資金調達を成功させる事業計画書の作り方と5つのチェックポイント

資金調達

資金調達を成功させる為には質の高い事業計画書を用意する必要があります。日本政策金融公庫、公的融資、銀行融資、補助金、助成金、ベンチャーキャピタル…これらの資金調達に必要不可欠なものが事業計画書です。

優れた事業計画書は資金調達を可能にします。この記事では事業計画書の必要性、作成する為に必要となる基礎知識から、資金調達を成功に導く為のポイントを解説していきます。

初の資金調達で事業計画書を用意しなければいけないという方だけでなく、今まで何度か審査を受けてみたけど通過しないという方などは、より良い事業計画書を作る為にこの記事を必ずチェックするようにして下さい。

事業計画書の必要性

銀行融資やベンチャーキャピタルなど、様々な資金調達の時に事業計画書は必要になります。そもそもなぜ事業計画書を用意する必要があるのでしょうか?その必要性について説明していきます。

他人に事業の魅力を伝える為

事業を始めたり拡大する為には資金は人材が必ず必要になります。全てを一人で賄い、達成していくというのは不可能ですよね。金融機関に融資を申し込んだり、一緒に働いてくれる仲間を募ったりして事業を始めたり拡大していく訳ですが、その時に交渉相手に対して事業内容の魅力をしっかりと説明して信頼を得る事はとても重要です。

資金調達だけでなく人材確保に置いてもこれは重要なポイントで、例えば給料が良い、休みがしっかり取れる、こんな人が働いているなど、自社の魅力を他人に伝える事で多くの人が集まり、優秀な人材を確保する事が出来ます。

資金調達も言ってみれば優秀な人材を確保する事と変わりません。融資担当者に「この人がこの事業をするのであれば安心」と思ってもらえる事業計画書でなければ融資を通過する事はできません。自社事業をしっかりと伝える事、これが事業計画書の最も重要な所です。

社員の目標を明確にする為

事業計画書は資金調達を行う為だけに作成するものではありません。事業計画書を作るメリットの1つに社員の目標をいしっかりと決めてモチベーションを上げるというものがあります。

多くの中小企業の経営者は社員とのコミュニケーションが不足している場合が多く、社員が経営者に対して不満を抱えている事が多くあります。社員のエネルギーを引き出すには命令を上から怒鳴り続けるよりも、社員に何をなすべきか自分で考えさせて、その進捗を管理する方が社員の力を遥かに引き出す事が可能です。

社員の目標意識の改革は中小企業であれば欠かす事が出来ないもので、社員が頑張らなければ企業の売上は伸びませんから当然と言えば当然ですが、事業計画書作成を通じて、具体的な目標管理を導入するというメリットもあります。

落とし穴や矛盾点を発見する為

そもそも事業計画書というのは、事業のコンセプトを仮説検証して説明するものです。「こうなっていくはずだ」という想いの下で作るのが一般的ですから、どうしても楽観論に陥りがちで客観的な視点が欠けてしまうケースが非常に多いのです。

予想売上額と現実の売上額が全く違う、事業計画書で想像していた以上に売上が伸びなくて困っているという事は資金調達をしてから考えられる最も多いケースです。

自分のビジネスプランを客観的に見直すことが出来るというのも事業計画書の多きなメリットです。頭の中のアイディアを紙上で整理する事で落とし穴や矛盾を発見する事ができ、融資を受ける際に担当者の方に指摘させることで気付く事もあるでしょう。起業前に作成しておく事で事業が計画通りに進んでいるかどうかもチェックする事が出来ます

資金調達を成功させる事業計画書の作り方

資金調達に必要不可欠な事業計画書の作り方や構成を説明していきます。基本的には決まった形や様式はありませんが、必ず盛り込まなければいけない基本項目は以下の通りです。

  1. 企業概要
  2. 代表者略歴
  3. 事業内容
  4. 販売内容
  5. ビジョン・理念・目的
  6. 自社の強みや特徴
  7. 市場分析
  8. 競合分析
  9. 現状の課題と対策
  10. プロモーション戦略
  11. 営業戦略
  12. 売上予測
  13. 実行スケジュール
  14. 資金計画

以下で特に重要な部分の作り方を解説していきます。

代表者略歴

企業概要は会社の説明なので、社名・設立年月日・住所・資本金・役員構成などを箇条書きに書く程度で大丈夫です。重要なのは代表者略歴で、絶対に書くべき事としては…

  • 今まで携わってきた事業経験と内容
  • その事業で任されていた役割
  • その事業で達成した事がある実績

要するに「今まで何をしてきたのか」という点をきちんと説明する必要があります。

起業の場合は特に代表者の実力や実績で資金調達をするかどうかを判断するケースが多いですから、当然何も実績がないよりは、過去に1度会社経営に成功しているという方や、大企業に勤めていて実績を残している人の方が資金調達は成功しやすいと言えるでしょう。

ビジョン・理念・目的

事業内容で抑えるべき点は「何をやり、誰に、どうやって売るのか」を明確にする事です。ターゲット層が決まっていないとPRも出来ませんので、この点に関しては明確にしておく事をオススメします。

しかし色々なサービスが多様化しているこの世の中で、唯一無二のサービスや商品というのはほぼないと言っても過言ではありません。金融機関では意外なビジネスや商品ではなく、理念やビジョンに共感してくれる事が多いので、

  • なぜこの事業をやりたいのか
  • この事業を通じて社会に何を提供したいのか

これらのビジョン・理念・目的を明確にし情熱を持ってアピールする事の方が事業内容を明確にする事よりも重要です。自社の未来をどれだけアピールできるか勝負という事になりますね。

市場分析

金融機関やベンチャーキャピタルなどは、衰退していく事が予想される市場よりも、これから成長していく可能性の高い市場に進出する会社に資金を融資します。

つまり、市場規模が大きい事と市場規模が伸びている傾向にある事をしっかりとアピールし、その市場の中で競合他社にどのような点で勝っていて、どのような戦略で勝利していくかをきちんとアピールしていく必要があるという事になります。

飲食店や介護施設などの地域が限定されている商売の場合は、対象地域の人口・性別・年齢などの市場分析が重要になってきます。きちんと収集したデータを提出するようにしましょう。

競合分析

ビジネスはシェアの奪い合いです。競合他社にどのように勝っていくのかを具体的に事業計画書で説明しなければ融資や出資を成功に導くことは出来ません。

営業・商品・サービス・価格、どこで競合に対抗していくのか、どこが競合よりも勝っているのか、競合分析をきちんと行い、勝ちへのプロセスを明確にする必要があります。

競合分析の項目では『競合の情報分析』と『競合の差別化戦略』の両方をセットで提出する必要があります。机上の空論ではなく、具体的な戦略を必ず練るようにしましょう。

資金計画

調達した資金をどのように使うのか、どのようなスケジュールで幾ら使うのかも具体的に記載しておく必要があります。

  • 何に幾ら使うのか
  • その資金で売上はどれ位上がるのか?

資金使途は融資担当者や投資家は必ず重要視してチェックするポイントなので、具体的な使途は必ず説明できるようにしておく必要があります。

実行スケジュールに関しても具体的にしていきましょう。これは資金使途と合わせて説明するケースが多いので、ここで人を集めて、ここで広告を打って、ここで仕入れて等、こちらも机上の空論ではなく具体的なスケジュールを提出します。

事業計画書で最も重要なポイント

事業計画書を作成する必要性と作り方について上記で説明してきましたが、ここからは資金調達を成功させる為に必要な事業計画書において、最も重要視すべきポイントについて解説していきます。

以下で説明するポイントをしっかりと抑えた事業計画書を作成する事で、資金調達を成功に導く可能性を大幅にアップさせる事が可能です。

経営者の経歴と実績

融資担当者や投資家が最も重要視しているのは経営者です。決して良い人かどうかの人柄を見ている訳ではなく、会社経営を行っていく上でこの経営者はビジネスを成功に導ける人材であるかどうかをチェックしています。

会社経営は同じビジネスモデルで同じ事業であっても、経営者の才覚・経験値・実績などで大きく結果が変わります。融資や投資を成功させる為には経営者の手腕チェックは必要不可欠な要素であると言えるのです。

融資担当者や投資家がチェックする点としては、過去にその事業に携わった事があるかどうかという点が最も大きいです。起業しようと考えているビジネスに関わりが深い経歴を持っていて、そこで実績を上げているかどうかは重要視するポイントであるという事はしっかりと覚えておきましょう。

事業計画との整合性

資金使途が明確に出来ていない経営者に対しては、お金に対してルーズな経営を行っている経営者という印象を与えてしまう為に信頼性が落ち、融資にも通過しなくなってしまうかもしれません。融資が通過しない中小企業の経営者が考えている事としては、

借りられるのなら万が一の事を考えて沢山借りておきたい

こう考えている中小企業の経営者はとても多く、使途を明確にして考えていない為に融資担当者からすると信頼できる経営者とは思われずに審査も通過しません。

○○に○○万円必要だから○○万円を調達したい。○○により発生した売上で○○までに返済できる見込みがある。

このように、資金使途を明確にしていて返済までの道筋が事業計画と整合性が取れている場合は資金調達は成功しやすいと言えるでしょう。事業計画との整合性、机上の空論ではなく現実的かどうかは必ずチェックされる点であるという事は覚えておきましょう。

明瞭・簡潔・平易

事業計画書の作成を続けていく上で最も注意しなければいけない点は、『分かりやすく誰でも理解できるようにする』という事です。

内容が全く意味不明なプランに賛同を示す人はいるはずがありませんし、相手にきちんとコチラの意図や企業内容を伝える事が出来なければ融資や出資は受ける事が出来ませんよね。

難解は専門用語・数字の羅列・外国語表記の連発などは逆効果で、長すぎる前置き・参考資料・データが多いという事も逆効果です。

自分は細かく完璧にしたつもりであっても、意味が分からない事業計画に賛同されることはありませんので、誰でも分かるように明瞭簡潔を心がけるのが良いと思います。相手を説得させる為に裏づけデータを用意しておく事は重要ですが、乱雑にならないように注意するのが良いでしょう。

要約を設ける事

これから立ち上げようとしている事業や、事業拡大の為の資金調達の場合は、相当な思い入れや熱意があるでしょうから、ついつい相手を説得する時の説明は長くなってしまい、事業計画書も分厚く難解なものになってしまうもの。

自分は何十分でも何時間でも語る事が出来るかもしれませんが、融資担当者や投資家の集中力はそんなに長時間は続きません。自分の事業の要約だけでも伝えられるように、各項目で1分で理解できるサマリーを設けて置く事をオススメします。

長くなってしまう事業計画書であっても、最低限サマリー(要約)だけ読めば理解できるようにしておきましょう。これは上記で紹介した明瞭簡潔つ通じる部分がありますが、とにかく短時間で相手の心に刺さるようにしなければなりません。

綺麗なロジックよりも客観的なファクトとテスト

ある程度の事業計画書のロジックは必要になりますが、完璧すぎて綺麗なロジックは所詮は机上の話です。まだ実際に書かれている事は行われていない訳ですから、綺麗で完璧なロジックだけでは相手の心に刺さる事はありません。

「こうしていきたい」という綺麗なロジックよりも、「客観的なファクトとテストの結果、こうなっていく可能性が高い」という事業計画書の方が相手の心を刺すことが出来ます。事実は仮説よりも強く、動かしようのないデータに基づいた客観的事実を取り入れる事が重要です。完璧なロジックを語るよりもそちらを重要視するようにしましょう。

まとめ

資金調達を成功させる為に絶対に欠かす事が出来ない事業計画書の必要性、作り方、必ずチェックすべきポイントについて解説してきましたが参考になりましたでしょうか。

銀行融資、ベンチャーキャピタル等からの出資、日本政策金融公庫の利用など、資金調達を行う上で事業計画書を作成する事は必須です。明瞭簡潔で魅力的な事業計画書は資金調達を成功させる確率をあげるだけでなく、働く社員や自社の矛盾点を明確化するメリットもありますので、必ず力をいれて作成するようにして下さい。

どれだけ魅力的で画期的なビジネスを行っている企業であっても、魅力的な事業計画書を作成しなければ資金調達は成功しません。その点を経営者の方は必ず肝に銘じ、より良い事業計画書を作成していくようにしましょう!

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