素早い資金調達の手段の一つとして注目されている「ファクタリング」とは、企業が持っている売掛金を早い段階で回収することが出来るサービスのことです。
中小企業の場合、売掛金回収までの期間が長いほど業務に支障が出てしまう可能性が高まります。企業の経営資金が不足してしまっている時や金融機関からの融資を受けることが出来ないというときなどにファクタリングサービスが利用されています。
支払い期日前に売掛金を回収することが出来るため、万が一売掛先が倒産してしまった時もリスクを回避することが出来ます。
このように、ファクタリングは数々の資金調達方法と同じように沢山のメリットがありますが、デメリットやリスクも存在しており、実際にファクタリングを行う前にまずはファクタリングの仕組みについて詳しく知っておくことが大切です。
この記事では「ファクタリング」という言葉を知ったばかりという方にもわかりやすくファクタリングの意味や仕組み、メリット・デメリット、実際の契約の流れなど気になることについてご紹介致します。
ぜひ記事を読んで、ファクタリングというサービスを有効活用するための基礎知識をつけてみて下さい。
INDEX
ファクタリングとは?
ファクタリングとは、企業が持っている売掛金をファクタリングを行っている会社などに売却し、支払い期日前に売掛金を回収する手段のことです。
私達がコンビニなどのお店で普通に買い物をする時や美容院で髪を切ってもらう時には、商品やサービスに対してその場でお金を支払いますよね。
しかし、企業同士やお店同士で商品サービスを取引するとなると、量も回数も多くなります。その度に現金を使って取引をするのでは手間も、現金を管理するための事務コストもかかります。
そこで、多くの企業が行っているのが「掛取引」という方法です。掛取引では先に商品やサービスを提供し、代金は後で受け取ります。そして、この掛取引で後で受け取るはずの代金のことを「売掛金」と言います。
いわゆる「ツケ」はまさに掛取引です。居酒屋でお客が飲食代の1000円を「ツケ」たとしたら、居酒屋側は1000円の売掛金を保持しているということになります。そして、お客は定められた支払い期日までに居酒屋に1000円を支払う必要があります。
掛取引は手間や事務コストを減らす事ができるというメリットがありますが、売掛金の回収までに一定期間がかかるということ、代金を支払うはずだった企業が倒産してしまい売掛金が回収出来ない等のリスクもあります。
そこで、そのようなリスクを回避したり、より早く売掛金を回収したいという時にファクタリングを利用するというわけです。
ファクタリングには「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」があり、詳しくは後述しますので違いを確かめてみてください。
【売掛金】掛取引で商品を取引した際、支払期日になったら債務者から代金を受け取ることが出来る権利(債権)のこと。
【売掛先】掛取引の取引先のこと。支払期日になったら代金を支払う必要がある。
【掛取引】サービスや商品を先に提供し、後日、定められた期日までに支払いを行う取引のこと。信用取引とも呼ばれる。
ファクタリングを利用するのはどんな時?
掛取引の場合、商品やサービスを提供しても実際に取引先からその代金を受取るまでには時間がかかります。
例えば「月末締め翌月末払い」の支払いサイトの場合『当月1日~末日までの売上をまとめた請求書の代金を翌月の末日までに支払う』という内容のため、実際に商品の代金を受け取ることが出来るのは30日後となります。
【支払いサイト】取引代金の締め日~支払日までの猶予期間のこと。30日なら「30日サイト」と、支払いまでにかかる日数を単位として表すことが通常。
しかし、支払いサイト期日までにも社員への給与の支払いなど、資金はどうしても必要になります。
取引先からの商品代金支払いがまだだからと言って、社員に支払う給料を後回しにすることは出来ませんよね。そこで、より早く売掛金を回収し、手元で使える資金化するためにファクタリングが利用されるのです。
ファクタリングと融資は違う
「ファクタリング」と「融資」は全く異なるものです。ファクタリングは銀行からの融資を断われてしまったという場合でも利用可能が場合があります。
融資とは、信用の成り立つ関係の間で行われるお金の貸し借りのことです。お金を借りる側に返済能力があるかということや、お金を借りすぎていないかということを厳しく審査し、審査が通れば「お金」を貸します。
一方、ファクタリングはお金の貸し借りではなく、「売掛先から代金を受け取る事ができる権利(売掛金)」の売買です。
このように、ファクタリングと融資はそもそもの仕組みから異なっているのです。
お金の貸し借りである融資はお金を借りた人の返済能力などを厳しく審査しますが、ファクタリングの審査の場合はファクタリングを利用する企業の返済能力や経済状況よりも、売掛先の信用が何よりも重視されます。
ファクタリングを利用する企業が赤字だったとしても、売掛先が経営状況も良好な上場企業などであれば全く問題がないということです。
買取ファクタリングと保証ファクタリング
ファクタリングには「買取ファクタリング」と「保証ファクタリング」があります。
- 買取ファクタリング…売掛金を早期回収したい場合向き
- 保証ファクタリング…信用に乏しい企業との取引などの保険として利用
一体どのような目的でファクタリングを利用するかによって、どちらのファクタリングを利用するかも変わってきます。目的に合った種類のファクタリングを選択しましょう。
買取ファクタリング
今まで上記でご説明してきたような、ファクタリング会社に売掛金(債権)を買い取ってもらうファクタリングが「買取ファクタリング」です。
売掛金を支払い期日が来るよりもっと早くに現金化したいという場合に買取ファクタリングが使われます。買取ファクタリングは銀行の融資のように担保を提供する必要はなく、また、審査基準は売掛先の信用力のため、中小企業でも審査に通りやすいのです。
買取ファクタリングには2種類あり、「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」という取引方法を選択することが出来ます。
- 2社間ファクタリング…売掛先に知られずに売掛金を現金化できる
- 3社間ファクタリング…安い手数料で支払いサイトより少しでも早く売掛金を現金化できる
2社間ファクタリング | 3社間ファクタリング | |
---|---|---|
契約当事者 | ・利用会社 ・ファクタリング会社 |
・利用会社 ・ファクタリング会社 ・売掛先(取引先) |
審査基準 | ・売掛先の信用力 ・利用会社の信用力 ・利用会社の経営状況 |
・売掛先の信用力 |
資金化までのスピード | 最短で即日 | 1~2週間前後 |
手数料相場 | 6%~40% | 1%~5% |
売掛先への通知 | なし | あり |
売掛金回収 | 顧客が行う 集金代行業務委託契約 |
ファクタリング会社が代行 |
債権譲渡登記 | 必要(業者によっては不要) | 不要 |
【どうして2社間ファクタリングの手数料は高い?】
2社間ファクタリングの手数料は3社間ファクタリングに比べてかなり高くなっていますが、一体なぜでしょうか?
3社間ファクタリングであれば売掛先が大手企業だった場合、利用会社が倒産してしまってもファクタリング会社は全くダメージを受けることはありません。買い取った売掛金は売掛先の大手企業からファクタリング会社から直接振り込まれることになるからです。
しかし、2社間ファクタリングの場合、売掛先はファクタリング会社の存在を知りません。そのため当初の予定通り、債権者である利用会社に代金を支払います。
このまま利用会社がファクタリング会社にきちんと支払いを行えば何の問題もありませんが、「他の返済に当ててしまった」「口座振替で自動的に引き落としされてしまった」「他の支払いに使ってしまった」など、ファクタリング会社に本来支払うはずの代金を使ってしまうというトラブルが多いのです。ファクタリング会社は利用会社に売掛金の買取代金を前払いしているにも関わらず、利用会社が倒産してしまったらファクタリング会社は大損をしてしまいますよね。
このように、2社間ファクタリングはその仕組み上、ファクタリング会社が負うリスクが大きくなるため、どうしても手数料が高くなってしまうのです。
ちなみに、三井住友・みずほ・三菱東京UFJという三大メガバンクがファクタリングに参入していますが、このような大手企業が行っているのは3社間ファクタリングのみで、2社間ファクタリングは行っていません。
手数料の高い2社間ファクタリングは将来的に規制されてしまうリスクがあるためです。
2社間ファクタリング
利用会社とファクタリング会社の2社間で契約を行う買取ファクタリングのことを「2社間ファクタリング」と言います。
売掛先にファクタリングで資金調達をすることを知られずに済むため、今後の取引にも影響を与えないというメリットがあります。また、売掛先に承諾を得る必要がないため、最短即日で資金調達することが可能です。
欲しい時にすぐに資金を手にすることが出来る一方、上でもご説明の通り、ファクタリング会社が負うリスクが大きくなるため手数料は高くなります。
【2社間ファクタリングの流れ】
- 利用会社が売掛金をファクタリング会社に売却する
- ファクタリング会社が利用会社に売掛金の買取代金を前払いする
- 期日になったら売掛先から商品代金が支払われる
- 売掛先から回収した商品代金をファクタリング会社に支払う
【こんな場合は2社間ファクタリングがおすすめ】
- 売掛先にファクタリングを行うことを知られたくない
- 早期に売掛金を現金化したい
3社間ファクタリング
3社間ファクタリングは、2社間ファクタリングとは違い利用会社、ファクタリング会社、売掛先の3社間で行う契約方法です。
2社間ファクタリングでは売掛先にはファクタリングを行うことを知らせないため、利用会社が自ら売掛先から売掛金を回収しファクタリング会社に支払いをする必要がありました。
しかし、3社間ファクタリングでは売掛先も合意のもとで契約を行うため、売掛金をファクタリング会社に売却した後は「売掛先の倒産リスク」「売掛金の回収」などはファクタリングに会社に引き継がれ、支払い期日が来たら売掛先がファクタリング会社に直接売掛金を支払います。
2社間ファクタリングよりも手数料を抑えることが出来ますが、売掛先に承諾を得る必要があるため資金調達には時間がかかる傾向があります。
【3社間ファクタリングの流れ】
- 売掛金を売却することを売掛先に通知する
- ファクタリング会社が利用会社に売掛金の買取代金を前払いする
- 売掛先が売掛金をファクタリング会社に支払う
【こんな場合は3社間ファクタリングがおすすめ】
- 高く買い取ってもらいたい(手数料を安く済ませたい)
- 債務不履行・貸し倒れリスクをなくしたい
保証ファクタリング
保証ファクタリングは早期の資金回収を目的にした買取ファクタリングとは異なり、利用会社が持っている売掛金の支払いをファクタリング会社が保証するというものです。
経営状況が安定している大手企業などが売掛先の場合、売掛金が回収できないという貸し倒れリスクは極めて低いと言えますよね。しかし、売掛先が信用力に不安がある企業の場合、貸し倒れになって売掛金を回収することが出来なくなってしまうかもしれません。
それを防ぐために利用するのがこの保証ファクタリングです。
売掛先が倒産してしまったりして売掛金が支払われないという「貸し倒れリスク」を利用会社の代わりにファクタリング会社が負う対価として、利用会社は保証料を支払います。
- 2社間ファクタリング…買取(売掛金の保有者:ファクタリング会社)
- 3社間ファクタリング…買取(売掛金の保有者:ファクタリング会社)
- 保証ファクタリング…保証(売掛金の保有者:利用会社)
買取ファクタリングは2社間・3社間のどちらも売掛金をファクタリング会社に買い取ってもらいますが、保証ファクタリングの場合は売掛金の保有者はそのままに、売掛金の支払いをファクタリング会社に保証してもらうという内容のファクタリングです。
派生ファクタリングサービス
ファクタリングは買取ファクタリング、保証ファクタリングが主になっていますが、債権の種類・引受方法によってこの他にもいくつかの派生サービスが存在しています。
- 医療報酬ファクタリング…医療機関が国保・社保に請求する医療報酬債権を売却し資金化する
- 国際ファクタリング…輸出企業(日本)・輸入企業(海外)・ファクタリング会社の3社間で行われ、海外輸入企業からの売掛金回収を確実なものにする
- 家賃収入ファクタリング…家賃、管理費、仲介手数料など不動産で将来的に得る事ができる収入を売掛金としてファクタリング会社に売却し資金化する
- 商品在庫ファクタリング…ファクタリング会社が利用会社の商品在庫を買い取り資金化する
- 流動資産担保融資保証(ABL保証)…流動性の高い資産(売掛金、商品在庫、集合動産など)を担保として提出し融資を受ける
ファクタリング契約の流れ
ファクタリング契約の契約内容や、契約の際に必要な書類が以下のようになっています。要求書類は会社によっても異なるものの、事前に用意しておくことでスムーズにファクタリング契約手続きを行うことが出来ます。
【契約内容】
- 債権譲渡契約
- 集金代行業務委託契約
【必要書類】
- 売掛先企業との契約書
- 決算書
- 確定申告書
- 納税証明書
- 印鑑証明
- 納品書・請求書など
- 通帳(記帳のあるもの全て)
- 利用会社の説明資料
- 本人確認書類(免許証、パスポートなど)
契約の流れ
ファクタリング契約は基本的に以下のような流れで進んでいきます。銀行融資の場合審査にはどうしても時間がかかります。それに対して、最短で即日で資金化も出来るファクタリングは審査もとてもスピーディーです。(ここでは2社間ファクタリングにおける契約の流れを紹介しています)
- 申し込み
- 仮審査
- 本審査
- 契約
- 売掛金売却代金の入金
- 回収した売掛金の振込
ファクタリングのメリット・デメリット
何事もメリットがあればデメリットがあるもの。早期に資金調達することが出来たり、貸し倒れリスクを防ぐことが出来るなどとても大きなメリットがあるファクタリングにもデメリットは存在しています。
しかし、メリットやデメリットについて正しく理解すれば、ファクタリングを有効活用をすることが出来るようになります。
メリット
まずはファクタリングのメリットです。2社間ファクタリングの場合、最短即日で資金調達が出来たり、売掛先に知られることなくファクタリングを行うことができます。担保や保証人不要で、銀行からの融資が受けられなかった場合でも利用することが出来るなど、大きなメリットが沢山あります。
- 最短即日でスピーディーに資金調達が可能
- 金利が発生しない
- 黒字倒産や連鎖倒産リスクの回避
- 融資NGでも利用可能
- 担保・保証人が不要
- 売掛先に知られずに早期資金調達が可能
デメリット
次に、ファクタリングのデメリットを見てみましょう。銀行での融資よりも圧倒的にスピーディーに資金調達が可能なファクタリングですが、方法によっては手数料が高くなってしまう場合があります。2社間ファクタリングは売掛先の承諾は不要ですがファクタリング会社によっては債権譲渡登記が必要という場合もあります。
また、ファクタリングを利用する際に気をつけるべきこととして、悪徳業者の存在があります。現時点ではファクタリング会社を設立するのに免許や登録、営業許可などの規制はありません。そのため、違法業者や闇金などでも参入することが出来るのです。
- 方法によっては手数料が高くなる
- 売掛金の額以上の資金は調達出来ない
- 債権譲渡登記が必要な場合がある
- 売掛先に通知する場合がある
- 違法な悪徳業者が存在している
ファクタリングは違法ではない
ファクタリングが「貸金業法に違反している」「違法」勘違いしてしまっている人が少なくありませんが、結論から述べるとファクタリングは違法ではありません。なぜならファクタリング取引は貸金業には該当せず、また、規制するための法律も現在は存在していないからです。
一体どうしてそのような間違った情報が広まってしまったのかというと、2017年1月25日に「初めてファクタリング業者を摘発した」という内容のニュースが報じられたから。
しかし、ニュースをよく読むとわかるようにこれはファクタリングサービスとは全くの別物。実態はファクタリングを装った闇金業だったのです。
「ファクタリング」と呼ばれる売掛債権の買い取り契約を装い、ヤミ金を営んだとして、大阪府警生活経済課は25日、貸金業法違反(無登録営業)の疑いで、東京都中野区の2業者を摘発し、元経営者の三浦和仁容疑者(36)=同区弥生町=ら男8人を逮捕した。府警によると、ファクタリングを装ったヤミ金業者の摘発は全国初。府警は2業者がファクタリングを装いながら、実態は売掛債権を担保に高金利で金を貸し付けていたとみて、出資法違反(超高金利)容疑でも捜査する。
このように、違法行為を行っている悪徳業者も存在しているため注意が必要です。
ファクタリングを利用する際には優良ファクタリング会社か、悪徳ファクタリング会社かをしっかり見極めてから利用するようにしましょう。
ファクタリングの注意点
ファクタリングには「償還請求権」があるものと、ないものがあります。償還請求権のあるファクタリングのことをウィズリコースといい、償還請求権がないないファクタリングのことをノンリコースと言います。
- 償還請求権があるファクタリング…ウィズリコース
- 償還請求権がないファクタリング…ノンリコース
【償還請求権】売掛先が倒産してしまうなどで売掛金が回収出来なくなった場合、ファクタリング会社がファクタリングを利用した会社に支払いを請求する権利のこと。
多くのファクタリングでは償還請求権のないノンリコースが多いものの、中にはウィズリコースのファクタリングも存在しています。それに気づかないまま契約してしまうと、万が一売掛金が回収出来なくなってしまった場合、ファクタリング会社から支払いを請求されてしまうことになります。
こうなると、大きな損失を生んでしまうことになりかねません。ファクタリング契約を行う際にはこの償還請求権にも注意して契約を行うようにしましょう。
まとめ
以上、ファクタリングについて詳しくご紹介致しました。
日本では馴染みのないファクタリングですが、実はアメリカでは19世紀末から20世紀初頭から資金調達の一つの手段として広く知られている伝統的な手法でもあり、その市場規模は日本の5倍から10倍にもなるとされています。
違法性も無く、困った時に安心して利用することが出来るファクタリングは上手く活用すればキャッシュフローを改善しリスクを回避したり経営状況を安定・高めることができます。
2社間ファクタリング、3社間ファクタリング、保証ファクタリングなどファクタリングには様々な種類がありますが、自社の状況に合わせ、もっとも適した方法でファクタリングを行いましょう。