大手メガバンクや地域に根付いた多くの地方銀行では各社ファクタリングサービスを提供しています。資金繰りでファクタリングサービスを始めて利用しようと考えた時、少しでも安心感のある銀行系ファクタリング会社を利用しようと考えるのは当然の事だと思います。
民間会社とは安心感が違いますし大手メガバンク直系になれば資金力が桁違いですからその分手数料を抑える事も可能です。しかし銀行系ファクタリング会社だから民間系よりも安心と思い込んで利用すると落とし穴にはまってしまう可能性があります。なぜなら銀行系ファクタリング会社には民間系とは異なる大きなデメリットがあるからです。
民間系と銀行系どちらのファクタリングサービスを利用するのが良いのかを両方のメリットとデメリットを理解しながら選択していくのが良いでしょう。この記事では両方を分かりやすく解説していきたいと思います。
主な銀行直系ファクタリング会社
アメリカで発祥したファクタリング会社は銀行系と民間系を合わせると全部で100社以上がサービスを提供していると言われています。ファクタリングも融資と同様で、銀行母体である方が調達コストは安いという構図になっています。以下で銀行系ファクタリング会社の中でも特に名前が挙がり力をいれている銀行を20社紹介していきます。
都市銀行
ファクタリングサービスに力を入れている都市銀行系列の銀行系ファクタリング会社は以下の5社になります。
三菱UFJ銀行⇒三菱UFJファクター |
みずほ銀行⇒みずほファクター |
三井住友銀行⇒SMBCファイナンス |
三井住友系列⇒背ディナコンシューマーファクタリング |
りそな銀行⇒りそな決済サービス株式会社 |
特に注目すべきは、三菱・みずほ・三井の大手メガバンクが参入しているという点です。資金力が桁違いで、特にみずほファクターは数千万円~数億円の取り引きを行う事もできる大手企業向けのファクタリング会社として高い知名度を誇っています。
地方銀行
大手メガバンクや都市銀行だけでなく、地域に根付いた地方銀行でもファクタリングサービスを提供している銀行は多く存在しています。特に力を入れている地方銀行を以下で紹介していきます。
横浜銀行、福岡銀行、名古屋銀行、スルガ銀行、足利銀行、武蔵野銀行、山口銀行、山梨中央銀行、群馬銀行、山形銀行、七十七銀行、八十二銀行、第四銀行、島根銀行、大東銀行、富山第一銀行、大三銀行、八千代銀行、トマト銀行、大正銀行、栃木銀行、静岡中央銀行、愛知銀行、中央銀行、大光銀行、京葉銀行、関西アーバン銀行、西京銀行、みなと銀行、東京スター銀行、東和銀行、長野銀行、東日本銀行 |
地方銀行の中で特に良く名前が挙がるファクタリングサービスを提供している銀行は以上になります。地方銀行の場合は都市銀行とは違い、元々企業で取り引きがあった場合はファクタリング手数料が安くなったりと言った交渉がしやすいと言われています。
民間系とはここまで違う!銀行系ファクタリング会社の利点
大手メガバンクから地方銀行まで、数多くの企業が参入しているファクタリングサービス。銀行系ファクタリング会社とは銀行の資本100%のファクタリング会社の事を指します。
- 手数料が安い
- 信頼性が高い
- 豊富な提供サービス
以上3点が銀行系ファクタリング会社が民間系よりも優れている点です。それぞれどのような事なのかを民間系と比較しながら見てチェックしていきましょう。
銀行系は手数料が安い
大手メガバンクであれば資金力が民間企業とは桁違いですから、その分で調達コストを安く抑える事が出来ます。ファクタリングも融資と同じ構図になっていて、銀行系は大手メガバンクになるほど手数料が安いです。
メガバンク<都市銀行<信用金庫<ノンバンク<民間企業
民間企業が最も手数料が高く、メガバンクが最もファクタリング手数料が安いです。これは融資でも同じ事がいえますが、会社の規模や資金力が全く違いますからこのような構図に必ずなるという訳です。
ちなみにファクタリング手数料は3社間で大体1%~10%になると言われていて、この手数料は会社の年商が高ければ高い程安くなる傾向にあると言われています。つまり年商が民間企業よりも多いメガバンクになる程、手数料も安く抑えられる傾向にあるという訳です。
民間企業よりも信頼度が高い
銀行100%出資の子会社である銀行系ファクタリング会社は企業としての信頼性が抜群という利点があります。特に大手メガバンク直系は貸金業者登録番号も表記しており、従業員数も100名を越え、資本金も10億円を越えていますので企業としての信頼度は民間企業と比較すると桁違いであると言えるでしょう。
ファクタリングはサービスの性質上どうしても高い手数料になりますので、大手企業ではない会社との取り引きの場合はどうしても不安が付き纏ってしまいます。実際にファクタリングを謳った詐欺被害もありますので、信頼できる企業かどうかは取り引きする上では欠かせない要素の一つであると言えるでしょう。そういう点に置いても、ファクタリング会社が銀行直系で安心感のある大手企業であるというのは重要な利点と言えます。
民間では提供できない豊富なサービス
民間企業の多くは2社間と3社間の買取ファクタリングのみを行っています。これは売掛債権を買うというシンプルなサービスですし、認可や許可も必要ありませんので新しい会社でも参入しやすいサービスという理由で多くの会社で提供されています。
その一方で銀行系ファクタリング会社では通常は2社間は行っておらず3社間のみです。民間企業が買取ファクタリンのみを行っているのに対し、大手メガバンク直系のファクタリング会社では買取以外にも様々なサービスを提供しています。
三菱UFJファクター
買取、保証(根保証)、保証(下請債権保全)、国際
みずほファクター
買取、回収保証、債権流動化、電子債権決済、国際
SMBCファイナンスサービス
買取、保証、建設債権保証、下請債権保全、手形買取
このように大手メガバンク直系のファクタリング会社では、債権買取以外にも様々なファクタリングサービスを提供しています。これらは民間企業では出来ない事であり、ファクタリングは申し込み先が提供している事業により適切なサービスを選ぶ必要がありますので、そういった意味でも様々なサービスの中から選択できるというのは強みになります。
みずほファクターの国際ファクタリングは特に評価が高く、海外のファクタリング会社と連携して輸出先の会社が売掛債権を買い取り支払いを保証するというものです。海外のファクタリング会社や金融機関との連携が必要となってくるサービスになりますので民間企業は全く手出しができない分野です。そういったサービスも提供しているというのが大手メガバンク直系の強みであると言えるでしょう。
銀行系ファクタリング会社利用の注意点
日本の三大メガバンクや地方銀行も積極的に参入しているファクタリングサービス。特に大手では民間企業よりも手数料が安く、更に民間では決して取り扱う事ができないサービスの提供にも力を入れています。一見すると利点しかないように感じますが、実は民間系にはあって民間系にはない注意点が多くあるのが実情です。
- 取り扱いが3社間のみ
- 対応スピードが遅い
- 審査が厳しい
大きく分けて銀行系ファクタリング会社を利用する前に注意すべき事項は上記3点に集約されます。それぞれの注意点を民間系と比較しながら紹介していきましょう。
2社間ファクタリングを提供していない
2社間と3社間がファクタリングの主なものでこれは債権買取が可能です。民間企業では2社間と3社間を選択する事が可能ですが、銀行系ファクタリング会社では2社間サービスを行っておらず、必ず3社間取り引きになってしまうという欠点があります。
2社間では売掛先に知られずに債権を譲渡する事ができますが3社間では売掛先との面談が必須になりますので、売掛金を譲渡するという旨をクライアントに通知されます。中小企業の経営者からすると売掛金譲渡の情報をクライアントに通知されてしまうと今後の取り引きに影響が出る可能性がある為に、出来れば2社間で行いたいと考えます。
銀行系ファクタリング会社がなぜ2社間を行わないかというと、貸金業法に該当するかどうかの判断が微妙であるというのが最大の理由です。2社間ファクタリングは貸し倒れリスクが高い為に3社間よりも高い手数料が必要になりますが、これが利息制限法を越える金利になる可能性がある為に、その判断が微妙なので取り扱いを行っていないという訳です。
現金化までに時間がかかる
銀行融資をイメージすると分かるかと思いますが、銀行系ファクタリング会社の審査は非常に長く、早くても2週間~3週間かかります。会社の経営状況を慎重に調査し、決算もたらい回しされますので、債権が買取されるまでに長い期間を要するのです。資金繰りが悪化していてすぐに手元に現金が欲しいと考えている中小企業のニーズには合いません。
民間企業が運営しているファクタリング会社は現金化までの時間がとても早く、最短で即日に現金が振り込まれます。その理由は審査時間が短いという点にあり、民間系では申し込み先の資産状況などを審査せず、買い取った債権を回収できるかどうかのみを審査しますので銀行系よりも早くに審査が完了し現金化できるという訳です。
売掛債権を買い取ってもらって早く現金化し資金調達したいと考えるファクタリングに置いて、審査時間が長く現金化までに時間がかかるというのは死活問題ですよね。この点は銀行系ファクタリング会社の注意点の一つであると言えるかと思います。
手数料が安い分、審査がとても厳しい
銀行系ファクタリング会社は手数料が安いなどの利点を上で説明してきました。確かに民間系よりも多くの利点がある事は確かですが、その分審査がとても厳しく、並大抵の経営状況ではまず審査に通る事ができません。
銀行系ファクタリング会社の場合は手数料を抑える事で『継続的な買取』を前提にしています。民間系のように「今回だけ」というイメージではありません。つまり、銀行系ファクタリング会社は売掛債権を長期的に継続的に買い取るというイメージですから、その分審査がとても厳しくなると言う事です。今は経営状態が良くても今後のビジョンが不透明であったり、今後は落ちていく事が予想されるようね経営状況であるなど、銀行の基準を満たせない場合は審査に落ちてしまいます。
民間系は『今回だけ』というスタンスですから審査に通りやすく、長期的なビジョンで見る事はありませんので銀行系と比較すると格段に審査に通りやすいです。申し込み企業の経営状況は問われませんので、資金繰りが悪化し資金調達がすぐに必要な場合は銀行系よりも民間系を利用した方が良いかもしれません。
まとめ
このように銀行系ファクタリング会社は大手メガバンク直系という安心感、それに伴う手数料の安さなどで高い評価を受けてはいますが、中小企業で資金繰りに困り急な資金調達が必要な場合は現金化までの遅さや審査の厳しさを加味するとファクタリングサービスをお願いするには向いていないと言えます。
経営状況や資金調達をどれ位のスピードでしてもらいたいかで銀行系か民間系かを選ぶようにするのが良いと思います。両方のメリットとデメリットを加味しながら、どちらが適切なのかを見極めて判断するようにしましょう。