起業資金や事業拡大のためなど、事業を成功させるためにも資金調達は非常に重要です。どんなに素晴らしいアイディアを持っていたとしても、資金がなければそれをビジネスとして展開していくことは出来ません。
しかし、資金調達も簡単ではありません。資金調達には様々な方法がありますが、必要書類や事業計画書の作成などどうしても手間がかかってしまったり、わからないことも沢山出てきますよね。知り合いに資金調達に詳しい人がいればその人に聞きながら進めて行くことが出来るでしょうが、そんな知り合いがいない人は自分で全て調べて申請を行わなければならず、手間や時間がかかったり、もし万が一書類に不備があった場合にはそれが原因となって審査に落ちてしまう、余計な時間がかかるということも考えられます。
「確実に資金調達を行うためにも、専門家に依頼したい」そんな風に考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、そもそも資金調達の専門家とはどのような人のことを差すのか、資金調達の専門家を選ぶときのポイントや、そもそも融資が難しいと思われるパターンについて詳しく解説していきたいと思います。
資金調達の専門家とは?
そもそも、一体どのような人のことを資金調達の専門家というのでしょう?資金調達の支援には、資格は必要ありません。そのため、どんな人でも行うことが出来ます。
しかしながら多くの人がイメージする資金調達の専門家と言えば「税理士」「会計士」「ファイナンシャルプランナー」「弁護士」「社会保険労務士」ではないでしょうか。これらの専門家の人たちは本業とはまた別に資金調達を手掛けていることもありますが、必ずしも全ての人が資金調達に精通しているという訳ではありません。
実は資金調達を苦手としている専門家を選んでしまったら…そんなふうに思うと心配ですよね。だからこそ、資金調達を専門家に依頼する際には見るべきポイントを知っておくことが大切です。
経営革新等支援機関認定の一覧については、中小企業庁がエクセルを公開しているので、是非お近くの経営革新等支援機関認定一覧をチェックしてみてください。税理士や会計士が多いですが、資金調達に特化した企業も存在しています。
資金調達の専門家選びの7つのポイント
それでは、ここからは資金調達の専門家選びの際、具体的にどのようなポイントを見ればいいのかということを詳しく解説していきたいと思います。
しっかりした信頼出来る専門家に依頼し、スムーズに資金調達を行いましょう。
ポイント1「経営革新等支援機関(認定支援機関)かどうか」
前述の通り、資金調達の支援に資格は必要ありません。そのため、実は数多くの企業や専門家が資金調達の支援を行っています。
その中から本当に信頼出来る資金調達の専門家を選ぶためにまず見るべきなのが「経営革新等支援機関(認定支援機関)」なのかどうかということです。
経営革新等支援機関(認定支援機関)は国が認定する公的な機関であり、中小企業や小さな規模の事業者が安心して経営についての相談を行うことが出来るよう、実務経験や専門知識が一定レベル以上の場合のみ認定されます。
税理士、弁護士、会計士、金融機関、商工会などが経営革新等支援機関として認定を受けています。経営革新等支援機関にも得意分野がそれぞれありますが、この認定を受けているのかどうかというだけでも一つの目安とすることが出来るでしょう。
ポイント2「実績」
依頼する専門家にどの程度の実績があるのかということも必ずチェックしておきたいポイントの一つです。見るのは相談件数ではなく融資実行件数ですが、場合によってはこの融資実行件数についていい加減な数を記載しているという可能性も考えられます。
そのため、実績についてはいくつかの判断基準によって判断する必要があります。
- ホームページがある
- 資金調達専門の社員が3名以上在籍している
- 資金調達支援を月間10件以上行っている
- 複数人の金融機関担当者を知っている
- 具体的な事例を掲載している
全く資金調達の経験が無くこれから始めるという人よりも、今まで何度も融資を成功させてきた専門家に依頼したいですよね。融資を成功させるためには経験が重要です。実績ある専門家に依頼しましょう。専門家の中には、今までに行ってきた融資事例として経営者のインタビューや担当した会社を掲載しているところもあります。
また、専門家にも得意分野があり、小規模な金額の案件が専門家もいれば、主に1億円以上などの大型案件を取り扱っているという専門家も居ます。必要な資金調達額についてもある程度はっきりさせておく必要があるでしょう。
ホームページに資金調達額についての記載がない場合には、無料相談の際に聞いてみましょう。
ポイント3「サポートの範囲」
融資を受けるためには、書類作成・申請・面談など様々な準備が必要です。資金調達の中でも難しかったり、面倒だったりするのがこの部分ですよね。書類1枚作るにしてもあれこれ調べたりしていては手間も時間もかかりますし、審査のための面談についても不安があるでしょう。
資金調達の専門家はこのような事前準備をサポートしてくれるわけですが、専門家によってサポートの範囲が異なります。具体的な例を以下で見てみましょう。
- 専門家A…アドバイスのみ行い、書類作成は自分で行う
- 専門家B…書類の準備・作成はサポートする
- 専門家C…書類の準備・作成をサポートし、面談にも同席する
後述しますが、専門家の中には面談同席するサービスを提供しているところもあります。自分は一体どんな範囲でのサポートを必要としているのかということを意識しながら資金調達の専門家を探すと食い違いも起こらずスムーズな資金調達を行えるはずです。
ポイント4「費用」
専門家に依頼するとなるとやはり気になるのが、一体いくらかかるのか?ということですよね。資金調達を成功させたいからと言って、専門家に依頼する費用があまりにも高額になるのでは困ってしまいます。
基本的にはコストが安い専門家を探すことになる訳ですが、ただコストを下げるだけでなくコストパフォーマンスに注目する必要があります。なぜなら、低コストが実現できたのはサービスの質を落とした結果かもしれないからです。
資金調達の広告などを見たことがあるという方はわかるかもしれませんが、費用に幅を持たせているところには注意が必要です。例えば「費用は借入額の2%~」などと記載している場合、「このケースの場合は5%になります」など、費用が引き上げられてしまう可能性もあるからです。一度いくつかの専門家に無料相談してみるのがいいかもしれません。
また、資金調達を全て丸投げ(代行)する場合と、スポット業務を依頼する場合でも費用は変化します。
資金調達代行(丸投げ)の場合 | |||
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日本政策金融公庫 | 金融機関 | 補助金・助成金 | |
着手金 | 3~5万円 | 2~5万円 | 2~5万円 |
成功報酬 | 調達額の3~5% (高額の場合2~3%) |
調達額の2~5% | 調達額の15~25% |
資金調達のスポット依頼の場合 | ||
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資金調達・書類作成等アドバイス | 書類作成 | |
報酬 | 1時間1万円~ | 3~5万円 |
中にはスポット依頼を行っておらず、資金調達の完全サポートを行い、成功報酬として◯%の費用が発生するという専門家や企業も存在しています。
ポイント5「着手金」
着手金がどのくらいかかるのかということもポイントです。悪質な専門家の場合、融資成功率が低いにも関わらず話を進め、融資は失敗したにも関わらず高額な着手金を請求するということもあるようです。
中には「着手金ナシの完全成功報酬型」の専門家もおり、この場合、万が一融資が成功しなければ1円も支払う必要はありません。完全成功報酬型ということはそれだけ融資を成功させることに自信があるということでもあるため、完全成功報酬型の専門家に依頼するのもオススメです。
ポイント6「顧問契約の有無」
資金調達の顧問契約でよくあるケースとして「融資支援を行った後の顧問契約が必須と言われ、数年の契約をしてしまった」というものがあります。
顧問契約とは?
顧問契約とは、知識や経験などの能力を有した特定の人物(弁護士、会計士、税理士など)とその能力を経営に活用することを目的として締結する契約のこと。
顧問契約は契約内容によって業務の範囲が確定し、法律や規則などが厳密に定める事項はありません。
融資を成功させた上で信頼できる専門家だと自分で判断し、顧問契約を結ぶ場合や本当に必要な場合は全く問題ありませんが、必要ない顧問契約でお金を無駄に使ってしまうのは勿体ないですよね。
中には、融資の成功報酬は安くても、その後の顧問契約金として高額を請求している専門家も存在します。
資金調達を専門家に依頼する際には、顧問契約が必須なのかどうかについても確認しておくといいでしょう。融資支援業務に特化し、顧問契約を行っていない企業や専門家もいます。
ポイント7「面談同席サービス」
融資を受ける際には審査が必要ですが、審査には面談も含まれます。絶対に失敗できない面談ということで、非常に緊張しますよね。面談でいかにしっかりと説明や受け答えすることが出来るかということは、審査に受かるためにも非常に重要なことです。実際、面談で緊張して上手く受け答えが出来なかった、説明出来なかったという方も少なくないようです。
資金調達の専門家の中には、面談に同席するサービスを提供しているところもあります。全ての面談で専門家の同席が可能というわけではありませんが、同席可能な面談の場合、専門家に同席してもらうことで面談の不安を解消することも出来ます。
オプションサービスのようなものになりますが、どうしても1人では面談出来そうにないという人はこのような面談同席サービスを利用してみるのもいいかもしれません。
融資が難しい4つのケース
資金調達を専門家を選ぶ前に「そもそも自分は融資を受けられる可能性があるのか?」ということについて知っておきましょう。せっかく専門家に依頼しても手間や時間やお金だけかかって、融資が失敗してしまったのでは意味がありません。
そのためにも、一体どのような場合は融資が難しくなるのかということについて知っておく必要があります。これから詳しく解説していきますので、是非参考にしてみてください。
融資が難しいケースその1「自己資金が極端に少ない」
融資を希望している額に対して極端に自己資金が少ない場合、希望額から減額されての融資になったり、そもそも融資自体が出来ないという可能性があります。
例えば融資希望額「500万円」という場合…
- 自己資金が250万円…融資を受けられる可能性がある
- 自己資金が20万円…融資を受けられない可能性が高い(もしくは減額)
創業融資においては自己資金が重要となるため覚えておきましょう。
なお、自己資金は少なかったものの、その他の実績を上手くアピールしたり活かすことが出来たため、減額にはなったものの融資を受けられたケースもあります。
融資が難しいケースその2「自己資金のみで開業したものの大赤字」
最も融資が難しいと言われるのがこのケースで、開業は自己資金で何とかしたが、大赤字になってしまったというものです。開業して数ヶ月になるが、赤字の連続でついにどうしようもなくなってしまい、融資を申し込むという状況です。
このケースでは、はっきりと「経営に失敗している」という結果が出てしまっています。開業前が「ゼロ」の状態なら、この状況は「マイナス」であり、融資は非常に難しくなるでしょう。
ただし、例えばフランチャイズ加盟など、何か大変革を起こすことが前提となっていれば融資を受けることが出来る場合もあります。
融資が難しいケースその3「開業する業種の経験がない・少ない」
開業する業種の経験の有無は創業融資の審査において重要視されている項目の一つです。雇用形態が正社員なのか、アルバイトなのかということも影響しているかもしれません。「全く経験がないよりも、経験があった方が事業に成功する確率が高くなる」という考え方があるのでしょう。
開業する業種の経験がない・極端に少ないという場合は、その業種での経験が豊富な人を一緒に事業を行うパートナーとして迎え、審査の際にアピールするなども審査を通りやすくするためのポイントです。
融資が難しいケースその4「開業後、確定申告を行っていない」
確定申告をしていなくても融資を受けられる場合がありますが、印象はどうしても悪くなります。確定申告をしていなくても融資可能なケースとしては、「年収20万円以下の場合は確定申告しなくても良い」など、国が認めているケースがあります。
しかし、税金を払いたくないから確定申告をしなかったという場合には融資は難しくなります。日本政策金融公庫の場合、国のお金を融資している訳なので、税金を逃れている人に対して融資してくれるはずがありませんよね。
開業後に使う融資制度では確定申告書が必要となりますので、確定申告を行っていないと利用可能な融資制度が無くなります。国が認めるケース以外を除いて、必ず確定申告書は行うようにしましょう。
なお、確定申告をしていなかったからといって、この先ずっと融資を受けることが出来なくなるというわけではありません。融資で必要な確定申告書は3期分なので、今後しっかりと確定申告を行えば、3期経過後からは融資申し込みが可能になります。
まとめ
スムーズに資金調達を行うためにも、専門家に依頼する時にはいくつかのポイントをチェックする必要があります。どのような業務を専門家に依頼したいのかなどについてもはっきりさせておくようにしましょう。
- 資金調達を丸投げしたいのか(代行)、書類作成などについてアドバイスしてほしいのか(スポット業務)
- 希望の資金調達額はいくらか
- 日本政策金融公庫、金融機関、補助金・助成金など、どのような手段で資金調達したいのか
などは専門家に相談する前に予め考えておくといいでしょう。
また、そもそも融資が難しいというケースも存在します。自分がもし融資が難しいケースに当てはまっている場合、専門家に依頼しても融資失敗する可能性もありますので、まずは状況を改善したり、専門家に相談するならそれについても最初に話しておく必要があるでしょう。