
お金を借りたら必ず返す。個人でも企業でもこれは当然です。一般的な資金調達方法である金融機関からの融資であれば、必ず利子を付けて返済しなければなりません。
しかし、利子付きの返済が財務状況を圧迫する事もありますから、出来れば返済不要の資金を調達したい…と考えている経営者の方は少なくないでしょう。
起業時・運転資金の確保・事業拡大時に必要になってくる資金調達ですが、その中でも特にオススメしたい返済不要の資金調達方法をこの記事では5つ紹介していきたいと思います。
それぞれの仕組みやメリットデメリットも合わせて紹介していきますので、返済不要の資金を調達したいと考えている方は是非参考にしてみて下さいね。
ファクタリング
まず最初におすすめしたい返済不要の資金調達方法はファクタリングです。どのような仕組みなのか、メリットデメリットと合わせて紹介していきます。
仕組み
ファクタリングとは企業が保有している売掛金をファクタリング会社が買い取る仕組みの事を指します。保有している売掛金を支払いサイトの期日前に現金化する事が出来ますし、売掛先が倒産した場合の支払い未納リスクを回避する事が出来ます。
当然、銀行融資などとは異なり自社が保有している売掛金をファクタリングに売却して資金を調達している訳ですから返済の必要はありません。
現在ではオンライン完結型で1時間以内に資金を調達できる企業もあります。銀行融資に断られてしまった時や、繋ぎ資金などが早急に必要になった時などにファクタリングは重宝出来ます。
メリット
返済不要の資金調達であるファクタリングのメリットは以下のようなものがあります。
- 売掛先の財務状況が悪くなり倒産した場合でもリスクがない
- 最短当日の即日現金化
- 柔軟な独自審査で通過しやすい
- 信用情報に悪影響を与えない
- 第三者に知られる事がない
大きなメリットは最短当日で即日資金調達が出来るという点でしょう。銀行審査であれば通常最低でも2週間は現金振込までに時間がかかりますが、ファクタリングは柔軟な審査で通過しやすく最短で当日に現金を振り込んでくれます。
審査対象は売掛先がきちんと支払いをしてくれるかどうかだけですので、基本的には申込企業の財務状況は審査対象になりません。赤字経営が続いていたりすると銀行融資は受けられない事が多いのですが、ファクタリングであれば問題なく利用する事が出来るという訳です。
更にファクタリングは融資やビジネスローンなどとは違いますので負債が増えません。売掛金を早期現金化しているだけですから会計上は負債が増える事はなく、ファクタリング利用以降の信用情報においても記録が残らない為に信用力に影響を与えないという訳です。
デメリット
続いてはファクタリングのデメリットについて解説していきたいと思います。
- 売掛債権の範囲内でしか資金調達が出来ない
- 安くない手数料が発生する
- 売掛金の全額を売却する事はできない
ファクタリングは自社が抱える売掛債権を売却して現金化する訳ですから、返済不要ではありますがその売掛債権以上の資金は当然ながら調達する事はできません。
更にファクタリング会社が利益を生み出す構図は手数料なので、安くない手数料が必要になっており、売掛金の全額も売却する事ができなくて掛け目が決められます。
この手数料と掛け目により、自分が思っている以上にファクタリングを利用して得られる現金は少ないという事態は多いに考えられます。
そもそも自社が抱える売掛債権を手数料を差し引いて売却している訳ですから、幾ら資金に困っているからと言って毎回ファクタリングを利用していては必ず破産します。即日現金化という強みを活かして、資金繋ぎなどで活用するのが良いでしょう。
出資
エンジェル投資家や個人投資家など、出資で得た資金も返済不要となっています。特に起業まもない会社で莫大な初期資金が必要場合などはエンジェル投資家に出資してもらうケースも少なくありません。
仕組み
グーグル、ヤフー、フェイスブック、ツイッターなどの世界的有名企業も、創業当時はエンジェル投資家からの出資により資金調達を行っています。
起業して間もない企業や実績を残していない企業は金融機関から融資を受けたくても断られるケースが大半です。例え融資を受ける事が出来たとしても少額で、こちらが求めている希望額の融資は受けられないという事が多く、経営者の多くはここで頭を抱えます。
出資とは『投資家などから会社の株と引き換えに返済義務のない資金提供を受ける事』です。返済義務のない資金を提供してもらう変わりに、こちらは自社の株を投資家の方に上げます。
出資を受けた企業は返済義務のない資金を元手に会社を成長させます。会社が成長していけば株も上がっていきますので、初期から株を抱えている投資家はそれで利益を生み出すという訳です。
メリット
返済義務のない出資による資金調達にはどのようなメリットがあるのでしょうか。簡単に説明していきます。
- 返済義務がない
- 経営などの助言を貰える
- 人脈が広がる
自社株と引き換えに資金提供を受ける事が出来る訳ですから、当然高額な資金を調達できたとしても返済する必要はありません。こちらはその対価に自社株を提供している訳です。基本的にエンジェル投資家は現役の経営者であったりする場合が多いので、経営に関してアドバイスなどの助言を貰う事が出来る時が多いです。
起業をする上で最も大切になってくるであろう知識・経験・ノウハウを学ぶ事が出来るというのは非常に貴重なものであり、エンジェル投資家からしても投資した資金を損はしたくない訳ですから、貴重な経営アドバイスを惜しみなくしてくれるという訳です。
デメリット
出資による資金調達のデメリットはどのようなものがあるのでしょうか?以下で説明していきます。
- 経営に関与される
- 希望に見合った額を調達できるとは限らない
- 見つけるのが大変
返済義務のない資金を調達できるというのは大変な魅力ではありますが、エンジェル投資家と言っても様々なタイプの人が存在していますので、必要以上に経営に関与され口を挟まれる事も多くあります。多額の資金を提供してもらっている場合は抵抗する事も難しいので、自分が思っている通りの経営が出来ないという事が少なくないと言えるでしょう。当然、全く口出しをしてこないタイプの人も多くいます。
エンジェル投資家は簡単に見つけられるものではなく、事業内容や取り扱う商材などに関しては投資家の心を惹き付け、投資する価値があると判断されなければいけませんので、まず見つけるまでに多くの時間と労力が必要になります。
もしも多額の時間を費やして出資をしてくれる投資家を見つけたとしても、その方が自分が求めている出資額を投資してくれるとは限りません。もしも本当に多額の資金を必要としている場合は、エンジェル投資家のような個人投資家ではなく、ベンチャーキャピタルなどの投資企業に相談してみるのが良いと思います。
助成金と補助金
助成金と補助金は厳密に言えば違うものですが、どちらも事業支援の為に返済不要で資金調達を行う事が出来るという点では同じです。仕組みはメリットデメリットについて解説していきます。
仕組み
そもそも助成金と補助金はどのような点で違いがあるのかを仕組みと共に説明していきます。
助成金
一定の条件を満たすことで必ず支給される返済義務のないお金の事。大きく分類すると雇用関係と研究開発関係に分ける事ができ、条件さえ満たしていれば複数の助成金を利用する事もできます。
補助金
期間内に応募して採択されたら支給される返済義務のないお金の事。期間内に書類や必要要件を満たして応募する必要があり、その中の審査対象として可否が決まります。期間内に応募しても審査が通らないと補助金を受ける事は出来ません。
助成金は受給要件さえ満たしていれば申請を行った全ての人が原則的に受け取る事が出来ますが、補助金は違うという特徴があります。
絶対に忘れてはならないのが、どちらも『企業や申請者が支払った後に受け取る事が出来るお金』という点です。雇用の為に助成金を使いたい、設備投資購入の為に補助金を使いたいと思っても、まずは自費で支払い、後で助成金や補助金が支給されます。
更に請求して即日入金される訳ではなく数ヶ月後にまとめて入金されるというのが一般的なので、返済義務のない資金を調達できると言っても、支払いサイクルなどはきちんと計画性を持って利用しなければいけないと言えるでしょう。
メリット
助成金や補助金で資金調達するメリットがどのような点にあるのか、以下で詳しく解説していきます。
- どのように利用するかは自由
- 信頼度が上がり公的融資を受けやすくなる
- 雑収入扱いになる
当然、返済不要という点は大きなメリットですがそれ以外にも大きく分けて3つのメリットがあります。まずは助成金も補助金も何に利用するかは自由であるという点。
設備投資にまわす、融資の返済に充てる、社員へのボーナスに充てる…などなど。何に使っても文句を言われる事は全くありません。更に、助成金を受給できたというのは国に労務環境が整備されているという事を認められたという事になりますので民間の金融機関からの融資が受けやすくなります。
デメリット
続いては助成金や補助金で資金を調達した時のデメリットについて解説していきたいと思います。
- 要件が厳しく受給までに時間がかかる
- 申請期限に1日でも遅れると受給できない
- 整備コストが必要になる場合がある
助成金や補助金は不正受給を防止する為に、年々受給要件が厳しくなっています。受給する為には専門知識が必要になる場合もありますので、専門家への依頼などを考えると整備コストが高くつく可能性があり、更に申請から受給までに時間がかかります。
申請期限が厳格に決まっていて、1日でも遅れたり書類に不備があれば1発アウトで助成金も補助金も利用する事が出来ませんし、労働環境を整備しなければなりませんので、その為の整備コストも必要になってくると言えるでしょう。気軽に利用する事はできないと考えておくと良いかもしれません。
クラウドファンディング
特に最近多く聞くようになってきた印象のあるクラウドファンディング。こちらも返済不要で資金を調達する事が出来る方法となっています。仕組みやメリットデメリットについて解説していきます。
仕組み
クラウドファンディングとはインターネット上で不特定多数から資金を集める仕組みの事です。英語のクラウド(群衆)とファンディング(資金)を組み合わせた言葉で、海外ではモデルケースが17世紀から既にスタートされていたと言われています。
- 購入型
- 寄付型
- 融資型
- 投資型
大きく分けると以上の4つに分類されており、市場規模という点で考えれば融資型クラウドファンディングが最も多くの方が利用している一般的なものです。
クラウドファンディングで資金調達を行う事が出来るサイトへアクセスし、プロジェクトや目標額の設定を行ない申し込み、サイト運営者の方とのやり取りを得て審査が通過したら資金調達を開始する事が出来るようになります。
メリット
クラウドファンディングで資金を調達する事によるメリットを解説していきます。
- 返済義務がない
- 宣伝効果がある
- 信用情報が必要ない
銀行融資や金融機関からの借入でチェックされるのは企業の信用情報ですが、クラウドファンディングでの資金調達では信用情報は全く重要視されません。提出している企画やプロジェクトが面白くて魅力的であれば資金を集める事ができ、魅力的でなければ資金は集まりません。
沢山の方が利用しているクラウドファンディングのサイトであれば企画やプロジェクトの宣伝効果がありますし、集まった資金はそのプロジェクトに利用しなければあんりませんが返済義務はありません。
赤字経営が続いていて融資を受ける事が出来ない企業であっても、熱意があり魅力的な商品の開発やプロジェクトの提案であれば多額の資金を集められる可能性があるというのは大きなメリットであると言えます。要するに群衆に賛同されるか否かが全てという訳ですね。
デメリット
それでは反対にクラウドファンディングによる資金調達にはどのようなデメリットがあるのでしょうか。以下で主なものを説明していきます。
- 入金までに時間がかかる
- 目標金額達成は難しい
大きなデメリットは以上の2点です。
上でも軽く触れましたが、とにかく魅力的かつ群衆の心に刺さるプロジェクト・企画・リターンを提案しなければなりません。会社の信用情報は問われないという点ではメリットとも言えますが、賛同を集める事が出来なければ目標金額を達成する事は非常に困難です。
自社サイトやSNSなどを活用してクラウドファンディングで資金を集めている事を宣伝する必要もありますし、提供された資金は自由に使えるお金ではなく、プロジェクトや企画に利用しなければなりません。その過程を投資してくれた人に報告する義務もあります。
エクイティファイナンス
上場企業による返済不要の資金調達で最もオススメしたいのがエクイティファイナンス(増資)です。しかしメリットデメリットをしっかりと理解し、上手に活用しなければいけないものでもあります。
仕組み
増資を簡単に説明すると資本金を増やすという事です。資本金は原則として株主が出資した金額の事を指しますが、増資する事によりこの資本金を増やすという事になります。
増資による資金調達方法は大きく分けると以下の3つに分類されます。
公募増資
上場企業が株式市場で不特定多数の一般投資家から投資を募るもの。自社株が未公開の会社では通常行う事はできない方法です。
株主割当増資
既に発行済みの自社株を保有する株主に対して、持株割合に応じた新規株を割り当てる形で発行するもの。株主の数が少なく株式増加を望まない会社で利用されるケースが多いです。
第三者割当増資
取引先・役員・従業員など、事業運営に関係する会社や個人に対して新規株を発行して資金を調達するもの。主に中小企業の資金調達で利用されるケースが多いです。
増資額や募集方法などを事前に決め、投資家に対して募集事項を通知します。増資により増えた株を上記のように投資家に発行する事で、返済不要の資金を調達する事が出来るようになるという訳です。
メリット
それでは増資により資金を調達する事のメリットについてまずは説明していきましょう。
- 負債を増やす事なく返済不要の資金を調達できる
- 社会的信用度が工場する
- 経営上の支援者を増やす事が出来る
増資による資金調達は株を発行する事によるものなので、資本金を増やして財務基盤を強化しつつ返済不要の資金を多く集める事が出来ます。
投資家によって回収困難なリスクマネーの投資を受ける事で信用力を向上させることが可能であり、新しい株主を増やす事で経営上の新たな支援者を拡張する事が出来るというメリットがあります。
デメリット
銀行融資とは異なり返済義務がなく、更に財務基盤を強化する事が出来る増資はメリットしかないように感じますが、実はそうではありません。デメリットに気をつけて利用するようにして下さい。
- 経営者の自主性損失リスク
- 適正価格決定の難しさ
- 資本金を増やす事による税金の変更
例えば普通株式によって増資をすると、増資を行う前からの株主は自分の持分割合が下がる事になります。株式会社では持株割合が高ければ高い程、沢山の権利を行使する事が出来るようになりますので、持株割合は非常に重要で神経質にならなければいけない点です。
自分の保有する議決権割合が低下すると、経営者であっても経営の自由度や自主性が失われるというリスクが当然あります。増資により資金が増える事は嬉しいですが、経営者として自由に経営する事が出来なくなる可能性があるというのは考えておかなければなりません。
更に新株を発行する為の適正価格を決定する事が非常に難しいというデメリットもあります。合理的な仮説に基づき理論的な価格を算出する必要があり、第三者や専門家にお願いする事が一般的なので、必要以上に手数料や手間がかかる事があるでしょう。
更に増資により利益が出れば当然の事ながら配当金の支払いを要求されます。資本金が大きくなると法人税の税率が変わりますので、赤字決算であっても税金の支払いが高くなるという可能性も考えられます。資本金が増加する事によるデメリットもきちんと理解しておく必要があるでしょう。
まとめ
企業・事業拡大・運転資金の確保など、会社を経営していく上で必ず必要になってくる資金調達。銀行融資が一般的なものになってしまっていますので、調達できたお金は必ず返済しなければいけないと考えている方が多いと思いますが、実はそんな事はありません。
利子付きで返済する事は事業が安定するまでは難しいですから、スタートアップや起業まもない時、まだ成果を出していない会社は返済不要の資金調達方法でお金を集める事を考えるのも一つの手段としては良いかと思います。
上記で紹介した5つの資金調達方法はどれも返済不要でオススメのものですが、それぞれにメリットがあればデメリットもありますので、自社に最も適している方法を選ぶのが良いでしょう。銀行融資がおりず審査に通過しないという方、金融機関からの融資では想定している資金を集められないという方は、是非上記で紹介した返済不要の資金調達方法を参考にしてみて下さいね!