創業時に融資を受けたいと考えている起業家も少なくありません。
また、実際に融資を申し込む際に「どんな融資があるのか?」「複数の融資を同時に申し込めるのか?」といった悩みもあるかもしれません。
そこで、当記事では融資を同時に申請する際の3つの注意点を解説します。
また、
・融資形態の種類
・融資を申し込む際の注意点
・どうすれば審査に通過できるのか
・融資の審査を通過した際の注意点
なども併せて解説するので参考にしてください。
一般的な融資の形態
金融機関から受ける融資の形態には、下記の4つに分けることができます。
・当座貸越
・証書貸付
・手形貸借
・手形割引
それぞれで特徴が異なるので、どの形態の融資が自身の会社に必要なものなのかを理解しておきましょう。
当座貸越
当座貸越は個人のカードローンと同じ仕組みで、設定されている限度額の範囲内で、自由にお金を借りる・返すことができる融資です。
通常、金融機関からの融資はその都度融資に対する審査が行われますが、急に融資が必要になった際にもすぐに資金調達できるメリットがあります。
しかしのの反面、金融機関としてはリスクの高い融資となるため、審査が非常に厳しいという特徴があります。
証書貸付
証書貸付は金銭消費貸借契約証書という借入契約を交わして融資をうける方法です。
金銭消費貸借契約書とは、契約日・借入金・利率・遅延の損害金・返済方法など、融資の基本的な情報が記載された借入契約書です。
申請の際には、融資を受ける方の署名捺印と連帯保証人の署名捺印を記入して指定金融機関に提出します。
証書貸借には、返済期間が1年以上の長期融資で用いられます。
金融機関の取り扱う融資制度や商品ごとに証書貸借が設けられることが一般的です。
またこちらも返済期間が長いことから、金融機関側のリスクが高いため、こちらも比較的審査が高い傾向にあります。
手形貸借
手形貸借は金融消費貸借契約書の代わりに約束手形を振り出して融資を受ける方法です。
手形貸借を行うためには、融資をお願いする金融機関の当座開設の必要があります。
こちらは、証書貸借とは違い短期の借入を目的とすることが多いため、比較的融資を受けやすいです。
手形割引
手形割引は取引先から受け取った手形を金融機関に買い取ってもらう融資方法です。
現在ではあまり目にしない代金決済の手段ですが製造業・建設業・卸売業などでは現在でも一つの取引方法として利用されることもあります。
イメージとしては、これから回収できる手形を担保に融資を受ける方法です。
ただし、取引先の業績によっては融資が受けられない可能性もあります。
複数の金融機関に同時に融資を申し込むことは可能か
では、実際に融資を検討した場合2つの金融機関へ同時に融資を申し込むことは可能なのでしょうか?
結論から言えば、2つの金融機関から融資を同時進行で申し込むことは可能です。
もし金融機関からの融資を断られてしまった場合、次の融資で創業融資を受けられることになったとしても、当初の資金調達の予定から数ヶ月スケジュールがおくれてしまいます。
したがって、保険を掛ける意味でも、同時に2つの融資へ申し込むことは自然なことであり、禁止された行為ではないためリスクヘッジのためにも同時進行で申し込むことをおすすめします。
2つの金融機関へ融資を申し込む際の注意
2つの銀行に融資を申し込むことは全く問題ではありませんが、闇雲に知っている銀行へ申し込むだけでは、2つの銀行に申し込んだ意味をなさない場合があります。
ではどのような組み合わせで申し込めば良いのか、まずは2種類の金融機関からの融資の特徴を紹介します。
民間融資の特徴
都市銀行や地方銀行、信用金庫などの金融機関から融資を受ける方法ですが、公的融資よりも審査が厳しい傾向にあります。
しかし、融資の申請に必要な書類が少なく審査が短いため、短期間で資金調達ができるメリットがあります。
さらに、メガバンクであれば全国の至る所に支店があるため、相談や返済の際に便利である利点があります。
さらに、信頼を得られればかなりの大口の資金を融資してもらえます。
公的融資の特徴
公的融資は国や自治体による融資です。
特に、日本政策金融公庫は日本公庫とも呼ばれる100%政府全額出資の金融機関で、基本理念の中には「民間金融機関の補完」も公示されており、比較的融資を借りやすいというメリットがあります。
他にも、金利が1〜3%と低金利であることや、日本政策金融金庫で融資を受けることで、事業に融資の実績がつくことから、今後他の金融機関で融資審査を受ける際に審査が通りやすくなるというメリットもあります。
複数銀行に申し込む場合の注意
前述した通り、複数の銀行に同時に融資を申し込むことは、全く問題ありません。
しかし、民間融資を複数申し込むことはあまり意味をなさない場合があります。
民間の銀行にとって創業融資は新たな顧客獲得になるために、積極的に融資したいという考えがあります。
その反面で、過去の融資の実績がないために銀行としてもリスクの高い融資でもあります。
そのため一般的には、創業融資を申し込む際には、連帯保証人の役割を果たしてくれる、「信用保証協会」の保証付融資の利用を勧められることが一般的です。
ただし、その保証書付融資の審査は、同じ信用保証教会によるもののため、複数の銀行への融資の申し込みであっても、保証審査も結果が変わりません。
つまり、複数の民間銀行への申し込みであっても、信用保証協会の審査に落ちてしまえば、同時に複数の銀行からの融資が受けれれなくなってしまうことが考えられます。
そのため、融資を同時進行で申し込む場合は、審査方法の異なる民間融資と公的融資を申し込むのが最善であると言えます。
審査に落ちてしまう方の特徴と注意
ここまで、融資の大まかな分類を紹介しましたが、実際に創業融資を申請する際にどのようなことに注意をしたら良いのか?
まず、創業融資の審査には重要な項目があります。
・経営能力の有無
・事業計画の妥当性
この2つを様々な側面がらチェックをし融資審査が行われていきます。
では、具体的に審査に落ちてしまう方の特徴を紹介します。
自己資金の用意がない
融資を利用するからと言って、自身の資金の用意が全くない状態では話になりません。
創業融資の利用条件に入ってくることはもちろんですが、自己資金は創業者の意欲の現れとしても考えられる傾向にあるためです。
創業に向けて計画的に自己資金の準備をしてきた努力や資金をしっかりと管理してきた管理能力なども評価の対象となります。
例えば、日本政策金融公庫の場合の利用条件だと、実際に想定している創業資金の3分の1を自己資金で賄わなければなりません。
例えば、創業資金を300万と想定した場合、自己資金を100万、借りられる可能性のある融資が200万となります。
また、実際には手元にお金はあるけど口座から確認ができないお金、例えばタンス預金などは注意が必要です。
銀行側としては、確認できないものは自己資金として認められず、だからと言って直前にまとまったお金の入金があった場合、一時的にどこからか用意した見せ金のリスクがあると考えられてし、自己資金として認められないこともあります。
金銭的な信用がない
融資の審査では、個人の信用情報もチェックされます。
こちらも、経営能力の有無に関わってくるもので、公共料金や税金の支払いに遅延はないか、現在キャッシングの債務が残っていないかなど、個人の金銭管理能力は非常に重要です。
個人信用情報機関には、クレジットカードやローンの残高と2年分の返済状況が記載されます。このように個人の信用情報に残るような情報があると審査の際にかなり不利な状況になります。
さらに、金融機関のブラックリストに載っているようなことがあれば、ほぼ確実に審査には落ちてしまうことになります。
事業計画が不十分
事業計画書は決まったフォーマットがあるわけではありませんが、ただ長句書けばいいというものでもありません。
事業計画の妥当性として、経験と能力は求められるものはありますが、新たに創業する企業として、過去の実績を求められることはありません。
その代わり新たに始める事業として、申請者のこれまで積んできた経験や能力がどのように役立てられるかが審査されます。
まず必要な情報として、「創業計画書」の内容の創業動機・自身の経験・セールスポイント・販促方法などを充実させましょう。
自身の経験から、顧客の不満を解決させることが、社会的に意義のあるということである、ということを伝えることがポイントになります。
返済の確実性に欠けている
融資を受ける以上、もちろん返済の義務が生じます。金融機関からしてみれば、創業したばかりの実績のない会社への融資というリスクを背負うことになるため、資金の使い道や売り上げが上がる根拠、など経営の計画に矛盾や疑問が残る会社では当然融資はできないと判断されてしまいます。
提出する書類として「売り上げ計画書」は3年分を1ヶ月ごとに計算することで説得力が増します。
ただし、よく見せたいがために過大な計画はしないようにしましょう。厳しめに計画を立てる方が信用を得やすくなります。
さらに、「損益計画書」と「資金繰り表」がありますが、特に「資金繰り表」では、「損益計画書」にはない借入金の返済も計算されます。
事業計画書の中でも必ずと言っていいほど提出を求められるため、重要視される資料になります。
融資の審査がどちらも通った場合の注意
リスクヘッジのために受けた2つの融資が仮にどちらも申請が通ってしまった場合はどうしたらいいのでしょうか。
その場合の選択肢としては、下記の2択になります。
・2つの融資を受ける
・どちらかの融資を断る
しかし、どの金融機関も審査には労力もお金もかかっています。
融資が必要なくなったからといって、断ってしまうとその銀行からの心証が悪くなり、最悪の場合、今後その銀行からの融資が必要なときに融資を受けられなくなってしまう可能性もあります。
会社の創業の際、事業資金は多い方が、会社の生存率も上がります。
そのため、2つの融資の審査が通った場合は、両方から創業融資を受けるという判断がよいでしょう。
まとめ
以上、融資の種類と金融機関から創業融資をうける際の注意について解説しました。
もし審査に落ちてしまった場合、比較的審査が通りやすいといわれる日本政策金融公庫でも可否結果が出てから6ヶ月ほど期間を置かなければ、再申請は難しいです。
そうならないためにも、本記事を参考に自身が申請する融資の特徴と対策をしっかり行ってから、創業融資の審査に臨むようにしましょう。