
資金繰りに悩む経営者が最初に頼るのは銀行融資ですよね。しかし銀行融資は審査が厳しく、自分が思っている額を融資してもらえるかどうかも分かりません。そんな時の資金調達の方法として、近年特に注目されているのがファクタリングとビジネスローンです。
特に急ぎで現金が早急に欲しい事業主にとっては、どちらも素早い現金調達が可能なサービスなので重宝されるものですが、それぞれに異なるメリットデメリットがありますので、上手に使い分ける事で会社の資金繰りをより良く改善する事が出来るのです。
資金調達に悩む中小企業の方はファクタリングとビジネスローンのメリットデメリットを把握した状態で、今この状況であればどちらを選択するのが良いのかを判断しなければなりません。それぞれの特徴の違いや、効率的に使い分ける方法について分かりやすく紹介していきたいと思います。
共通するメリット
それぞれの違いや特徴などを紹介していく前に、まずはファクタリングとビジネスローンに共通しているメリットから整理していきましょう。
- 最短即日で資金調達が出来る点
- 担保や保証人がなくても申し込める点
ファクタリングもビジネスローンも共通している大きなメリットは上記2つです。申し込みをして契約から現金振込までが最短即日で全て完結するという点と、会社の業績が悪くて赤字続きでも担保や保証人がいない場合でも申し込みを行なえるという点です。
これが銀行融資だったらどうでしょうか。銀行融資の場合は返済能力があるかどうかの厳しい審査が必ず必要になります。審査から振り込みまでが最短でも1週間はかかり、長い場合は2ヶ月かかる場合もあります。中小企業のすぐにでも現金を調達しなければいけない切迫した状況には銀行融資は適していません。
更に会社の業績が悪ければ個人ローンと同じく担保や保証人がなければ銀行からの融資は受ける事が出来ませんが、ファクタリングやビジネスローンの場合は無担保無保証人でも資金調達をする事が出来ます。早期の資金繰りが必要な中小企業にとっては銀行融資よりも手助けになる場面が多いでしょう。
それぞれの特徴を比較
資金調達方法として比較して悩む事が多いファクタリングとビジネスローン。両方の仕組みを理解していなければ比較のしようがありませんし、どちらが良いのかを判断する事なんて出来ませんよね。
経営者の方が最も重要視する5項目をファクタリングとビジネスローンでどう違うのかを比較していきましょう。
項目 | ファクタリング | ビジネスローン |
---|---|---|
限度額 | 売掛金範囲内 | 300万円~1億円 |
コスト | 高い | 安い |
審査 | 優しい | 厳しい |
信用情報 | 影響なし | 影響する |
返済 | 売掛先から回収 | 元本と利息 |
資金調達する上で最も気になる5つの項目から、ファクタリングとビジネスローンの違いを以下で分かりやすく解説していきたいと思います。
資金調達できる限度額の違い
ファクタリングは保有している売掛債権を売買して資金調達を行うものなので、売掛債権内の金額が限度額になりますがビジネスローンは最大で1億円の融資を受ける事も可能です。金融業者により異なりますが、中小企業向けローンは限度額300万円~500万円に設定されている場合が多く、最高で1000万円なのが一般的ですが、事業状況が良く審査に通れば最大で1億円の融資を行なうという企業もあります。
ファクタリングは売掛債権内が限度額になりますが、ビジネスローンは限度額が決まっていないと言えます。審査結果によって融資される金額は異なり、返済能力以上の資金を用意できる可能性が高いのがビジネスローンの特徴です。ファクタリングは急場を凌ぐ資金繰りに活用する事がメインになりますが、ビジネスローンは新しいビジネスを始める前の資金として活用する事も可能です。
必要コストの違い
ファクタリングとビジネスローンは利用する際の必要コストの違いでも大きな差があります。ファクタリングは3社間と2社間で大きく手数料が異なり、一般的な2社間ファクタリングの手数料相場は約20%です。高手数料ですが売掛債権を早期現金化できるという事で、継続的な利用というよりもその時の急場凌ぎで利用するというのが一般的です。ファクタリングを利用してばかりいて売掛債権の売買ばかりしていると、手数料が高いのでいずれ会社経営は行き詰るのは目に見えています。
手数料の高いファクタリングとは違い、ビジネスローンの金利は15%が平均的です。個人向けローンよりは企業向けの分だけ金利は高く設定されていますが、ここで注意しなければいけないのはファクタリングは手数料でビジネスローンは金利だという点です。必要コストの性質がそもそも違いますので比較する事はできませんが、単純にかかるコストで計算した場合はビジネスローンの方が格安です。
審査が甘いか厳しいか
ファクタリングとビジネスローン最大の違いは審査が甘いか厳しいかという点にあると言っても過言ではありません。それ位2つの審査には大きな差があります。幾ら銀行融資よりも審査が甘いビジネスローンだからと言っても、あくまで融資は融資です。つまり返済できる信用力が不足していると判断された場合は審査に通らない可能性が非常に高いです。
- 赤字決済が続いている
- 税金の未納状態
- 債務を整理している途中
- 他社からも借入している
このような経営状態では返済能力が不足していると判断されますので、銀行融資よりも審査が甘いとされているビジネスローンであっても審査に落ちる可能性が高いです。しかしファクタリングは違います。そもそもファクタリングは融資ではなく売掛債権の譲渡ですから、申し込み企業が幾ら赤字決算が続いている財務状況の悪い会社であっても関係ありません。大切なのは売掛先企業に返済能力があるかどうかだけです。
ファクタリング会社にとっては売掛金を支払う会社の信用力が最も重要な点なので、ファクタリングを利用しようとした会社が赤字続きで他社から莫大なお金を借入していたとしても全く問題なく、売掛先企業の経営状況が安定していればファクタリングを利用する事が可能という訳です。
信用度の低い零細企業や個人事業主の方、経営状況が思わしくない中小企業の方は銀行融資やビジネスローンの審査に通過しない可能性が非常に高いです。しかし、その場合でもファクタリングという手段が残されています。コストは高くつきますが、ファクタリングは審査が非常に甘いので資金調達が容易であるという大きなメリットがあります。
会社信用度に影響を与えるかどうか
売掛債権の売買であるファクタリングとは違い、ビジネスローンはれっきとした融資ですから会社の信用情報への影響が大きくなります。ローンで調達した資金は借入金なので賃借対象表の負債として計上されます。負債情報は帝国データバンクを始めとした信用情報機関に登録され、今後の融資の際に参照される事になりますし、負債が残っていると会社の信用度が落ちてしまいますので、新たに融資を申し込んだ時に不利になる恐れもあります。
しかしファクタリングであればそのような不安要素を抱える心配がありません。会計上は未収入金として計上される為に信用情報に大きな影響を与える事がないのです。しかし譲渡登記を行なった場合は取引中はファクタリング記録が残っている為に融資に影響を与える可能性はあります。しかし売掛金が入金されて契約が完了するまでは長くても30日位なので、長期的に融資に影響を及ぼす心配はありません。会社信用度に影響を与えないという意味ではファクタリングの方が優秀です。
返済方法の違い
ビジネスローンは最大10年まで返済期間を設定する事が出来ます。経営状態等と合わせて無理のない返済計画を立てることができ、資金調達後に元本と利息を自身で返済していきます。ビジネスローンの場合は主に2種類の返済方法から選択する事が可能です。
- 元利均等返済⇒月々の返済額が一定に決まっている方法
- 自由返済⇒返済ができない月は利息の返済だけで大丈夫
事業融資型ビジネスローンで採用されているもので、審査がおりてから契約を結ぶ時に選択して決定する事が可能です。ビジネスローンは融資ですからもちろん利息を含めた返済が必要ですが、ファクタリングは違います。そもそもファクタリングは借金ではありませんから返済という概念がありません。
債務者から売掛金の入金を待ち、入金された売掛金をファクタリング会社に入金するだけですから返済を気にする必要は全くありません。債務者が支払い不能に陥ってしまった時も申し込み企業へ請求される事はなく、貸し倒れリスクも含めてファクタリング会社へ帰属されますので、返済能力に不安がある企業で売掛債権がある企業はファクタリングがオススメです。
結局どっちを使うのが得なのか?
上記でファクタリングとビジネスローンについて解説してきましたが、結局の所どちらを使うのが便利で利点があるのかは会社の経営状況などにより異なります。どちらにもメリットデメリットがありますので、きちんとそれぞれの特徴を掴んでいれば、自社状況と照らし合わせて選択する事が出来るでしょう。
ファクタリングとビジネスローンのどちらを使うべきか迷ったらまずは以下の手順を踏んでみて下さい。自社状況を考える上で必要なプロセスを解説していきたいと思います。
審査に通るかどうか
まずは自社が審査に通るかどうかを考える事が必要です。ファクタリングの大きなメリットは審査が甘い所にあり、ビジネスローンは審査に通らない事が多くあります。
- 赤字決算
- 税金未納
- リスケ中
- 債務整理中
- 他社借入あり
このような経営状況の場合は銀行融資やビジネスローンの審査が通らない可能性が非常に高いので、審査が通りそうであればビジネスローン、審査に通らない可能性が高いと判断した場合はファクタリングを利用してみようと分けて考えてみるのが良いかと思います。
売掛債権があるかどうか
ファクタリングは売掛債権の売買を行うサービスですから、自社に売買する事が出来る債権がなければサービスを利用する事が出来ません。売掛債権がある場合はファクタリングとビジネスローンのどちらを選ぶか選択する事ができますが、売掛債権がなければファクタリングを選ぶという選択肢すらありません。
もう一つはその売掛債権を売買して会社経営は大丈夫なのかという事を考えるという事です。ファクタリングは上記でも説明したように非常に高額なコストが必要になります。待っていれば100%売掛債権が振り込まれる所が、ファクタリングを利用したら手数料を引かれてしまいます。自社に振り込まれる金額と照らし合わせて考えてみるべきでしょう。
完済能力があるかどうか
ビジネスローンは金利負担が非常に大きい融資です。つまり自社に完済能力があるかどうかを融資される前に判断しなければなりません。利息負担が経営利益に大きなダメージを与えるものなので、一般的にはビジネスローンは一時的に利用するものであると考えた方が良いでしょう。
他の銀行融資の審査を同時並行している時の一時凌ぎでビジネスローンを利用するのであれば、利息負担はそこまで痛くはありませんが、長期の借入として利用するには金利が高すぎます。すぐに完済できる目処が立っているのであればビジネスローン。完済できるかどうか分からない場合はファクタリングを利用すると使い分けて考えてみるのが良いかもしれません。
まとめ
中小企業が資金調達を行なう時にファクタリングを利用すべきかビジネスローンを利用すべきかは非常に悩む所であると思います。どちらもメリットデメリットがあり、使い方によっては非常に便利なのですが、自社の経営状況を圧迫する可能性を高めてしまうものでもあります。
上記でそれぞれの特徴と違いを比較し、どちらを使うべきかを経営状況を考えて適切に判断するようにしましょう。大切なのはどちらを使うかをそれぞれの特徴を理解して利用するという事です。中小企業の資金調達としてはどちらも優れたものなので、適切な判断を下せるようにしましょう!