7-1-16(福井県産業情報センタービル内)
◆TEL 0776-67-7406 FAX 0776-67-7419
◆E-mail shikin-g@fisc.jp
まとめ
福井県の老舗企業の資金調達に活用できる「ふくいの老舗逸品承継発展事業助成金」の概要を詳しく解説すると同時に、応募する際の注意点、採択基準、提出までの流れと添付書類など、詳しくご紹介してきました。
独自の伝統的な技術や製造にかかわる特許などをお持ちの老舗企業は、ぜひ「ふくいの老舗逸品承継発展事業助成金」を返済のいらない資金調達として活かしてみてください。
自己資金だけでは賄うことのできない商品開発や設備を導入などを行い、老舗企業の底力にチャレンジしてみましょう。