
起業者や経営者が「起業したい」と思った時に最初にぶつかる壁であり、そして後の事業展開にも密接に関わっていくっことになるのが創業資金です。
せっかくなんとかしてお金を集めて起業したとしても創業資金を十分用意していなければ資金不足に陥ってしまい、思うように事業を展開出来なくなり、最悪の場合そのまま事業失敗ということも…。
今、いわゆる「成功している」と言われている起業家や経営者の人たちも昔はこのような失敗を経験したことがあるでしょうし、失敗は失敗で経験として活かすことが出来ますが、今これから起業を考えているなら成功させることを考えて行動しなければいけません。だからこそしっかりと資金調達を行うことが大切なのです。
創業後は大体、想定していた以上にお金がかかるものです。そんな時もギリギリではなく、余裕を持って資金を調達しておけばその分で補填することも出来るので安心ですよね。
この記事では起業のための資金調達方法について詳しく解説していきます。
INDEX
起業のための9つの資金調達方法
創業時とは、起業前から開業後2年以内ほどのことを指します。創業時は事業を開始したばかりのためビジネスモデルもまだしっかりと確立されておらず、知名度も無いためほとんど利益がなく赤字状態になるでしょう。そこから徐々に利益を上げていくわけですが、創業したばかりの企業は体力がないため安定した利益を上げるまでにバタバタと力尽きていってしまうところが非常に多いです。
このように、然るべきタイミングで会社や事業拡大に必要な資金調達を行うことは、会社の命運を左右する大変重要なことなのです。
とはいえ、今までいくつも起業や経営を成功させてきた歴戦の起業家や経営者なら何の問題もないでしょうが、これから初めて起業するという人の場合は信用もないためなかなか資金を集めることが難しいというのが現実です。
1つの資金調達方法で十分な資金を得ることが難しい場合もあるので、いくつかの方法で資金調達を行うなど工夫をしてみましょう。
1:ベンチャーキャピタル(VC)
ベンチャーキャピタルとは、将来的に大きく成長しそうなベンチャー企業やスタートアップ企業に対して出資を行い、大きなリターンを狙う投資ファンドのことです。
ベンチャー企業の多くはこのベンチャーキャピタルからの出資を受けています。ただし、ベンチャーキャピタルはどんな企業にも出資を行うという訳ではありません。
ベンチャーキャピタルで運用される資金は複数の投資家たちから集めたものです。そのため、ベンチャーキャピタルにはその資金を運用によって増やし、出た利益を投資家たちに分配しなければいけません。つまり、ベンチャーキャピタルにとって重要なのは「利益」なのです。
だからこそ、ベンチャーキャピタルが出資を行うのは「成長が見込めるベンチャー企業」のみです。それを判断するための審査に通らなければ出資を受けることは出来ません。ただし、出資が決定すれば多額の資金調達が出来るだけでなく今までいくつもの企業を成功へ導いてきた経験豊富なベンチャーキャピタルのバックアップを受けることが出来るなどメリットは大きいです。
しかし、メリットだけでなく注意点もあります。利益を追求しているベンチャーキャピタルはIPO(株式公開)やM&A(事業売却)によるイグジットを目指していることがほとんどであり、時には利益を出すために強引な手段に出ることもあります。
あれこれと口出しされてしまい思うような経営が出来なくなってしまったり、株式の保有割当によっては経営権を握られてしまう可能性もあります。
【メリット】
・多額の資金調達を受けることがで出来る
・経験豊富なベンチャーキャピタルの支援を受けることが出来る(経営アドバイスや営業先、事業提携先の紹介など)
・ベンチャーキャピタルから出資を受けることで信用力が向上する
【デメリット】
・ベンチャーキャピタルが経営に関わるようになる
・事業の成長性によっては早期回収の可能性も
・株式公開を目指す場合大きな負担がかかる
・資金調達までに時間がかかる
2:エンジェル投資家
エンジェル投資家とは、個人でベンチャー企業やスタートアップ企業に出資を行なっている個人投資家のことです。ベンチャーキャピタルは複数投資家から集めたお金を出資していましたが、エンジェル投資家は自分のお金で出資を行うため、周りの人の意見を気にせずに自分の好きなように出資が可能です。
ベンチャーキャピタルの場合、出資するかどうかを決めるために何人もの人の意見を聞いて検討する必要がありますが、エンジェル投資家の場合はその投資家が「出資する」と言えばそれで出資決定なので、審査の時間がない分、資金調達スピードは早くなります。ただし、個人での出資となるのでベンチャーキャピタルに比べると出資額は少額となります。
ベンチャーキャピタルに出資を断られてしまった場合でも、エンジェル投資家に事業アイディアを売り込んで「面白い」と思ってもらえれば出資を受けられる可能性は十分にあります。
また、エンジェル投資家はその人自身が経験豊富な起業家や経営者であるという人も多く、経営についての有益なアドバイスを受けることが出来たり、事業提携先や営業先など様々なネットワークの紹介を受けることが出来るでしょう。
エンジェル投資家には経営に口出ししてくる人もいれば、たまに経営状況を確認したりアドバイスを行うだけで後は全て起業家に任せるという方針の人もおり、人それぞれです。長く付き合っていくことが予想されるため資金提供を行なってくれるかどうか以上に、その人の人柄や自分との相性が重要となります。
【メリット】
・出資決定までが早い
・エンジェル投資家からの支援を受けることが出来る(経営アドバイスや営業先、事業提携先の紹介など)
・エンジェル投資家から出資を受けることで信用力が向上する
【デメリット】
・経営に関与してくる場合がある
・出資額は少額になる
3:公的融資
ベンチャー企業やスタートアップ企業の場合、信用力が低いため銀行からの借り入れは難しいことがほとんどです。そこでオススメしたいのが日本政策金融公庫による「新創業融資制度」などの融資制度です。公的融資には以下のようなものがあります。
- 日本政策金融公庫
- 商工会組合中央金庫
- 地方公共団体の制度融資など
新創業融資制度の場合、借り入れ上限は自己資金の10倍までで、最大で3000万円までです。自己資金が一切無いという場合には借り入れが難しくなるためある程度の自己資金は確保しておくようにしましょう。
日本政策金融公庫は零細企業や個人事業主の融資に力を入れている機関のため、銀行に融資を断れてしまった場合でも利用出来る可能性があります。
ただし、これらの創業融資には申請のための必要書類が多く、それらを揃えて融資成立まではおよそ2~3ヶ月ほどかかります。
【メリット】
・低金利
・無担保・無保証人で借り入れ可能
・銀行に融資に比べ受けやすい
・公的融資を受けることで信用力が向上する
【デメリット】
・新創業融資制度の場合は創業資金の10分の1以上の自己資金が必要
・信用情報にキズがある場合、融資を受けにくくなる
・資金調達までに時間がかかる
・必要書類が多く手続きが大変
4:信用保証付き融資
銀行は起業したばかりのベンチャー起業やスタートアップ企業には融資を行なってくれないことがほとんどですが、信用保証協会に保証人になってもらう「信用保証付き融資」ならば融資が受けられる場合もあります。
起業家向けの制度としては、保証限度額1500万円の「創業等関連保証」や保証限度額2000万円の「創業関連保証」などがあります。大手銀行から融資を受けることは難しいと考えられるため、まずは地方銀行から相談してみましょう。
【メリット】
・低金利
・他のところで融資を断られてしまった場合でも借り入れ出来る可能性がある
【デメリット】
・保証料がかかる
・資金調達までに時間がかかる
・日本政策金融公庫に比べて審査が厳しい
5:補助金・助成金
融資と異なり、補助金や助成金は返済の必要がありません。起業前や直後でも申請が可能なものもあります。
- 創業補助金
- キャリアアップ助成金
- 小規模事業者持続化補助金
- 女性起業家向けの支援制度
- 再就職手当
ここでは起業家を対象にした以上のような補助金・助成金について解説していきます。
【メリット】
・返還の必要がない
【デメリット】
・審査に落ちれば資金調達が出来ない
・資金調達までに時間がかかる
・必要書類が多く手続きが大変
創業補助金
最も多く利用されているのがこの創業補助金という制度です。起業を予定している人を対象に、50万円から200万円の範囲で補助金が給付されます。
ただし、補助金は後払いとなること、応募総数の2~3割ほどしか採択されないことを考えると確実な資金調達方法とは言えません。他の方法で十分な資金調達を行なった上で申請するようにしましょう。
なお、創業補助金は公募期間が限られるためタイミングに注意してください。
キャリアアップ助成金
助成金は補助金に比べて審査ハードルが低いため給付を受けやすくなっています。
雇用促進を目的としたキャリアアップ助成金は条件を満たすことで必ず給付を受けることが可能ですが、そのためには起業家が人を雇用し、職業訓練を行わせたりする必要があり、助成金の使用目的を明確にするためにキャリアアップ計画を提出しなければいけません。
キャリアアップ助成金は目的によって異なる7つのコースがあります。
- 正社員化コース
- 賃金規定等改定コース
- 健康診断制度コース
- 賃金規定等共通化コース
- 諸手当制度共通化コース
- 選択的適用拡大導入時処遇改善コース
- 短時間労働者労働時間延長コース
小規模事業者持続化補助金
事業主や役員を除いた従業員が5~20人の小規模事業者を対象とした制度で、50万円の補助金が給付されますが、使用目的は販路開拓のための開発費や広報費などの経費に限られます。
開業届を提出している、商工会もしくは商工会議所の支援を受けていることが申請の条件で、ほとんどの起業家が対象となる申請条件が比較的緩い補助金です。
補助金を受け取った後は事務局などによる調査が入ることがあるため、経費に関する書類の提示はスムーズに行えるようにしておきましょう。
女性起業家向けの支援制度
女性が社会でもっと活躍できるように、国の方針として様々な取り組みが行われています。その中の一つが女性起業家向けの支援制度です。融資制度の他、補助金や助成金もあります。
世界中でも女性起業家の活躍が報じられていますが、日本でも現在女性起業家が増え続けているのです。起業を考えている女性はこのような女性起業家向けの支援制度を利用してみるのもオススメです。
各地の自治体によって様々な制度があるため、お住まいの住所地の自治体の制度をチェックしてみてください。以下でいくつかの制度をご紹介します。
- 女性・若者・シニア創業サポート事業(東京都)…1500万円以内の融資や経営サポート
- 女性おうえん資金(横浜市)…市内で創業開始した女性に対し3500万円を限度に融資を実施
- 女性起業家支援貸付(埼玉県)…1500万円以内の融資を実施
- 女性・若者・障害者創業支援融資(茨城県)…3500万円を限度に最長7年の長期融資を実施
再就職手当
失業後、再就職が決まった際に祝い金が給付されるという再就職手当は起業も対象です。ハローワークで離職票を提示し、失業認定を受ける必要があり、その後で講習や説明会を受け、起業予定を伝えると再就職手当についての案内を貰うことが出来ます。
そこから起業に向けての準備を進め、ハローワークに必要な書類を提出し審査に通されば再就職手当の給付を受けることが可能です。
6:クラウドファンディング
インターネット上で不特定多数の人から少額の出資を募るというのがクラウドファンディングです。今はクラウドファンディングでの資金調達を行う人もかなり増えてきていますよね。
実績や自己資金が全く無いという場合でも何のリスクもなく一から始めることが出来るため、気軽に行える資金調達方法と言えます。
目標金額を達成できなければ不成立となり、1円も調達することが出来ませんが事業アイディアが多くの人の興味を集めることが出来ればあっという間に資金が集まることもあります。
プロジェクトを成功させるためにはマーケティングのセンスや多くの人にプロジェクトを知ってもらう必要があるなど、ある程度計画や戦略を練る必要があります。
【メリット】
・事業の宣伝になる
・手軽に行える
・多くの資金調達が出来る場合がある
【デメリット】
・資金が集まらない可能性もある
・資金調達までに時間がかかる
7:ビジネスコンテスト
ビジネスコンテストに参加して入賞すれば、賞金という形で資金を調達することも可能です。
賞金額は平均して数十万円から100万円と多額の資金調達が出来るわけではありませんが、他のライバルを意識することにつながるだけでなく、自分のビジネスプランを順位という基準で改めて評価することが出来る重要な機会でもあります
自分ではいくら優れたビジネスプランだと思っていても、他人がどう思うかはわかりません。事業を成功に導くためにも多くの意見を聞いておくことは大切です。
【メリット】
・返済の必要がない
・他社について知ることが出来る
・ビジネスプランを他人の目から評価出来る
・ベンチャーキャピタルや投資家にアピール出来る
【デメリット】
・参加準備が必要
・確実に資金調達が行える訳ではない
8:自己資金
十分な自己資金を創業資金に充てることが出来るならばそれに越したことはありません。
融資の場合、審査に時間がかかりますし、受かったとしても返済しなければいけないだけでなく金利がかかります。また、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家から出資を受けた場合のように経営に口出しされたり、プレッシャーをかけられることもありません。
自己資金を創業資金に充てると考えた場合、事業によっても異なりますが数百万円から1000万円程度用意しておくといいでしょう。最低でも100万円の自己資金は必要です。
一定額以上の自己資金があれば公的融資や銀行融資の審査にも通りやすくなるため、融資を考えているという場合にも自己資金は重要です。
【メリット】
・返済の必要がない
・経営に口出しされることがない
・公的融資や銀行融資の審査に通りやすくなる
【デメリット】
・長期的に貯金を行う必要がある
9:家族や親族、知人
家族や親族、知人や友人など既に信頼関係が出来ている人からお金を借りるという方法もあります。この方法の場合、審査も必要なくその人がお金を貸してもいいと言ってくれれば資金を調達することが可能となります。多くの場合で利息なしで借りることが出来るでしょう。
ただし、信頼関係にヒビが入ってしまったり、場合によっては訴訟など大きなトラブルに発展してしまう可能性もあります。最悪の場合、絶縁もあり得るかもしれません。もしどうしても借りなければいけない時には必ず返済するのはもちろんのこと、借用書もきちんと書いておくことをオススメします。
【メリット】
・審査が必要ない
・利息がかからない場合がほとんど
【デメリット】
・信頼関係にヒビが入る
・訴訟など大きなトラブルに発展する可能性がある
まとめ
起業の際の資金調達方法にはいくつもの方法があります。しかし、基本的には審査のための期間や必要書類を用意するための期間など、実際に資金を調達するまでには時間がかかるということがほとんどです。
だからこそ創業資金にはある程度余裕を持っておかないと、資金繰りに苦しみ廃業に追い込まれてしまうという場合も少なくありません。創業を考えているならばしっかりと計画的に資金調達を行い、創業への準備を進めていくようにしましょう。