
銀行で融資を受ける際と同じように、ファクタリングを受ける際にも「審査」を受ける必要があります。しかし、借り入れである融資の審査で重要視されるポイントと、売掛債権の買取であるファクタリングの審査で重要視されるポイントは異なっています。
ファクタリングはアメリカなど欧米圏では昔から広く知られている資金調達方法の一つですが、日本では比較的最近利用されるようになったサービスのため、融資とファクタリングを混同してしまっている場合やファクタリングについてよく知らないという場合も少なくありません。
しかし、ファクタリングは銀行に融資を断られてしまった場合でも利用することが出来る可能性の高い有効な資金調達の手段です。資金繰りに困っている場合はファクタリングを活用することでキャッシュフローの改善に繋げることが出来ます。
とはいえ、まずはファクタリング審査に受からなければいけません。この記事ではファクタリング審査で重要視されるポイント、そして審査に落ちてしまう原因などについて解説していきます。
ファクタリング会社が重視している「リスク」を知る
取引をする際にどんなポイントを見るかといえば「損得」「取引先の信用」ですよね。倒産寸前だったり、不祥事続きで信用に欠ける取引先と進んで契約しようという人はいないでしょう。このように、取引する「リスク」を見極めるために審査が行われるのです。
ファクタリングの審査に受かるためにもまずは、ファクタリング会社が一体どのようなリスクを考慮しているのかということを知ることが大切です。ファクタリング会社もビジネスですから、損をすることになるような取引はしたくありません。
では、ファクタリング会社にとってのリスクとはどんなものでしょうか?
【ファクタリング】利用者が持っている売掛金を買い取り、支払い期日になったら売掛先から直接、売掛金を回収するサービスのこと。
以上のように、ファクタリングとはファクタリング利用者が保有している売掛金の買取を行なうサービスです。利用者は早期に売掛金を現金化することができ、ファクタリング会社は売掛金の支払い期日になったら売掛先から直接売掛金を回収することが出来ます。
しかし、ここでもしも売掛先の企業が倒産してしまったり、何らかの理由で売掛金を支払えなくなってしまったらファクタリング会社は売掛金の買取代金を回収出来ず損をしてしまいます。
つまり、ファクタリング会社が重視しているリスクとは「売掛先から売掛金の回収が出来るのかどうか」ということです。
極端な話、利用者が倒産寸前だったとしても売掛先が経営状況も安定している大企業ならばファクタリング会社にとっては何の問題もないのです。
ファクタリング審査で重要な5つのポイント
融資の場合は利用者の信用力が重要とされますが、ファクタリングの場合は上でもご説明の通り、売掛先の信用力が重視されます。ここからはファクタリング審査で重要な5つのポイントについてご説明していきます。
【審査で重要視される5つのポイント】
- 売掛先の信用力
- 売掛金の入金日
- 二重譲渡
- 差し押さえリスク
- 利用者の状況
以上がファクタリング審査で大切なポイントです。融資ではないファクタリングでは担保や保証人を付ける必要も無く、融資に比べると審査が緩い傾向があるため利用しやすい資金調達方法と言えます。
これらのポイントは審査が通るかどうかということだけでなく、実際にファクタリングを利用する際の手数料にも影響しますのでしっかりとチェックしていきましょう。
ポイントその1「売掛先の信用力」
まず、最も大切なポイントとして「売掛先の信用力」があります。前述の通り、ファクタリング会社にとってのリスクは売掛先が倒産してしまうなどして、売掛金の回収が出来なくなってしまうことです。ファクタリング会社は利用者に前払いで買取代金を支払っていますから、回収が出来なければ大損ですよね。
そこでファクタリング会社は損をしないためにも「確実に売掛金を入金してくれる売掛先なのか」という売掛先の信用力をチェックします。
売掛先が上場企業や公的機関だった場合、倒産の可能性はほとんど考えられず信用力はかなり高いと言えますよね。このように信用力の高い売掛先ならばファクタリング会社も喜んで売掛金の買取をしてくれますし、手数料も低くなることが考えられます。
また、売掛先の規模が大きくなかったとしても毎月定期的に発生している売掛金で遅延などがなく安定して売掛金が支払われていれば審査に通りやすくなります。逆に、突発的に発生した売掛金の場合は審査に通ったとしても手数料が高くなる可能性があります。
ポイントその2「売掛金の入金日」
「売掛先が確実に売掛金を入金してくれるのかどうか」ということがファクタリング会社が重視しているポイントですが、売掛金の入金日が早ければ早いほどファクタリング会社が負うリスクは低くなり、その分審査に通りやすくなります。
売掛金の入金日による審査・手数料の差 | ||
---|---|---|
入金日 | 審査 | 手数料 |
1ヶ月後 | 有利 | 安くなる |
6ヶ月後 | 不利 | 高くなる |
上のはあくまでも極端な例ですが、入金日は早ければ早いほど審査に有利で、手数料も安くなる傾向にあると覚えておきましょう。
ポイントその3「二重譲渡」
二重譲渡とは、既に他の会社に譲渡済みの売掛金(債権)をファクタリング会社に売り渡すことです。二重譲渡になると売掛金の回収は難しくなります。
利用者が気づかずに二重譲渡をしてしまうというケースもありますが、故意に二重どころか三重、四重譲渡を行うというケースもあるようです。二重譲渡は詐欺に当たり完全な違法行為ですので、絶対に二重譲渡にならないよう気をつけましょう。
ポイントその4「差し押さえリスク」
売上入金に使用している口座が税務当局に差し押さえられてしまっているとファクタリング会社が回収するより前に国に没収されてしまうため、それを防ぐために税務署に問い合わせるなど、口座の安全性を確かめる場合があります。
交渉しなければいけないことがある時は経営者自ら税務署に連絡して話を付ける必要がある場合もあります。
ポイントその5「利用者の状況」
ファクタリング会社が重視するのは売掛先の信用力ですが、もちろん利用者の状況も全く見ない訳ではありません。
- 資金繰りの状況
- 税金滞納の有無
- 借り入れの件数や返済履歴
利用者が売掛金回収までに倒産してしまわないか、税務署によって差し押さえされてしまわないかなど経営状況をチェックされますが、銀行融資などと比べるとそこまで厳しいという事はありません。
ファクタリング審査に落ちる原因
ファクタリング審査は銀行融資と比較すると圧倒的に柔軟ですが、それでも審査に通らないという場合も存在しています。
一体どのような場合、ファクタリング審査に落ちてしまうのでしょうか?
個人相手の債権
ファクタリングではBtoB、BtoCでの契約が可能ですが、業者によってはBtoCは取り扱っていなかったり、審査で不利になったり、手数料が高くなる傾向にあります。
【BtoB】企業が企業にサービスを提供すること。企業間取引。(Business to Business)
【BtoC】企業が消費者にサービスを提供すること。(Business to Consumer)
個人相手の売掛金は信用力を判断するのが難しいため、その分リスクは高まります。また、個人事業主相手の売掛金の場合も買取が出来ないこともありますので申し込み前に確認しておきましょう。
証拠書類が不十分
審査に通らない原因として最も多いのが証拠書類が不十分だということです。買い取ってもらう売掛金を証明するための資料となる証拠書類はとても重要となります。
【証拠書類】
- 過去の入出金履歴(通帳など)
- 契約書
- 請求書など
請求書はファクタリング審査で重要な書類となりますが架空の書類を作ることも出来るため、それを裏付ける過去の入金履歴の提出が必要になったりと、審査は慎重に進められます。
ファクタリング会社は基本的には利用者が提出した書類を信じますが、中には偽装工作を行う利用者もいるためです。
2社間と3社間、審査が通りやすいのは?
売掛金の買取を行う買取ファクタリングには「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」がありますが、どちらの方が審査が通りやすいのでしょうか?
- 2社間ファクタリング…70~80%
- 3社間ファクタリング…50~60%
というのが大体の審査の通過率となっています。
3社間ファクタリングの方が審査通過率が低くなっているのは「売掛先からファクタリングの承認を得ることが出来ない場合がある」こと、「3社間ファクタリングの方が手数料が低いためリスクに見合わない」などの理由があります。
ファクタリング審査の必要書類
ファクタリング審査や契約の際にはいくつかの必要書類があります。
ファクタリング会社によっても要求される書類の種類や数は異なっていますので、利用を考えているファクタリング会社の必要書類を予め確かめておくようにしましょう。
【審査の必要書類の一例】
- 請求書、契約書、見積書など取引先との契約関係書類
- 入出金履歴(通帳)
- 本人確認書類
【契約の必要書類の一例】
- 納税証明書
- 登記簿謄本
- 印鑑証明など
ファクタリングの審査・契約をスムーズに行うためにも予め不備のないよう必要書類を揃えておきましょう。
まとめ
以上、ファクタリングの審査についてご説明いたしました。審査の際に大切なことは以下の5つのポイントです。
- 売掛先の信用力
- 売掛金の入金日
- 二重譲渡
- 差し押さえリスク
- 利用者の状況
これらのポイントをしっかり抑え、審査の対象となる証拠書類に不備のないようにすればスムーズな資金調達が可能です。ファクタリングを行うということはキャッシュインを早めたいということ。素早く資金を調達するために審査の際には不備の無いようしっかり確認を行ないましょう。